711系
ななひゃくじゅういちけい
函館本線の電化と同時に必要となる交流専用の電車が必要であるため、開発された車両である。車体構造は455系などをベースとし2扉で耐雪・耐寒構造になっている。千歳線・室蘭本線の電化が完了すると両線にも投入される。一時期は急行「かむい」にも起用された。
地元では赤い車体から赤電と呼ばれていた。
なお、床貼りの一部は落成時は100番台に至るまで着雪時の滑り止めのための木板であった。
既存の国鉄の電車は新幹線以外全て直流電車の構造が基本であり、また新幹線も当時はまだ0系(タップ制御)しか営業車両がない時代である。サイリスタ制御による交流専用電車というだけでも特徴ではあるが、主要機器を北海道の気候に適合させたことが最大の特徴である。
北海道の雪は非常に粒子の細かいパウダースノーで、本州以南の雪と異なり負圧部があるとそこから簡単に吹き込んでしまう。
日本の在来線電車に多い自己通風形モーターのファンはモーター内の空気を掻き出すものなので、当然ながらその内部は陰圧状態であり、ダクト以外の僅かな開口部からも粉雪が入ってしまう。それが溶けると、整流子式故露出した導体があるモーター内部でショートするなど深刻な故障の原因となる。
定山渓鉄道や市電など、北海道内でこれまでも電車がないわけではなかったが、国鉄のような長距離・高速運転をするものではなかったため、711系にはそれらとは全く異なる対応が必要とされた。
711系ではモーターは電気機関車や新幹線電車同様の強制通風式で主電動機直付けのファンを廃し、また主電動機を冷却ファンの風下とすることで内部を陽圧とした上で雪切り室も設置している。これにより、隙間があっても風が外へ吹き出す構造に改め、電気回路の露出したモーター筐体内に粉雪が入ることを防いでいる。この送風ファンの回転数・回転速度は列車の速度と無関係なため、非常に車外・車内とも騒音の少ない車両となっている。
900番台
1967年(昭和42年)に製造された試作車。2両編成でこの系列で唯一の制御電動車クモハ711が存在する。仕様が異なる2編成が作られ、比較検討された。ちなみに製造直後、渡道前に東北本線で403系と併結して試運転されたことがある。
S-901編成(クモハ711-901+クハ711-901)
4枚折戸(クロ157と同様の構造)、2段ユニット窓(下段は固定)とかなり特徴的な姿をしていた。
その後、ドアは引戸に改造されたが、2段窓はそのままだった。
1999年に引退後は苗穂工場で静態保存されていたが、のちに解体されてしまった。
S-902編成(クモハ711-902+クハ711-902)
キハ56系と同様の1段2重窓と片開き引戸を採用した、のちの量産車に近い形態をしていた。
後に両編成ともクハ711形100番台を組み込み3両編成として運用され、1999年に引退した。
0番台
1968年(昭和43年)に、函館本線電化用に製造されたグループ。
3両編成とされ、8編成が製造されたが、モハ711は9両製造され、そのモハ711-9は当初試作車に組み込まれて運用された。のちに100番台の先頭車を組成し普通の3両編成と同様に使用された。
乗客が増えると2扉・クロスシート構造と加速度の低さが災いし、ラッシュ時の乗降時間が長引き遅延を発生させる原因となった。一部の編成には対策として3扉に改造されたが、根本的な解決策とはならず(中間車モハ711は台枠強度の関係で未施工)、民営化後投入された721系や731系ほかは当初から3扉となっている。
2001年に3扉化された編成以外に冷房装置が搭載された。ただし、S-110編成とS-114編成は冷房化未施工で残され、その後2012年にデスティネーションキャンペーンのために登場当初の塗装に戻された。
また、2004年からは着雪による離線防止と部品の社内統一を目的にシングルアームパンタへと換装されている。
引退直前には電化された札沼線でも運用されていた。(冷房車増強の為とされていたが、非冷房車も普通に使用された)
2015年3月に引退し形式消滅となった。
保存車としては岩見沢市栗沢町にクラウドファンディングによってファームレストランに先頭車2両が保存された。
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