「正義を行えば、世界の半分を怒らせる」
解説
押井守の初実写監督映画作品であり、後にケルベロス・サーガと呼ばれる作品群の第1作に当たる。
出演者は主演の千葉繁を始めとして、鷲尾真知子や田中秀幸、玄田哲章などの『うる星やつら』で共演していた声優やアニメ業界関係者が数多く参加。スタッフも脚本の伊藤和典など『うる星やつら』の関係者が参加し、小道具も多くはスタッフの持ち込みかゴミ捨て場から拾ってきた物(曰く「バブル時代だったから、何でも捨てられていた」)という自主製作映画に近い体制で制作された。
当初16ミリフィルム撮影で500万円から600万円の予算を予定していたがプロカメラマンを起用して35ミリフィルムで1000万円という話になり、最終的に2500万円になったものの、全体的にはかなりの低予算で仕上げている。
予告や宣伝記事では主人公・紅一が着用するプロテクトギアが前面に出されて、あたかもアクション映画であるかのようであったが、アクションはプロローグの僅かな一部のみで、後はその後日談、映像はほぼモノクロ、台詞中心のストーリー構成となっている。
一部の評論家には「ゴミを並べて作ったゴミみたいな映画」(押井守本人も半分認めてる)なんて評価もされた一本だが、この作品で得られた様々な人脈と経験は後の押井にとって重要な財産となっている。
ケルベロス・サーガの一本ではあるが、設定がまだ固まっていなかったこともあり、後の作品群と比較すると一部の設定や時系列に異なっている部分が見られる。
あらすじ
20世紀末、凶悪化する都市犯罪に対し、警視庁は特捜班を結成。プロテクトギアと重火器で武装した彼らは<ケルベロス>の俗称で呼ばれた。
しかし非情とも言える苛烈な捜査活動は世論の非難が集中し、組織は解体を余儀なくされるが、組織の一部は武装解除に抵抗、突入班・都々目紅一だけがプロテクトギアと共に国外逃亡を果たす。
3年後、大きなトランクを抱えて紅一が帰ってきた。しかし『街』はあまりにも変わり果てていた・・・。