概要
正式タイトルは『艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!』。
発行元はエンターブレインのファミ通文庫。2013年11月~2015年12月に全7巻を発行。
通称には「陽炎抜錨」「かげばつ」などが用いられる。
陽炎を中心とした架空の駆逐隊「第十四駆逐隊」の笑いあり涙あり成長譚。
第1巻の後書きによると、当初は吹雪と第六駆逐隊をメインに据えようと構想されていた。
しかし同種の企画があったため、代わりに紹介されたのが陽炎型と睦月型だったという。
これが影響したのかどうなのか、本作の主要人物となる駆逐艦娘には島風や雪風といった人気や性能で特化した艦娘がほとんど登場しないのも特徴。
独自設定の多さと、良くも悪くも強烈なインパクトを残すキャラクター(艦娘)たちの造形から、好き嫌いが割とスッパリと分かれる作品で、艦これノベライズの中では、ファンとアンチの双方が抜きん出て多い。
あらすじ
横須賀鎮守府着任編(1巻)
呉鎮守府から横須賀鎮守府に異動となった陽炎は、着任早々第十四駆逐隊の嚮導艦(きょうどうかん/フロチラ・リーダー。艦隊の指揮や指導を行う艦のこと)に任じられる。
しかも第十四駆逐隊は横須賀鎮守府の問題児を寄せ集めた落ちこぼれ艦隊であった。
陽炎は特別演習で好成績を残すため、試行錯誤を重ね艦隊を纏めていく。しかし問題児の曙とはどうしても馴れ合えないまま、特別演習当日を迎えてしまう。
南方海域進出編(2巻)
横須賀鎮守府では、大規模な作戦を開始しようとする動きがあった。そのために周囲の鎮守府から艦娘を集め始める。
派遣された艦娘の中には、呉鎮守府における陽炎の心強い同僚、不知火も含まれていた。
旧友との再会に浮かれる陽炎。しかし僚艦たちの胸中は複雑だった。しかも不知火は陽炎に呉鎮守府への復帰を勧めてくる。
曙が不知火に勝負を申し入れるが、決着がつかず仕舞いとなった。微妙な雰囲気の中、南方海域進出作戦が始まる。
リンガ泊地派遣編(3巻)
南方海域での功績から、第十四駆逐隊は大きく知名度を増した。そんな彼女らは、リンガ泊地への一時転属を命じられる。
向かったリンガ泊地は鎮守府に比べると圧倒的に小規模だった。配属された艦娘は叢雲とあきつ丸の二人だけだという。しかも指令書に書かれていたのは泊地での「休暇」であった。
陽炎たちは降って湧いたバカンスを満喫するが、いつまでもこれではまずいと自主訓練を始める。
そこで彼女らはリンガ泊地を狙う深海棲艦の強襲揚陸部隊を目撃してしまった。
呉鎮守府祭編(4巻)
陽炎が呉鎮守府に所属していた頃の前日譚。
呉で数年ぶりの鎮守府祭が開催されることに。陽炎は突如、駆逐艦娘の代表に選抜される。
先輩格の艦娘がいる中での抜擢に戸惑う陽炎。しかし彼女は持ち前の思考で精力的に準備を進めていく。その働きぶりは不知火たちを心配させるほどのものであった。
一方佐世保の皐月と長月、横須賀の曙と潮も各鎮守府の招待者として呉に向かうことになる。
キス島撤退作戦編(5巻)
リンガ提督の退役式直後、第十四駆逐隊へ新たな指令が下る。新たな派遣先は幌筵泊地。任務は北方海域の制圧支援である。
泊地ではキス島に取り残された観測員を撤収させるための作戦が進行中だった。様々な編成が試されていたが、いずれも羅針盤に阻まれてしまう。
陽炎も阿武隈、木曾と共に出撃するが、そんな中でまるゆが行方不明になってしまった。
そこでかねてから可能性が検討されていた「駆逐艦娘のみの艦隊による出撃」が決行に移されることになる。
佐世保秘書艦編(6巻)
第十四駆逐隊に96時間の休暇が下りた直後、陽炎の秘書艦着任と第十四駆逐隊の佐世保鎮守府一時転籍命令が下る。陽炎は佐世保鎮守府で慣れない秘書艦の仕事に追われるが、那智の補佐と駆逐艦娘としての経験を頼りに仕事をこなしていく。そんな折に空母棲姫を中心とした深海棲艦の群体が南西海域に発見され、佐世保鎮守府を中心とした大規模攻勢作戦が開始されることになった。
秘書艦となった陽炎の、新たな戦いが始まる。
呉駆逐隊新人教育編(7巻)
佐世保から横須賀に戻ることになった第十四駆逐隊は、道中呉鎮守府に立ち寄った。そこで陽炎は夕雲型駆逐艦娘七人の指導係として横須賀へ一緒に向かうように命じられる。彼女は夕雲たちの練度を鑑みて、第十四駆逐隊全員で新人教育に携わることにした。
陽炎は横須賀秘書艦を兼任しながら夕雲型の指導を進める。そんな折、潮が改二改造を終えて第十四駆逐隊を離れることになった。曙たちは困惑するが、さらに陽炎が仲間たちへ伝えたのは誰もが話題にすることを避けていた「あの命令」だった。
登場人物
レギュラーメンバー(ほぼ全巻に登場)
「深海棲艦をここで食い止める! 曙がやったことと同じよ。今度はあたしたちの番だ」
所属:呉鎮守府→横須賀鎮守府
本編の主人公。
異動となった横須賀鎮守府で、第十四駆逐隊の嚮導艦を半ば無理やり押し付けられた。
性格は楽天的にして、青天井の負けず嫌い。どんな環境に置かれても自らの出来得る最善を考え、積極的に行動に移す。
そのせいか自分自身の状況を顧みない面があり、痛い目を見ることも多い。
神通の下で文字通り吐くほどの訓練を繰り返したお陰で、艦隊運動は水準以上。着任したての頃は壊滅的な射撃の腕前だったが、それも努力で克服した。
禁止嗜好品の持ち込みやギンバイは、呉鎮守府で一番得意だったという。
彼女の艦娘となるまでの出生については、かなり荒んだものであったことを暗示するモノローグが多い。
「これは駆逐艦(おんな)と駆逐艦(おんな)の勝負です。手出しは無用」
所属:呉鎮守府
呉鎮守府における陽炎の同僚。
陽炎が艦娘になった当初からの付き合いであり、最も信頼できる相棒としている。
本人は認めていないが神通をして「私から教えることは何もありません」と言わしめたほどの素質がある。
一時期は呉鎮守府の秘書艦を務めたこともあった。
性格は一見冷静沈着だが、一旦キレさせると抑えがきかない。怒らせた相手が泣こうが喚こうが海に叩き込んだという。
横須賀から離れた呉鎮守府の所属にもかかわらず全7巻に出番があり、都度陽炎大好き発言・行動を繰り返す恐るべきカゲロウスキーである。挙句曙にはストーカー呼ばわりされる始末だが、悪びれない。
特装版では3巻、4巻にわたり、背表紙に第十四駆逐隊と並んでアイコンが掲載されるという特別待遇だった。
「これだから駆逐艦は、好きじゃないのよ……」
所属:横須賀鎮守府
第十四駆逐隊の一人。横須賀の超問題児、だった。
とある事件を機に性格が捻くれ、駆逐艦という艦種そのものを憎悪するようになった。
陽炎の横須賀着任前後は、あらゆる相手に牙を剥く手のつけられない存在に。
10日に1度は執務室に砲弾を撃ち込む蛮行を働く。よりによって陽炎着任の当日にもそれをやらかした。
一方捻くれている期間ですら遠征中ですらも自己鍛錬を続けており、駆逐隊の中での練度は随一。艦隊運動では初めての訓練で陽炎に合わせられるほど。
しかし不測の事態に遭遇するとパニックになり、思考停止に陥る傾向がある。多くの場合は潮がフォローに入り、事なきを得ている。
1巻での事件後も刺々しさは残るものの、かなり丸くなった。元々の素質もあり、第十四駆逐隊のサブリーダー的な役割を担い、成長していく。
陽炎との絡みも多く、影の主人公、あるいは本作のヒロインと呼ばれることも。この影響でかげぼのカップリングまで生まれてしまった。三次創作的な位置づけとなるので取り扱いには注意。
「いいんです、私だって駆逐艦です! ちゃんと戦ってみせます!」
所属:横須賀鎮守府
第十四駆逐隊の一人。
曙の最大の理解者。彼女とは第七駆逐隊で共に訓練を続けた仲。曙が大きなトラウマを抱えることになった事件の当事者の一人でもある。彼女の支えになろうという思いは人一倍強い。
普段は気弱だが、曙が危機的状況に陥った際は率先して行動立案し、第十四駆逐隊をサポートする。
海上護衛に対する考えの齟齬から陽炎と衝突した曙を平手打ちにして、大乱闘の口火を切ったのもまた彼女である。
「ボクは鍛えてるんだ。こういう時のために、鍛えたんだ!」
所属:佐世保鎮守府→横須賀鎮守府
第十四駆逐隊の一人。
筋トレ大好きっ娘。陽炎も初対面で腕立て合戦に巻き込まれる羽目になった。
鎮守府では陽炎と同室。ツーショットになることは曙に次いで多い。
「睦月型は世界一の船だからな!」
所属:佐世保鎮守府→横須賀鎮守府
第十四駆逐隊の一人。
警戒心の強い堅物で、霰のことを異様に気にかけている。
その様子は姫を守る騎士のようだとも作中で称される。
とある事件を経て陽炎と打ち解けた後は、持ち前の気質からリーダーシップを発揮するようになった。
有事の嚮導代理として、曙と並び陽炎が挙げる存在。
「間に合わせる……。長月も皐月も、大切な友達。死なせたくない……」
所属:呉鎮守府→横須賀鎮守府
第十四駆逐隊の一人。
元は呉鎮守府で陽炎、不知火、霞と共に第十八駆逐隊を組織していた艦娘。陽炎よりも前に横須賀へ異動した。
無口で考えていることが分かりづらい。部隊への割り振りを決める時も自分の意見が言えずにいつのまにか第十四駆逐隊へ配置させられていた。
目立たない存在だが、射撃に関しては天才的。夾叉もなく命中させてしまうため、射撃訓練が途中で取りやめになったことも。
また意外な情報通。木曾が元は舞鶴鎮守府に所属していたこと、幌筵泊地に潜水艦娘が所属していたことも知っていた。
「次やったら、もう私のことをお姉ちゃんって呼ばせてあげませんからね」
所属:横須賀鎮守府
横須賀の秘書艦。
やたら駆逐艦娘たちに自分のことを「お姉ちゃん」と呼ばせたがる。駆逐艦娘たちからはえらく不評。
しかし、本人もそのことを利用している節がある。秘書艦としての段取りも優秀なやり手。
「私は一番艦です。二番艦には聞かせられません」
所属:横須賀鎮守府
陽炎が着任する前に第十四駆逐隊の仮嚮導艦を務めていた。
気苦労の多い性格。そのせいか行動に余裕がない。
半ば押し付ける形で陽炎に嚮導艦を譲ったことに、若干の負い目を感じている。
横須賀鎮守府提督
「お茶を入れてくれないか。それかうなじを舐めさせてほしい」
陽炎を第十四駆逐隊の嚮導艦に任じた張本人である。
奇矯な行動の目立つ変人。リンガ泊地提督の言う提督の異常性を代表する人物。
代表的なものが、艦娘に対するセクハラ行為。また曙に執務室への砲弾撃ち込みを許可したのも彼である。「執務室が壊れているのを口実に空母娘や戦艦娘に甘えられるから」と言って憚らない。
陽炎はもちろん、呉その他の鎮守府から一時転属してきた艦娘の復帰をのらりくらりと先延ばしにしている。それゆえついたあだ名が借りパクの王者。
陽炎の前にも扶桑を無理矢理呉鎮守府から横須賀鎮守府に異動させた前科があり、表向きは呉提督とは仲が悪いように見える。
1巻
「お魚にご飯あげるのが終わったら、またはじめますよ」
所属:呉鎮守府
呉鎮守府における駆逐艦娘の監督役にして、鬼教官。
悲観的発言が目立つが、その実は猛特訓に至らしめる発言を引っ張り出す誘導尋問に近い。ただし、何を言っても訓練が減ったことはない。
呉鎮には数多くの軽巡洋艦娘が在籍するが、彼女はその中でも別格である。一般的な軽巡よりも濃い威圧感を放っており、呉の全駆逐艦娘から恐れられている。節分の鬼役をやった際は普通に歩いていただけにもかかわらず、駆逐艦娘たちは気圧されて豆を投げられなかった。この悪名?は他の鎮守府にも轟いている。
訓練教官としては非常に優秀。常に限界の少し上に目標を設定し、自らも同じ訓練を平然とこなす。訓練中の艦娘に常に気を配り、決して事故を起こさない。霞や不知火が首を傾げるレベル。
陽炎など目標として憧れる艦娘も少なからずいるようである。
所属:横須賀鎮守府
第十四駆逐隊による射撃訓練の立会人として見学に訪れる。
最前線で戦う戦艦娘や空母娘は、駆逐艦娘たちの畏怖の対象である。
陽炎もどうにかいい所を見せようと意気込むのだが……
2巻
「守るべき人のためなら誰でも必死になるものですよ。私にも覚えがあります」
所属:横須賀鎮守府
艦娘たちから母のように慕われる横須賀最古参の艦娘。
戦闘からは半ば引退気味。
不定期に軽食コーナーで居酒屋を開いている。
高雄らの出撃前祝いにも場を提供した。
所属:横須賀鎮守府(麻耶、五十鈴)、佐世保鎮守府(妙高)
南方海域の強行偵察任務のため、高雄、不知火と艦隊を編成する。
五十鈴、妙高は佐世保鎮守府にて行われた大規模攻勢作戦にも参戦した。
3巻
「なにも考えないでご飯をお腹いっぱい食べる。それからお風呂入る。あとは寝る」
所属:リンガ泊地
リンガ泊地の秘書艦を務めている。リンガ提督とは大湊警備府で初期艦娘として配属されて以来の付き合いである。
一見平穏なリンガ泊地で怠惰を貪っているように見えるが、事務方としての能力は老練。
リンガ泊地での事件収束後は秘書艦の任を解かれ、横須賀鎮守府で独自の任務を遂行している。しかし呉鎮守府に派遣される際は、必ずリンガ提督の実家で時間を過ごすという。
「自分は陸(おか)の人間であります」
所属:リンガ泊地
元は陸軍所属の軍人。艦娘適正試験は上官命令で受けた。
にぎやかしのつもりだったが、甲種適正と認定されてしまう。
なし崩しに輸送艦を護衛してリンガに到着。提督の指示で、そのまま泊地に居つくことになった。
操艦は不得意で、陽炎たちとの艦隊訓練にも出遅れを見せる。
しかし元陸軍ならではのある特技を持ち、深海棲艦揚陸部隊との戦闘においては獅子奮迅の活躍をすることになる。
リンガ泊地提督
「……提督業ってのはまともな神経じゃ務まらん。本土の若い奴らも同じだろう」
引退間近の老提督。埠頭で日がな一日釣りばかりしている。
死地に艦娘を送り続ける提督の苦悩、そして異常性を誰よりも深く知る人物である。
少なくとも横須賀、呉、佐世保の提督とは面識があるようだ。
泊地での騒動収束後、退役。呉鎮守府近郊の実家で年金生活を送りながら、ボケ防止と称して畑仕事に精を出している。
「わたくしたちが道に迷うことなど、よくあることです(熊野)」
所属:呉鎮守府
不知火と共に横須賀鎮守府に派遣された艦娘たち。
呉に戻る前に、陽炎、曙、潮と北方海域の深海棲艦掃討任務に参加した。
「缶は……今直しちゃいますか」
所属:呉鎮守府
陽炎の異動後に呉鎮守府に着任した艦娘。
南方海域進出で傷ついた艦娘たちを修理するため、横須賀を訪れていた。
曙を冷やかし半分、趣味半分で彼女に応急修理の知識を叩き込む。
4巻
「ぶっ殺せー!!」
所属:呉鎮守府
第十八駆逐隊の司令駆逐艦を勤める艦娘。
陽炎と不知火の先輩。訓練を通して彼女らを着任の頃から見てきている。
気が強く口も悪いが、面倒見が良い。また自分に厳しい努力家でもある。
横須賀からやって来た(駆逐艦を卑下していた頃の)とは反りが合わなかった。彼女とは初対面から衝突することになる。互いに名乗らなかったため、鎮守府祭の際、曙の名前を陽炎に教えられなかった。
不知火の談によると、霰と陽炎が呉鎮守府を去った後は黒潮が面倒を見ているようだ。ただし、不知火が不在の間の一時的なものである可能性はある。
「なあ陽炎。これ、裸が載ってないで」
所属:呉鎮守府
呉駆逐隊のムードメーカー。
第十五駆逐隊所属だが、所属艦は彼女一人。
陽炎たちとつるんでいることが多い。陽炎が持ち込んだ禁制品を配って回るのは彼女の役目である。
たこ焼きを焼くのが得意。
「この場ではかしこまらなくてもいいんです。なんでしょうか」
「噂で、駆逐艦の誰かが転籍になるって聞いたんですけど(陽炎)」
「やはりかしこまってください」
所属:横須賀鎮守府→呉鎮守府
呉鎮守府の秘書艦を勤める艦娘。鎮守府祭の軽巡代表も兼任する。
他の艦娘3人分に匹敵する管理能力を持つ。「ワッシャー一つ、爪楊枝一本のありかまで完全に把握する」とも噂される。
もの静かだが、畏怖のオーラを纏っているという。駆逐艦娘たちからは、神通共々鬼のように恐れられている。
元は横須賀の所属だったが呉提督の熱烈な説得に応じて呉に移籍した。横須賀提督の同意が取れないままの移籍と彼女が知ったのは後日のことである。横鎮借りパク体質の元凶?
「弱気や自虐は駆逐艦には似合わんよ」
所属:呉鎮守府
呉鎮守府祭の空母代表を務める。
見た目に似合わないベテラン格。伊勢からは敬語で話しかけられている。初めて装備した瑞雲に戸惑いを隠せない伊勢たちに初期装備の重要性を語り聞かせたのも、彼女である。
空母、戦艦の代表的な役回りを果たすことも多い。
「使い込まれた機体は、ひと味違いますよ」
所属:呉鎮守府
龍驤と共に四航戦を組む空母娘。
軽空母には最新装備が行き渡っていないため、艦載機は龍驤共々零式艦戦21型など型落ちした装備を愛着持って使い続けている。
「あなたたちが楽しんでも罰は当たらないよ。駆逐艦にはたくさん楽しんで欲しいって思っているから(伊勢)」
所属:呉鎮守府
呉所属の戦艦娘たち。鎮守府祭が始まる前に二人とも航空戦艦に改造済み。
陽炎たちと初めて話をしたのも、瑞雲の運用訓練の場でのことだった。
伊勢は呉鎮守府祭の戦艦代表、日向は展示航行の責任者を務める。
鎮守府祭で起こった事件の後、龍驤、祥鳳、最上と共に陽炎たちから名誉駆逐艦徽章(ブリキ製)を授与される。
キス島撤退作戦のために幌筵泊地に招集され、陽炎と再会した際にも徽章を大事に身につけていた。
「ボクたちはカレーがいいかな。鈴谷に作ってもらおう」
「なんや、鈴谷は料理好きなんかいな(龍驤)」
「どうなんだろう」「知らんのかい(龍驤)」
所属:呉鎮守府
呉鎮守府祭の重巡代表。あっけらかんとした性格。
航空巡洋艦への改造は鎮守府祭が始まる前に済んでいる。
横鎮の借りパクを恐れた(らしい)呉鎮提督が、一時秘書艦に据えていた。
このため、南方海域進出作戦には最上型で唯一参加していない。
「なんか陽炎、駆逐艦代表に選ばれてからすごく頑張ってるね。嚮導とか向いてるんじゃない?」
所属:呉鎮守府
第十九駆逐隊所属。さっぱりした性格の艦娘。
呉鎮守府祭の準備にて、陽炎の補佐として精力的に働く。
「今は提督と、たくさん話してるだろ。じゃ、それがいつか財産になるよ」
所属:呉鎮守府
鎮守府祭前日の節分で鬼役の一人となった軽巡洋艦娘。
逃走中、横須賀から到着した潮と曙と出くわす。何も知らない彼女らに鬼の面を押し付けて、囮に仕立て上げた。
この一件により佐世保鎮守府で二人と再会した際はあからさまに嫌な顔をされる。
二水戦の長と兼務で呉の秘書艦だった経験がある。
「朝は眠いの……お布団あったかいの……大好き……」
「深海棲艦だ!(皐月)」
「ふにゃー!!」
所属:佐世保鎮守府
第二二駆逐隊における長月、皐月の同僚。
マイペースで子供っぽい性格だが、佐世保鎮守府でも上位に入る砲撃能力と優れた回避術を持つ。夜間輸送任務などは大の得意。
幼い外見や言動が深海棲艦にも通用するかは定かでない。
皐月と長月が横須賀に異動した後は、第二十二駆逐隊が一人となり寂しがっていたという。
所属:横須賀鎮守府
第七駆逐隊における曙、潮の同僚。
呉鎮守府祭が行われた頃の曙とは、関係は良好とは言えなかった。
曙が第七駆逐隊を飛び出した後も、同じ鎮守府内にはいた。しかし曙が気まずそうにしていたため、会話はなかったという。
5巻
「天国は知らないけど、地獄はあると思うよ。ないと困る」
「あたしたちはそこに行くんだ」
所属:佐世保鎮守府→横須賀鎮守府→(大湊警備府?)→幌筵泊地
幌筵泊地の秘書官を務める軽巡洋艦娘。
子供っぽい容姿、甲高い声、出会い頭に陽炎と正面衝突しかけるなど、頼りない印象が否めない。
しかしその実態は、横須賀鎮守府で一水戦の旗艦を務めたこともある強者。水雷戦隊の指揮はもちろんのこと、夜間に単艦で潜水艦を撃沈し、12.7cm連装高角砲で空母ヲ級を撃沈するほどの実力。現在こそ横鎮駆逐艦の管理を那珂に預けてはいるが、駆逐艦娘の役割分担や性格を見る目は正確無比である。曙について漣と朧の相談を受けていたこともある。
しかしハイスペックに反して、ストイック過ぎる性格の持ち主。自身の戦果を大っぴらにしたがらない。
より軽巡らしい、というか神通に近い雰囲気を持つ木曾が近くにいることもあって、陽炎たちからはかなり長い間人となりを誤解されていた。本人曰く「木曾さんみたいに慕われたーい」とのこと。
提督とはツーカーの関係。秘書艦室に隠したウイスキーの場所まで知られている。
ちなみに所属場所の噂を十四駆メンバーが話す場面があるが、その内容は概ね実艦の「阿武隈」の所属経緯と一致している。
「海に憧れていたのです。だから志願しました」
所属:幌筵泊地
陸軍所属。しかし海に強い想いがあり、志願して艦娘となった。あきつ丸との面識はない。
キス島までの物資輸送を担当する。しかし彼女もまた羅針盤に翻弄されており、成果は芳しくない。
陽炎たちと共に出撃した際とある目的のために別働し、そのまま行方不明になってしまう。
当初陸軍に入ったのは、母親の強い希望による。
「うまくいかねえなあ。軽巡ってのは難儀な商売だ」
所属:舞鶴鎮守府→?→幌筵泊地
眼帯のせいで独特の迫力を持つ軽巡艦娘。
阿武隈と対照的な雰囲気が、陽炎の目に留まる。異様な期待を寄せられ、逆にドン引きする羽目に。
まるゆとは腐れ縁。たまたま目にした彼女が不安になり、なんとなく声をかけて以来の付き合い。秘書艦の座を蹴ってまで共に転籍を繰り返している。
幌筵でのキス島掃討作戦後に改造を受けて、重雷装巡洋艦娘となった。佳境となった佐世保の攻勢作戦に参陣し、猛烈な雷撃で進軍を後押しする。
阿武隈と同じく実艦の経歴を参考にすると呉→横須賀→舞鶴の順に転籍している可能性(これに泊地や警備府等小規模基地がランダムで加わる)が有る。
「ネブタ食べるの?」
所属:佐世保鎮守府→大湊警備府
大湊警備府の秘書艦を務める。阿武隈曰く、優秀だが口が軽い。
長月・皐月と共に佐世保鎮守府へ在籍していたことがある。ただし、直接の面識はない。
幌筵泊地提督
「じゃあな。コロッケを楽しめ」
がっしり体型、彫りの深い顔立ちの中年男。
大湊鎮守府近くの定食屋で偶然陽炎たちと出会う。そのまま幌筵泊地まで護衛することに。
基地・泊地の指令官経験はあるものの、鎮守府への着任経験はない。しかし羅針盤の影響が艦娘にしかないことを逆利用した陽動作戦を展開するなど、奇抜な発想を持つ切れ者である。各地の鎮守府に支援を要請できる程度に顔も利く。しかし博打のような作戦が多いせいか、昇進には恵まれていない。
5巻の序盤で離婚し、調停を終わらせたばかり。
6巻
「私たちは戦う存在だ。敵を倒すためにここにいる。だが同時に人間でもある」
所属:佐世保鎮守府
佐世保の前秘書艦で、秘書艦の座についた陽炎の補佐役を務める。卓越した事務作業の手際を持つが元々は武人気質で、攻勢作戦の開始と同時に補佐を辞して戦地へと赴く。
妙高には頭が上がらず、同じ艦隊に入ると無理ができなくなる。
「人殺し以外ならなんでもやるよ」
所属:佐世保鎮守府
溌剌とした艦娘で、秘書艦経験がある。禁制品持ち込みのため書類に紛れ込ませた駆逐寮の消灯時間繰り上げ申請が陽炎の目に止まり、寮に戻ってきたところを押さえられた。間宮羊羹で懐柔されて、以降は陽炎不在時の書類処理代行を務めるようになる。
「ごめんね陽炎、とっちゃった」
所属:佐世保鎮守府
ご存知、佐世保の時雨。本人は謙遜するが陽炎も一目で認める佐世保駆逐艦娘随一の実力者。陽炎と初めて出撃した際には咄嗟の判断による雷撃で戦艦棲姫に止めを刺した。
「駆逐艦の娘はタフだね。水雷戦隊の率いてたときも元気なのが多かったけど、最近はもっとすごい」
所属:舞鶴鎮守府
攻勢作戦のため鬼怒、五十鈴と共に佐世保に呼ばれた軽巡洋艦娘の一人。連合艦隊第二艦隊の旗艦として陽炎、霰と共に出撃する。
「秘書艦ってのはねえ、私らみたいな立場の艦娘には『全員無事に連れて帰るように』って言うもんなんだよ」
所属:佐世保鎮守府
佐世保鎮守府における水雷戦隊のボス。呉鎮守府祭の騎馬戦にも顔出ししていたが、本格的な登場は6巻になってから。
空母棲姫に対する攻勢作戦で、連合第二艦隊の長を務める軽巡洋艦娘の一人として作戦に参加する。
佐世保鎮守府提督
「結婚してからあいつらの苗字が同じだと気づいたんだ」
長身、白髪交じりで年齢不詳の男。そして凄まじい女性遍歴の持ち主。(本人や那智の述懐を完全に信用するなら)離婚歴5回(うち2人は上記台詞の通りに姉妹である)、関係を持った愛人2人以上。裁判沙汰も頻繁の様子。しかも秘書艦との会食の場で(ジョークのつもりなのか)それらを平然と話して陽炎をドン引きさせた。なぜか「結婚するなら一般人」という奇妙な(そしてケッコンカッコカリを強く意識させる)ポリシーを持つ。リンガ提督の人物評に曰く「頭も切れるし手際もいいんだが、二番手三番手に回されると、すぐくさるのがいかん」
7巻
「引き返してもいいわよ、笑わない。残りたい人だけ残って(夕雲)」
「いいや、夕雲は笑うぜ(朝霜)」
所属:呉鎮守府→横須賀鎮守府
ゲームでは風雲、沖波も実装されたが、執筆時期の関係で登場しない。
呉鎮守府で第十四駆逐隊と合流して横須賀に向かった。当初は短縮訓練しか受けておらず、航行もままならない有様だった。全員の指導係となった第十四駆逐隊から、教本に載っていない駆逐艦の全てを叩き込まれる。
新鋭艦ゆえかメキメキと技量を上げるが、少々気負い過ぎた様子がある。やがて彼女らは大規模作戦への出撃を強く望むようになり……
「那珂ちゃんは軽巡洋艦だよ。疑うの?」
所属:横須賀鎮守府
横須賀水雷戦隊の長。呉鎮守府祭の騎馬戦にも顔出ししていたが、本格的な登場は7巻になってから。
説明の必要すらない艦隊のアイドル。たとえ戦闘中でも明るく振る舞って水雷戦隊を牽引する。
深海棲艦殲滅作戦の少し前に改二になった。撤退戦の殿になって空爆の足止めをするくらいは涼しい顔でやってのける。
「横須賀の洗礼を受けるって大淀から言われたけど、本当だった」
所属:呉鎮守府
深海棲艦の殲滅作戦のため横須賀に助っ人として派遣された軽空母艦娘。配属するなり艦隊に組み込まれた。
「摩耶姉さんは、すぐそうやって私をからかう」
所属:横須賀鎮守府
殲滅作戦への出撃を志願してきた夕雲型を伴って南方海域に出撃した重巡洋艦娘の一人。理論派。
独自設定
ゲーム内の単語や明文化されていない設定など、小説ならではの独自解釈が散見される。以下はその一部である。
艦娘の出自
当ノベライズの艦娘は、適性のある人間という設定である。
食事も通常の人間と同様。
艦娘志望者は検査の後に、甲種、乙種等の適性に分類される。
その後、艦娘としての名前と艤装を与えられる。
元の名前は秘匿されるが、特に仲のよい艦娘などには本名を明かすこともある。
元人間のため、実の姉妹が揃って艦娘になったなどの例外を除いて、基本的に姉妹艦としての姉妹意識は薄い。
羅針盤
艦娘固有の現象として取り扱われている。
海域の特定位置においてどういう理由か方向感覚が狂い、目的地に辿り着けなくなる。
これが艦娘たちの間で「羅針盤が狂う」と呼ばれている。
(現実の提督たちと同様に)神頼みに走る艦娘も多いらしい。
疲労度
疲れ具合を「赤」「黄」などの色で表現した、艦娘独特のスラングとして用いられている。
目の充血など、具体的な兆候として現れる現象もあるとのこと。
妖精さん
他のメディアミックスでは出てくる「妖精さん」は本作ではまったく登場せず、近代化改修や改造は人間の技師によって行われる。
余談
- 艦これメディア展開の中では随一とも言える肉体言語の語らいが多いのも当小説の特徴だったりする。訓練中のコミュニケーション不全から洋上で喧嘩をおっぱじたり、演習で双方の砲弾が尽きても決着がつかないので「紅の豚」ばりの殴り合いをおっぱじめたり、戦線に踏みとどまろうとする大破艦をぶん殴って黙らせたり仕返しに殴り返されたり、鎮守府の威信をかけて駆逐隊同士で大乱闘したりする彼女らの男よりも男らしい様は必見。とにかく駆逐艦娘は血の気が多いのだ。
- 呉の某こと雪風が描写なし・台詞なし・地文や登場人物の言葉でのみ語られる存在であるにもかかわらず破格の扱いになっている。あまりの強運のため節分の抽選会に合わせたように幌筵への出張任務を入れられる・呉鎮守府祭の射的屋台では百発百中のため追加料金で代打ちするサービスを催し好評を博すといった描写に加え、7巻における大淀のこの言葉が雪風の陽炎抜錨における全てを物語っている。「雪風さんは感性で動く天才です。 教えられると思いますか? 」
- ノベライズでは唯一、特装版が刊行されている(3~5巻、7巻)。表紙絵が特装版オリジナルになったことに加え、NOCO氏によるコミカライズ、カラーイラストギャラリー、ゲスト作家によるコミック・イラストを含む小冊子が特典として追加された。
- 同じくノベライズである鶴翼の絆とは様々な面で好対照になっており、「艦娘の"艦"部分の比重が大きいのが鶴翼の絆、"娘"部分の比重が大きいのが陽炎抜錨」「鶴翼がTV版ガンダム、陽炎が08小隊」等と比較されることもある。
関連項目