概要
『宇宙戦艦ヤマト2199』のアベルト・デスラー×スターシャ・イスカンダルのカップリング。
詳しいことは描かれていなかったが、『宇宙戦艦ヤマト2199』にてスターシャ・イスカンダルだけは公式の場を除き、彼のことをアベルトとファーストネームで呼んでいる。そのため、デスラーとスターシャが親密な間柄だったことを旧作以上にうかがえるようになった。
また、ある意味2199のストーリの中心とも言える。
続編である『宇宙戦艦ヤマト2205新たなる旅立ち』では二人の関係がより深掘りされており、ある意味この二人が物語の中心となっている。
二人の関係(2199)
公人としての関係
デスラーは星間国家・大ガミラス帝星の総統、スターシャはイスカンダル星の女王で二人は双子星の国家元首である(領土はけた違いだが)。ただしイスカンダルはガミラスでは信仰の対象とされており、スターシャ本人はイスカンダル猊下と敬称で呼ばれているため、公人としては神聖ローマ皇帝とローマ教皇のような立場であると考えられる。女王としてのスターシャは宇宙に戦火を広げるデスラーに抗議を幾度も繰り返していたようだ。
個人的な関係
一方、公人ではなく私人としての二人のはかなり親しい関係であった。
スターシャは劇中で唯一デスラーをファーストネームで呼べる人間であり、デスラーが唯一愛する存在でもあった。
明言されているわけではないが、友人以上の関係を匂わせる描写もある。
2199第二十四話の回想(小説版ではデスラーがガミラス総統に就任して間もない頃とされている)では、デスラーがイスカンダルを訪れ自身の夢を語る。それはガミラスとイスカンダルの大統合であった。スターシャはガミラス人とイスカンダル人の思想の違いと、自分たちの使命である「あまねく星々に住む知的生命体の救済」を理由に不可能と断言した。するとデスラーは言った。
「ならばその使命を私がはたそう。約束するよ。君の願いはこの私が叶えてみせる。そして宇宙に平和を。」
デスラーはイスカンダルの使命を受け継ぎ宇宙を救済することを誓った。この後、彼は「宇宙恒久の平和を達成させる為にはイスカンダル主義の拡大浸透が必要」であり「他星へ侵攻し武力をもって併合するのが神の意志でありガミラス民族の使命である」と説くデスラー・ドクトリンを宣言する。そしてガミラスは版図拡大への道へと進むこととなる。
すべてはスターシャのためだったのだ。
だがデスラーの"救済"は一方的なもので、ガミラスに従わない惑星は徹底的に殲滅するというスターシャの望まない形であった。
スターシャはイスカンダル女王としてデスラーに抗議を繰り返すが彼は侵略戦争をやめなかった(小説版では版図拡大政策の勝利に熱狂する民衆が政権の支持基盤であるために止めることができなくなったとされている)。
第二十三話ではデスラー砲を発射したデスラーに抗議する。
「デスラー総統、いったいどういうおつもりです?波動エネルギーを兵器に使用するなど正気の沙汰とは思えません。」
「抗議かね?」
「そうです。」
「抗議抗議、君がここを訪れるときはいつも抗議ばかりだ・・・。ならば、あのテロン人たちの艦にも抗議をしてはどうかね?」
「どういうこと?」
「君が呼び寄せたあの艦もまた、波動エネルギーを転用している。」
「そんな・・・。」
「そういえば、妹君の元気な姿、君も見てくれただろうね?私が命じて保護させたのだ。」
「何を考えているの、アベルト?」
「君のためにやっているのだ。」
「やめて・・・。」
「スターシャ・・・。」
「お願い!」
見つめ合う二人の雰囲気は友人以上の関係のように見える。もしかしたら二人はかつては互いに好意を抱いた関係だったのかもしれない。
ちなみにこの時流れたのは「孤高のデスラー」というBGMである。
「もうやめて、アベルト。」
孤高の独裁者の真意と愛
続編である「2205」では、デスラーのスターシャへの感情が深掘りされていると同時に、イスカンダル・ガミラスの起源に関わる、スターシャ側の複雑な事情も描かれた。
詳しくはガミラスとイスカンダルの記事をそれぞれ参照してほしいが、その真相を知ってもデスラーはスターシャへの愛を貫き、スターシャにイスカンダルを自爆させるという暴挙をさせたくないために、自ら敵艦に体当たりを敢行。旧作同様に「古代、私ごと撃て!」と懇願する。
だが、古代や土門たちの奮闘により、スターシャは敵の目を掻い潜り脱出に成功。
デスラーは愛するスターシャと対面することが叶うが、イスカンダルを失った彼女の体はもはや限界を迎えていた。
「その目、ずっと私を見ていてくれたのね」
デスラーを優しく抱擁したスターシャは、そう呟く。
「決して忘れません...ありがとう」
そう告げたスターシャの体は、デスラーの腕の中で光の粒子と化し消滅してしまった。
愛するスターシャの最期を見届けたデスラーは、誰もいない暗がりで、一人涙を流すのだった。
「最期に愛する人に会えたことで、救われた魂もあるはずだ」
そう土門に語る古代。
その言葉を証明するかのように、デスラーは別れ際に古代へ言った。
「感謝する古代、最期にスターシャに会えたこと。」
「たとえわずかな時間でも、この先生きていくに十分な力を得た。」
そして、デスラーは生き残ったガミラスの民を率いて、新天地へと向かうのであった。
もしかすると、その地に輝く衛星に付けられる名前は...
余談
- 旧作では、どちらかというと公人としての二人の関係しか描かれておらず、デスラーの明確なスターシャへの愛情が描かれたのは、旧「新たなる旅立ち」からである。
- なお、この作品ではスターシャは愛する古代守とイスカンダルに残留しており、デスラーからしてみれば、なかなかに辛い状態と言えるかもしれない。
- 対して、『2205』ではスターシャが守のことを愛していたこと、そして彼女が守の子供をみごもっていたいたことをデスラーが知っていたかは不明だが、消滅寸前にスターシャが長年の想いについに応えたくれた点では、ある意味旧作より救いのあるエンディングと言えるかもしれない。