概要
谷町線・中央線に投入された20系の改良型として、大阪市営地下鉄時代の1990年〜1998年に製造された。
日本車輌(日本車輌製造)、東急車輛(東急車輛製造)、川崎重工業、アルナ工機、近畿車輛、日立製作所の各鉄道車両メーカーへ製造を発注。非冷房車で残存していた30系と50系の置き換えを目的として、保有する第3軌条路線5路線に大量投入され、現在のOsakaMetro各路線でよく見かける「顔」と言えるべき存在になった。
制御方式は20系同様VVVFインバータ制御を採用したが、アルミ車体だった20系に対し本系列はステンレス車体に変更されたほか、車両番号がそれまでの4ケタから5ケタに変更となった。
テールライト横と前面上部に「VVVF」のマークが入っている。
各路線別
在籍編成
(※最盛期・中央線配置ありの2022年時点)
形式 | 編成番号・0番台 | 編成番号・50番台 |
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21系(9両→10両) | 01〜18 | |
22系(6両) | 01〜05,07〜19 | 55〜63 |
23系(5両→6両) | 01〜05,07〜22 | 56 |
24系(6両) | 01〜04 | 56 |
25系(4両) | 01〜17 |
21系 御堂筋線
- 10両編成18本を製造。第13編成までは9両編成で登場し、1996年に現在の4号車が追加されて10両編成になった。第14〜18編成は登場時から10両編成で、このうち第18編成は10系リニューアル工事の補充用として製造された経緯を持つ。
- 高密度運転のため、起動加速度が他の路線の2.5km/h/sに対して3.0km/h/sとなっている。
- 後述のリニューアル工事では30000系第10編成以降と同様の防犯カメラ設置が第17編成を皮切りに行われている。
22系 谷町線
- 0番台は6両編成19本が製造された。このうち第6編成は編成不足補充のため2017年に四つ橋線に転属・改番のうえリニューアルを行い23系50番台(第56編成)になった。
- 50番台は中央線から転属してきた元24系および旧OTS系である。うち第55〜63編成は近鉄けいはんな線延伸開業に際し20系の全編成に高速化対応工事を行う事になり、谷町線向けの20系30番台とのトレードが行われたもの。なお、50番台の全編成が同時に配置されたことはない。
23系 四つ橋線
- 0番台は6両編成22本が製造された。第18編成までは5両編成で登場し、1996年・1997年に現在の4号車が追加されて6両編成になった(この際、現在の3号車にあった簡易運転台は撤去)。第19〜22編成は登場時から6両編成。
- このうち第6編成は2013年のダイヤ改正で余剰となり、20系第1編成代替のため2014年に中央線に転属・改番のうえリニューアルを行い24系50番台(第56編成)になった。その後2022年に中央線に暫定投入された30000A系(32系50番台)によって追い出され、元の番号に戻り四つ橋線へと里帰りしてきた。なお、里帰りした直後はワイパーの位置及び形状が他編成と異なっていたが2023年8月に元の位置に戻された。
- 50番台は先述の谷町線からの転属車両、23系第56編成・23656F。
- 住之江公園駅での混雑時の乗降分離のために1号車・2号車にはドアカット機能がある(現在は使用中止。50番台はドアカット実施時代、四つ橋線に在籍していなかった為非装備)。また、地上区間のない23系は日よけのカーテンを省略している。
- 第13編成・23613Fは試作インダイレクトマウント・ノースイングハンガー・モノリンク式空気ばね台車の実用試験を行ったことがある。なお、この試験結果を元に改良したものが30000系の台車として本格採用された。
24系 中央線
- 0番台は6両編成11本が製造された。第5〜11編成は先述の通り、近鉄けいはんな線延伸開業に際し20系とトレードされる形で谷町線へ転属し22系50番台に改番。残存していた第1〜4編成についても、2022年から2023年にかけて谷町線へ転属し22系50番台に加えられた。
- 50番台は2種類。①大阪港トランスポートシステム(OTS)から路線ごと編入によるもの、②先述の四つ橋線からの転属車両、24系第56編成・24656F。
- 直通運転先の近鉄けいはんな線の特性から、抑速ブレーキを装備している。また95km/h運転対応改造の時に起動加速度は3.0km/h/sとなり、ワイパーの位置及び形状変更、冷房機横の車外スピーカー設置が行われた。
25系 千日前線
- 4両編成17本を製造。千日前線はCS-ATCが採用されている路線である。
- 後述のリニューアル工事ではATO出発ボタンの追加などが行われた。
- 地上区間のない25系は日よけのカーテンを省略している。
仕様変更および改造
- 1990年製造分の車両(22系・23系の第1〜7編成)のみ前面上部の車両番号が大きい。翌91年以降の製造分は車両番号が小さくなった。
- 前期車(21系第1〜13編成、22系第1〜17編成、23系第1〜18編成、24系および25系全車)はドアベルト付き単板ガラスドア。後期車(21系第14〜18編成、22系第18・19編成、23系第19〜22編成、元OTS系)はドアベルト無し複相ガラスドアへ仕様変更され、御堂筋線向け21系・四つ橋線向け23系の追加増結車は全て後期車の仕様で落成した。
- 客室部床材は21系第1〜13編成、22系・23系第1〜14編成、24系第1〜8編成、25系第1〜11編成までは茶色とクリーム色の2色だったが、21系第14編成、22系・23系第15編成、24系第9編成、25系第12編成以降では茶色1色となった。なお元OTS系は薄茶色1色である。また、21系や23系の増結車は増結先の編成の仕様に合わせられている。
- 21系第16・17編成と元OTS系ではLED式案内表示器を全扉上に設置した。21系第18編成では千鳥配置に変更され、元OTS系は谷町線転属時に千鳥配置化された。なお1997年〜2014年にかけて未設置だった編成にも千鳥配置で設置している。
- 1998年に21系第12編成で転落防止幌を試験設置し、2000年〜2002年にかけて全車両に設置された。
- 1992年製造分の車両(21系第6編成、22系・23系第10編成、24系第2編成、25系第3編成以降)では製造当初から全車両に車椅子スペースがある。なおそれ以前に製造された編成(21系・23系の増結中間車除く)については1997年〜2004年にかけて車椅子スペースが設置された。
リニューアル工事
製造から20年が経過し、2011年1月の25系第7編成を皮切りに順次リニューアル工事を施工。
以下に主な改造内容を示す。
※編成の並び順はリニューアル施工順。
- 側面前後に号車番号表示を追加し、上部にもラインカラー帯を追加した。
- 21系・25系ではワイパーの位置及び形状変更(95km/h運転対応改造後の24系と同じ配置に揃えられた)。
- VVVFの素子をGTOからIGBTに変更。
- 座席のモケットを交換した上で、バケットシート化。
- ドア付近の床面に黄色い線を追加し、扉開閉予告灯を設置。
- 床材をグレー色に変更(21系第7・5・1・3・8・2編成、22系第3・7・4・1編成、23系第1・4・3編成、24系第3・1・56編成、25系全車)
- 開扉時の盲導鈴鳴動機能を追加の上、車内照明を蛍光灯からLEDに変更し蛍光灯カバーを撤去(21系第7編成以外全て、22系第1・2・5・8〜12編成、23系第2・3・56・7〜9・4・10〜15・18・16編成、24系の残存していた全編成)
- 車内案内表示器は3種類存在し、2013年までの施行車(21系第7編成、22系第3・7・4編成、23系第1・4・2編成、25系全車)はLED式のまま新品に交換(リニューアル前に未設置だった編成はリニューアルと同時に設置)、2014年からの施行車(21系第5・1・3・8・2・4・6・9編成、22系第1・2・5・8〜12編成、23系第3・56・7〜9・4・10〜15・18・16編成、24系の残存していた全編成)はLCD式に交換、2018年以降に施行された21系の第11・10・12・13・15・14・17・16・18編成についてはフルHD対応32インチのハーフサイズLCDに交換された。
- 25系については運転台を横軸ツーハンドル(221系などと同じ操作方法のもの)からT字型ワンハンドルに交換(21系第12編成、22系第8編成、23系第10編成以降の施工車のほか、それ以前にリニューアルされた24系以外の車両にも順次施工)。
- 21系第8・2・4編成については荷棚を更新、第6・9・11・10・12・13・15・14・17・16・18編成ではそれに加え女性専用車の荷棚と吊り革の高さを変更。
- 21系第11編成、22系・23系第12編成以降の施工車ではホームドア全駅設置に伴い、一定位置停止装置「TASC」を搭載(それ以前にリニューアルされた車両にも順次施工)。
さらに2015年以降の施工車では、走行路線に合わせた内装デザインに変更している(同時に扉横の手すりを下方向に拡大)。
- 21系(第4・6・9編成)は御堂筋線の路線カラーである赤色で大阪市営地下鉄の大動脈を表し、御堂筋の伸び行く新緑のイチョウ並木を表現。しかしこのデザインは不評だったため第11・10編成では色味が薄くなり、さらに2018年10月以降にリニューアルされた第12・13・15・14・17・16・18編成は、「歴史と伝統を受け継ぎ『新たなるステージへ』歩み進める新会社にふさわしい車両」とするために内装デザインを一新し「上質さ」を石目や木目の素材感で表現するデザインとなった。
- 22系(第1・2・5・8〜12編成)は歴史的な史跡や神社、寺院が立ち並ぶ歴史がある路線で、沿線で開催される天神祭の壮大な花火と谷町筋のゆかりのある梅の華で華やかさと伝統を融合した車両空間を表現したデザイン。
- 23系(第3・56・7〜9・4・10〜15・18・16編成)は上繋橋、下繋橋、炭屋橋、吉野家橋の四つの橋をモチーフにした「四ツ橋柄」と、路線カラーと水をイメージした「ブルー」を取り入れたデザイン。
- 24系(第2・4編成)は朝日の昇る生駒山から太陽の沈む大阪港へ路線カラーであるグリーンベルトでつなぎ、そのまわりをOsaka Metroの路線図を模した魚が泳ぎまわる明るくてかわいいデザイン(谷町線転属後も変更は行われていない)。
- なお25系については、ワンマン運転を始めるため2014年までに優先的に行われたが、2014年にリニューアルされた第8編成も2013年以前の改造メニューで施行されたためLCD式車内案内表示器および開扉時の盲動鈴鳴動機能、走行路線別の内装デザインが採用されている編成はない。
廃車及び撤退
- 中央線の自社車両は400系へ統一する方針としたため、これに先立ち24系は先述の通り谷町線と四つ橋線へ転属し2023年までに中央線への配置が無くなった。
- 2025年開催の大阪万博開催期間中の輸送力増強用として中央線へ投入された30000A系(32系50番台)は万博終了後谷町線へ転属。谷町線向け22系のうちの一部編成についてはリニューアルを行わず、30000A系に代替される見通し。なお、中央線に残存していた24系リニューアル車の転属により、2023年8月の第55編成を皮切りに未更新車の余剰廃車が始まった。
- 御堂筋線用の21系についても、車両の低床化を目的に2026年から新車への代替構想がある。