「本当のパーティーに行かないか?」
「神から授かった人生を無駄に過ごしたくない。どんなカードが配られるか分からなくても、それを生きるのが人生です」
「この船の切符を手に入れたのは、人生最高の幸運だった!君に逢えたから…」
概要
各地を旅し億万長者になることを夢見る画家志望の青年。アメリカウィスコンシン州出身で、15歳の頃に両親が他界してからはヨーロッパ各地を転々とする独り身となる。
タイタニックの出航当日、賭けカードに勝利し乗船チケットを手にしたことで、急遽三等客として船に乗り込みアメリカを目指す。
そこで名家の令嬢・ローズ・デウィット・ブケイターと出逢い次第に惹かれ合い、彼女に生きる活力を与えていく。
元は乗船する予定ではなかったため、タイタニックの乗客リストに名前は載っていなかった。
現在では言わずと知れたレオナルド・ディカプリオの名を世界に知らしめた役柄であり、言うまでもなく彼の演じた最も有名な人物である。候補は他にも幾人かおり、マコーレー・カルキンやブラッド・ピットも含まれていた。
性格
画家志望である故に多大なる画才を秘めており、芸術嗜好のローズからも高評価を得る程であった。実際彼女と惹かれ合った理由の一つである他、1枚10セントで似顔絵を描いて生計を立てていたりもした。
お世辞にも柄が良いとは言えないが、素朴で素直な人柄故に好感を持たれるタイプである。
開放的な自由人気質で、ローズを救助した礼として招待された一等客のパーティの席で自身の現住所についてルースから尋ねられた際に、「今はタイタニック号気付、その先は神の御心次第」と答えた上で上記の言葉をキャルやルースといった同席者たちに向けて送った。
明るく社交的でポジティブ思考な面もあり、上述したそれまで無縁だった上流階級のパーティに誘われた際には快く快諾したり、逆にローズを上品な一等客とは対照的な三等客の意気揚々なパーティに誘ったりもしている。
そういった彼の生き様は、それまで束縛されていたローズの気風に変化を齎すことになる。
ちなみに日本字幕版での一人称は、友人達の前では「俺」であるのに対し、ローズの前でのみ「僕」となっている。ちょっと格好を付けたかったのだろうか。因みに本作の字幕翻訳担当者は、なっちこと戸田奈津子だったりする。また吹き替え版ではローズの前でも「俺」になっている。
軌跡
サウサンプトン港のパブで友人のファブリッツィオ・デ・ロッシと共にポーカーに勝利したことでタイタニックの乗船チケットを手にし、出港5分前に何とか乗船を果たす。
船がアイルランドの港の寄港から立ちいよいよ本格的なアメリカへの航海が始まった日の夕刻、船尾部で近くの親子をデッサンしていた際に上のデッキからローズを目にし意識するようになる。
夜が更けベンチで休んでいたところ、思い詰めた様子のローズを見かけてそれを追い、柵を乗り越え立っていた彼女に「君が飛び降りたら俺も後を追う」などと語りかけたことで自殺をやめさせる。
しかしローズの手を取ったその時、足を滑らせ危うく転落しかけた彼女を救助するも覆い被さる体勢になっていたことで、叫び声を聞いて駆けつけた船員たちに誤解され危うく捕縛されかけたのを当のローズが弁明。事なきを得た上でローズの提案で彼女の婚約人であるキャルドン・ホックリーから礼として翌日のディナーに招待される。
翌日、一等客のデッキでローズと話し合っていると彼女が彼のスケッチブックを見てその絵に魅了されたのを機に会話が弾み、仲を深めていく。
ローズに唾吐きを教えていたところを彼女の母であるルースと振興成金夫人のマーガレット・ブラウンらと鉢合わせ、今晩のディナーでまた会おうとローズと別れる。
その際モリーから一等客のパーティに出席する者として相応しい身なりに御色直しされた後、ディナーに参加。そこで同席したルースとキャルから三等客であることを遠回しに揶揄されるも、「人生は贈り物」という持論を説き逆に周囲に称賛される。
席を立つ際、ローズに「今日を大切に、時計の前で会おう」というメモを密かに手渡し、大時計で彼女と落ち合うと「本物のパーティに行かないか?」とローズを誘う。
そして彼女と上流階級である一等客の上品なパーティとは対照的な三等客の騒がしげながらも皆が楽しく歌い踊るパーティに参加し楽しい一時を過ごした。
翌日、ローズに再び会うべく昨日のパーティ会場に向かうが入場を断られる。その際、キャルの側近であるスパイサー・ラブジョイからローズに近づかないよう警告を受け、強引にその場から立ち退かされるも、船尾部のデッキで椅子に掛けてあった帽子とコートをパクると、それを身に付けローズに接近。「もし君がキャルと結婚したらその美しい炎は消えてしまう」と忠告する。
黄昏時、船首で喫煙をしているとそこにローズが来て、彼女に目を瞑るよう言い前に誘い出し両手を大きく広げさせ目を開けるよう促すと、自分が空を飛んでいるような光景にローズを感動させる。
そして夕陽を横にキスを交わした。
夜、ローズの部屋で彼女から「青き海の心」だけを身に付けたヌードデッサンを10セントで描くよう要求される。それを描ききり、絵と宝石を金庫に仕舞うと、部屋にキャルの指示でローズの様子を見に来たラブジョイが部屋に入って来て、彼から逃れるべくローズと共に部屋から逃走。
ボイラー室や荷物置き場といった船底部へと入り込み、そこにあった車に乗り込み愛を交わすなど、仲睦まじく接しあった。
甲板に出ると、ローズから船が着いたら一緒にいきましょうと持ちかけられ、それに応じる。
しかしその時、タイタニックが氷山に衝突する現場に遭遇し、そのことを知らせようとローズの客室に戻るが、その最中にラブジョイにコートの左ポケットに「青き海の心」を忍ばせられる。
部屋に戻るとキャルが宝石が盗まれたと言い出し、先程密かに忍ばせられていた「青き海の心」がポケットから発見され、そのコート自体も盗品であったことから宝石泥棒と見做されてしまい連行され、最下部の犯罪者収容室の一室のパイプに手錠で繋がれる。
船員に代わって見張っていたラブジョイからタイタニックが沈没することを聞かされると、彼から「ホックリー様から」と称して腹パンを喰らい一人部屋に閉じ込められる。
次第にフロアが浸水し始め焦りを覚えるも、そこへ迷いを振り切りジャックを救出しにきたローズが現れ、彼女が持ってきた消防斧で手錠の鎖が切断されたことで拘束が解け、ローズと共に救命ボートのあるデッキを目指す。
デッキへ着くと、救命ボートは女性と子供が優先されていたことからローズだけしか乗れなかった。だがローズはジャックと共に行動することを選び、自ら船に飛び移る。慌てて落ち合った時計の前で「君はなんて馬鹿なことをしたんだ」と言えば、「飛び込むときは一緒で言ったでしょ」とローズに返され、キスを交わした。
それを見て逆上したキャルはラブジョイの懐から拳銃を奪い取り、二人に向けて発砲。一旦、下層部へと逃げ込むが浸水が激しく、再びデッキへ戻るとローズと出逢った船尾へ向かう。
船体が真っ二つに千切れると、二人で柵の上に登り沈没と同時に息を大きく吸い込むようローズに指示。そしてタイタニックは沈没し、ローズや他多数の乗客らと共に極寒の海に放り出された。
一時ローズを見失うも、何とか彼女を見つけ出し、ローズを掴んでいた男性を三度も殴り付け彼女から引き剥がすと二人行動を共にし、残骸であったドアの上にローズを乗せ、自身は海水に浸かり彼女と手を握り合う。
救助を待っていたが瞬く間に寒さで体力は奪われていき、周囲の乗員乗客らは一人また一人と凍死していく。やがてローズも死を悟り彼に「愛している」と伝えるが、ジャックは凍えながらも必死で説得する。
「約束してくれ、生き残るって、絶対諦めないって。どんなことがあっても、どんなに望みが薄くても、約束してくれローズ。その約束を守ってくれ。諦めるな」
それがジャックの最後の言葉だった。
彼の死を悟ったローズは、彼の言われた通り生きることを決して諦めず、握り合っていた手を離すと、ジャックはそのまま深い海へと沈んでいった。
日本語吹き替え担当一覧
余談
ヌードデッサンの裏話
ローズのヌードデッサンをスケッチしたのはキャメロン監督。ただしジャックは右利きの設定だが監督は左利きであるため、当該シーンでは左右を反転して撮影された。尚、ケイトはビキニ姿だったが、想像力でヌードデッサンに仕上げたという。流石である。
また、このシーンはジャックとローズが揃った最初の撮影であり、レオはカウチ(長椅子)でのポーズを指示するセリフの前に「ベッド…」と言い間違えている。監督はこのジャックらしい初々しさを気に入り、そのままOKとした。
生存できた可能性
公開時から長年映画マニアや演者たちの間で議論されているが、終盤の沈没後にローズが乗った木板の上にジャックも乗れた可能性が指摘されている。
アメリカのTV番組である『MythBusters』は以下の動画のように成人男性二人で劇中と同じ大きさの木板に乗った結果、板は少々沈みはするも救命胴衣を下に入れることで人間二人を乗せる程度の浮力を維持出来ることが証明された。
↓参考動画
この実験の後、動画のように二人はキャメロン監督本人にこの件を伝えたところ、は「もっと板の大きさを小さくすべきだった」とは言いつつも、番組の主張を出鱈目と退けた。
監督曰く、抑二人が置かれた状況下では番組が行った行動をする余裕はなかったという。
実際ジャックとローズは船内を逃げ回った上に放り出された海は-2℃の極寒の北大西洋で長くとも30分前後程度あれば凍死に至るため、その様な環境下では番組スタッフが行ったような器用な手段に出るのは体力的に考え無茶であったと思える。
実際に番組の検証でも成功するまで木板に乗ろうとして沈みかけては再トライを何度か繰り返しているので、作中の混乱した状況下で主人公が「二人が乗るのは無理。せめて彼女だけでも」と判断したとしても不自然ではない。
その上監督は「どの道ジャックは死ななければならない運命だった」というメタ的なことも述べている。曰く「脚本の147ページに、“ジャックは死ぬ”と書かれていた。これはもちろん芸術的な選択によるもので、ローズを支えるには十分な大きさだが、ジャックでは不十分だった」、「この映画は死と別れをテーマにしているため、彼は死ななければならなかった。だから、仮に煙突が落ちてきても彼は沈んでいた。これこそ芸術というもので、映画における物事は物理的な理由ではなく、芸術的な理由で起きるもの」と語っている。そのためその件に関して触れるのは無粋としている。
早い話「俺がジャックが死ぬと言ったら何が何でもジャックは死ぬ運命なんだよ、口出しするな」というのが監督の見解である。
なんだそりゃ、と言いたくもなるが、監督の作品に対する姿勢が窺える逸話である。
事実本作は彼の死というシナリオだからこそ名作たり得る作品となったと言える。ローズがタイタニックの事故の後一人で強く生きる決意をしたのは、ジャックと死に別れる際に交わした約束を守るためであったのだから尚更である。
また更に身も蓋もない話を重ねると、中には仮にジャックも生還していたとしても、その後はローズと上手くいかず結局別れてしまうのではないか、という意見もある。
現にストーリーを見れば分かるが両者が交流した日数は、長く見積もっても3日程度しかない(※)。また二人の愛が芽生えたのは絶海を航行する船内という閉鎖的な環境下であったことも考えられるため、そのような限定的に芽生えた恋愛感情では一歩船を降りれば途端に冷めてしまう可能性も有り得なくもない(余談だが、後に両役の演者の再共演作である『レボリューショナリーロード』は、ジャックも生存した場合の二人のIF展開と捉える見方もあったりする)。但し、だからこそ両者は惹かれあったことも事実である。
もっとも、このような疑問が出ることは、言い換えればそれだけ彼が人気である証明でもあるため、作り手側からしてみれば何だかんだでいいこと尽くしなのかも知れない。
※出会ったのは出港3日目の夜(4月12日)。その翌日の昼〜夕にかけてデッキで会話を交わし夜、ディナーの後ダンスパーティに参加(4月13日)。さらに翌日の昼頃にはデッキ上の一部屋で密かに会話を交わした後、夕方頃船首部にてあのポーズをしお互いの愛を確かめ合いキス。夜、ヌードデッサンを描きその後船内を駆け回った後倉庫でカーセックス。そして甲板に出ると氷山衝突の瞬間に遭遇し、その後は船内からの脱出劇を繰り広げた(4月14日〜翌15日の深夜)。もっとも、監督の過去作には出会って1日と経たず愛し合い子供まで設けたカップルがいたりするのだが…。
モデル
キャラクターのモデルは作家のジャック・ロンドン。ジャック・ロンドンは、若さに任せてホーボー(放浪の労働者)としてアメリカを渡り歩いた経験を記した「放浪記」で知られている。
ジャックも画家として成功する日を夢見ながら、気ままな旅を続ける破天荒な青年として描かれている。
名前
偶然にもタイタニック号事件の犠牲者にJ・ドーソンという非常に似た名前の方が居た。フルネームはジョゼフ・ドーソン。
そのため彼の墓にタイタニックファンが訪れることがままあるらしい。
関連イラスト
関連タグ
カイル・リース…本作と並ぶ監督の代表作の登場人物。一人の女性と出逢い交流し、逞しく成長させる点が共通している。
ロミオ…『ロミオ+ジュリエット』の登場人物で中の人が同じ主人公であるが、(ストーリーの都合上そうするしかないとはいえ)色々な意味でジャックとは正反対な人物。