カッコイイとは、こういうことさ。
概要
スタジオジブリ制作の長編映画第6作として1992年に公開。
原作は、本作の監督でもある宮崎駿が模型誌『モデルグラフィックス』にて不定期連載で描いていた漫画『飛行艇時代』(「宮崎駿の雑想ノート」所収)。
元々は日本航空(JAL)での機内上映用として製作が開始されたが、長編化したため劇場作品に変更がされた。
歌手を本業とする加藤登紀子が主題歌『さくらんぼの実る頃』とエンディングソング『時には昔の話を』を歌うと共に、メインキャラクター役の声優としても出演している。
第一次世界大戦後の世界恐慌時のイタリア王国を舞台に、アドリア海を飛行艇で乗り回す空賊の荒くれ者たちを相手に賞金稼ぎとして生きる、豚の姿をした一匹狼のパイロットの物語である。
あらすじ
1929年頃のイタリア。
深刻な経済不況とファシスト党による軍事政権の中で社会は不安定化し、失職した民間や軍のパイロットが空賊に成り果ててあちこちで強盗行為が繰り返されるという有様であった。
そのような状況の中魔法で豚の姿になったというポルコ・ロッソという賞金稼ぎがおり、地元ではヒーローとして親しまれていた。
彼は常日頃から一人でイタリアに密出入国をしながら生活しており、奇妙な容姿かつ元軍人の優秀な戦闘機乗りのため軍事政権からも睨まれていた。
ある日愛機のサボイアS.21のオーバーホールのためミラノに向かっていたところを空賊達が雇ったアメリカ人の用心棒の奇襲に遭い、エンジンの不調も重なって大破させられる。
知り合いの工場にたどり着いたポルコは経営者の孫娘フィオ・ピッコロと出会い、機体の再設計を任せる事になる。
修理が完了すると警察当局への口実作りや整備確認のためにしばらくフィオが同行する事になり、再会した空賊達の前でポルコの残りの修理代を賭けて例の用心棒との再戦が決まる。
決戦に向けて準備をするポルコにフィオは過去と豚になった理由を尋ねると、彼女の想像もできないような答えが返ってきたのであった。
主な登場人物
(CV:森山周一郎)
鮮やかな赤色の戦闘飛行艇サボイアS.21に乗って空中海賊を相手にする賞金稼ぎ。
かつてはイタリア空軍のエースパイロットの大尉であったが、戦場での経験で嫌気が差したため自らに魔法をかけて豚の姿となり軍を去った。
クールでシニカルなニヒリストのようにも見えるが、人間味溢れる一面もある。
(CV:加藤登紀子)
本作のヒロインで、ポルコの幼なじみ。
アドリア海に浮かぶ小島に建つホテル・アドリアーノを経営している。
空賊連中を含め近隣の飛行艇乗りたちにとってはマドンナであり、その誰もが一度は恋をするような存在である。
これまでに3人の飛行艇乗りの男性と結婚しているが、全員戦争や事故などで死別している。
ポルコを「マルコ」と本名で呼ぶ数少ない人物であり、現在も密かに彼を愛している様子である。
(CV:岡村明美)
本作のもうひとりのヒロイン。
拠点を置くミラノで飛行機の製造・修理を行うピッコロ社の設計技師で、アメリカでの修行経験がある。
17歳と若いが社長である祖父とポルコにその腕前を買われて、サボイアの機体の再設計を一任される。
多数の空賊達の前で啖呵を切り、ポルコとカーチスの再戦を約束させるなど男勝りで勝気な性格。
父親がポルコと同じ部隊の元所属員で、マルコ・パゴット大尉の武勇伝を聞いて育った事からポルコには憧れと共に好意を寄せている。
(CV:桂三枝)
ポルコの昔馴染みであるピッコロ社の社長で、フィオの祖父。
金にはシビアであるが、面倒見のいい性格。
フィオの腕前を信頼しており、サボイアの修理で自らは最も得意とするエンジンチューニングに専念する。
息子が3人いるがポルコが訪れた時には不況で全員出稼ぎに行っており、サボイアの修理作業で家族や親戚の女性一同を呼び集めた。
仕事に関しては熱が入りやすい部分があり、エンジンのベンチテストでは小屋を吹き飛ばしかけてポルコが大声で止めに入った。
(CV:大塚明夫)
イタリア系の祖母を持つ若いアメリカ人の飛行艇乗り。
空賊連合が仕事のために雇った用心棒で、カーチスR3C-0を操る腕利きのパイロット。
普段はキザな伊達男を気取っているが、純粋でコミカルな言動も多い憎めない二枚目半である。
元々根っからの悪党ではなく普遍的な冒険心やサクセス願望などからイタリアに渡っており、将来的には映画俳優と、最終的には米大統領になる事を夢見ている。
自身が考案した映画脚本がハリウッドである程度評価されるなど、芸術的な才能にも秀でている模様。
豪快なボス(CV:上條恒彦)が率いるアドリア海で活動する空賊の一団。
迷彩カラーの大型機で近辺を荒らしており、物語の冒頭でも仕事をするが追ってきたポルコにあえなく敗北する。
空賊連合の面々と同じくポルコを「ブタ」と呼んで目の敵にし、ピッコロ社で修理されたサボイアを破壊しようとするが、フィオに「(イタリアの)飛行艇乗りのプライド」について一喝されてボスが恥じ入るなど、どこか憎めない男達である。
ポルコとカーチスの決闘を取り仕切り、空賊連合と一緒になってお祭り騒ぎにする。
主にアドリア海を縄張りとする7つの空賊団で構成されたギルド。
大きな獲物(豪華客船)を狙う場合などは協力して仕事をしており、ギャングやシンジケートというよりは組合や寄合的な組織である。
上述のマンマユート団は加盟こそしていないが、仕事を共にしたり会合に顔を出したりとなんだかんだ言って友好的な関係の様子。
各団のメンバーはそれぞれのボスに似た容姿で同じような格好をしており、ボス達のマドンナであるジーナのいるホテルの範囲50km内は中立地帯として仕事はしていない。
いずれも戦争や恐慌で失職したパイロットであり、裏設定によるとボス達はフランスやクロアチアなどの出身でオーストリアの元貴族もいるようである。
(CV:稲垣雅之)
イタリア空軍少佐。
ポルコの軍人時代からの親友で、軍事政権に睨まれているポルコを何かと気にかける。
中盤では自ら軍用機を操り、ポルコとフィオの国外脱出を手引きした。
またジーナとも親交があり、終盤でポルコ達の決闘が行われている無人島に向かってイタリア空軍が出動した事を電信で彼女にリークした。
余談
当初の予定通り日本航空の国際線機内でも本作が上映されたが、そのラストが「ジェット旅客機とサボイアS.21が一緒に飛行しているものに差し替えられていた」という都市伝説がある。
これについては『天空の城ラピュタ』でも同じような噂になった事があるが、その後スタジオジブリ側が否定をした事から本作でも「幻のラストは存在しない」とされている。
ただし徳間書店の『アニメージュ」』陣営が製作した公式設定の美術本である『ジ・アート・オブ 紅の豚』において、ジェット旅客機を追い抜くサボイアS.21とフルフェイス状態で酸素マスクを装着している正体不明のパイロットの絵コンテが掲載された。
この事から案の一つとして当該シーンの製作自体はされたが、それが本当に日本航空機内で上映されたのか、それとも取りやめとなった案の内容が何かしらの経緯で広まってしまったのかなどについては不明のままである。
スタジオジブリはこの幻のラストについては現在も言及していない模様。
関連イラスト
関連項目
本作品内に近い時代の日本での飛行機開発をテーマとした、同じく宮崎駿原作・監督とスタジオジブリ制作のアニメ映画作品。