無敵ガミラス、敗れること無し!!
CV:若本規夫
概要
『宇宙戦艦ヤマト』のリメイク作品『宇宙戦艦ヤマト2199』において、リメイク版新規キャラクターとして登場したキャラクター。
プロフィール
所属 | 大ガミラス帝星 帝星国防軍 中央軍総監部 |
---|---|
役職 | 中央軍総監 |
階級 | 国家元帥 |
人種 | ガミラス人 |
性別 | 男性 |
年齢 | 47歳相当(地球人換算) |
専用艦 | ゼルグート級一等航宙戦闘艦『ゼルグードⅡ世』(ネームシップ) |
人物像
大ガミラス帝星において、アベルト・デスラー総統に次ぐ権力を持つ人物。顎まで伸びたもみ上げが特徴的である他、話口調がいささか時代錯誤しており、常に大げさに芝居がかったような雰囲気(これに関しては中の人の演技の影響も大きいが)で、語尾には「~である」と付けたり、「吾輩は~」という一人称を用いたり、他にも「成敗!」などと言っている。
帝国の前身となるガミラス大公国時代においては貴族だった。その出自故、現在の二等臣民等が活躍できるような政治体制には、強い不満を抱いていた模様である。そのことから、旧貴族の復権を狙っていた。
因みに貴族出身の彼がこの地位についている由縁は、小説版『宇宙戦艦ヤマト2199(下巻)』にて明らかにされている。統一前のガミラス星にて、統一を目指すデスラーから、粗暴な戦い方成れども貴族の発言力の大きさや財力等を買われて、陣営に加わるように要請された。それに従い生き延び、現在の地位まで上り詰めたようである。
だが統一を果たした後は、先の二等臣民の優遇等の措置に不満を露わにし、かの貴族社会による復権を目論み始めていた。デスラーに対しては、表面上はわざとらしくも担ぎ上げて、賞賛の言葉を贈ったりしているものの、内心では忠誠など無かった。あくまで貴族の台頭を測る為に一時的に身を寄せていたに過ぎないと考えられる。
元々ガミラス人は純血を尊ぶきらいがあるが、彼は貴族出身であるが為にその傾向が強く、まるで絵に描いたような純血主義・差別主義者という性格の持ち主。
惑星オルタリアの反乱の際、惑星ジレル出身のミーゼラ・セレステラ相手に嫌味を言うなど現在のガミラス帝国政府が進める同化政策にも否定的な態度を見せている。ただ、排他主義ではないようで、邸宅ではオルタリア人とガトランティス人を奴隷として侍らせている。
人間関係
尊大な性格が災いしてか、友好的な関係の人間はいない(だが彼に同調する者は多いようである)。ガル・ディッツやエルク・ドメルを目の敵にしており、邪魔な存在であると目を付けていた。それはデスラーに対しても同様であり、いずれは自分こそが指導者になるべきだと確信を持っていた。
部下に「ゼルグートⅡ世」艦長のバシブ・バンデベル准将がいる。彼は完全に彼の下で動いており、最期まで上司の身を案じていた用である。一方で、媚を売ってきたグレムト・ゲールは、部下と言うよりも自分の都合の良い手駒という印象が強いと思われる。
軍事的能力
貴族としての影響力が多大なものである一方、軍事的能力は壊滅的なものであると言える。どうして国家元帥の地位に付けたのか不思議なくらいだが、やはり小説版の様な理由でデスラーの陣営に加担した事が理に働いたのか、或いは貴族特権等の影響が関与している可能性が高い。
彼の壊滅的な軍事手腕が明らかにされたのは、バラン星観艦式におけるヤマト乱入時のこと。小説版でも粗暴な戦い方とは説明されていたが、その実情はさらに酷いものである。数の優位を生かせる状況下にないにもかかわらず攻撃命令だけを出して味方を困惑させた他、損害を気にする訳でもなくゴリ押しよりも酷い惨状でヤマトを撃滅しようとするなど、明確な指揮も執らなかった。ゲールの方が余程に有能であると思えるほどの落差であった言えよう。
経歴
デスラー総統暗殺未遂事件まで
ゼーリックは表面上は、デスラーを賞賛し担ぎ上げていた。その姿勢は建国祭にも強く表れており、「まさに偉業、まさに神の御業である!」と称賛している。だが、自分が推薦したゲールが、総統の立案した作戦を失敗した他、観衆の目の前で見苦しい失態を演じてしまったことから、立場の危うさを感じたようである。
そのため、ゼーリックはゲールの更迭を勧告し、それが嫌ならヤマトを撃破して見せるように脅した。しかし結局は失敗を重ね、ゼーリックの言うとおりにゲールは更迭(地位の降格処分)されている。
また、ドメルの活躍ぶりが気に入らなかったゼーリックだったが、その鬱憤を晴らすべきチャンスが到来した。デスラーが秘密裏にバラン星の視察に行くと言うのである。さらに「ジレルの魔女」ことミーゼラ・セレステラもヤマトの鹵獲作戦でガミラスを離れていた。そこでゼーリックは、ドメル、ガル・ディッツ、そしてデスラーという邪魔な分子を排除すべく動き出す。デスラー座乗艦「デウスーラⅠ世」の機関部に細工を施し、自爆させるように仕組んでみせた。後は素知らぬ振りをして、いつもの様に会議へと顔を並べるのである。
作戦は成功した。「デウスーラⅠ世」はバラン到着前に謎の爆沈を遂げ、その訃報は帝国首脳部へと広がったのである。ドメルは暗殺疑惑を掛けられて死刑判決が下され、ガル・ディッツも拘禁されてしまった。この結果にはゼーリックは高笑いして喜び、このタイミングでバラン星観艦式を敢行。一大戦力約1万隻をバラン星に集結させた。
バラン星の遭遇戦、デスラーの生存
バラン星には1万隻に上るガミラス艦隊が集結し、バラン星周辺を隊列を組んで航行していた。その眺めは壮観と言えるもので、それを眺めるゼーリックは満悦しガミラスの力の象徴であると誇示している。そしてここで彼は、全軍に秘密事項とされているデスラーの死を、演説の際に述べるのである。
彼はデスラーの死を公表し、ワザとらしく涙を流すと言う演技振りを見せた。そして、その死を隠している政府高官を排除すべきである、と熱く語った。さらに自分こそが後を継ぐべき人間であるとして公言し、この場に集めた兵力を自分の指揮下に収めようと目論んだのである。もし成功すれば、1万隻の大艦隊を前に為す術は無かったであろうが、ここで乱入者が現れる。
ヤマトが突然、バラン星の亜空間ゲートから飛び出し、1万隻の真っただ中を驀進すると同時にあらゆる方向に攻撃を開始した。元々は観艦式の為に隊列を組んでいたのであって、戦闘には不向きなガミラス艦隊は対応に苦心する事となる。
しかし、ゼーリックはヤマトの撃沈を命じただけで、明確な指示はしない。よって、ガミラス艦隊は自らの陣形で動きを取る事も出来ずに、無理やりな砲撃戦を展開する羽目になった。味方艦同士のビームが交差し、味方艦に当たって撃沈するという惨状には、さしものゲールも驚愕して艦隊間隔を取ろうとしたものの、それを一喝されてひたすら数のごり押しを続けさせた。
被害は勿論甚大で、味方艦同士の誤射もかなり生じた。ヤマトがようやくバランに沈んだかと思いきや、今度は生きていたデスラーが通信回線に割り込んで登場。これにはゼーリックも焦りと動揺を隠せなかった。しかも、暗殺未遂事件の首謀者がゼーリック自身であったことが暴露され、もはや後戻りができない状態に追い込まれてしまう。
最後の最後まで見苦しく足掻き、自分の行動はガミラスの為を想ってのことだ、と叫んだが、そこでゲールに後ろから撃たれてしまった。
「愚かなりゲエエェル・・・・・・」
最期まで芝居がかったゼーリックであった。
続編では
『宇宙戦艦ヤマト2202』では回想シーンでセリフの無いモブとして数カットのみ登場する。
小説版では大ガミラス帝星設立前後の動向が語られる。
アベルト・デスラー勢力と貴族勢力の内戦に対して、当初中立の立場で静観をしていたが、貴族勢力がサレザー恒星系内でデスラーを始末しようと仕掛けてきて、十分な戦力の無いデスラー側(当時は「イスカンダルの目の届く範囲では戦わない」という暗黙の了解があり、サレザー恒星系にはあまり戦力を置かなかった)が不利になった際、自身の艦隊を率いてデスラー側へ合流。自艦隊とデスラー艦隊で敵艦隊を挟撃し、勝利する。この功績を以て、ゼーリックは大ガミラス帝星設立後における国家元帥の地位を手に入れ、大公国時代と変わらぬ権勢を持った。内戦の趨勢を見極め、最も自身を高く売り込めるチャンスを掴んだと考えると、彼の洞察力と強かさが窺える。
帝星設立当初から既に平民や二等臣民の登用には不満を持っていたが、そのデメリットよりも拡大政策による権勢強化のメリットの方が上回っていると判断したため、表立って反発することは無く、デスラー体制をどうにかしようとする旧貴族に嘆願されても相手にしなかった。結果、旧貴族は亡きマティウス・デスラーの妻にしてアベルトの義姉であるエリザを唆してデスラー暗殺を企てることになった。
漫画版
むらかわみちおの漫画版ではアニメ版に比較的準拠した流れをしているが、アニメと異なり最期を迎える直前にデスラー暗殺の罪を濡れ衣だと主張している。デスラーから暗殺計画首謀者の罪状を突き付けられた際に本気で訳が分からないという様子を見せており、彼の主張が本当であることが窺える。
さらにゼーリック絡みとは別の場面にて、エリーサ・ドメルの知人の外交官たちが茶会の場においてデスラー暗殺の話を聞いた際、「ついにやったか!」と歓声を上げ、今後の行動指針についても「かねてからの約定を果たすだけ」と述べていることから、暗殺計画は貴族派ではなく穏健派あるいはそれに近い勢力によって仕組まれたものであり、それをデスラー側が利用してゼーリックが排除されたという可能性が高い。
むらかわみちおはインスタグラムで「漫画版ではゼーリックを奸賊として扱っていない」と述べており、彼の真意は9巻以降少しずつ明らかになっていくとしている。
余談
名前や階級の元ネタは恐らく、ナチスの幹部にしてドイツ軍国家元帥でもあったヘルマン・ゲーリングと思われる。ただし、ナチスのゲーリングは
- 大言壮語、時代錯誤の貴族趣味
- 縦にも横にも大きい恰幅の良い国家元帥
- 戦略家としては有能とはいい難い
- (経緯は全く異なるものの)勝手に国家代表の継承を宣言した事で総統から裏切り者認定される
等々共通する点は多いものの、(当時のナチス政権内としては)苛烈な人種差別主義者ではなかったとされ、愛らしく憎めないキャラクターとして当時の大衆からはむしろ人気があったという。
ナチス首脳とはいえ明暗の二面は誰しもがそれぞれに持っており、その中でもわかりやすく悪い面を全て集めてできたようなキャラクターがこのゼーリックであろう。
因みにゲールも元ネタはゲーリングである。さらに同じくゲーリングを元ネタにした『宇宙戦艦ヤマトIII』のキャラであるキーリングも『2199』でネルン・キーリングとしてファンサービス的に先行登場。
したがって『2199』はゲーリングが元ネタのキャラが3人も登場しているという状態になった。