概要
「あのやろう、うまいことやって一文ちょろまかしやがった」
江戸時代、時刻をあらわすのに2時間を一刻として0時が九つ、2時が八つと下がっていき、10時の四つになったらまた12時九つと呼んでいたことから
そば代を渡すときに一枚ずつお金を出していき、途中で「今いくつ(何時)だっけ」と聞くことで帰ってきた答えの分お金をごまかすお話。
「ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな、やあ・・おいオヤジ、今何時だい?」「へぇ九つでさぁ」「とお、じゅういち・・・」
といった具合。
ちなみにこの噺は「それを見ていた男がまねをしようとして早く出てしまい失敗する話」でもある。
「ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな、やあ・・・おいオヤジ、今何時だい?」「へぇ四つでさぁ」「いつ、むう、なな、やあ・・・」
また前半の「うまくだました男」がそば屋を褒めちぎり「気持ちよくだます」のに対し、「まねしようとした男」がだまそうとするそば屋が褒めようにもほめられないとんでもない店であったりする。
ちなみに、上方落語では「時うどん」という題名になっており、二人連れである。
お金を一枚ずつ渡す際の「今何時だい?」のやり取りが印象的で、様々な作品でネタとして用いられ続けているためか、「寿限無」や「まんじゅうこわい」と並び「元ネタの噺は見た(聞いた)ことが無いが、何故か誰もが(主に作中の要素を)知っている」噺のひとつとしても有名である。
余談
冒頭に登場する花巻、しっぽくはあまり見られない銘柄になってしまったが、花巻そばとは焼き海苔を散らしたもの、しっぽくとは今でいう五目そばのこと。また、この話のように冬場には屋台で温かい蕎麦を好む文化が育まれているが、江戸で温蕎麦が好まれるようになったのは元禄時代以降のことである。