概要
深い海の砂底に住み、主に海洋生物の死骸を食べる「海の掃除屋」。一度見るとなかな忘れられないインパクトの強い顔つきなどで一部でカルト的な人気を博しており、深海生物マニアの間ではアイドル級の扱いを受けている。
分類
海底で暮らす節足動物という点ではどことなく三葉虫っぽいが、系統的にはダンゴムシの親戚(等脚目)で、三葉虫とは極めて遠縁。
またこの仲間にはフナムシ・ワラジムシ・ウオノエ・スナホリムシなどいくつかのグループがおり、オオグソクムシやダイオウグソクムシは砂浜に生息するスナホリムシが最も近縁で、グソクムシ(無印)やメナガグソクムシはウオノシラミと近縁。
ちなみにダンゴムシとは違い体をきちんと丸めることはできず、歪な形になってしまう。
甲殻類ではあるが、腐肉食のため臭気がキツく、基本的に食用には向かない。アジアでは珍味として賞味する人はいるらしいが……
肉は美味しいらしいが非常に歩留まりが悪い。胴体はほとんど内臓で、ものすごく苦くてものすごく臭いのでミソは期待できない。
肝心の肉に関しても量はわずかで、ダイオウグソクムシ程の巨体でも、せいぜい足の付け根をしゃぶるくらいしかない。
オオグソクムシの場合、調理方法は基本的に丸茹でか丸揚げ。生食は推奨できない。内臓はすさまじいえぐみと臭気を持っていて不味いにも程があるため要撤去とのこと。
ちなみに「グソクムシ」は漢字で書くと『具足虫』。「具足」とは鎧・甲冑のことで、エビやカニとはまた違った重厚さを感じさせる。
主なグソクムシの種類
スナホリムシ科 オオグソクムシ属
深海の海底で生物の死骸を食べる。
著名なグソクムシは大抵この仲間。
- 日本近海に生息するグソクムシ。深海150mから600m付近の海底に生息する。体長は10cmから20cm。最近では展示する水族館も増えている模様。日本に生息する等脚類の中では最も大きいものの、大きさのインパクトでは後述のダイオウグソクムシに一歩及ばない(というかオオグソクムシ属の中では小さい方)ため、グソクムシの中ではやや地味。丁度いい小ささが余計に不気味との意見も。
- 深海生物のため飼育難易度は高いが、それでも深海生物にしては飼育は簡単らしい。極論、常に水槽全体を10℃以下に冷やしてあげれば、飼えなくはないとのこと。一般家庭でも冷蔵庫でなら飼えるかもしれないが、かなり維持費が高いペットになるだろう。
- 日本近海でしばしば大量に漁獲され、繁殖に成功した水族館もある。粉末にしておせんべいの材料になったこともある。
- メキシコ湾や西大西洋の深海200mから1000m付近の砂地の海底に生息する。20cmから40cm程に成長し、中には76cmの個体が発見されているグソクムシの中では世界最大級の種(甲殻類全体でも最大級、現存する節足動物全体でも上位に食い込む)。エサの乏しい深海で、なぜこのような大型になるのかは分かっていない。
- もっとも有名なグソクムシとして知られ、Google等のイメージ検索で出てくるのは大体この種。高い人気を誇る一方、かつて大型のオオグソクムシ属は全てダイオウグソクムシと呼ばれており、近年、後述のような新種や未記載種が大量に含まれていることが判明している。
- 日本の水族館ではオオグソクムシとダイオウグソクムシ(および近縁種)がセットで展示されることが多く、よく動く小さい方がオオグソクムシ、置物のように動かないでかい方がダイオウグソクムシと認識されやすい。
- 南シナ海の深海域に生息する。平均30cm程のグソクムシ。ダイオウグソクムシの次に大きくなり、最大50cmに成長すると言われる。長年アジアのダイオウグソクムシとして知られてきたが、近年になって別種であることが確定した。東南アジアからは他にも多数の新種が見つかっており、食用目的で漁獲されている種類もいる。
- 二ューカレドニアの530~660mに生息する。体長は最大で25cmになる。学名から「バシノモス」とも呼ばれる(バシノモスはオオグソクムシ属の意味)。逃げる時に臭い液を吐いている様子が目撃されている。
- ユカタン半島沖のメキシコ湾の水深600〜800メートル付近に生息する新種。名前のエノスイは、この種がダイオウグソクムシだと思われて飼育されていた新江ノ島水族館に由来する。体長25cm程の、やや小柄なダイオウグソクムシといった見た目で、外見でダイオウグソクムシと見分けることは困難。このようなダイオウグソクムシそっくりの種が、メキシコ湾には他にもいると考えられている(エノスイグソクムシ発見の6年前にも、メキシコ湾では新種が見つかっている)。
- 南シナ海の南沙諸島近海で発見された新種(最新の種類のため、記事執筆時点ではまだウィキペディアにも記述がない)。複眼周りの甲殻が隆起し、ダース・ベイダーの顔面みたいに見えることからこの名がついた。体長26cmとコウテイグソクムシよりはやや小柄。
グソクムシ科
オオグソクムシ類とは生態がかなり異なり、空腹になると通りかかった魚に飛び乗って吸血する半寄生性の生態をもつ種や、海綿の中で暮らす種などがいる。
- 正真正銘の種としてのグソクムシなのだが、圧倒的に知名度が低く、ネットで写真を見つけることすら困難。学名で画像検索すると数枚の写真を見ることができる。学名はAega dofleini
- ブユに似た大きな複眼が特徴。鳥羽水族館で展示例あり。
- 左右の目玉が中央で繋がっている。一般的にはほぼ無名なグソクムシ科の中では知名度が高い方で、鳥羽水族館などのいくつかの水族館で展示されていることもある。
- 鳥羽水族館での展示例あり。
- カイメンの仲間であるカイロウドウケツの中に棲む。魚の血を吸っている個体も見つかっている。
オナシグソクムシ科
遊泳性のグループで、深海を泳ぎ回って生活する。
浮力を得る為に体内にワックスを蓄積している。
深海性クラゲに付いている姿が目撃されており、クラゲに寄生するという説もある。
ちなみに
グソラー(熱狂的なグソクムシのファン)の間では、毎年2月14日はグソクムシの日である。昔、とある水族館にて長期の断食をおこなったことで有名になったある個体の命日であることが由来。