登場背景
1993年登場。乗客増加に伴い4ドアの新2000系を増備しても従来の3ドア車はまだまだ主力で残っており、4ドア車を増やさなければいけないという事情から、廃車になった101系の機器を流用し、車体は新2000系と同一のものを採用して西武9000系が製造された。車籍は引き継いでいない。
鋼体製造は西武所沢工場によるものであり、これが最後の所沢工場落成車となった。外観では前面手すりと貫通扉下部の靴ずり部が黒色であることと、全て10両固定編成にそろえられたことが新2000系と異なる要素である。10両固定編成なので単独運用かつ先頭車に電気連結器が装備されていない。車内設備は増備中だった6000系と同じものを採用した。
あわせて10両編成8本が製造された。一時的に西武新宿線系統に在籍していたこともあったが、短期間で西武池袋線系統に集結している。
国鉄の“仮称105系”の姿である西武9000系
実際の105系ではなく、大阪鉄道管理局が計画し中央に上奏していた「103系ではない、101系を純粋に増強した形式」として仮称105系というものがあった。これは大阪環状線や京阪神緩行線において、高速で伸びない103系と、MT46・MT54系列が混在するとダイヤ組成が難しくなるためにMT54搭載の通勤形を求めたものだった。だが、結局国鉄中央は103系で一本化することと回答し、この仮称105系は幻に終わった、とされている。
実は9000系に使用されている主電動機は国鉄のMT54を150kWに増強したもので、定格回転数もほぼ同じ(MT54の全界磁1650rpmに対して界磁80%時1800rpm)。更に歯車比の5.73は、103系の動輪(直径910mm)をMT46・MT54搭載形式の860mmに換算した場合の数字とほぼ同じとなる。
つまり、西武9000系は国鉄の“仮称105系”を具現化した存在であると言える。
デビュー後の動向
VVVF制御化改造
制御方式は101系の機器流用による抵抗制御であったため、2000年代に入るとメンテナンス面と環境面から(抵抗制御の発電ブレーキ車であったため、電気を馬鹿喰いするうえ抵抗器から高熱を発し、夏季のホーム上はその発生熱で非常に暑くなる。練馬駅などで顕著だった))VVVFインバータ制御への変更をすることになり、2004年から2008年までに全8編成が改造された。インバータ装置は増備中だった20000系と同一のものを採用した。また、ヘッドマーク状の省エネステッカーが前面貫通扉に追加され、新2000系との識別が楽になった。
(なお、近年は簡易戸袋窓閉塞やベンチレーター撤去、省エネステッカー省略が行われている。)
廃車と転用
- 制御方式は変更されたものの、台車が廃車発生品のままである事と、10両固定編成の優等運用による過酷な運用から、2017年から順次廃車を行っている。第1・6・7編成は編成ごと廃車となった。
- が、2020年度に国分寺駅に4ドア車用のホームドアを整備・設置を決定。西武多摩湖線で使われていた3ドア車・新101系が物理的に入線不可能になるため、足りない編成分の補充用として本系列を転用することにした。まず第8編成が4両編成へ短縮のうえワンマン化改造工事を行い2020年10月より多摩湖線で運用を開始、残る編成も順次改造のうえ運用入りしている。
装飾編成
RED LUCKY TRAIN
2014年に第3編成を京浜急行電鉄カラーに変更した。京急1000形(2代)「KEIKYU YELLOW HAPPY TRAIN」が西武鉄道カラーそのままだったため、京急が西武にコラボレーション企画を持ちかけて実現。
2021年に編成短縮改造を受け装飾は解除となったが、車体色の赤色は維持したまま。
L-train
3000系引退後、しばらく埼玉西武ライオンズの装飾編成が不在だったが、第8編成が2016年に2代目の「L-train」となった。
2020年に編成短縮改造を受け装飾は解除となったが、車体色の紺色は維持したまま。
SEIBU KPP TRAIN
歌手のきゃりーぱみゅぱみゅ氏のメジャーデビュー5周年を記念し、第1編成をピンクの塗装に改めラッピングを施した。2016年4月~9月。この期間、15年ぶりに西武新宿線の運用へ出張に出たこともあった。ラッピング終了後も廃車までピンク色の姿のままだった。