曖昧さ回避
蕎麦粉
蕎麦の種を挽いた粉は蕎麦粉と呼ばれる。
●一番粉:胚乳の中心部分のみを利用した粉。
●二番粉:胚乳と子葉の一部を利用した粉。
●三番粉:胚乳の一部と子葉、甘皮の一部を利用した粉。
●末粉:子葉と甘皮を利用した粉。
一番粉は味と食感が優れ、末粉は栄養価が優れる。
玄そばを直接ひいた全粒粉は「ひきぐるみ」と呼ばれる。
中世以前の日本では、水かお湯を加えて加熱した蕎麦掻きとして食べていたが、現在は「蕎麦」と言うと通常は「蕎麦切り」の事である。
海外では蕎麦粉で薄いパンケーキ(ガレットなど)を焼いたりする他、小麦粉と混ぜてパンを焼いたりといった利用法が見られる。
イタリアでは「ピッツォッケリ」というパスタに用いる。
ロシア・ウクライナ・東欧諸国では「ブリヌイ」(パンケーキ)や粥やピラフ状にした「カーシャ」にして食べる。
朝鮮半島では平壌発祥の「ムルレンミョン」(水冷麺)、江原道(カンウォンド)地方の郷土料理「マッククス」は麺に蕎麦粉を使用する。
ネパールでは蕎麦掻きのような「ディロ」や無発行のパン「ロティ」にして食べられる。
栄養
米や小麦粉と違い精白せず用いられることが多いため、高い栄養価を誇る。
特にビタミンB1やビタミンB2、マグネシウム、食物繊維等が多い。また、大豆ほどではないがタンパク質も豊富で、アミノ酸スコアも植物性食品の中では優秀である。
また、ポリフェノールの一種であるルチンも豊富に含まれている。
同じ麺類として用いた場合、(十割蕎麦や二八蕎麦など蕎麦粉の割合が多いものは)麺単体の栄養価ではうどんやラーメン等を遥かに上回る(但し、うどんやラーメン等もトッピングで栄養を補うことは可能)。
ゆでた後のそば湯にも栄養分が含まれているため、蕎麦屋では食後に提供する店もある。
麺類の「蕎麦」
蕎麦粉を調理して細長い麺にした「蕎麦切り」は一般に蕎麦と呼ばれ、茹でて食べる。
蕎麦粉の生地は粘りに乏しく、蕎麦粉100%の十割蕎麦を長い麺にするには技術が必要で、高級品として扱われる。
多くの蕎麦にはつなぎとして小麦粉を混ぜられており、ヤマイモや布海苔などもつなぎとして用いられる。蕎麦専門店の蕎麦は小麦粉2割蕎麦粉8割の「二八蕎麦」が標準。つなぎを使わない十割蕎麦はつながりにくいことから麺もつなぎを使ったそばより太めなことが多く、蕎麦粉の特徴が良くも悪くもはっきりと表れる。蕎麦本来の風味を最も味わえることから、薬味を使わないというこだわりを持つ人もいる。つなぎを使った蕎麦が十割蕎麦に比べて質が落ちるとは必ずしも言えず、十割より喉越しがよく滑らかだとして二八の方を好む人も多い。十割と二八の中間の「九割蕎麦」を売りにする蕎麦店もある。
さらに小麦粉と蕎麦粉の割合が2:10の「外二」、3:10の「外三」、3:7の「七割蕎麦」「三七そば」、4:6のそばもある。
しかし、安い蕎麦だと往々にして小麦粉の方を多く使っており、立ち食いそば店などの安い外食店などでは蕎麦粉の使用量が極端に少ない(蕎麦粉2割の「逆二八蕎麦」と言われる)業務用の蕎麦が使われ「茶色いうどん」だと揶揄されることも。酷い場合は蕎麦粉を一割しか使わず、水増しと喉越しをよくするためのリン酸ナトリウムなどが混ぜられていることもあり、このような粗悪な品は蕎麦らしい香りは到底望めない。
しかし、小売店で流通する乾麺はJISの規定で蕎麦粉の割合が決まっており、「そば」を名乗るには蕎麦粉を3割は入れなくてはいけない。この規定はカップ麺などにも適用され、蕎麦粉の割合が極端に低い商品は無い。
蕎麦切りは茹でた後、冷水でぬめりを取る。蒸篭や笊に盛り、蕎麦猪口のつゆに漬けて食べる盛蕎麦(もりそば)や笊蕎麦(ざるそば)、熱湯で温め直してから丼に入った熱いつゆの中に入れた掛蕎麦(かけそば)などが一般的な食べ方である。
薬味としてネギや紫蘇やみょうがを合わせたり、種物として汁に卵やかまぼこ、天ぷら、鶏肉などの具材を入れたものもある。
蕎麦切りは戦国時代に信州(長野県)で誕生した(諸説あり、それ以前に西日本で誕生しているという説もある)。大阪城築城工事を機に関西圏を中心に広まり、営業形態を整えたそば店として日本最古とされる「砂場いづみや」が難波の名物として大繁盛していた記録が「摂津名所図会(1794年)」に詳細なイラスト入りで残る。
江戸時代には江戸(東京)に進出して根を下ろし、現在も東京では蕎麦の人気が高い。江戸で蕎麦が持て囃されたのはいろいろな理由があり、江戸患いとまで言われsた脚気対策、上方への対抗意識、濃厚なツユ文化に合っていたことなどが挙げられ、寿司、天ぷらと並び江戸の三味といわれた。
江戸時代末期には蕎麦粉の仕入れ値が小麦粉に比べ割高となり、関西圏では安価なうどんを好む人が増えたため、明治に入ると大阪の麺類市場から蕎麦はほとんど姿を消した。このため、関西圏においては関東ほどそばの専門店は多くない。また、うどん屋がうどんだしで温蕎麦を提供することが多かったため、温蕎麦を好む文化が生まれた。後に出雲や北陸の蕎麦職人が大阪へ進出し、多数の店を開いているが、それでもなお温蕎麦が主流である。大阪独自の蕎麦として湯がいた蕎麦を蒸籠に載せ、溶き卵を絡めたツユで供する熱盛がある。
うどんが主流の地域でも、京都など蕎麦の産地が近い所では、専門の「蕎麦屋」が時々見られ、にしんそばは京都から生まれた蕎麦。懐石、料亭や高級割烹では供される事もある。
蕎麦を専門とする蕎麦屋が存在したり、大晦日に年越し蕎麦を食べる風習を持つ地方もあったりなど、日本人にとって存在感ある食べ物である。そのため、蕎麦粉を使っていない小麦粉の麺もソバと呼ぶことがある(例:支那そば、沖縄そば)が、上述のJISの規定との兼ね合いで問題になったことも。
公式のマナーではないが、世界的にも珍しい音を立てて食べることが世間一般で認められている料理であり、軽快に音を立てて啜るのが「粋」とされる(個人差はあるが、音を立てて啜ることで蕎麦の風味をより感じられるようになる効果もある)。起源は諸説あるが、忙しい江戸っ子が思い切り息を吹きかけた上ですすることで食べる時間を節約し、口腔内のやけどを防ごうとしたという説が有名。
落語の時そばでは、いかに蕎麦を美味そうにたぐっているように見せるか、が落語家の腕の見せ所である。
とはいえ、もともと日本料理でも音を立てて食べる行為は本来マナー違反である。最近では麺類であっても音を立てることをよしとしない欧風の食文化が浸透したことや、聴覚過敏あるいは服が汚れるという理由で音を立てて食べる行為は忌避される傾向が強まっており、特に若年層に顕著であるとされる。
かといってとろろそばで音を立てて食うなとかいう無理難題を押し付けているわけではない。
そば料理一覧
ざるそば | もりそば | かけそば |
---|---|---|
天ぷらそば | 月見そば | たぬきそば |
きつねそば | とろろそば | かしわそば |
カレーそば | コロッケそば | にしんそば(京都府) |
おかめそば | 茶そば | へぎそば(新潟県) |
わんこそば(岩手県) | 出雲そば/割子そば(島根県) | ねぎそば/高遠そば(長野県・福島県) |
瓦そば(山口県) | おろしそば※ | おろしそば※(福井県) |
※「おろしそば」は『大根おろしに出汁を加えてつけツユにする』食べ方と、主に福井県で食べられる『大根おろしを乗せて出汁をかける』食べ方(ぶっかけ)がある。
関連イラスト
表記揺れ
関連タグ
『ギャグマンガ日和』に登場する曽良と芭蕉のコンビ⇒(曽芭→そば→蕎麦)