概要
女嫌いの過激思想の1つ。「インセル(involuntary celibate)」という名称は1993年に開設されたウェブサイトが由来となっている。
簡潔に言えば、非モテの過激派である。不本意の禁欲主義者、非自発的独身者と訳されることもある。
インセルを自称している者の多くが、長年パートナーが見つからず、恋愛やSEXの経験がない事に強烈な劣等感を抱える白人の男性である。インセルの全てが必ずしも白人ではなく、有色人種の血を引く者も多いが、インセルのコミュニティで英雄視されるエリオット・ロジャーは母親がアジア系であることに劣等感を抱いていた事などからも分かる様に、人種差別(白人至上主義)的な思想が非常に強い。
モテない自分を被害者と思い込んでいる常軌を逸した自己憐憫の感情から、リア充の男性(彼らはチャド(chad)と呼ぶ)や、性的魅力のある女性(ステイシー(stacy))を敵視している。モテない女性でさえも攻撃対象であり、同性愛者攻撃に走る者もいる。要は、気に入らない相手は何だろうと攻撃するわけである。
元々、非モテを自嘲する程度だった、よくいる女嫌いでしかなかった者がインセルのコミュニティに感化されて過激化していくケースも多々ある。
カナダ発祥の概念で、近年の北米(アメリカ合衆国とカナダ)では、過激化した彼等によって、車で歩道に突っ込んで一般人を襲撃する等、もはや「災害」にも等しいテロ紛いな無差別殺人事件が多数起こされており、しかも大抵の事件にて、実行したインセルはその場で自殺してしまう顛末となっており、犠牲者やその遺族達にとってやりきれない物となっている。更には加害者本人が自殺した後に加害者の家族や関係者に怒りの矛先を向けられるという二次災害を招く可能性もある。
北米ではインセルによる自殺的・通り魔的なテロ行為は、イスラム過激派によるジハードの曲解に基づく自爆テロを遥かに上回る治安リスクになっており、傷害や強姦などの軽微なものも含めればその数は計り知れない。また、欧州ではインセルがイスラム過激派に接触し、自爆テロの実行犯となるケースもままある。そのため、容疑者を捕まえたところ、イスラム教原理主義を掲げて犯行を行ったにもかかわらず、当の実行犯がイスラム教に関する最低限の知識さえなく、礼拝さえままならないようなことも多い。
日本国内においても小田急線車内でインセルによる勝ち組女性を狙った殺人未遂事件が発生しており、2008年6月に発生した秋葉原通り魔事件などもその動機や犯行形態は諸外国のインセルによるテロと酷似するものがある。
他称・蔑称としてのインセル
インセルを自称するものの多くが異性愛者で交際経験のない男性と思われるが、他称・蔑称として使われる場合は、交際経験の有無を問わず女嫌いの男性を指したり、逆に女性に対して攻撃的ではない(ミソジニーを持たない)単なる非モテ男性に対して差別的な意味を込めて使ったりと、定義に混乱が生じている。
果てはいわゆる「キモオタ」や「子供部屋おじさん」や貧困な独身男性こと弱者男性をインセルと混同するような言説も流布しているが、これは経済的・性的弱者の男性に対する極めて偏った意識に基づいている。
実際にインセルによる大量殺人事件「2014年アイラビスタ銃乱射事件」を引き起こしたエリオット・ロジャーは母親がアジア系でこそあるものの本人は白人の富裕層に属していた事から、それを如実に物語っている。
低所得・非正規雇用の男性や精神障害を抱える男性は、恋愛の出来る余裕など無い為に、婚姻率が低く恋愛交際もままならない事が多いのは事実であるが、当然ながら「モテない=女嫌い」なんて言う結論は幼稚な差別と偏見でしかない。
単に「それぞれの事情から異性との交遊に恵まれていない」だけの彼等をインセルと同一視して犯罪者予備軍であるかの様に扱いするのは、人として言語道断な行いである。
ただし、「キモオタ」「子供部屋おじさん」と結び付けるのは日本特有の観念であり、宮崎勤が引き起こした事件に対するメディアの過剰報道と、「オタクへの過度なステレオタイプ化」が関係していると言える。
また、インセルによる事件が起きている北米では個人主義が強く、両親に頼らずに自立している白人男性が所謂「モテる男」の最低条件とされる事が多い為、女性の見方は厳しいとも言える。
加え、競争社会と経済的不安定も、男性に強いプレッシャーを加えていると言える。
インセルはフェミサイドに分類される事があり、2010年代頃から国連によって提唱されているが、女性ばかりを狙ったシリアルキラーは、東西冷戦の時期を中心に多く存在した。
女性の場合
インセルと同様、異性や社会に対し被害者意識を抱えている女性たちのクラスタとしてフェミニストが対置されることがあるが、フェミニストとインセルの共通点はむしろこれくらいしかない。ツイフェミなど先鋭化した言動が目立つフェミニストの多くがモテない女性かというとそうでもなく、むしろ性風俗関係者や性犯罪被害者など、望むと望まないとに関わらず性経験を持っている過去を強調することが多い。
韓国ではウォマド利用者らによる”男性嫌悪テロ”が多発していることが社会問題化しているが、背景にはイルベ民ら女性嫌悪者へのカウンターとして、”男性にされたことと同じことをやり返す”という「ミラーリング」なる韓国フェミニズム独特の文化があり、日本のフェミニズムにも部分的に影響を与えているものの、一般化できるものではない。
女性版インセルはフェムセルと呼ばれるが、彼女たちは自分の「醜さ」がモテない原因だと自責的に考える傾向があり、その行動パターンはインセルとは全く異なっている。彼女たちはルッキズム克服の点から化粧やファッション、肌のケアなど自身や互いの改善策をコミュニティ内で論じているケースもある。ただし、インセルの中でもこのフェムセル同様に互いの改善策を論じるコミュニティも存在している。
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