概要
漫画:森永ミキ
コンプティーク2018年12月号~2021年3月号にて連載されていた艦これコミカライズ。
明言されてはいないものの、お酒も飲めるリアルイベント『大人のための年末JAZZ 【JAZZとお酒と艦娘】スペシャルコンサート』に合わせた企画であると推測される。
コンセプトは『艦娘たちと素敵なカクテルや洋酒を愉しむ漫画』で、関連企業の監修・協力がなされた本格的なものである。
また『提督』としても知られる森永ミキ氏の艦これ愛がそこかしこから感じられ、特に元絵師と自分の画風を良いバランスで混ぜた艦娘の絵姿はかなりの好評を得ている。
物語の大筋は主にガンビア・ベイの成長を描いたものとなる。
19年7月10日に単行本一巻が発売された。単行本には関連企業が作中に登場した酒や割り物を紹介するページも設けられている。
余談だが、本作に登場した酒をひとつ、アマゾンで検索すると「よく一緒に買われる商品」の欄に本作に登場した別の酒がずらりと並ぶ。本作の影響だろうか?
ストーリー
この鎮守府には、一つの“伝説”がある――。
迷子癖でたびたび司令部内を彷徨う、護衛空母ガンビア・ベイ。
出撃のために中庭を目指して悪戦苦闘するも、栗田艦隊の一同を見つけてはトラウマからとっさに隠れてながら迂回し、集合時間は刻一刻と迫っていた。
ところが羽黒と能代を避けて入ったドアの先で、偶然にも地下倉庫らしき場所のドアが開いているのを見つける。誘われるままドアを開けて進むガンビアだったが、何者かに背中を押されて階段から転げ落ち、失神してしまう……。
作戦の艦隊メンバーである水上機母艦コマンダン・テストと駆逐艦タシュケントがガンビアを見つけ、三人は倉庫の奥に進むと――
そこにはバー・カウンターと、多種多様な酒類が陳列された棚が埃を被ってたたずんでいた。
翌日、出撃に同行した重巡洋艦ポーラから、「限られた艦娘にだけ許された、凄腕のバーテンダーによる秘密のバーが“あった”」という噂を教えられる。
それを聞いてタシュケントは、「ガンビアの引っ込み思案を和らげて鎮守府に早く馴染めるように」という狙いから、自分とガンビアとコマンダン・テストの3隻でバーの再建を目指し始める。
ところがタシュケント以外の2隻は酒の知識に疎く、基礎であるジントニックさえままならない有様で……。
3隻はバーの再建を成功させられるのか、かつてこのバーを盛り立てていた“伝説のバーテンダーたち”とは誰のことか、そして何故バーは閉鎖されてしまったのか……?
謎とお酒とおつまみが彩る、ハートフル・リカーコメディー。
今宵もキュートに開店です!
メインキャラクター
サルーテ3人娘
本作の主力艦達、すなわち主役。復活予定の鎮守府バーのバーテンダーになるべく勉強中。
彼女達3人のバーテンダー服はそれぞれの艤装服をベースとし、加えて象徴的なワンポイントの意匠を施したものになっている。
なお、「サルーテ3人娘」の名称は作中では使われていないが、リアルイベント等でこの3人の話題になった際に使われている。(その影響か、主役陣は年末JAZZに出演した3人の配役と同一人物である。)
彼女の成長物語なのだから当たり前だが、本作の旗艦である。
ストーリーにある通り、閉鎖された『伝説のバー』を半ば偶然・半ば必然に発見した(安全の為クッションは敷かれていた)。
重度の迷子癖を持っているのだが、その原因は方向音痴や地図を読めない以外に、栗田艦隊のトラウマによりその所属艦に遭遇すると常に逃走や迂回行動を取ってしまうところにもある(栗田艦隊ではあるが、ガンビアと面識のない摩耶を怖がるあたり相当である)。
また、人見知りで他人に流されるところもあり、本人は克服したいと思っているのだが現状はお察し。プレッシャーにも弱くあり得ない失敗をやらかすこともある。
イメージに反し、手先の器用さは並以上のようで、包丁も握る。
バーテンダー服はスカートではなくショートパンツで、ネクタイとベストの一部が海上迷彩柄になっている。
『伝説のバー』が発見された当日は彼女が旗艦の出撃で、ガンビア・ベイの所為で活躍のチャンスを延ばされてしまったのだが、その事よりも彼女が行方不明になった事を心配できる性根の良い娘。
炊事や掃除の際はカワイイエプロンを身に付ける等、何事も形から入るタイプ。その所為で中身が疎かになるきらいがある。
バーのプレオープンの際、そのしっかりしてそうな雰囲気に騙されて一騒動あった。
3人の中では一番器用で、包丁を握るのは大抵彼女である。
発作的に制作欲(衣服や料理)に駆られることがあり、その際誰かしら巻き込まれる。主力艦達のバーテンダー服もその産物である。菓子作りの練度は極めて高く、間宮に「ウチに欲しい」と言わしめる程。
バーテンダー服はミドルスカート、靴のつま先には赤いポンポンが飾られ、トリコロールの大きなリボンを蝶結びにしてネクタイにしている。
コマンダン・テストの旗艦出撃の日に随伴艦となる筈だった為、ガンビア・ベイやコマンダン・テストと共に『伝説のバー』を発見する運びとなった。
ストーリーにもある通り、バーの運営を提案したのは彼女である。嚮導艦としての性分なのか見過ごせ無かったようだ。
主力艦達のブレーキ役…と思いきやアクセルを踏まなくてはならない時もある苦労人枠。
作中の発言や行動から察するに比較的不器用で自覚もあると思われる(包丁を握らない等)。その一方、カクテルは三人の中で一番上手だという。相当の努力をしたようだ。
中の人の影響なのか、とても酒が強い。
水着回にて、私服のセンスが面白いことが発覚した。
バーテンダー服はタイトミニスカートを覆うようにベストから燕尾の様に更にスカートを伸ばした変わったデザインで、読者からは3人の中で一番セクシーとの評判。そしてストッキング装備。外側のスカートは裾にウシャンカと同じ三つ星が設えられ、裏地は空色とタシュケントをイメージしたものになっている。ネクタイは蝶ネクタイ。
準主力艦
3人娘をひなたや陰から手助けしたり、重要な役回りを担ったりする艦娘たち。
栗田艦隊所属艦にして、本作鎮守府の秘書艦。
…つまりガンビア・ベイが何かしらの事務手続きをする場合、羽黒と対面しなくてはならないということである。この点に於いても、ガンビア・ベイのトラウマ克服は必要事項であった(しかも酒や割り物、トッピング用の青果の仕入れも提督or秘書艦を通す必要がある)。
また、羽黒もかつて自身の人見知りに悩んでいたので、彼女の件は他人事では無く、何かと親身に接している。3人の影響で時々ワインを飲むようになった。
艦これ、且つ酒とくれば彼女の出番だろう。
本作では、かつて鎮守府にバーがあったという噂をサルーテ3人娘に伝える役を担う。
またプレオープンの際には、3人に「足りないもの」を自覚させる事にも一役買った。
その後は、隙あらばワインを飲みつつ、バーの正式オープンを楽しみに待つ日々を過ごす。
コマンダン・テストの発作的な制作欲の主な被害者。
夜鍋する際には大抵付き合わされる為、結構出番が多い。
かつて伝説のバーにてバーテンダーをしていた艦娘。
前述の「半ば必然」を作り出したと思しき人物でもある。
伝説のバーを最初に始めたのは彼女で、バーの復活を望んでいるが、何故か自分達の手では無くガンビア・ベイ達にそれを託して見守る。実はガンビア・ベイとは意外な接点があった(リンク先ネタバレあり)。
タシュケントと中の人が同じなのだが意図的なものなのかは不明。
かつて伝説のバーにてバーテンダーをしていた艦娘。
バーには強い思い入れがあるようで、余所者であるガンビア達に復活を託すことには消極的。但し絶対に反対というわけでも無く、事ある毎に助言の書置きをして複雑な気持ちで成長を見守っている。
過去に何かあったらしいが…(リンク先若干のネタバレ有)。
コマンダン・テストと中の人が同じなのだg(ry
かつて伝説のバーにてバーテンダーをしていた艦娘。
バーに関しては最初口を閉ざしていた。しかしガンビア・ベイ達を訪ねた際に出されたカクテルを見て千歳たちの助力を察した後は、自分が伝説のバーの関係者である事を白状し、助力を決意した。バーテンダー姿はパンツルックと丈の短いスーツ風で中性的な趣。
口を滑らせる癖があり、上述の助力でも墓穴を掘った経緯がある。
ガンビア・ベイと中の人(ry
第1話、バー再開の手続きを進めていた羽黒から話を聞いた時に驚き半分、感心半分な顔をしていた為、元バーテンダーの一人ではと目されていた。
その後、マンハッタンの試練(後述)の事で、一人で背負い込もうとするタシュケントに助言した差9、元バーテンダーである事をあっさりと明かした。曰く、話す気は無かったが隠す気も無かったとの事。その後も「助力はするが謎は自力で解け。その方が楽しい」のスタンスを通す。
バーテンダー服は標準的なものをノーネクタイ&襟ボタンを外してラフに着こなす。
- 提督
"姿は見せない"が、ちゃんと居る。
キーワード
- カクテル
言わずと知れた、ベースの酒に別の酒や割り物を混ぜて作るアルコール飲料。
目指す目的(味)や要素(酒等)同士の相性を考えて運用するという点で、艦隊運営に通じるものが有る(もっとも、これは料理等、万事に言える事ではある)。
作中でもカクテルと共にトラブルに対する助言がよくなされる。
全てのカクテルに言える事だが、水っぽくならない様に作ろうとすると途端に難度が上がる。
加えて、ステア(撹拌)で音を立てるのは問題外とされる。(氷がぶつかり合うと溶けるのが早まり水っぽさの元となる)実際、プロのステアはほぼ無音である。
ガンビア・ベイ達もこの『水っぽくならない・音を立てない』に苦労する事になる。
- 伝説のバー
鎮守府の地下にあったバーの通称。
会員制なのか、一見さんお断りなのか不明だがバーテンダーも客も、ごく限られた艦娘しか出入りしなかったらしく、秘書艦の羽黒どころかあのポーラすら全容を知らなかった。ただ、海外艦を中心に運営されていた事は知られていたようだ。
閉鎖された時期や経緯・理由も不明、バーテンダーも客も口を閉ざした為、いつしかバーは正式な店名すらあやふやとなり、鎮守府七不思議めいた『伝説』となってしまった。
ただ、元バーテンダーの台詞と回想からは、バーテンダー艦娘同士の諍いが原因だったことが窺える。
また、ザラやプリンツの言動から察するに、サルーテ3人娘がバーを再開しようとしている事も余り周知されていないようだ。
- 栗田艦隊
ガンビア・ベイの前世の死因にして今世のトラウマ。本作では嫌っているわけでは無いが極端に苦手…といか寧ろ恐れている。
彼女が所属艦達に面と向かって話すのは至難の業と化している。
…の割に、3巻では前世で直接砲撃を食らわされた戦艦が主催するお茶会には出席できていた。恐怖のあまり記憶がすっ飛んでいたのか、連合国側の駆逐艦がアブゾーバーになってくれていたおかげか…?
- お面と人形
ガンビアのトラウマ克服に必須のアイテム。
使用例:栗田艦隊所属艦のお面を被ってガンビアと話す、羽黒にサラトガのお面を付ける、人形をワンクッションにして会話する等…
人形はガンビアに似せた造形で、人形1号(仮)は案山子型で大きい上に顔が凄く怖くて不評であった。その後はマペット型の人形2号(仮)を使用している。
尚、マペットを使う演出は同人誌でも用いられていた。
ガンビア・ベイ達にとって最初のカクテル。厳密に言うと『サルーテ・レシピ』が付く。
ライムは飾らずに果汁を搾り入れ、星形にカットした胡瓜を入れるのがポイント。胡瓜の青みの強い香りで清涼感が増す。ジンはボンベイ・サファイアを使うのがサルーテ流。
尚、アークロイヤルにとっても初めてのカクテルだったりする(ライムを飾るスタンダードレシピ)。
製法が単純故にバーテンダーの技術が如実に表れ、美味しく作るのは極めて難しいとされる(スタンダードレシピを意識すればそれなりの物はできる、作り手の好みや考え方が出やすいと言ったほうが正確かもしれないが)。
グラスを冷やす工程を省略した場合、スプーンで混ぜるだけで作れるため食卓で振る舞うシーンも見られた。
尚、ズイパラの食事メニューでも提供された。
- 星
日本語で「ほし」、英語で「Star(スター)」、フランス語で「Étoile(エトワール)」、ロシア語で「Звезда(ズヴェズダー)」、イタリア語で「stella(ステッラ)」、ドイツ語で「Stern(シュテルン)」と呼ばれ、ヒトデと同じ形(☆)で表現されるモノ。
本作で作られるカクテルのトッピングにしばしば用いられる。
先輩バーテンダー達の絆が切れてはいない事の証左であり、ガンビア・ベイ達3人の絆の象徴にもなった。
試練のカクテル。そして恐らく伝説のバーの起源のカクテルでもある。
伝説のバーでの定番レシピでは、カナディアンウイスキー『クラウンローヤル』をベースにしている。
伝説のバーの真実を知る為の条件として、アークロイヤルが課題として出した。
- 水上機母艦の会
その名の通り水上機母艦で組織された同好会…なのだが一隻水母ではない艦娘がいるので、水上機運用艦による同好会と言うべきかもしれない。
『カクテルの練習の副産物』を消化する為にコマンダン・テストのツテで招集された(瑞穂、秋津洲は遠征で不参加)。
図らずも「複数の誰かにカクテルを振る舞う」事になったのだが、同時に相手の好みも考えて作る事の重要さに気付く機会になった。
メンバーはコマンダン・テスト、瑞穂、秋津洲、日進、神威、ゴトランド。
ゲーム内では漫画より一足先に、ゴトランドの時報で言及されている。「航空巡洋艦も入っていいみたい」とのことで、他のセリフから類推するに最上も誘われているらしい。日進の時報によれば呼びかけ人は瑞穂である。
森永ミキ氏のお気に入りで、同人誌での主力艦。
コミック1巻の紀伊国屋書店の特典に出演している他、本編でもモブとして2回の出演を経て、ついに台詞を貰えた。
- ドイツ勢
艦これにおいては最古参の海外勢でありながら、連載開始からしばらく出番が無かった艦達。
この事にもちゃんとした事情があった。
- カレーとモヒート
23話に登場するメニューで、舞鶴市では定番の提督メシというメタネタである。
イベント等でリアル遠征をしない提督はピンとこないかもしれない。
関連イラスト
関連タグ
カクテル:代表的なカクテルや製法についてはこちらを参照
BAR早霜:二次創作および公式4コマにて一足早く存在していた鎮守府内にあるバー。文字通り早霜が店を切り盛りしている。
また、ReY氏が運営するサークル名も同名のBAR早霜であり、こちらでは艦娘のイメージカクテルとそのレシピを動画で一部公開・同人誌で全公開している。
海色のアルトサックス:本作とは別の世界線のはずだが、こちらでもサルーテ3人娘が鎮守府バーを開こうとしているらしく、第8話で嵐達が偶然地下倉庫を見つけてバーの準備中の3人娘と出会う一幕がある。
ボクカワウソ / キリン改二:本作の主役3人の声帯の妖精さんが「サルーテ3人娘」として集合した際に偶然から作られてしまったマスコットキャラ。ボクカワウソは内田氏の、キリン改二は宮川氏の作。