概要
著:桃井涼太。
2013年5月3日からファミ通コミッククリアやコミックウォーカーにてWEB連載を行っている4コマ漫画。商業単行本化(レーベルはファミ通クリアコミックス)もしている。
本作は艦これ正式サービス開始時期より連載が始まった最初のメディアミックス作品であり、艦これのメインキャラクター達である艦娘達の日常に主眼を置いた構成となっている。
また本作での「鎮守府」は「艦隊育成学校」の形式を取っており、新造艦の駆逐艦達(おそらく登場する駆逐艦全員)が進水するまでの1年間座学と実践学習の授業を受ける施設とするという日常学園モノコメディ的なスタンスをとっている。
なお、第43話での初実戦を経て第53話で進水式カッコカリを行い、現在は艦隊所属の駆逐艦扱いとしてよりゲーム版に近い状態になっている。
また本作はそのネタ出しにおいて、ブラウザ版同様の艦娘史実ネタ、ブラウザゲームネタ、文化ネタなど幅広いネタを使用しており、艦これにとどまらず地域の多様性や文化性を知ることができるのも1つの特徴だといえるだろう。オマージュやパロディ、中の人ネタ、時事ネタ、果てはツイッターネタに至るまでその射程距離は大変に広く、単行本収録の際にはネタ解説が付記されている。
同人集であるアンソロジーコミックを除いたメディアミックス作品唯一の四コマ漫画であるため、通称として「公式四コマ」と呼ばれるケースが多い。
ただし、その他の各種コミカライズと同様に作品独自の設定も存在しているため、一部の描写には独自解釈によるアレンジが施されている部分がある事を留意しておきたい(「撃沈された艦娘は深海棲艦になる」、「ギミックによる弱体化は、味方がやられて傷心になることが原因」などが例として挙げられる)。当然だが、この4コマは原作と違う設定もあり、「公式認定とはいえ書き手の独自解釈が含まれる二次創作」と捉えている提督もいる。その為、むやみやたらに「この本に書かれているから公式設定だ!」と言うのは論争の原因になるので自重しよう。
ちなみに、実は作者の桃井涼太は運営から特に情報を貰っていない事が窺える発言をしている。→参考リンク
何度か更新間隔が変更されており、当初は月2回の更新だったが毎週更新に変更され、第200話以降は月1回3話更新となるが、作者の桃井涼太が2019年8月より十ヶ月と十日の超大型建造に初挑戦中のため、その影響で2019年9月より掲載話数が月2話→月1話と徐々に少なくなっていき、2020年1月より一時休載。同1月26日、2020年1月19日に無事建造完了した事を報告した。
その後も休載状態が続いていたが、同年4月に艦これ7周年を記念した特別編を1ページのみだが公開。同年6月から月1話ペースで連載が再開されたが、2021年4月の第230話をもって最終回となった。
ストーリー
駆逐艦や軽巡洋艦、重巡洋艦などを擬人化した「艦娘 (かんむす)」たちが、無敵の連合艦隊を目指して頑張ってます。
彼女たちのほのぼのどたばたスクールライフ、おったのしみに~!
メインキャラクター
吹雪型(特I型)駆逐艦
伊勢型戦艦
この2人は、連載初期には秘書艦としての業務も兼任していたが、大淀が着任してからは彼女に譲ることとなった。
一航戦
その他、多数の艦娘たちが登場。
提督
この世界の「提督」は、本名や種族は不詳だが、少なくとも人の容姿をした男性である(初登場となったバレンタイン話において、この鎮守府で男性は司令官だけ、という発言がある)。
顔および全身像は連載開始から4年経過した2017年6月でも不明(第141話で明かされた包帯グルグル巻きな姿から、細身の成人男性であることはわかっている)。かと言って、アニメ提督のように不自然なほどに容姿が伏せられているわけではなく、コマ外に姿が見切れていることがほとんどではあるが、一応片腕や司令机に座っている胸部など身体の一部分は必ず描かれている(最も広い範囲を描かれたのは、第53話の扉絵の首より下右半身であり、さらに「♪」と吹き出しまでついていた)。このような描写のされ方は、シンデレラガールズ劇場の「プロデューサー」に近いといえる。
艦娘たちとの干渉の仕方は詳しくは描写されていないが、基本はどの艦娘とも交流を持っており、時には財布が大破・轟沈するほどに艦娘たちに尽くす保護者のような存在として描かれている(尤も、大抵は「『花見』や『パーティ』などの鎮守府内でのレクレーションの予算は経費ではなく提督の財布から出てることを艦娘たちが忘れて豪遊している」だけではあるが)。ただし、セクハラ癖はある。駆逐艦娘の水着としてスクール水着を支給させてドン引きされた事も。その他、オリョクルもやる上に、潜水艦娘や、2013年春イベでは五十鈴と千歳が赤疲労に陥るまで無理に出撃させ続けていたこともある。
駆逐艦たちが進水式カッコカリを行う際には参加をする予定であったが、非公式のイベントであったために上層部から大作戦前の会議への緊急招集をされてしまい、登場はかなわなかった。
なお、初期の段階では駆逐艦娘とは全く面識がないという設定であり、上記の進水式カッコカリのように出会えるタイミングでも横槍が入って結局登場しないというパターンが多かった。
当の駆逐艦娘たちもそのような面識はおろか、直接の交流が全くない状態でもバレンタインデーには全員で1種類ずつのチロルチョコを贈るなど、提督のことを心から慕っているようである。
特に説明されていないが、吹雪達が正式配属になった事から普通に会えるようになったようで4巻おまけコーナーで吹雪が大淀と提督が打ち合わせしているのを目撃したことを皮切りに、曙に大掃除の際に怒鳴られる、凹んでいる姿を吹雪に心配されるなど駆逐艦娘と交流している姿が描かれている。
ちなみに、駆逐艦娘たちの寮には出禁になっているような描写がある。第141話では、艦娘にちょっかいを出して全身包帯グルグル巻きになってなお頭から血が噴出するレベルまで報復された経験があることが語られた(尤も、ちょっかいを出したのが駆逐艦娘に対してなのかは不明だが)。
劇中の主な設定
- 艦娘については、鎮守府が「新造の艦娘」を養育する施設である事、後述の通り一部の艦娘はボーキサイトを食べる事が出来る事、古鷹が目から照明灯を照射する場面がある事、大鳳が大型建造によって登場した事から、少なくとも普通の人間ではない(人造人間?)の可能性が高い。
- 初期には「川内が重度のロリコン」であったり、電と衝突し大破した深雪がそのまま近代化改修に用いられて新しい深雪に記憶だけ移植されたことを示唆する描写があったりとかなりぶっ飛んだ描写があったが、中期からは見られなくなった。
- 駆逐艦娘達は本来正規の戦闘員ではなく、また上記の通り提督(司令官)との面識が長らく無かった(ただし4巻おまけで吹雪達は提督を目撃している)が、第111話にて提督と対面した吹雪が「(何時もと比べて)しょんぼりしている」と発言している。基本的に提督に接する「秘書艦」勤務は軽巡以上の軍艦が行っている。そのため、基本的に軽巡以上の艦娘達は駆逐艦娘から「先輩」付けで呼ばれている(朝霜が初登場時に史実で共闘した伊勢達を呼び捨てにして「ここでは先輩」と注意されている)。軽巡以降も上位の艦に対しては「先輩」呼びしているが、明確な上下関係については説明されていない。なお、特務艦や練習艦、陸軍艦、海外艦はさん付けで呼ばれている(ただしU-511は吹雪達から「ユー先輩」と呼ばれている)。また、単行本12巻の解説ページによると、実は進水式カッコカリを経た事で他の艦種と対等の立ち位置になっているようなのだが、吹雪らが進んで先輩後輩の関係を続けているとのこと。なお、先輩の基準が「軍艦であること」だったため、第182話で吹雪が海防艦(=元軍艦)の占守に対して「後輩ができたみたいな…いや、先輩?」と困惑する場面があり、最終的に海防艦側が後輩という関係に落ち着いている。
- 吹雪をメイン視点にしたスクールコメディ型群像劇スタイルを採っている為、一部のキャラ(というよりは事実上金剛を除いたキャラ、なお伊勢の台詞で「提督LOVE勢」ともあるので、複数名は存在するようではある)の提督に対する強い恋愛要素などは抑えられている。
- 深海棲艦との戦闘も実際に行われているが、北方棲姫などと交流を行ったりする場面もあるなど、全体的にシリアス分は少なくほのぼのとした雰囲気が強い。
- 一方で、行方不明の野分を探す舞風や艦としての仲間を失った記憶を取り戻してヴェールヌイ化してしまう|響、艦としての自分が座礁しているショートランド沖へ赴く菊月など重い場面も描かれており、吹雪がクリスマスに「みんなが平和で楽しく暮らせる世界」を願う場面がある事から、平和な世界というわけではない事も示唆されている。
- 改状態で容姿や艤装の変更が有る艦は一部の艦のみ反映されており、さらに話によってはブラウザ版では本来起こりえない改造状態から未改造状態に戻ったりしている場合も見られる(主に航空戦艦・航空巡洋艦・重雷装巡洋艦の艦娘やあきつ丸など)。これについては、第147話にて、「大鯨は有事のみ軽空母(龍鳳)の衣装・艤装に着替えて出撃する」という設定が描かれていたため、単に「その時着けている艤装によって艦種が変わる」ともとれる(遠征で練度を稼いで改になって出撃しては元に戻るあきつ丸の例は除く)。
- また、特に容姿や艤装に加え性格等も大きく変わるケースが有る「改二」状態については練度不足などの理由で原則として登場せず、ほとんどの場合予想図資料や艤装・服装の試着などの形式で一時的な扱いとして登場しており、木曾改二にいたっては、彼女の妄想だという設定で済まされている(例外としては艦の記憶が戻ることで実際にヴェールヌイとなった響の例がある)。なお、第110話にて川内と北上がイベントの最終海域に出撃するにあたって「目立てるように」という相方の勧めで改二の制服を着ており、吹雪も「私も改二の制服にすればよかった」と発言しているため、改二の衣装は個人で所有している模様。第164、165話では「改二艤装の使用許可が下りた」として多くの艦娘が改二の姿になって出撃したことから、「有事に許可が下りた際に改二として出撃できるようになる」という事になった模様(上記の大鯨の艤装変更もこの類のものと思われる)。また、響はあきつ丸との特訓により、自らの意思でヴェールヌイに変化する事が出来るようになっている。
- 「深海棲艦の正体=轟沈した艦娘の成れの果て」という設定が初期の方で示唆されており、対潜性能の高さと改造レベルの低さから酷使された五十鈴が「提督への怨念から深海棲艦のオーラを出してしまう」という描写が描かれたこともある。また、褌作戦において駆逐棲姫が登場した際には「春雨に瓜二つな容姿である」ことから、「沈んだ艦の怨念=深海棲艦」と艦娘たちは予想して語った。
- 鎮守府内の寮で艦娘達は暮らしており、駆逐艦寮や軽巡寮など艦の種類によって場所が分けられており、それぞれの部屋は二人部屋となっている。なお、一部の艦娘に関しては要望などを受けて入寮する場所が振り分けられている(例として、潜水母艦・大鯨は潜水艦娘たちの強い要望により潜水艦寮にて暮らしている。揚陸艦・あきつ丸は改装を受ければ艦載機を扱えるとの理由から特務艦寮が新設されるまでは空母寮に暮らしていた)。海外艦も同様に艦種ごとに分けられていたが、その後海外艦寮が新設されたためにそちらに移っている。
- 補給は食事形式で表現されることが多い、ボーキサイトは食べるもの。ただし航空機運用能力がない(=ボーキサイトを消費しない)艦娘(吹雪や改になる前のあきつ丸など)は食べることが出来ない模様。一方、第173話では「新型戦闘糧食(チャーハンおにぎり)」に隠し味としてボーキサイトを加えているにもかかわらず、吹雪や長波は普通に食べている。
- 装備妖精は艤装の中にいたり艦載機の上に乗っていたりするなどの形で登場し、艦娘達ともセリフ付きでコミュニケーションを行っている。なお装備を解体すると、妖精たちも解体・・・ということはなく、配置転換扱いで別の装備の妖精になることが描かれている。
- 第91話で一部の艦娘が休日に東京(おそらく浅草)で行われているほおずき市へ出かけており、アルバイトをしていた艦娘がいた事から、鎮守府は東京に気軽に出られる位置にある事になるため、ゲームに当てはめると横須賀鎮守府である可能性が高い。
- 改二実装を題材とする回が描かれることがあるが、駆逐隊のうちの一隻にしか実装されていない場合にはネタ出しが遅れる場合がある。例としては、上記の潮以外にも、暁の改二回は第六駆逐隊の他の艦娘の改二実装がされるまでと作者が保留にした結果、実装日から1年遅れて描写されることとなった(しかも、保留にした甲斐もなく、第六・七駆逐隊のその他のメンバーへの改二実装は本作終了間際の2021年3月までなかった)。
評価
一番初めのメディアミックス作品と言う事と、ゲーム本編では触れられない日常生活を題材にしている事から、艦娘達の人格やプライベートを知る為の触媒としても人気が高く、ユーザー間では本書の設定が公式設定だと受け止められている部分も多い。
2015年の艦これアニメ一期放映後からは、本作のアニメ化を熱望する声も上がるようになっている。
近年は、シリアスありな本編とは別にデフォルメされたゆるふわなキャラデザの娘たちが日常を過ごす作品も作られてはお茶の間に癒しをもたらす流れがあるが、果たして本作もその波に乗れるのかは期待が高まる。
余談
- 実はアルペジオコラボイベント(迎撃!霧の艦隊)が行われた際、著作権の都合かイベントそのものが存在すらしなかったことにされており伊401は3月3日のひな人形の助っ人として呼ばれたことになっている。
- 吹雪の改二回があったのは第70話、つまり吹雪の改装レベルと同じ数字で行われた。
- 季節の話や、改二のフィッティング話、1ページのみの掲載などがある為、イベント時に実装されるはずの艦娘の鎮守府への着任時期がずれてしまっている(瑞穂は2015年夏イベ実装のはずなのに、半年後の正月明けの着任であった)
- イタリアからの親善艦という扱いであったザラや救出対象であったアイオワ、五周年任務の報酬であったサミュエル・B・ロバーツ、実装イベント中に友軍に参加していたゴトランドはゲスト的な扱いでイベント回で先行登場しており、一旦本国に戻ってから改めて着任したという扱いになっている。
- グラーフ・ツェッペリンやサラトガ、松風、伊13&伊14はイベント回での登場こそしなかったが、「グラーフやサラトガの艦載機が道に迷って鎮守府に保護される」「他の艦娘が話題に出す」という形で登場の伏線は張られている。
- ガンビア・ベイに至ってはサムと共に艦隊5周年を祝いに来るはずが一人だけ道に迷ってしまい、サムが探しに帰ったが、翌月のエピソードではさらに道に迷って結局母国まで帰ったことが判明し、「ガンビる」という単語を生み出した。
- なお、イベントにおけるドロップ艦については「2度目のドロップの機会があるまではできるだけ4コマでは着任させないようにする」という考えがある事を作者の桃井氏が明かしている。→参考リンク
- 2020年初頭からの休載の影響で新規艦が大行列になってしまった事についてはなるべく早めに着任させたいとのことだったが、結局本編では着任が間に合わずに終了。その後、最終17巻にて20秋冬イベまでに実装された28人の艦娘が一気に着任する特別編が描かれた。
外部リンク
コミッククリアでの作品ページ(2016年5月13日より追加)