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「空を飛んでる!ジャック!」


演:ケイト・ウィンスレット


概要編集

イギリスの名門家・ブケイター家の令嬢。1912年時点で17歳。

劇中では唯一年齢が明示された登場人物である。


父の死後、生家が莫大な借金を抱え破産の危機に瀕したことから、実母・ルースに若き資産家のキャルドン・ホックリーとの婚約を強いられるが、豪勢ながらもいつも同じ顔触れで同じような会話しか交わさない上流階級の生活に退屈し、その上キャルは自身の財力をアピールするばかりで彼女自身の心境は全く理解を示さず、周りの言いなりになるしかない不自由な日々に鬱屈していた。


そんな中、母とキャル一行と共に彼の出身地であるアメリカニューヨークへ向かうべく「夢の船」と謳われたタイタニックに庶民階級らが羨む一等客として乗船するも、ローズの胸に去来するのは憂鬱と未来への絶望感であり、タイタニックも乗船当初は奴隷船同然と思っていた。


しかし船内にて、ふとしたきっかけで画家志望の青年・ジャック・ドーソンと出逢い、彼との交流を通じて惹かれ合い、生きる活力を取り戻していく。


本編から84年後の1996年では「カルバート」の姓で100歳を越えて存命していることから、のちに起こる沈没事故からは生還できた模様。

ただし「ブケイター」と名乗っていないばかりか、そもそも「ローズ・デウィット・ブケイター」という人物自体が沈没事故で死亡したとされていたことから、生存が確認されたのは彼女がロベットらが発見した裸婦画のモデルであると名乗り出てからである。


それは事故生還の際の彼女自身のある決意にあった。


性格編集

名家の上流階級の出身でありながら、母ルースやキャルと異なり庶民への偏見も抱いていない。これは体裁ばかりを気にして娘の人生も勝手に決めようとするルースへの嫌悪感がそうさせた側面がもあり、根深い鬱屈を抱え込んでいた。女性の立場が今よりずっと悪かった当時の事情もあって自由が無いに等しく、閉塞しきった人生に絶望していた。


ピカソモネなどといった当時は無名の芸術家を多大に評価するなど、芸術分野に関して優れた審美眼を持つ。ジャックと惹かれ合ったのも、彼の画才に惚れ込んだためでもある。宝石類にはあまり関心は示さないが、自室でキャルから「青き海の心」をプレゼントされた際にはその芸術的な美しさに見惚れ、後にジャックに自身のヌードデッサンを描いてもらった際も唯一これだけは身につけるほど気に入っていた。


豪勢だが格式張った振る舞いよりも、上品とは言えなくても他者と盛り上がる方が好きであり、一等客たちとのディナーよりも三等客たちとの乱痴気パーティを楽しんでいた。本質的にはお転婆娘といったところであろうか。ちなみにこの際、特技である爪先立ちを披露し、周囲を唖然とさせていた。


船の安全対策に対して、設計者のアンドリュースに救命ボートの数が足りないと指摘する鋭さや、イズメイがタイタニックに関して大きさに拘ったと説明すると「何故男性は大きさに拘るのかご存知?」とフロイトの心理学を持ち出して当てこするなど、聡明・博学ながらも風変わりで常識に囚われない一面もがある。


ストーリー後半では、ジャックとの交流を通して精神的な強さも芽生え、宝石泥棒の濡れ衣を着せられたジャックの救助に単身で出向き、その際それを引き留めようとしたキャルに対して勢いよく唾を吐きかけた上で「あんたと結婚するくらいなら、私は彼の情婦になる方がマシ」と罵声を浴びせた。


軌跡編集

タイタニックの出港から数日、マリッジブルーが祟ってついに日頃の鬱屈さに耐えきれなくなり、船尾から投身自殺を図ろうとする。


そこへ一人の青年が声をかけてきて、「君が飛び降りたら俺も飛び降りる」と思いがけない宣言をし、我に返った時の海への恐怖で自殺を思い留まり、手を差し伸べきた彼の手を握ると、青年はジャック・ドーソンと名乗り、ローズも自己紹介をするとデッキへ戻ろうとするが、足を滑らせ危うく転落しかける。


ジャックによって何とか事なきを得たが、その際に彼女が発した悲鳴を聞いて駆けつけた船員たちが彼を暴漢と間違えたせいで連行されそうになるも、「下のプロペラを見ようとしたら誤って転落しそうになったところを彼に助けて貰った」と証言したことで誤解を解く。その際居合わせたキャルは礼としてジャックに20ドルを与えようとしたが、「それでは割りに合わない」と抗議したことで彼は翌日の一等客のディナーに招待されることになった。


翌日の昼頃、デッキでジャックと会話し何気なく彼のスケッチブックを手に取り鑑賞すると、その画才に魅了される。そしてそれらの絵や彼自身のこれまでのエピソードを聞かされるうちに次第にジャックを意識するようになり、下船したら彼の故郷であるウィスコンシン州に行こうという話になり、その実地訓練と称して唾吐きを教わっていたところルースが近づきディナーの時間が近くなったことからその場を後にする。


そしてディナーの時、礼服に身を包んだジャックと共に席に座ると、彼の「人生は贈り物」、「今日という日を大切にする」という人生観に感銘を受ける。ジャックが席を立つ際、「時計の前で会おう」というメモを渡されその通りに時計の前で彼と待ち合わせると、彼に連れられ「本物のパーティ」である儀礼正しく物静かな上流階級である一等客のパーティとは対照的な騒がしい三等客ら庶民のパーティに参加する。


TITANIC

そこでビールを飲んだりダンスをしたりと、今までの生活では体験できなかった刺激的な経験をし、楽しい一時を過ごした。


翌日、キャルやルースから昨日勝手に「下劣な」三等客のパーティに参加したことを咎められ(キャルからはランチの席でそのことに関して怒鳴りつけられ、ルースからは「キャルから見切りをつけられたら自分たちはお終い」と嘆かれた)、ジャックと関わることを躊躇するようになる。


しかしジャックから「もし君が彼らについていったらいいように扱われるだけ」と説得され、その後お茶の席でふと近くに座っていた幼い少女が母親の言われるがままになっていた姿を見て思い直し、黄昏時、船首部でジャックを見つけ声を掛ける。


🚢

映画「タイタニック」より

するとジャックは彼女に目を瞑るよう促し、自身の前に誘導すると両腕を広げられる。そして再び目を開けるよう促されると、自身が空を飛んでいるような感動的な光景が広がり、そのまま彼と口づけを交わした。


夜、自身の部屋にジャックを招くと金庫からキャルにプレゼントされた宝石・「青き海の心」を取り出し、それだけを身に付けた自身のヌードデッサンを描くよう頼み、彼の指定料金である10セントを支払った後裸体となりカウチに横たわる。そしてデッサンが完成するとそれとスケッチブックを金庫にしまう。


するとそこへキャルの指示でローズの様子を見に来た彼の側近であるスパイサー・ラブジョイが部屋へ入ってきて、ジャックと共に部屋を出る。ラブジョイの追跡から逃げ切ると船底の物置に辿り着き、車内で彼と愛を交わし合った。


タイタニック

しかしその時、タイタニックが氷山と衝突したことに危機を感じ、それを他の者に知らせようとジャックと共に自室へ戻る。


部屋に戻ると、キャルが「青き海の心」が盗まれたと言い、ジャックを疑い彼の着ていたコートを調べたところ、ポケットから宝石が出てきたことで窃盗犯としてジャックは連行されてしまう。

それはジャックとローズの仲を引き裂こうとした、キャルとラブジョイの策略であった。


その後時計の広場に他の一等客と共に集められると、アンドリュースからタイタニックが間もなく沈没するという事実を聞かされる。


すぐにキャルとルースらと共に救命ボートに乗ろうとデッキへ降りるが、自分の生存しか考えず他の乗客の命を顧みない二人の態度に憤慨したことでジャックの救出に向かうことを決意し、ルースに永遠の別れを言い、それを引き止めようしたキャルも彼に唾を勢いよく吹き付けたことで退ける(この唾吐きは上記でジャックに教わったアレ)。


船内にて再びアンドリュースに出くわすと、彼から犯罪者が収容されるフロアを聞き出し、エレベーターにいたウェイターの静止も構わず犯罪者収容室のある最下層で浸水の激しいEデッキへ向かう。


Eデッキに到着しジャックを見つけ出すが、彼は手錠をパイプで繋がれ身動きが取れない状態にあった。助けを呼ぼうと廊下に出た際、そこで消防を入手すると再び部屋に戻りそれで手錠の鎖を切断して彼の拘束を解くと、二人で救助ボートのあるデッキへ向かう。


デッキに着くと、キャルから薄着であったためコートを着せてもらいボートに乗るも、女性が優先的に乗らされていたことからジャックは乗船できず離れ離れになる。


しかし彼女はボートに乗って生存するよりも、ジャックとタイタニックに残ることを選び、ボートから沈みゆくタイタニックに飛び移る。


大時計前でジャックと落ち合うと、彼から「君はなんて馬鹿なんだ」と責められるも「飛び降りる時は一緒って言ったでしょ」と言い返し、互いにキスを交わす。するとその光景を見て逆上したキャルが、拳銃を持って二人に向けて発砲。それから逃走して再び浸水の激しい下層部へ落ち延びる。


なんとか下層部を脱出しデッキへ向かう最中、一等客用の食堂で三度アンドリュースと出くわし彼に逃げるよう訴えかけるも、アンドリュースは船の設計者としての責任感からタイタニックと運命を共にすると話されると同時に、彼から救命胴衣を渡され別れのハグを交わした。


デッキへ出ると、少しでも海面から遠い場所である船尾部へ避難し、柵に掴まり暫くすると、灯が消え船体が真っ二つとなる。そして再び船体が傾き始めると、ジャックと共に柵の上に登り、ついにタイタニックは沈没し海に放り出されジャックと離れ離れになる。


Titanic

なんとかジャックを見つけドアの残骸を見つけるとその上に乗るが、極寒の北大西洋の気候により瞬く間に体力は奪われていき、周囲の乗客たちは次々と命を落としていく。ローズは死を悟り海に浸かっていたジャックに「愛してるわ」と呟く。しかしジャックは「ここから生き延びて幸せになるんだ、諦めるな」と彼女に言い聞かせ、ローズは「約束するわ」と応じた。


暫くして生存者救出に来た一隻の救命ボートが現れ、それを伝えようとジャックに呼びかけるも、彼は既に事切れていた。ジャックの死に涙するも、彼との約束のために遺体を海に沈めた後、近くの船員の遺体からホイッスルを吹き鳴らし(氷点下の気温で声を発せないため)、ボートの乗組員たちに生存を知らせ、命からがら生還を果たした。


その後キャルや母親の前には姿を現さず、救命船であるカルパチアで船員から名前を尋ねられた際にジャックを冠した新しい名前を名乗り、事故後の混乱に乗じてこれまでのステータスと経歴を一切捨てた。以後は一人の女性としてアメリカで生きていくことになる。それに伴い、「ローズ・デウィット・ブケイター」は記録上では死亡扱いにされた。


現地では女優として活動し、後に一人の男性と出逢い結婚。子宝にも恵まれるなど幸せな家庭を築くも、これまでの経験は誰にも話すことはなかった。


そしてタイタニック沈没から84年後の1996年、101歳となり孫のリージーと共に悠々自適な老後生活を送っていた最中、ロベット率いるタイタニック調査チームがジャックの描いた若かりし頃の自身の肖像画を発見したニュースを見たことで、ロベットの元へ赴きこれまで封印していた自らの過去を話す決意をする。


日本語吹き替え担当一覧編集


余談編集

上記の通り中盤でローズはアンドリュースに対し「救命ボートの数は乗客全員を乗せるのに足りないのでは?」と疑問を投げかけたが、実は当時の救命ボートは事故が起きた際に乗客を船から脱出させるためではなく、救助に来た船に乗り継がせるために活用されていたのである


本作の時系列である1910年代は大型船舶はそれまで沈没までに丸一日以上要するのが通例であったことから、沈没までの間に救難信号を出し、救助に来た船に乗客を避難させるのが当時の救命活動の手法であった。そのため搭載数が乗客全員分ないのはなんら不思議ではないし、抑も救命ボート自体用意されていない船も普通に運行していた


結果としてその懸念は的中したとはいえ、この時の彼女の指摘は当時の価値観からしてみればさぞ疑問であったと言わざるを得ない。第一タイタニック沈没自体当時としては数々の前代未聞が重なった大事故であったのだから尚更である。


尚、この直後ジャックによって別室に連れ込まれた際に彼から「君はわがままで、甘やかされて鼻持ちならない子」と明け透けな評価を受けていたが、ジャックはこのようなローズのお嬢様らしからぬ大胆な言動を見てそう思ったのだろう。そして同時に『ローズは只の世間知らずなご令嬢ではない』と彼の富裕層へのイメージを取り払う事にもなったに違いない。


当初の脚本ではローズが母ルースの手によってコルセットを締め付けられるシーンは母娘の位置が逆だったが、監督がこれを今の形に変更。この時代の女性の束縛と抑圧の暗喩ともいうべきこの描写はケイトたちも同意見であり提案を考えていたという。


関連イラスト編集

タイタニックRose's Dresses


関連タグ編集

TITANIC ジャック・ドーソン キャルドン・ホックリー

青き海の心

Mrs.カルバート…老後の名前。

…事故生還後に名乗った名前。

ケイト・ウィンスレット


サラ・コナー本作と並ぶ監督の代表作のヒロイン。に直面しながらも、一人の男性との運命的な出逢いを機に徐々に逞しい女性に成長していく点が共通している。

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