運命の恋。
誰もそれを裂くことはできない。────
概要
1997年12月19日に世界同時公開。監督はジェームズ・キャメロン。主演はレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレット。配給は20世紀フォックス。
運命的な出逢いから惹かれあう主人公たちの恋愛模様を主とした周囲の関係者たちの人間模様を描いた前半と、鬼気迫る沈没描写とそれに翻弄される乗客・船員たちの運命を描いた後半の二部構成となっており、パニック映画としての評価も高い。
実在した豪華客船・タイタニック号を題材とした最も代表的な映画作品である。
2012年4月には、同船の沈没から100年を記念して、修正を加えた3D版が上映された。
船舶、及び事故に関する詳細はタイタニックを参照。
作品解説
上映時間は194分と、単発映画としては異例の長さの大作となっている。
これは現代を描いたイントロとスタッフ・ロールを除いた本編の尺が、タイタニックが氷山に衝突してから完全に沈没するまでに掛かった2時間40分の時間になるよう合わせたためである。
撮影はタイタニックの調査と徹底した科学検証を行った上で実行され、原寸大のタイタニックのレプリカを幾つか建造して撮影するなど、名作と謳われているだけあって気合いの入れぶりも尋常ではなかった。またモブを含めた役者たち一人一人にも、わざわざ講師を呼んだ上で当時の立ち振る舞いを徹底的に指導させていた。タイタニックの機関はレシプロ蒸気エンジンだが、機関室のシーンは同じ構造のエンジンを持つリバティ船「ジェレマイア・オブライエン」で撮影されている。しかしリバティ船のエンジンはタイタニックのエンジンより小さかったため、CGで足場や作業員を追加している。
そして公開されるや否や世界的なヒットを次から次へと塗り替え、ついに興行収入は21.9億ドルを達成し世界第1位となった。この記録は2009年に同監督作『Avatar』に抜かれるまで塗り替えられることはなかった。そしてその年の米アカデミー賞も14部門でノミネートされ、その内11部門を受賞、名実共に世界的な名作となった。無論本作で主演を務めたレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの出世作となったことは言うまでもない。
セリーヌ・ディオンの歌う主題歌『My Heart Will Go On』も世界的な大ヒットを記録した。
日本での興行収入は現在第3位(1位は『鬼滅の刃 無限列車編』、2位は『千と千尋の神隠し』)であるが、実写作品および洋画としては第1位の記録を守り続けている。
恐らく多くの方は本作をきっかけにタイタニックとその事故の存在を知ったであろう。
本作を監督したジェームズ・キャメロン監督もその1人で、本作を制作したことを切っ掛けに沈没船の探索をはじめとする海底探索の分野でも大きな活躍をしていくことになる。
当初の制作費は8000万ドル程であったが、ジェームズ・キャメロン監督による上記の撮影に対する並々ならぬ熱意から最終的に2億ドル(約240億円)にまで膨れ上がった。
そのため20世紀FOXは「キャラクターグッズの販売が見込めない」、「続編が作れない」などの理由もあり当初は企画に対し後ろ向きであったが、他にその年の目玉作品になりそうな作品がなかったことから最終的に(渋々ながらも)ゴーサインを出したという。
ただしこれでもかなり削減された方であり、あまりにお金がかかりすぎてキャメロン監督は実質ノーギャラで撮影に挑んだだけでなく、当時住んでいた自宅まで売りに出したという(ちなみに、その間は当時交際していたリンダ・ハミルトンの元へ居候していた)。
上述のように上映時間は194分という驚異的な尺の長さだが、これでもかなり削減された方。そのため監督は構想時のいくつかのシーンを泣く泣くかなりカットせざるを得なかったという。
それで尚世界的名作と謳われているのだから、本来の姿は半端ないスケールであったであろうことは想像に難くない。
ちなみにキャメロン監督は1994年の『トゥルー・ライズ』の撮影時点で上記の『Avatar』の構想を練っていたが、製作予算と当時の技術の限界からもう一つの念願であるタイタニックをテーマとする作品にシフトチェンジしたとのこと。
一見すると作風がラブロマンスであることからアクション系が主なキャメロン作品としては異質と思われがちだが、主人公であるジャックとローズの物語に於ける交流や心情の変化は監督の出世作である『ターミネーター』を連想させることから、実は原点回帰とも言える作品である。→参照
劇中でも、ジャックが上流階級の乗客になり済ますためにそこら辺に立て掛けてあった上流階級の乗客のコートと帽子を無断で持っていくなど、ターミネーターシリーズを思わせるシーンがある。
また『ターミネーター』及び『2』や『エイリアン2』など、過去の監督の作品に出演した俳優も再出演している。
主演のレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレッドは、後年2009年に公開された『レボリューショナリーロード/燃え尽きるまで』で夫婦役で再共演し、他の本作のキャストの幾人かも同作に出演した。
あらすじ
1996年。トレジャーハンターのブロック・ロベットは、かつてタイタニック号とともに沈んだとされる宝石「碧洋のハート」を引き上げるべく、調査を開始。1等客室から発見された金庫を開くと、中から古ぼけた紙切れが現れる。そこには「碧洋のハート」を身に着けた女性が描かれていた。
ブロックがこの絵をテレビで公表すると、一本の電話が入る。それはかつてタイタニック号から生還したという100歳を超える老女で、絵のモデルだというのだ。
ブロックに招かれ、孫たちと共に調査船を訪問した老女、ローズ。彼女はブロック達にこの絵が描かれた真相を語り始める。それは、誰にも知られることのなかった壮大な愛の物語だった。
-タイタニックは"夢の船"と呼ばれていた…本当に…"夢の船"だった-
登場人物
演:ケイト・ウィンスレット(若年期)、グロリア・スチュアート(老年期)
本作の主人公の一人。イギリスの名門家・ブケイター家の長女。
母から金の為に望まぬ婚約を強いられ、鬱屈した日々を過ごしており、思いつめて自殺を図ろうとしていたところにジャックと出逢い、次第に生きる活力を取り戻していく。
タイタニック沈没事故を生き延びた後は実家と決別し、アメリカで女優となり、やがて現地の男性と結婚する。
そして1996年、100歳を越え悠々自適の老後を送っていたある日、偶然TVで若かりし頃の自身の肖像画がタイタニックから引き上げられたというニュースを目にし、孫娘と共に発見者であるロベットたちの探査船へ訪れ、タイタニックでの体験談を孫とクルーたちに語り出す。
キャラクターのモデルはダダイズムの母と呼ばれた芸術家で、絵画、演劇、陶芸と幅広く活躍したベアトリアス・ウッド。
劇中でもローズは当時まだ無名だったピカソやモネを評価し、後に女優となるなど、その才能を見せている。
本作もう一人の主人公。画家を志す旅人の青年。
サウサンプトン港のパブにてポーカーに勝利しタイタニックのチケットを手に入れたことでタイタニックに三等客として乗船することになる。そこでローズと運命的な出逢いをし、彼女と次第に惹かれあっていく。
キャラクターのモデルは作家のジャック・ロンドン。ジャック・ロンドンは、若さに任せてホーボー(放浪の労働者)としてアメリカを渡り歩いた経験を記した「放浪記」で知られている。
ジャックも画家として成功する日を夢見ながら、気ままな旅を続ける破天荒な青年として描かれている。
演:ビリー・ゼイン
ローズの婚約者。大富豪の御曹司で将来を期待された有能なビジネスマン。
ローズに対しては一方的な愛情を抱き、彼女の心情や趣味を全く考慮せず、自らの財力でアピールしている。また自身よりも下の地位の者に対する偏見意識も強い。
タイタニック沈没時はローズと惹かれ合ったジャックへの憎悪や生存欲求から、ジャックに宝石泥棒の濡れ衣を着せる、駆け落ちするジャックとローズへ発砲する、一人の少女を「自分以外身寄りがない」と嘘をついて救命ボート乗船しその後ボートへ集まった他の乗客をオールで殴りつける、などといった人間的な醜悪さを露わにする。
タイタニックの船長。これまでに多くの船の舵を執ってきた経験豊富かつ優秀、責任感に溢れた名船乗りで、人々からの信頼も厚い。
タイタニックの次席一等航海士。運命の4月14日深夜の航海、船長の代わりにブリッジ指揮を担当していた最中に氷山に遭遇する。
タイタニックの設計主任。イズメイの意見を尊重したり、航海中も船の細部を抜かりなくチェックするなど、設計士の誇りと責任感に溢れた人物。
最後は「もっと自分が頑丈な船に設計していればこんなことにはならなかった」と責任を感じながら脱出しようとはせず、静かに最期の時を迎える。
一等客室の乗客の一人。他の一等客と異なり、平民の出身から富豪へとのし上がったことで、「成り上がり者」と罵られている。ジャックが一等客のパーティに出席する際には彼の身形をプロデュースした。タイタニック沈没時には乗った救命ボートを漕いでいた船員に対し海に投げ出された乗客乗員の救出に向かうよう促した。
彼女は後にタイタニック号事件の被害遺族のための募金団体を創設している。
タイタニック探査チームのリーダー。タイタニック沈没と共に失われたとされる「青き海の心」を探し求めており、ある日の調査で目当ての宝石を身に付けたジャックの描いた当時のローズの肖像画を発見したことでローズと出会い、彼女の体験談を聞くこととなる。
ローズの孫娘。100歳を越えたローズの身の回りの世話をしている。ロベットが若かりし日のローズの肖像画をタイタニックから発見したことで、彼女と共に彼の探査船に訪れる。
テレビ放送・日本語吹き替え版
放映時間があまりにも長すぎるが故に、名作と謳われている割に日本では2023年時点で計6回(日本テレビとフジテレビがそれぞれ3回ずつ)とTV放映された回数は決して多くはなく、放映されても2週に分けて放送されることが殆ど。ビデオ版も、前後編に分けて発売されている。
記念すべき初めてのTV放送も2001年と、公開から実に4年後のことであり、大ヒット映画のテレビ放送としては異例の遅さとなっている。
もっとも、現在はレンタル事業や動画配信サービスが充実していることもあり、それを利用すればテレビ放映を待たずとも視聴すること自体はそこまで難しくはなかったりする。それでも、全編通して観るとなるとかなりの長時間拘束されることになるので、そのあたりは覚悟しておいた方が良いだろう。
日本語吹き替えキャストはソフト版・TV放映版・機内上映版のそれぞれで異なる役者が起用されている。
フジテレビ版
2001年、2004年、2023年に放送。このうち、2004年は前編と後編とに分けずに一挙に放送した現状唯一のケースとなっている。
初のTV放映となった2001年のフジテレビ版では相当な予算があったようで脇役に久米明や羽佐間道夫といった重鎮や江原正士、堀内賢雄といったベテラン声優を惜しげもなく据えた上で(これはモブも例外ではなく、池田秀一氏や立木文彦氏などといった大物声優がチョイ役を演じている。しかも兼役もしている)、ジャック役に妻夫木聡氏、ローズ役に竹内結子氏が起用されたが、妻夫木氏と竹内氏の余りに不自然な演技から作品の雰囲気をぶち壊しているなどと巷でかなりの酷評を買い、このバージョンは「ホットペッパーのCM」などと揶揄されたりと特に評価が低い。視聴率がなんと35%もあっただけに批判は凄まじく、フジテレビ公式サイトの掲示板が番組に対する抗議の書き込みでサーバーダウンを起こしたほどであった(参照①、②)。
同バージョンの再放送は当然一度もなされず、妻夫木らのキャリアからも抹消されるなど数々の禍根を残した。この二名の担当したパートは洋画の日本語吹替音声の中でも有名な封印作品となり、悪い意味でのレジェンドとして語り継がれてしまっている(一方で「ちゃんとした吹替、あるいは字幕で観たい」と思った視聴者が映像ソフトを購入し、それらが大きな売り上げを収めたというちょっと良い話もあった)。担当した二人が共演するドラマの製作現場でもその話題は禁句とされていたという。
この反省を踏まえてか、2004年のTV放映版吹替ではジャック役とローズ役の箇所はプロの声優を起用して差し替えている(このうち、ジャック役は、ディカプリオをいくつかの作品で吹き替えた経験のある内田夕夜氏が担当している)。
2023年の放送時は、新規の収録は行われず、松田洋治氏がジャック役を務めるソフト版をデジタルリマスタリングしたものが放送された(ソフト版がテレビ放送されるのはこれが初めて)。
なお、この放送が行われる少し前に、タイタニック号の観光ツアー中に潜水艇が沈没し、乗員5人全員が死亡した「タイタン潜水艇沈没事故」が発生していた。タイミングがタイミングなだけに放送の自粛を求める声も多かったが、フジテレビ側はホームページ上で、「タイタニック号見学ツアー中の潜水艇で乗客乗員が死亡する事故が発生しました。犠牲となられた方々に心より哀悼の意を表します。」という追悼のメッセージを送るとともに、予定通り放送することを決定。前編の放送時には、冒頭で「本日の土曜プレミアム『タイタニック』前編では潜水艇探査機のシーンが含まれています。ご懸念のある方は、ご視聴をお控え下さい。」という一文が表示される措置が取られた。
日本テレビ版
2003年、2008年、2021年に放送。
2021年に金曜ロードショーにて5月7日と14日に前後編で放映されたが、前回の2008年から実に13年ぶりである。
なお、日本テレビ版では、ジャック役を2003年に初回放送されてから一貫して石田彰氏が務めているのだが、同氏は同年人気を誇る『鬼滅の刃』にて猗窩座を演じていたこともあって、話題をさらに掻き立てた。特に、前編でのジャックの「本物のパーティに行かないか?」という台詞が猗窩座のあの台詞を彷彿とさせるとネタにされた。
尚、猗窩座が初登場した劇場版『無限列車編』は現在日本映画の興行収入第1位であり、石田氏は洋画と邦画それぞれでトップを飾る作品の主要キャラを演じたことになる。
機内上映版
飛行機でのみ鑑賞可能な機内上映版の吹替ではジャックをレオナルド・ディカプリオの初期の専属声優であった草尾毅が担当している。ただ、草尾氏本人も未だに鑑賞出来ておらず、「誰か観せて」と嘆くほどの大変貴重な音源となっている。
余談
【Come, Josephine, In My Flying Machine】
本作の時系列である1912年当時の流行歌。主人公の飛行機乗りの男性が「Josephine(ジョセフィーヌ)」という女性を自分の飛行機に乗せるという内容。
劇中ではジャックが船首部でローズの手を広げた際に、ローズがタイタニック沈没後にドアの残骸の上で夜空を見上げた際に其々が口ずさんでいる。
カットシーンではジャックとローズが三等客のパーティーからの帰り際に二人で歌唱する場面がある。
予告編
関連イラスト
関連タグ
クレヨンしんちゃん(原作漫画):作中では「限界丸」というパロディ映画が登場していた。
ときめきメモリアル2:作中1年目6月からの1年間、映画館で「沈没船恋物語」というパロディ映画が公開されている。
名言・名シーン
Life's_a_gift I'm_flying! Promise_me A_Promise_Kept