特急形車両として
東海道新幹線開業によって、近鉄特急は名阪輸送から大阪・京都・名古屋からの観光輸送などに主軸を移した。順調に伸びた京奈特急・京橿特急を延長し、京都と伊勢を結ぶ京伊特急を走らせることが計画されたが、当時の京都線と橿原線は車両限界が小さく、また京都線は電圧も直流600Vと1500Vの大阪線と異なっていた。そこで京都線サイズで直流600Vと1500Vの複電圧対応の特急形車両として開発されたのが本系列である。1966年に2両編成5本が製造された。
車体は当時の京都線・橿原線の車両限界に合わせた中型車として製造されたため回転クロスシートを設置するための車体幅が足りず、座席は転換クロスシート装備とされた。当時の大阪線・名古屋線の特急車10400系(⇒エースカー)・12000系(⇒スナックカー)よりは座席が狭いものの、冷暖房を完備している。一方で180KWの大馬力モーター(MB-3127)を搭載し、青山峠の急勾配を越えられる性能を有している。12000系から20000系「楽」までの180kw主電動機は本形式のものがベースとなっている。
京都線や橿原線の車両限界工事を完了し、京都線電圧が直流1500Vに昇圧(統一)されると、他の特急車両も京伊特急に使われるようになり運用は共通化された。
団体専用車両として
在籍数が10両と少数派であったことから、非冷房かつ老朽化が深刻になっていた20100系「あおぞら」の代替車両に抜擢され、「あおぞらII」として団体専用車の運用を継承することになった。運転席にカメラを設置して車内のテレビに前方展望を映すことができるようになるなど、内装がリニューアルされた。一部車両は運転台を撤去して中間車化されたため、4両編成2本・2両編成1本の陣容に変わっている。
老朽化のため、12200系(⇒スナックカー)改造の15200系「あおぞらII」に代替されて2006年に退役・形式消滅ととなった。
余談
京伊特急を実現させ、近鉄特急ネットワーク拡大に貢献した、近鉄特急の歴史及び技術面の両方で保存意義の高い形式だったが全車解体された為、保存車は存在しない。その代わり後輩の18400系が高安車庫のカットボディとして選ばれた。
引退から3年後の2009年に全線開業した阪神なんば線絡みで本形式が話題に挙がる事がある。
現在、22600系「Ace」が臨時列車で阪神三宮まで乗り入れる事があるが、三宮以西(姫路)への乗入れが不可能である。それに対し本形式は現在の近鉄特急(ビスタEX、サニーカー)と同等の性能且つ、三宮以西へ乗入れ出来る車体サイズ(18200系登場当時の京都・橿原線の限界は山陽よりも狭い)を両立していた為である。