日本国有鉄道が製造した極寒地向けの急行用気動車。
設計の基本はキハ58系で北海道の過酷な寒さに対応するために客室窓の小形化、二重窓化、床材が木の板張りなど、キハ21で採用された耐寒設備が盛り込まれている。
北海道では車両不足が深刻化していたため本州向けのキハ58系より先行して製造・配備が行われ、そのため形式が2エンジン車が「キハ56」、1エンジン車が「キハ27」、グリーン車が「キロ26」となっている。
キハ58系同様製造途上から前面窓が一部が曲面となった、キハ45系のようないわゆるパノラミックウインドウとなっている。
また、パノラミックウインドウ車両は冷房の搭載を見据えて屋根に熱交換器用の穴を設け、そこにふたをしておく「冷房準備車」となっていて、どちらかといえばキハ58系の中でも盛岡機関区に多数在籍していた1500番台に類似した車体となっていた。
本土向けのキハ58系とは混結が可能で、落成時に慣らし運転を兼ねて千葉地区の海水浴臨に駆り出されたり(終了後北海道に発送)、逆に本土向けのキロ28が夏季に車両不足補充で貸し出されたうえで当系列に組み込まれたこともある。
1970年代の終わりに、北海道では2台エンジン搭載の両運転台車が存在しなかったため、キハ56に廃車の運転台を取り付けて両運転台化した「キハ53形500番台」が登場した(キハ53は本来はキハ45系の2エンジン車なので形式上は関連は無い。本州向けのキハ58にも同様に両運転台化改造されたものがあり、こちらはキハ53形200番台、キハ53形1000番台となっていた)。
現在は全車両廃車となっていて、小樽市総合博物館に初期型が保存されている。
運用
昭和36年から登場した本車は札幌~釧路間の急行「狩勝」を皮切りに、道内各地を結ぶ急行列車に投入された。
中でも特筆される運用は、上記の後期型の車両を使った特急「北斗」の運用である。これは、本来ダイヤ改正時に東北地区のキハ80系を転出させて充当する予定だったのが、キハ181系の製造の遅れで間に合わず、やむを得ず半年ほど代走させたものであった。
その後は急行の特急格上げなどで仕事を追われ、普通列車に運用されたほか、一部はキハ53への両運転台化やお座敷車、アルファコンチネンタルエクスプレスといったジョイフルトレインに改造された。さらに、昭和63年には札幌~函館間の夜行快速「ミッドナイト」に充当するためにキハ27を改造した車両も登場した。
そんな運用縮小の中でも、時には宗谷本線系統の急行宗谷などの増結用としてキハ400系に混じって運用されたこともあった。
しかし老朽化には勝てず、2002年までに全車が廃車となった。
形式群
形式 | 動力 | 備考 |
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キハ56 | DMH17H×2(360PS) | 屋根上に水タンクがある |
キハ27 | DMH17H×1(180PS) | 水タンクが床下にあるため、屋根がスッキリしている |
キロ26 | DMH17H×1(180PS) | 4DQ-11P形エンジン+MD72形発電機搭載(43PS/70KVA)を搭載 |