国鉄5500形蒸気機関車
1893年から1898年にかけてイギリスのベイヤー・ピーコック社から輸入した蒸気機関車。
明治期を代表する旅客用蒸気機関車で、東北本線の前身にあたる日本鉄道の主力機関車。官設鉄道が直接輸入した車両もあるが、大部分が日本鉄道が輸入した車両が日本鉄道線の国有化に伴い編入された車両である。
ピーコック社製テンダー機関車であることから「ピーテン」という愛称があった。
派生形式としてニールソン社から日本鉄道が1893年に、官設鉄道が1896年にそれぞれ輸入した5630形、日本鉄道が1898年にシャープ・スチュアート社から輸入した5650形、1929年から1930年にかけてタンク機関車に改造したB10形がある。
東武鉄道は北千住駅~久喜駅間の開業に備えて同型の機関車10両を輸入、B1形として運用された。
一度は資金難により6両を総武鉄道(現在の総武線)に譲渡したものの、亀戸線開通に伴い2両を輸入、国鉄から譲り受けた同型機を含めて最大11両が運用された。
青梅鉄道公園に国鉄で使用されていた5540が、東武博物館に東武鉄道B1形の5と6が保存されているほか、5650形は東武鉄道に譲渡された40号(5655)が埼玉県南埼玉郡宮代町役場前(東武動物公園駅付近)、39号(5654)が三重県いなべ市の貨物鉄道博物館に、37号(5652)が千葉県内に保存されている。
B10形は小湊鉄道に譲渡された4号機が同社の五井機関区に保存されている。
国鉄クハ5500形
1942年に鶴見臨港鉄道が導入した川崎車輛製の電車(買収国電)。半鋼製17m級3扉ロングシート車で、鶴見臨港鉄道時代はモハ210形・クハ250形と名乗っていた。
モハ・クハを名乗っているが戦時中の物資不足のため電装品の調達が間に合わず、付随車代用のサモハ・サクハとして運用された。
鉄道線買収に伴い国鉄鶴見線となってからも同線内で運用され、1948年の鶴見線昇圧後は身延線や飯田線、福塩線などで運用された。
1953年の車両称号規定改正に伴いモハ210形はクハ5500形、クハ250形はクハ5550形へ改称。1959年の形式番号整理に伴いクハ5550形もクハ5500形に編入された。
1967年までに全車廃車となった。
都電5500形
初代5500形は1953年から1955年にかけて導入された路面電車車両。増大しつつあった路面交通に対応すべく登場した都電初の高性能電車で、アメリカで開発されていた技術を取り入れ、アメリカの開発団体「電気鉄道事業者会議委員会」の名をとって「PCCカー」の愛称があった。
当初はアメリカからPCCカーを輸入する構想だったが、調査に訪れたアメリカ人技術者から国産化も可能との助言が得られたため技術ライセンス契約を締結し国産化に着手。同時に交通局車両課でもPCCカーに相当する技術研究を行っていたことから、6000形最終号車である6291号車の予算を流用して試作車(後の6500形)を発注した。
しかしPCCカーは従来型から隔絶した高度な技術で製造された機器で構成されているため製造は難航、6500形は逆に機器類は完成したものの車体の製造に手間取るといった状態で当初の予定より大幅に運行開始が遅れることになってしまった。
そこでPCCカー国産化委員会のメンバーであるナニワ工機に同型の車体を追加発注、6500形用の機器を載せて1953年11月に完成した。
この車両は電装品を開発した三菱電機、台車を開発した住友金属工業、そして車体を製造したナニワ工機の頭文字を取ってMSN車という愛称があった。
実質的な製造第1号車であったが、開発中の純正PCCカーにトップナンバーを譲って5502号車と附番された。
純正PCCカーである5501号車の完成はその半年後の1954年5月となった。
しかし先進的な機器を採用していたため故障が多かったこと、日本では珍しい足踏みペダルによる運転操作などが乗務員に不評で、以後の増備車は5502号車をベースにしたものとなった。5501号車の足踏みペダルも1960年に通常のマスコンに改造されている。
本形式全体の愛称として「PCCカー」が用いられることがあるが、厳密な意味でのPCCカーは5501のみである。
駆動方式も5501号車のみ直角カルダン駆動、5502号車以降はWN駆動と異なっていた。
同じく試作車である6500形や7000形7020号車と共に三田車庫に配置され、銀座を経由する1系統の運用に就いた。古くから大型車両が運行に就いた都電の花形路線だったが、道路の渋滞が慢性化していたことから本来の性能を活かすことができず、また保守・運用面でも問題があったこと、大型の車体ゆえに運行可能な路線が限られることから1967年の1系統廃止に伴いお役御免となった。
トップナンバーである5501号車のみが保存され、現在は荒川車庫隣接の「都電おもいで広場」にギャラリーとして保存されている。座席はすべて撤去されているが、運転台は製造時の足踏みペダルに復元されている。
都営地下鉄5500形
2代目の5500形は都営浅草線で使用していた5300形(通称「交通局の白い悪魔」)の置き換え用として製造された鉄道車両。
5300形の後継車の構想は2010年代前半の頃からあり、初期の計画では2015年度末に登場する予定だった。しかし、延期や調達計画の変更があり二転三転した結果、2017年度末からの製造となった。
2017年12月9日に開催された「都営フェスタ」においてお披露目が行われた。2018年春からの営業運行開始を予定していたが諸事情で延期され、2018年5月から本線の試運転が開始、その後同年6月に営業運転を開始した。
8両編成27本が在籍。
特徴
- 車体は5200形以来となるステンレス車体を採用(5200形はセミステンレスのため、オールステンレスは当形式が初)。
- 「日本らしさ」をテーマに、歌舞伎の隈取をイメージした外装や、白色の和紙をモチーフとした内装板と竹をイメージした模様の妻面壁、浅草寺の提灯、日本橋、神輿など沿線由来のイラストを取り入れたカーテンや連結面貫通扉など、浅草線沿線とゆかりのあるものをふんだんに取り入れている。
- LED照明のほか炭化ケイ素(SiC)素子を使用したVVVFインバータ制御方式を採用し、環境負荷の低減を図った。
- 先代の5300形は最終の5327編成を除き110km/h性能としていたが、5500形は全編成が120km/h運転に対応している(最高設計速度は130km/h)。2022年2月26日のダイヤ改正から京急本線での120km/h運転および成田スカイアクセス乗り入れ(アクセス特急)運用が解禁された。
編成表
- VVVF=制御装置、BT=バッテリー、SIV=補助電源装置、CP=コンプレッサー
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形式 | 5500-1 | 5500-2 | 5500-3 | 5500-4 | 5500-5 | 5500-6 | 5500-7 | 5500-8 | 製造年度 |
MT構成 | M1c | M2 | M3 | T4 | T5 | M6 | M7 | M8c | |
号車番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
機器配置 | VVVF,BT | VVVF | VVVF | SIV,CP | SIV,CP | VVVF | VVVF | VVVF,BT | |
第1編成 | 5501-1 | 5501-2 | 5501-3 | 5501-4 | 5501-5 | 5501-6 | 5501-7 | 5501-8 | 平成30年度 |
第2編成 | 5502-1 | 5502-2 | 5502-3 | 5502-4 | 5502-5 | 5502-6 | 5502-7 | 5502-8 | 平成30年度 |
第3編成 | 5503-1 | 5503-2 | 5503-3 | 5503-4 | 5503-5 | 5503-6 | 5503-7 | 5503-8 | 平成30年度 |
第4編成 | 5504-1 | 5504-2 | 5504-3 | 5504-4 | 5504-5 | 5504-6 | 5504-7 | 5504-8 | 平成30年度 |
第5編成 | 5505-1 | 5505-2 | 5505-3 | 5505-4 | 5505-5 | 5505-6 | 5505-7 | 5505-8 | 平成30年度 |
第6編成 | 5506-1 | 5506-2 | 5506-3 | 5506-4 | 5506-5 | 5506-6 | 5506-7 | 5506-8 | 平成30年度 |
第7編成 | 5507-1 | 5507-2 | 5507-3 | 5507-4 | 5507-5 | 5507-6 | 5507-7 | 5507-8 | 平成30年度 |
第8編成 | 5508-1 | 5508-2 | 5508-3 | 5508-4 | 5508-5 | 5508-6 | 5508-7 | 5508-8 | 平成30年度 |
第9編成 | 5509-1 | 5509-2 | 5509-3 | 5509-4 | 5509-5 | 5509-6 | 5509-7 | 5509-8 | 令和元年度 |
第10編成 | 5510-1 | 5510-2 | 5510-3 | 5510-4 | 5510-5 | 5510-6 | 5510-7 | 5510-8 | 令和元年度 |
第11編成 | 5511-1 | 5511-2 | 5511-3 | 5511-4 | 5511-5 | 5511-6 | 5511-7 | 5511-8 | 令和元年度 |
第12編成 | 5512-1 | 5512-2 | 5512-3 | 5512-4 | 5512-5 | 5512-6 | 5512-7 | 5512-8 | 令和元年度 |
第13編成 | 5513-1 | 5513-2 | 5513-3 | 5513-4 | 5513-5 | 5513-6 | 5513-7 | 5513-8 | 令和元年度 |
第14編成 | 5514-1 | 5514-2 | 5514-3 | 5514-4 | 5514-5 | 5514-6 | 5514-7 | 5514-8 | 令和元年度 |
第15編成 | 5515-1 | 5515-2 | 5515-3 | 5515-4 | 5515-5 | 5515-6 | 5515-7 | 5515-8 | 令和元年度 |
第16編成 | 5516-1 | 5516-2 | 5516-3 | 5516-4 | 5516-5 | 5516-6 | 5516-7 | 5516-8 | 令和2年度 |
第17編成 | 5517-1 | 5517-2 | 5517-3 | 5517-4 | 5517-5 | 5517-6 | 5517-7 | 5517-8 | 令和2年度 |
第18編成 | 5518-1 | 5518-2 | 5518-3 | 5518-4 | 5518-5 | 5518-6 | 5518-7 | 5518-8 | 令和2年度 |
第19編成 | 5519-1 | 5519-2 | 5519-3 | 5519-4 | 5519-5 | 5519-6 | 5519-7 | 5519-8 | 令和2年度 |
第20編成 | 5520-1 | 5520-2 | 5520-3 | 5520-4 | 5520-5 | 5520-6 | 5520-7 | 5520-8 | 令和2年度 |
第21編成 | 5521-1 | 5521-2 | 5521-3 | 5521-4 | 5521-5 | 5521-6 | 5521-7 | 5521-8 | 令和2年度 |
第22編成 | 5522-1 | 5522-2 | 5522-3 | 5522-4 | 5522-5 | 5522-6 | 5522-7 | 5522-8 | 令和2年度 |
第23編成 | 5523-1 | 5523-2 | 5523-3 | 5523-4 | 5523-5 | 5523-6 | 5523-7 | 5523-8 | 令和3年度 |
第24編成 | 5524-1 | 5524-2 | 5524-3 | 5524-4 | 5524-5 | 5524-6 | 5524-7 | 5524-8 | 令和3年度 |
第25編成 | 5525-1 | 5525-2 | 5525-3 | 5525-4 | 5525-5 | 5525-6 | 5525-7 | 5525-8 | 令和3年度 |
第26編成 | 5526-1 | 5526-2 | 5526-3 | 5526-4 | 5526-5 | 5526-6 | 5526-7 | 5526-8 | 令和3年度 |
第27編成 | 5527-1 | 5527-2 | 5527-3 | 5527-4 | 5527-5 | 5527-6 | 5527-7 | 5527-8 | 令和3年度 |
備考
- 先代の5300形とは異なり、駆動方式はWN式をやめ、TD平行カルダンとなった。また自動放送装置は浅草線内に限らず、乗り入れ先でも使用されている。
- 令和3年度に製造された5527編成の運転開始に伴い全編成揃ったが、当形式はデジタル無線を設置する工事を行っており予備車が不足するため、5300形5320編成がしばらく残存し、実際の引退は令和5年までずれ込んだ。
- 2023年、5507編成が馬込車両検修場構内にて脱線事故を起こし、翌年に脱線当該の5~8号車が廃車となった。残る1~4号車は現在も馬込車両検修場に留置されており、今後の処遇は未定。