E851
いーはちごいち
1969年の秩父線開業に合わせてセメント貨物輸送用に4両が製造された。私鉄最大の電気機関車として設計、構造は当時国鉄で製造を継続していたEF65に範を取り(ただし歯数比はEF60相当となる)、直流用電装品と台車はEF81と同様(若干アレンジは入っている)で、形式名もこれらを合わせたものであったが、フランスの機関車デザインにも影響をうけたフィルタ配置および側面丸窓・当時としては非常に奇抜な朱色とクリームの塗り分けから「ジャンボ」と現場およびファンに親しまれた。セメント運用は横瀬~芦ヶ久保間での重連運転運用が定期的に行われるなど、貨物輸送の主力として活躍した。主な運行区間は東横瀬-池袋・国分寺(後に新秋津に集約)で、これらの駅で国鉄(JR)と連絡していた。
しかし1980年以降、トラック輸送が進んだこともあり、貨物輸送量が減少、国鉄のJR化以降の大手私鉄の貨物輸送としては東武と共に数少ない存在として残ったが、遂に1996年3月のダイヤ改正で貨物輸送が全面廃止となり、このダイヤ改正を待たずに貨物列車は終焉を迎えた。
しかし引退時の最終運転を行うにあたり西武鉄道はJR東日本から12系客車を借り受けて運転するという、大手私鉄では前代未聞かつ、鉄道ファンの「E851で客車を牽引をしてほしい」という絶対無理と分かっていても思わずにいられなかった願望を、本当にやってのけたのである。
無論、これまでに西武で機関車が客車を牽いての営業運転の実績などなく、実現にあたっては客車とホームの段差等(逆段差:法令で床面またはステップ上面がプラットホームより低い状態は原則認められていない)、数々の困難が生じたが、最終的には運輸省の「数度の運転であるならホームに係員に配置すればよい」というお墨付きで運転が実現。5月25日-26日の2日間にわたって横瀬-所沢間を最初で最後の客車運転を行った(大手私鉄が客車を牽いた例は、昭和40年代までは東武や南海などが蒸気や電車牽引で存在した事もあるが、JR化以降はこれが初であった。なお、この後2017年より東武がJRからSLを借り受けることで客車が運転されている)。
E851-E854の4両が製造された、このうちE851-E853は解体済みだが、E854が現在でも横瀬で保存されている。
なお、作業用に所沢工場で新製されたE31型は、機器類及び台車は旧型国電および旧国鉄規格同等品など流用品の組み合わせであるが、車体はE851を範としたデザインとして新造されている。