辺境の星を照らす紛い物の太陽‥‥‥見納めだな
cv:喜山茂雄
概要
『宇宙戦艦ヤマト2202第三章』に登場する、帝星ガトランティス 第八機動艦隊の司令官。
階級は不明だが、当艦隊の指揮官であり、劇中では提督と呼ばれている。また、指揮官を示すであろうロングコートを纏っている。容貌は、知的な印象を与える細めの顔立ちと、鋭い視線を持っており、やや波打つ様な髪形が特徴的。その容貌からも推測できるように、沈着冷静な提督とされている。
座乗艦は、白に灰色の迷彩塗装をしたカラクルム級戦闘艦である。ズォーダーの命を受けて、推定で数百万隻ものカラクルム級戦闘艦で構成される第八機動艦隊を率いてゾル星系へ侵攻してきた。部下に前衛艦隊司令官コズモダートがいる。
元ネタ
原作『宇宙戦艦ヤマト2』には同名のガトランティス軍一般兵士、メーザーが登場するが、容貌は短髪にこめかみまで伸びる眉毛と2202のメーザー提督とは似ても似つかず、階級もヤマト2の一般兵に対し高級指揮官級と全く異なっている。
一方で、劇場版『愛の戦士たち』を制作するうえで、松本零士氏が描き起こしたプロット案の内、彗星帝国軍(当初プロット時の命名は遊動彗星バルメーダ)組織図の中に本土防衛艦隊に位置づけられる彗星圏特別防衛艦隊が設定され、その指揮官がメーザ提督と記載されている。
ヤマト2202ではこちらの原案プロットの設定を流用した可能性が考えられるが、確定的な情報では無いので早合点しないよう注意されたし。
経歴
第3章
太陽系攻略のためコズモダート率いる前衛艦隊を先んじて侵攻させ、第11番惑星の防衛戦力を無力化すると同時に、救援に来たヤマトも先遣隊らしきカラクルム級戦闘艦6隻の雷撃旋回砲の同時使用(インフェルノ・カノーネ)による攻撃で崩落した岩塊に閉じ込め、動きを封じる(ここまでは第2章での内容で、メーザー本人の登場はない)。
そして直後自らは万単位ものカラクルム級戦闘艦からなる第八機動艦隊を引き連れて到着する。
ヤマトが岩塊の下で未だ健在であることはコズモダートが掴んでいたが、メーザーは第八機動艦隊のカラクルム級全艦で巨大な砲身を形成する戦法、レギオネル・カノーネによる地球の破壊を優先し、ヤマトは捨て置くことに決める。
この判断には、レギオネル・カノーネは数十万単位のカラクルム級を使い捨てるため帝星最高位ズォーダー大帝の使用許可がなくてはならないこと、砲身を形成する陣形形成に時間を要すること、そして、第11番惑星から地球を狙うエネルギー源として人工太陽を利用する関係で、攻撃のタイミングと人工太陽が砲尾に到達する瞬間を合わせる必要があるなど、レギオネル・カノーネの実行にともなう様々な条件が背景にあったと思われる。加えて、波動砲を使わないと決めているヤマトには、どうすることもできない、という大帝の後押しも関係しているであろう。
しかし、第八機動艦隊の陣形が整い、人工太陽が砲尾に到達しようとする、まさにその時間になってヤマトが瓦礫の中から浮上。地上から人工太陽の核を波動砲で狙撃した。人工太陽の核が破壊されたことで生じた大規模な波動共鳴によって、メーザーの旗艦を含むレギオネル・カノーネの発射態勢に入っていたカラクルム級全艦は、機関部へ致命的なダメージを受けて瞬く間に動力を失ってしまい、第八機動艦隊まるごとが、単なる金属の塊でしかなくなり、第11番惑星の軌道上を無力に漂うだけとなってしまった。
ただただ、驚愕するしかできないメーザーだが、さらにヤマトの古代進から
「直ぐに太陽系から離脱せよ」
と警告を受ける。
ガトランティス人には、勝利か戦死かの二択しか思想がなく、この常軌を逸した警告にメーザーは、ズォーダーに対する通信で
「理解が‥‥‥理解が出来ません!」
と戸惑うほかなかった。
そして、立ち去るヤマトを眺める事しかできなかったメーザーは、ヤマトに対して強い憤りと言い知れぬ感覚を覚え、震え立つのだった。
第4章
屈辱的な大敗北と、古代の理解しがたい退避勧告を受けて、元来の冷静さを失ってしまったメーザーは、感情の抑制に支障をきたしてしまう。ヤマトが第11番惑星を立ち去った後、彼は大帝からの命令を無視して、独断でヤマト追撃に動いていた。
この命令の内容は、劇中で明かされていなかったが、小説版では、地球軍に行動不能となった第八機動艦隊が、地球防衛軍らに鹵獲運用されることを懸念して、ズォーダーからゲーニッツを通じて爆破処理を命じられていた模様。
勝利を目前にして立ち去った古代の行動と警告に理解が出来ず、半ば混乱しており、敗北した自分達を殲滅せず、更に捕虜にもしなかったことを、ガトランティスの戦士として最大の屈辱を受けたと妄執染みた憤怒にとらわれていた様子で、
「このままでは、生きることも、死ぬこともままならん!」
と、独断でヤマト追撃を決めたのである。
行動不能にされた指揮下のカラクルム級を、修理も補給もままならない状態で無理矢理に再起動させ、オーバーロード状態にさせながら進軍を続けた。無理の多い再起動のため、行動可能であったのはたった数十隻にすぎず(小説版で補足された規模であるが)、そのわずかな艦さえ無茶な行動に耐えきれずに爆沈する艦が続出した。
その様子に疑問の声をあげた部下のコズモダートへも、ヤマトへの殺意を語ることで同調させ、共にヤマトを撃滅する事だけを考え突き進んだ。
なお、この追撃の途中、彼は命令違反を重々承知していた節があり、
「例え大帝の命に逆らい、地獄の炎に焼かれることになろうとも‥‥‥我らはぁ!!」
とコズモダートに言い放っていた。これが直後、本当にその通りになってしまうのである。
このヤマト憎しから来る感情によって、独断で追撃に移ってしまったメーザーの行動を知った帝星ガトランティス首脳部からは、不要な感情に汚染されているにすぎないと見なされ、この事態を目撃した青年将校のミルからは
「大帝の完全なる軍を穢した汚染物質」
なる侮辱的な評価をされていた。
そして、ここで予想外の人物――アベルト・デスラーの乗るノイ・デウスーラが航路上真正面にワープして現れる。デスラーはズォーダーの命によって、第八機動艦隊の残存艦の処分を任されていたのである。
そうとは知らず、メーザーは真正面に現れたデスラーによって放たれたデスラー砲をまともに浴び、自身が処分されることに理解できず
「何故だあああ!」
と最期に叫びながら自分が言ったごとく地獄の炎に焼かれ、全残存艦隊共々何も成し遂げることなく消滅してしまった。
そして、残存艦隊の消滅を知ったゲーニッツからは「汚染艦隊」と吐き捨てられ、もはやまっとうな戦力としての扱いもされることもなかった。
小説版
劇中では、理解不能な感情によって、己の赴くままに動き出していたメーザーであったが、小説版第3巻では、彼が抱える焦りが描写されていた。
全艦に対する自沈処理を、思わず感情的に止めさせたメーザーは、己の内に芽生える不合理な感情の原因が、全てヤマトにあるとした。そこから彼は、収まらぬ感情を処理するためにはヤマトを沈めるしかないと判断。これが、ズォーダーの勅命に背くことになるのは自明の理だったが、どうせ死ぬのであれば、戦って死ねばよい(ヤマト撃沈後に、大帝に命じられれば、尚更それに従う覚悟だった)と、正当化してしまったのである。
加えて、ガトランティス特有の、「クローニングによる世代継承」と「敗軍の将に席なし」も、彼の独断行動の遠因とも言えた。代々として、先代から教えを受け、それを自身が預かるクローンに教育を施し、新たな自分にするのが通例だった。だが、敗北した指揮官においては、自身のクローンに指揮官としての権限が継承されない恐れがあったとされる。
メーザーの幼生体が、実際にそうなるのかは不明だが(後のゴーランドも、幼生体ともども敗北したが、新たな幼生体が誕生している。なお、それが新たなゴーランドの名を継ぐかは不明確)、サーベラなどが口癖のように言っていた事もあったことから、メーザーはこれまでにない強い危機感を抱いていた。下手をすれば、辺境で暴れまわっていたようなゴラン・ダガームの様な、三線級の部隊指揮官にされてしまう懸念もあった・・・・・・と言うよりも、それで済めばいい方だともされる。
このことも絡んで、ヤマトへの追撃を強行したとされる。