「私が、この宇宙を救済しよう。あの時、約束した通り・・・・・・君の為に」
声優:山寺宏一
概要
「宇宙戦艦ヤマト2199」シリーズに登場する人物。オリジナルシリーズに登場したデスラー総統をリメイクしたキャラクター。
『2199』と『2202』以降で監督・脚本が交代しており、設定変更なども含めデスラーの描き方が変わっているため、本記事では両者を分けて記載する(念のため書くと両者は間違いなく同一人物である)。
デザイン
オリジナルでは少し若めのイケオジという感じの容姿だったが、本作では外見年齢がやや下がり、現在で言うイケメンに該当するレベルへと変更されている(設定年齢も『2199』時点では32歳相当と若い)。
これについて、デザインを担当した結城信輝氏は、パンフレットに掲載されたインタビューにおいて、
「旧作のデスラーが何歳なのかわかりませんが、古代のライバルキャラとするには、やや年齢が上じゃないかということが、当時から個人的に引っかかっていたんです。もうひとつ、今回はデスラーにローマ帝国皇帝のイメージをダブらせたのも、若くしようと思った理由でした。デスラーはあのガミラス帝国を一代で築き上げたのか、それとも代々世襲されてきた総統の地位を何らかの形で手に入れたのかはわかりませんが、いずれにせよ知略謀略なしには為し得なかったわけですから、そうした非情な辣腕家、若きネロやコモドゥスの様なカリスマであることを感じさせたかったんです。」
と語っている。
宇宙戦艦ヤマト2199までのアベルト・デスラー
大ガミラス帝星の永世総統。大小マゼラン銀河を治める大帝国の指導者として君臨している。
年齢は地球の年齢に換算して32歳相当。
性格
旧作と比べると部下に対して寛容で意外と情もあり(その特殊能力故に囚人惑星に不当収監されていた幼い頃のミーゼラ・セレステラとミレーネル・リンケを保護・引き取った点が顕著)、加えて全宇宙の平和を実現するために、敢えて侵略という手段を選ぶなど理想の上司的な面が強化された。
一方で、かなり冷めた人物としても描かれており、「この星にしがみついて、何になる」と言うなど、ガミラス星への愛着もほぼ皆無。
実際、ガミラス統一後はどうも施政に倦んでいる様であり、その事もあって自身の誕生祭の催しの中で思いがけぬ敵手として目の前に現れたヤマトに強く興味を抱いていた。また、劇中では一度自身の暗殺未遂事件が起こっているが、これに関しても退屈しのぎ程度にしか考えていなかったようである。
また、旧作(厳密には『新たなる旅立ち』から)同様スターシャを愛しており、他惑星への侵略という手段も愛する彼女の思想『世界の救済』を実現するために、最大限尊守して導き出した答えである。セレステラに対しては、彼女を誤射した際の動揺ぶりから、彼女とミレーネルに対して保護者的な情愛を抱いていたのは確かであると思われる。
一方で、宴の席で乾杯の音頭に入る前に酒に酔って醜態をさらした官僚の1人(この人にはドーテム・ゲルヒンという身も蓋もない名前が設定されている)を、「ガミラスに下品な男は不要だ」と言って容赦なく粛清するなど、原作と同様の非情な面を垣間見せることもある。
手腕
デスラーの軍事的・政治的手腕に関して、オリジナルの様に艦隊を率いる場面が無いゆえに推測することは非常に難しいものの、軍事と政治の両方において、並以上の手腕を有していると考えられる。
まず内乱時代にあったガミラス星そのものを統一したのは、紛れもないアベルト・デスラーその人である。年齢からしてまだ20代ほどを推測されるが、某金髪皇帝並のスピードでガミラス星を統一した。しかもその勢いで、大マゼランと小マゼランの統一をも、アベルト一代で成し得てしまったのである。
また人材の登用も巧みであったとも言える。小説版でも明らかにされたが、ガミラス統一の為に、ガル・ディッツやヘルム・ゼーリックを自分の陣営に引き入れて戦いを優位に進めていった模様。その後も、タラン兄弟やギムレー、或は異種民族であるセレステラも登用して、デスラー政権の強化に繋げていった。
スターシャとの関係
オリジナルシリーズにおけるスターシャへの愛を考慮してか、予めに彼女に対して愛情を持っているよう描かれている。しかし、その愛情はスターシャには届いてはいなかったようで、虚しくも片思いと捉えられる雰囲気であった。
それでも交友関係はあり、デスラー自身がイスカンダルに赴いていた頃にもあった模様(言及は出来ないが、それらしい場面が回想シーンにある)。その際にイスカンダルとガミラスの大統合を宣言しており、スターシャは思想の違いから否定的であった。
とはいえ愛している女性の想いを代弁するが如く、デスラーは自らが武力をもって銀河を統一し平和をもたらさんと誓った。それが一種の愛情表現ともいえ、その辺りは彼の不器用さとも言えるだろう。しかし残念ながら、スターシャが振り向いてくれるという結果には繋がることは無かった。
だが、愛する1人の女性の為にマゼラン銀河を統一してしまったという結果そのものについては、彼の手腕の高さを示しているだろう。
経歴
マゼラン統一まで
現在のガミラス帝国の前身であるガミラス公国時代に、公国統一を成し得たエーリク・ヴァム・デスラー大公が死亡したことにより内乱に突入。その長く続いたガミラス星の内乱時代を再び制したのが、デスラー一族の家系に生まれたアベルト・デスラーである。
彼は英雄として、ガミラス臣民達からは絶大な支持を寄せられた。彼はガミラスの統一後に、「イスカンダル主義」を唱えると軍事力を背景にして幾多もの国家を征服していった。これにより、イスカンダル主義を銀河全体に広め、スターシャの思想による平和を、代わりに実現せんとしていたのである。軍事的圧力もありながらも大マゼランと小マゼランを見事に制覇し、その後も天の川銀河へと矛先を向ける事となった。
暗殺未遂まで
冥王星基地がヤマトに壊滅させられて以降、デスラーは次第にヤマトへ興味を示しだす。決定的にマークしたのは、グリーゼ581における作戦失敗の時である。この時初めて、デスラーはヤマトと言う名前を覚えると同時に、そのヤマトが向かう先にも興味を持った。それが実は、イスカンダルへ向かっている事を突き止める。
するとデスラーは、対ヤマト迎撃の為にドメルを召還する。表向きは小マゼラン防衛司令官としての功績を讃える叙勲式ではあったが、銀河方面作戦司令長官に任じるとともに、邪魔になるであろうヤマトの討伐を任せる為でもあった。
しかし、こののちに問題が発生した。貴族社会の復権を望むゼーリックの暗殺計画が、セレステラの情報網を通じて発覚したのである。しかしデスラーは、敢えてそれを黙認して泳がせることにした。デスラーはわざとバラン星視察をリークさせたうえで影武者を乗せた。これに見事に引っかかったゼーリックは、暗殺とクーデター計画を決行。
デスラーは次元潜航艦で悠々とそれを眺め、バラン星観艦式に見せかけた大規模なクーデターを発動させる直前に、彼自身が通信回線を全開にしてゼーリックの計画を暴露。ゼーリックを弁解の余地なしの境遇に追い込んでいった。この一連の行動に対して、デスラーは退屈しのぎ程度にしか捉えていなかった模様だが、それでいて、ゼーリックを窮地に追い込むなど策士的な一面も見せた。
大統合宣言まで
バラン星のゲートが、ヤマトによって破壊されてしまい、主力艦隊が置き去り状態になってしまった中で、デスラーはドメルを登用し迎撃に向かわせた。その際にユリーシャ・イスカンダルの救出も要請しており、これが無ければヤマトは撃沈していたと言えるだろう。
しかし救出は出来てもドメル以下艦隊は全滅と言う結果に終わってしまったが、デスラーはドメルの盛大な国葬を執り行った。そして同時に、実は救出したのが偽者だと知りつつも、ユリーシャこと森雪を、そのままイスカンダル第三皇女として扱い公式の場に出す。
すると大々的に、イスカンダルとガミラスの大統合が承認されたと嘘の発表を行ったのである。彼にしてみれば、本物であろうと偽者であろうと、臣民の眼にユリーシャとして映れば十分だった。こういった発想の転換を直ぐにできるのも、デスラーの特徴である。
本土決戦まで
イスカンダルとガミラスの大統合を前にして、デスラーはヤマトを利用した遷都作戦も実施しようと試みる。彼自身は総統府の中に設置されていた、デウスーラⅡ世のコアシップに乗り込み、そこで指揮を執っていた。
序盤戦では、デスラー砲による一撃で抹殺しようと試みたものの、僅かに射線軸がズレてしまい、第5惑星エピドラを粉砕するに終わってしまう。本星へ急接近するヤマトに対して、今度は航宙親衛隊が迎撃に出るものの、あくまで形だけの演出であって本気ではなかった。
またスターシャからは、通信越しでデスラー砲の開発と使用に強く抗議の意を示されたものの、彼もまた地球のヤマトが同等の兵器を装備している事を告げる。すべてはスターシャの為にしている事であると認めてほしかったが、思いは伝わることは無かった。
ヤマトが航宙親衛隊の迎撃を突破して総統府に突っ込んできたと同時に、コアシップで脱出。そのまま衛星軌道上にあった機動都市第2バレラスの、デウスーラⅡ世本体とドッキングした。その際に機動都市のコントロールを奪い、一部区画を落下させて帝都とヤマトを纏めて消滅させようと図った。同時に第2バレラスが新たなる都市となることを宣言する。
しかし、区画の落下が波動砲によって防がれてしまうと、今度はデスラー砲による射撃で仕留めようとする。これに反発するヴェルテ・タランだったが、デスラーは受け入れなかった。それでも彼自身は、臣民に多大な犠牲者が出ることは理解しており、さらにそうした手段を使うことへの罪悪感もあった。それ故に自分の手で実行してその罪を一生背負い続ける覚悟もしてはいた。また、小説版では、その経緯が詳しく掲載されている。
だが結局のところ、そのデスラー砲発射においても邪魔が入り失敗。雪とオシェット伍長が、第二バレラスの波動コアを暴走させた為である。第二バラレスの波動コア暴走と大爆発に巻き込まれて、一時は消息不明となった。(後にヤマトの地球への帰路を描いた劇場作『星巡る方舟』にて、ガミラス暫定政権がデスラーを戦死と公表したことが明示されている。)
最後の戦い
ガミラスでは公的には死亡扱いとなったが、実際は爆発直前にワープして離脱し、デウスーラⅡ世共々健在であった。画面上は分かりにくいが、バレラス崩壊時に青い一筋の線が確認でき、これがワープしたデウスーラⅡ世であると推測できる。
その後、ゲール艦隊と合流を果たし、そのままヤマトを鹵獲するために亜空間内で最後の戦いに挑む。バラン星で待ち伏せしたゲールがヤマトをゲートに追い込み、その後の亜空間戦にてデスラー自身が奇襲を仕掛けて制圧に乗り出した。アンドロイド兵が上手いこと制圧していき、デスラーも自ら乗り込むこととなった。
艦内に乗り込んだ先で森雪と再会する。彼女を捕えたデスラーはヤマトの艦長(沖田十三)の元へ案内することを要求。しかし、総統が存命だと知り、狂喜して駆け付けたセレステラがデスラーへの呼びかけを感応波として浴びせてしまい、驚いたデスラーは反射的に発砲してしまう。撃たれたセレステラは勿論、デスラーも驚愕しており、まさか彼女がここにいるとは思いもよらなかった。故意に撃ったわけではなく、撃った時の動揺がその証拠であろう。
そこで始めて雪に、デスラーの口から「スターシャの為に戦い続け、銀河の平和を成し遂げようとしてきた」と告白される。その後、セレステラがデスラーの暴走を止めようと腕に発砲、そのまま心中しようとしたものの、側近たちによって射殺された。
同時期にアナライザーと新見のサイバー攻撃でガミロイドが全滅したため、ヤマトを拿捕する作戦は失敗に終わったことを悟ったデスラーはヤマトから離脱。デスラー砲でヤマトを吹き飛ばそうとするものの、三式弾の実弾兵器によってデウスーラⅡ世は予想外の反撃を受けてしまった。
満身創痍になったデウスーラⅡ世では、艦橋にいた部下達は倒れ伏し、デスラー自身も重傷を負ってしまう。燃え盛る艦橋の中で、デスラーは意識を朦朧とさせながらも、スターシャとの約束に思いを馳せながらデスラー砲を発射しようと引き金を引いた。
しかし、波動エネルギーの暴走に耐え切れずデウスーラII世は爆沈。母艦共々亜空間に散ってしまう(ただし、このシーンをよく見ると、艦橋部がロケットらしきものを噴射して離脱している様子を確認できるため、死亡していないのではないかという見方もこの時点で既にあった)。
オリジナルとリメイクの印象の差
リメイク版
2199版のデスラーにおいて、視聴者(特に旧作ファン)の間からは『美貌なだけの小物』等と言う感想を持つ者も少なくない。その理由の一つとして、冷めた性格や政治を丸投げしているの原因と考えられる。その極め付けとして633工区の落下という暴挙も含まれている。
アニメにおいては、この行為はイスカンダルとガミラスの大統合のための通過儀礼である、と当人は明かしているが、やはり尺の都合上からか、さらに詳しい事は述べられていない。しかし、小説版における宇宙戦艦ヤマト2199(下巻)では、この行為に対して補足されている。
デスラーが言うには、自己保身にひた走る官僚や、再び権力を得ようとする旧貴族に呆れていたらしく、さらに帝国臣民が勝利を続けるガミラスは無敵であると信じ、逆に敗北に対する恐れや恐怖と言った危機感を知らないでいること事体に、危機感を感じていた(勝利には対価を必要とするのに、彼ら臣民はそれを支払おうともしないことにも不満があった模様)。
怖いもの知らずな臣民を目覚めさせるためにはどうするべきか。それを解決する方法が、自国民のいる都市を攻撃に晒すことであった。自国に対する攻撃は、臣民に対して危機感をもたらす重要な薬となる、と彼は考え、実行のための機会を窺っていたのである。
そして、そこにヤマトという絶好の存在が現れた。デスラーはヤマトが自分の所(総統府)に来るであろうことを考慮しつつ、予め考えていた自国民の通過儀礼をこなそうとしたと考えられる。実際、アニメ版では、デスラーが総統府を脱出した後に『予定通りだ』と発言する辺り、ヤマトの襲撃を考慮していた可能性が高い。
オリジナル版
では、オリジナル版のデスラーは完璧な指導者と足り得るのだろうか、と問われると疑問点の多きところである。上記に記された通り、オリジナルファンの多くの言う『武人で紳士なデスラー』とは、あくまでも第2作目以降からのデスラーであって、本当に比較すべきデスラーは第1作目におけるデスラーと言えよう。
リメイク版とは違い、オリジナル版ではガミラス帝国は、(当初はストーリーにあったが)クーデターやらが起きる程に危機的状況にあった訳ではない。よって本国には十分な戦力が残されていても不思議ではなかった。にもかかわらず、デスラーはガミラス本星そのものを戦場に設定しており、さらには天井都市そのものをミサイルとして転用するなど、かなり強硬な手段に出ている。さしものヒス副総統でさえ、あまりの無茶な命令に驚愕していた。
また本国の命運をかけた一大決戦であるにもかかわらず、その決戦は彼にとって一番楽しい時間でしかなかったようである。その楽しい時間で、彼は大切な母なる星であった筈の本土を戦火に晒し、果ては星の死期を大幅に縮めてしまったのである。早い話が、デスラーはヤマトを甘く見ていたが為に招いた結果でもある。
この様に、民族の為に戦い続けたはずのデスラーが、余力のあったであろう艦隊戦力を投入することもなく、ヤマトをわざと引きずり込み、自らの手で本国を危険に晒したうえに、結果として死に追いやったという矛盾が生じている。余裕のあった艦隊戦力と言われているが、これについては実際の所艦隊戦力がガミラス本星に存在しえない可能性もあるため確実にあるとえいないことに注意する必要がある。
バラン星失陥後のドメルは宇宙戦艦ヤマトを撃沈するために3段空母3隻、戦闘空母1隻からなる部隊を編成しているが、これらの空母部隊の艦長兼飛行隊長は着任のあいさつとして、ルビー戦線、サファイア戦線、ダイヤ戦線、オメガ戦線からきたといっており、このことから2199と異なりガミラスはマゼラン星雲内もしくはその近傍で、ガミラスと明確に交戦している勢力がいることになる。
ガミラス星は寿命が間近であり、そのために移住先の惑星を求めて武力侵攻を開始し、多正面作戦を展開していたとなれば、ガミラス艦隊は各地の戦線の維持に手一杯で、戦況に応じて自由に動かせる予備戦力は払底していた可能性もある。
ドメルが七色星団の戦いにおいて、バラン星失陥以前から率いていた艦隊を1隻たりとも率いていなかったのは「各戦線から空母を引き抜いた代わりに、戦力の穴埋めとして送り出された」と解釈すれば、辻褄は合う。
勿論デスラー個人のガミラスが地球に敗北するわけにはいかないという個人的プライドも影響していたかもしれないが、艦隊戦力が必ず余裕があったとは言えない。寧ろハイドム・ギムレー率いる親衛隊航宙艦隊がいた分『2199』のほうが余裕があったと言えるかもしれない。
方や『2199』版は、やり方が過激であることは免れ得ないとしても、始めから本国や国民に対する執着がない分、自分の手で命を奪うと言う行為は矛盾を生じにくくさせている(アニメ版での説明が足りなかったが、それを小説版が大きく補完した)。
宇宙戦艦ヤマト2202以降のアベルト・デスラー
オリジナルがそうだったように、リメイクシリーズでもデスラーは続編で引き続き登場する。
本シリーズではガミラスが滅亡していないため、デスラーは亡国の指導者という立場ではなく、「デスラー艦隊」としてガミラスとは異なる勢力のリーダーとなっている。
また、オリジナルの続編でのデスラーの目的は「ガミラスの復興」だったが、本シリーズではガミラスが存続しているため「ガミラスの民を守る」というオリジナルでは描かれなかった目標を掲げたデスラーが描かれる(厳密にはオリジナルも第一作はそうなのだが、その時のデスラーは悪の帝王然としたポジションのため描写としては異なる)。
性格
基本的には『2199』のものを引き継いで入るが、新たに加えられた背景事情により、(隠されていた本心という体で)内面が変化している。
ざっくり言うと『2199』では「スターシャのみを愛し、ガミラス臣民のことなど駒程度にしか思っていない冷淡な指導者」だったのが、『2202』以降は「ガミラス臣民を心から大切に思う指導者」(もちろんスターシャも愛している)に変わっている。
まず、ガミラス星への執着の薄さは、ガミラス星の惑星としての寿命が近づいている事実があり、他惑星への移住を彼が考えているためとされた。さらにもう一つの追加設定として、ガミラス人はガミラス星の環境下でしか長く生きられない体質を持っており、移住可能な星が極めて限られていた。
この2つの問題は、アベルトによる大ガミラス帝星の成立前のガミラス公国時代から指導層であるデスラー一族を始めとする一部の人間しかその事実は知らされておらず、その秘密会議の場に居合わせてしまったことで、秘密保持のために叔父のエーリクに殺されそうになるが、兄であるマティウスの執り成しでその秘密を守るメンバーの一人となってその場を生き残り、その後のガミラス統一をデスラー一族と共に成していく。
ガミラスの拡大政策も移住先を発見するための方便であるとされ、デスラーは版図拡大そのものに対してはさして興味が無かった。むしろ大小マゼランを完全に支配下に収めてもなおガミラス人の移住可能な星が見つからないことに焦りすら覚えていた。
ガミラス統一の中で肉親を失い、民を絶望させないために寿命問題を開示することもできず、本来同志である者達も一部はデスラーを裏切って勝手に行動を始めており、デスラーは孤独に苛まれながら刻一刻と迫る滅亡を回避する手段を見つけられないまま日々を過ごしていた。
『2199』第におけるガミラス星の決戦でのデスラーの凶行(帝都バレラスの破壊とイスカンダルとの大統合)も、精神的に限界が近く半ば正気を失っていたところに、裏切り者がイスカンダルを脅すために作った兵器の破壊する、バレラスを破壊することで強制的にガミラス人をガミラス星からイスカンダル星に避難させる、など複数の目的が重なった結果及んだものであったとフォローされた。
そして『2202』本編のデスラーは、ただひたすらガミラスの民の存続のみを目的に動くことになる。
『2199』で自分が犯した凶行を後悔しており、次にガミラスの民が「デスラー」の名を欲したとしても、それは自分以外の人間であると考えていたが、次の「デスラー」候補からガミラスの命運を託されたことで、再び立ち上がる。
『2205』では「ガルマン星」という移住先を発見・確保することに成功したことで、それまでの作品に比べて幾何か穏やかな態度を見せている。しかし……(後述)。
家族
『2199』では、叔父エーリク・ヴァム・デスラーなる人物が設定上存在しているとされているだけであったが、『2202』において、デスラー一族の身内が明かされている。
アベルト自身は、デスラー一族の次男となっており、その上に兄のマティウス・デスラーがいた。マティウスはガミラス統一戦争の英雄として尊敬されていたが、そういった才幹が、弟であるアベルトと比較されてしまい、重圧として重く圧し掛かっていた模様。
父は幼いころに既に亡くなっている。母はアデルシア・デスラー。アベルトは、母親からはあまり愛情を注がれていなかった様で、大半は父の面影を残していた兄のマティウスの方に向けられていた。
マティウスは既婚者で、その妻と甥にあたるランハルト・デスラーがいる。
兄が若くして亡くなった際、周囲からは「デスラー家は呪われている」等と陰口を叩かれており、さらに母親の情は亡くなった兄に向き続いていた。加えて、マティウスの死後に総統となった後にマティウスの元妻に暗殺されかけると言った事態にも見舞われた。全ては兄であるマティウスと言う巨大な存在に対する他からの自身への重圧。ガミラスの将来を守らねばならぬ立場という重責がアベルトの精神に歪みを掛けた要因ともとれる。
ちなみに小説版『2202』では、エーリクにも娘が2人いることが明かされているが、2人とも有体に言うと俗人である。
経歴
宇宙戦艦ヤマト2202
第10話のED後パートにて初登場。どのような経緯でかは不明だが彼の身柄をガトランティスが確保しており、対ヤマトの戦力としてズォーダーの指示で目覚めさせられる。ガトランティス幕僚陣からは余所者の様な目線を向けられていた。それでもズォーダーから艦隊を授けられ、ヤマト攻撃の戦法として任された際には「感謝の極み」と簡素に謝意を示した。また、ズォーダーが彼を選んだ理由の一つとして、「執念」を見たがっていた事にある。
続く第11話にて、デスラーは、与えられた新鋭艦ノイ・デウスーラと4隻のラスコー級突撃型巡洋艦を率いて出陣。傍らには監視役としてミルが同席しており、彼は「コスモウェーブ」という精神感応波によって逐一ズォーダーにデスラーの状況を報告していた。
ヤマト攻撃の前に、まずは独断行動中の第8機動艦隊ことメーザー提督らを処刑するよう命じられ、真正面からデスラー砲で第8機動艦隊を殲滅する。
その最中においてミルは、執念を始めとした感情はガトランティスにとって劇薬に等しい存在であるとして、第8機動艦隊が良き例であると呟いた。そんな感情というものは無用の長物であり
「正直、ヒューマノイドに関わるのは、ゾッとしませんね」
と発言している。
それに対して、スターシャへの特別な感情を寄せていた事のあるデスラーは
「時に取り返しがつかなくなるからね。感情に、愛に狂わされるという事は・・・・・・」
と己の体験を踏まえてミルに返した。
最初の命令を完遂したあと、デスラーはヤマト攻撃に移る。瞬間物質移送機により巨大ミサイルを送り込んで奇襲攻撃を図る。ヤマトの索敵圏外からの正確な転送座標を知り得たのは、スパイとして潜入した桂木透子の存在があってこそだった。コスモウェーブによって彼女の精神とミルの精神がリンクされたことで、捕捉圏外からの攻撃を可能にしていた。
やがてヤマトを全方位からミサイルで包囲するが、1箇所だけ抜け道を用意し、ヤマトがワープするように仕向けた。それはものの見事に成功し、超新星の残骸が濃密に充満する異空間へと誘った。自身らも追撃し、ヤマトへ攻撃を続行。
なお、この異空間ではコスモウェーブが制限されるのだが、デスラーそのことを知っていた。実はデスラーの真の目的はミルとズォーダー大帝の精神リンクを断絶させ、ガトランティスの監視下から抜け出すことであり、そのためにヤマトとの戦闘にかこつけてこの異空間へと入ったのだった。
最終的にヤマトは異空間からの脱出に成功するが、デスラーはガトランティスの軛を断つことに成功。ガデル・タラン率いるガミラス艦隊が合流し、ミルを拘束する。その後、ミルが外部との連絡を取れないように特殊な結晶石で独房を覆っていた。
そして第14話のラスト、テレザート星へ赴き、テレサに謁見していた古代、真田らに対面することとなる。
「ヤマトの諸君、久し振りだね」
第15話ではデスラーの目的が明かされる。彼はテレサの身柄を対価にガトランティスにガミラス人が移住可能な惑星の発見または創造を要求するつもりだった。クラウス・キーマンを仲間に引き入れ、ヤマトを捕縛し、テレザート星を占領した後、ミルに対して交渉を持ち掛ける。
しかしキーマンはデスラー体制派の内偵を行っていた二重スパイであり、ヤマトは脱出してしまう。そしてテレザート星は結界を張って再び姿を消してしまい、デスラーの目論見は崩れる。デスラー自身は「所詮手の内に収まるものではなかったか」と半ば予想していたようだった。
テレサのことは諦め、ガミラス本国に戻って再出発しようとするが、本国にいた旧体制派は一斉摘発されてしまい、それも叶わなくなる。
そこへミルがヤマトを倒せばガミラス人が移住可能な星を用意すると交渉を持ち掛け、第22話で三度ヤマトと相対。
しかし、デスラーは直前にヤマト(キーマン)に対して発光信号で存在を伝えており、彼が自身のところまでやってくるよう誘導した。
そして紆余曲折ありながらもノイ・デウスーラの艦橋で、デスラー、キーマン、ミル、古代の対話が行われる。ミルと古代を介してガトランティスとの和解の可能性が見え始めたが、デスラーの救助に来た親衛隊にミルが射殺されたことで、和解の可能性は潰えてしまった。その様子を見てデスラーは戦いの虚しさを覚えるのだった。
その後、デスラーはキーマンからガミラスの未来を託されると、トランジット波動砲の輻射からヤマト自身を守る盾としてノイ・デウスーラを提供し、去っていった。
最終話では彼をデスラー派ではないガミラス軍人たちが大勢出迎えるカットがあり、まるでデスラーが復権したかのような描写が見られるが、これについては続編で事情が補完された(後述)。
宇宙戦艦ヤマト2205
第1話より登場。「無限に広がる大宇宙」から始まる冒頭の語りは本作では彼が担当する。
本作では新造艦としてデウスーラⅢ世に乗っている。今までのデウスーラの青ではなく赤になっているが、性格の項で記載した通り本作序盤のデスラーは比較的余裕があるためか、本人は赤でも満更でもない。
前作の第23話~最終話の間にガミラス民主政府とコンタクトを取り、ガミラス星の寿命問題について情報を共有して協力関係を築く。
本作でのデスラーは現民主政府と協力してはいるが厳密には独立勢力という立場のままであり、言わば義勇兵のような立ち位置にある(だからなのかタランなどを除き「デスラー総統」ではなく「デスラー閣下」と呼ばれることが多い)。ただし、自艦隊の半数以上は民主政府から派遣された艦となっており、正規軍人であるフォムト・バーガーやヴォルフ・フラーケンも加わっている。
本作開始までにガミラスに似た新天地ガルマン星を発見。第1話でガルマンを牛耳ってるボラー連邦と交戦し、ガルマン星を解放することに成功する。
これによって移住計画が本格的にスタート。計画支援のため、ガミラス本星からやって来たディッツ提督の艦隊に跡を引き継ぎ、待機中の移民船団の迎えのためガミラス本星に向かう。
しかし、到着したデスラーの目に写ったのは、正体不明の敵の襲撃を受けて崩壊寸前のガミラス星であった。一人でも多くの住民を助けようとするが力及ばず、ガミラス星は多数の住民を巻き添えに爆発してしまう。
ガミラス星が崩壊する瞬間を見て悲しみにくれるが、直後に今度は双子星であるイスカンダル星が突如軌道を外れて漂流を始める。スターシャ達やイスカンダル星に避難した移民船団の残存船を乗せたまま……
デスラー艦隊総出で追跡に向かうも、その途中でガミラス星を破壊した張本人であるデザリアムが出現し、これと交戦。戦いはやがてイスカンダル大気圏内へ場所を移し、海上に漂う移民船団の真上で戦闘が繰り広げられる。次第に劣勢へと追い込まれるが、ヤマト艦隊の救援により難を逃れる。
その後、デザリアムのデーダー艦隊をヤマトが波動砲で撃破した後、巨大要塞自動惑星ゴルバが出現。敵本丸の登場にデスラーは怒りのデスラー砲を放つが、通用しなかった。
体制を整えるため一旦退いて古代達と情報共有を行い、連合艦隊を編成してデザリアムと交戦しながら次元潜航艦部隊を用いた移民船団の救出作戦を実行するが、デザリアムはガミラスに勝る次元潜航技術を有していたため失敗に終わる。
スターシャの呼びかけで戦闘が中断されると、彼女から古代と共にイスカンダル星の地下に呼び出され、そこでイスカンダルとガミラスの歴史の真実が語られる。その歴史はガミラスにとってはあまりにも残酷なものだった(詳細はイスカンダルの記事を参照)。
デスラーはその事実を知った直後、スターシャに銃口を差し向けてしまい、その後決別するかのようにその場を去ったが、それでもスターシャを愛する気持ちに変わりは無く、スターシャがゴルバを道連れに星を自爆させようとしていることを止めるため、デスラー砲を打ちながらゴルバに体当たりすることでゴルバの装甲にデウスーラ三世を突き刺し、ヤマトに自分ごと波動砲で撃つよう指示した。
しかしヤマトは違う方法を見出し、スターシャ達をイスカンダル星から脱出させることに成功。デウスーラ三世艦内でスターシャと邂逅する。しかし、脱出直後にゴルバを破壊するためにイスカンダル星を爆破したことで、既にスターシャも消滅する寸前だった。それでも、直接会って心を通わすことができ、デスラーの心は救われた。
そして、スターシャの遺した子供を古代に託し、移民船団とともに新天地ガルマン星に向かった。
余談
古代との関係
オリジナルシリーズでは、主人公古代進とデスラーはかなり深い関係にあり、まず第一作では最終話で直接相対し、互いに名乗り合って明確に存在を認識しあっている。『さらば宇宙戦艦ヤマト』で再会した時には「ヤマトの坊やか」「立派になったものだ」と感慨に耽っている。そして『さらば』のパラレルである『宇宙戦艦ヤマト2』にて両者の間にある種の友情が芽生え、『新たなる旅立ち』ではその友情からデスラーは地球へイスカンダル星の危機を知らせることになる。
一方リメイクではというと、『2199』では森雪との関わりが強く、古代とはオリジナルと似たタイミングで邂逅するものの、あくまで雪を彼女を助けに来た恋人という程度に留まり、直接会話することも無く、『2202』でテレザート星にて再会した時も名乗られるまで前作で会った男とは認識していなかった。
続く『2202』でも、デスラーが主に関わったのはクラウス・キーマン(ランハルト・デスラー)であり、古代とデスラーが腹を割って対話する機会はなかった。
『2205』でもデスラーの古代に対する認識は「ランハルトが未来を託した男」であり、優柔不断になっている彼に失望を覚えることもあったが、最終話にて彼がスターシャを救出してデスラーの心も救ってくれたことで、彼に感謝した。本作にてようやく古代とデスラーの間に個人としての明確な繋がりができたと言える。
関連イラスト
幼年時代
少年時代
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宇宙戦艦ヤマト2199 宇宙戦艦ヤマト2202 宇宙戦艦ヤマト2205
デスラー ガミラス スターシャ ミーゼラ・セレステラ ヴェルテ・タラン ガデル・タラン
マティウス・デスラー ランハルト・デスラー エーリク・ヴァム・デスラー アデルシア・デスラー