「ミニ四駆は速さこそが全てだ! 使い手の子供達のことなど気にする必要はない!」
プロフィール
概要
こしたてつひろ氏が原作の漫画『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』及び派生作品の登場人物。
フルカウルミニ四駆開発者の一人であり、無印編におけるの悪役組のボス。
原作では研究者であると同時に大神学園の理事長であるが、アニメではミニ四駆研究者の一面のみが強調されて描写された。
「子供達に純粋なレースを楽しんでほしい」考えを信条にする土屋博士に対し、大神博士は「最初から完成された速いマシンを作って与えてしまえばいい」という思想を持っていたため、非常に仲が悪い。
そこから完璧主義が高じたのか、「遅いマシンは存在してはならない」と考えが飛躍。研究所を火山に作ってテストコースのゴール付近を火口直上に通し、規定タイムを満たせないマシンはそこから落として消滅させるようにしていた。その挙句「マシンに得物(武器)を仕込んだバトルマシンで相手のマシンを破壊し、再起不能にしてゴールする」ことにまで発展してしまっている。
しかし師匠である岡田鉄心には頭が上がらず、土屋博士と共にたじたじにされる場面も。
アニメでは鉄心が研究所を訪れた際、鉄心の好みに合わせて飲み物を用意したり、鉄心に同行してきた星馬烈にも飲み物を差し出すなど、師との上下関係が窺えるシーンがある。
家族
家族としてアニメ版の『MAX』では娘の大神マリナ、原作続編の『Return Racers!!』では息子の大神陽人がいるが、姉弟または兄妹なのか、それともそれぞれの世界観で他方が存在しないのかは現時点で明かされていない。また妻の存在も原作でもアニメでも不明。
容姿
スキンヘッドに眉なし、目つきが非常に悪いという悪役のステレオタイプのような見た目と、左目にスカウターのようなものが付いたヘッドギアを装着している(なお作中時間の10年前の時点では身に着けていない)ので、頭身の高いナッパ様のようにも見える。
人物
悪役らしく傲慢かつ高圧的な性格で、Jの手を踏みつけたりレースに負けた沖田カイを捨て駒にし、『Return Racers!!』では息子のマシンを目前でかつ平然と踏み潰すなど、体罰・虐待レベルの暴挙に出る事も少なくない。しかしアニメ版は自身の危険を顧みないでマシンを助けようとする子供達の心配をするなど、完全に非情な人物というわけではない。
土屋博士や彼の作ったマシンを打ち負かすためなら手段もいとわず、思い通りにならないと取り乱すという少々大人気ない一面も持っている。
劇中であった出来事を例を挙げると、
1.プロトセイバーJBのセッティングをリモコンで調整出来る上に、星馬兄弟のセイバーにプロトセイバーJBが抜かれてそのままゴールされそうになると、わざとBB弾を発射し空気砲発射圏内に押し戻す。
2.土屋のセイバーの技術の原点を盗み出すため、ギャング二人を土屋研究所に送り込んだ挙げ句、土屋博士に向けて銃撃し、脅しをかける。 ※原作漫画に於ける当該エピソードでは、ギャングの片方が「ZZ社(読み:ダブルゼータ社)に頼まれた」と言っており、大神博士とは異なる者が差し向けた設定。ZZ社についての詳細は不明
3.大神軍団でグレートジャパンカップに唯一予選落ちした近藤ゲンを決勝に参加させるため、新たに予選(事実上の敗者復活戦)開催を決定する。
4.自身主催のカップに、自分らの部下だけに秘密の近道を教える。
5.レースがポイント制なのをいいことに、スタート前に味方マシンの一台をわざと他のマシンをブロックするだけの目的で使用する。
……特に、1、4、5に関しては、自分のバトルマシンが土屋のマシンよりも優れている証明にはなっておらず、ここまで来るともはやレースで勝利する事だけに固執している。
他にも、ZMCで作られたシャイニングスコーピオンを記憶を頼りにパソコンのペイントソフトを使い、マウスで無我夢中に子供の絵のようなレイスティンガーのデザイン案を描くシーンはシリアスな笑い(即席で描いたのだろう絵でも、ちゃんと図面になり製造される)。
以上のような態度や行為を平然とする様から、部下である大神軍団からもかなり反抗されており、実際に原作とアニメではいずれも、それが原因で部下が離れていくシーンが描写された。
しかし自分の思想や技術に興味を示したものには非常に優しく、アニメ版で星馬烈が大神研究所でマシンの開発をしたいと申し出た時は、快く引き受けるどころか積極的に手を貸そうとまでしている。
自身が生んだマシンを授けたレーサーには一切メンテナンスをさせないが、これは「土屋に自分が発明したものこそが優れていることを証明させる」という、技術者としてのプライドの高さから生まれている。
そのため大神軍団のレーサーは、「自分の手でマシンのメンテナンスをする」ということをしたことがなく、土方レイも鉄心に指摘されて初めて気が付いたほど。
技術力
バトルマシンの武器にばかり目が行きがちだが、純粋にマシン開発者として持っている技術の高さも本物。
土屋とは異なる方向で自身が設計し製造したマシンに独自の空力技術を取り入れ、実在の自動車と同じ機構を小型レーシングマシンに組み込んだり、高い技術レベルの特殊モーターやバッテリーなども開発し、土屋にはできなかった、劇中のSFMシャーシの製造にも成功している。
アニメの烈もこの点は評価しており、第45話「烈の裏切り!?ソニックVSマグナム」にて速いスピードを出せる大神製マシンの独自技術を盗み出し新たなソニックを生み出す事に成功した。
※原作では、『【無駄がなく静かな音を奏でる駆動系を持たせた高速マシン】を生み出せるのに、どうしてバトルマシンを生み出すようになってしまったのだろう・・・』と疑問を抱かれた
上述した技術力の高さからも分かるように、バトル要素抜きで普通に走らせても土屋博士のマシンに匹敵するほどの高い性能を持っている
プロトセイバーJB:空転防止の制御装置とギア比を任意で切り替える事が出来る。
ビークスパイダー:空力を最大限に活かして、空気抵抗を無視できる高速性能。
ブロッケンG:頑丈で超加速(ハイパワー)を活かしたドリフト性能。
レイスティンガー:赤外線反応機能の活用に不可欠な高いステアリング性能。
大神軍団に所属していたミニ四レーサーのほとんどが相手のマシンを壊すバトルレースより純粋にスピードレースをした方が楽しいと気付いてしまい、大神軍団から脱退しバトルレーサーから足を洗っている。そもそもプロトセイバーの空気砲の時点で前に出てからわざわざ相手を破壊するために減速するという本末転倒な代物であった。
なおカイや近藤ゲンが後に海外チームのコーチや代表に選ばれた事からも、人材の育成もかなり優秀だったりする。
しかし彼自身の根底は上記の通り、「ミニ四駆は、速さこそがすべて」という考えが、徐々に変化していき「遅いマシンは、研究対象にならないから壊す」になってしまっていたのが真実である。
「最初から速いマシンを子供達に与え、改造させる必要はない」という自身の考えと、「マシンは子供達が育てていくものであり、子供達を無視して速いマシンは生み出すことはできない」という土屋との考えが衝突したのが全ての始まりだった。
彼の常軌を逸した有り様は、一説では当時問題となっていた「オヤジマシン」への皮肉とも言われている。
また、原作とアニメ版(『MAX』)ではそれぞれ真逆の末路を辿っている。
原作の末路
無印編のクライマックス、レースをするうちに自分らのマシンに情が湧き始めた大神軍団三人に裏切られるが、自信作のレイスティンガーを量産化したレイスティンガー軍団を送り込み全てのマシンを破壊しようとする。
しかし、土屋サイドのマシン4台に大神軍団3台を含めたファイナルフォーメーションが起こした強風によりあっけなく吹き飛ばされゴールを許してしまう。
「……わしが、このわしが、あいつに負けるとは……!ふふふ……。ふははは!はーははは!!ひひひ……、このわしが……!」
土屋の教え子達に負け、自分の指導ではなく己のレースに目覚めた自分の教え子達にすら負け、自ら傑作と謳った技術さえあっけなく破壊された大神は自分が負けたのはあいつ(土屋)ではなく、独立した思考を持ち始めた教え子達という事実にさえ気付かないままただ発狂するしかなかった…
原作の出番はこれが最後で、WGP編以降は一切登場しない。
アニメ版『爆走兄弟レッツ&ゴー!!MAX』
ヘッドギアを外して髪を伸ばし、杖をついた姿で登場。
数年ほどで別人とも言えるほど歳を重ねたような姿になってしまい、かつての威圧感は無くなってしまっているが、高圧的な態度やバトルマシンを開発し続けるその姿勢は変わっていない。
娘のマリナに対しても厳しく接しているが、過去にファイヤースティンガーを娘の誕生日プレゼントとして作るなど、娘には不器用ながら親バカの一面を見せている。
実際に劇中では、幼い頃のマリナを抱いた写真が娘の部屋に飾られていて、その写真での彼は優しい笑みを浮かべており、父親としての一面が観られる貴重な場面が存在する。
ボルゾイタワーで開催されたM1グランプリにおいて、最初は父親の従いつつも、周りの説得で純粋なレーサーとして走り出した娘の姿に最初は反対していたが、次第に娘やマシンの走る姿を見るうちにかつての自分自身を思い出してついに改心し、マリナとのわかだまりも解消した。
MAX編に於ける大神研究所の外観は、無印編のような火山の中に作られた研究所ではなく、土屋研究所のようなごくごく一般的な建物になっていた。
資金力があるだけに、複数の研究所を持っているのだろうか?
原作版では量産型レイスティンガーを自身の最高傑作と自負していた一方、アニメ版ではファイヤースティンガー及び改修型のフェニックススティンガーを自身の最高傑作としている。
『爆走兄弟レッツ&ゴー!!Return Racers!!』
原作最終回から数年後の中学生編(8話)で登場した。自宅は大きな屋敷であることが判明した。かつてのショックが原因なのか認知症を患ってすっかりボケてしまい、自力で歩くことはできず、車椅子に乗っている。
豪達が自宅に来たのに陽気に笑い、土屋博士の人形(ツチヤくん)を抱いていたり(陽人曰く、「ツチヤくんを抱いていると機嫌がいい」)、かつての姿は想像もできないほどの有様で、最初は怯えていたJもむしろ怖くなくなったので喜び、豪もこの豹変ぶりには言葉を失った。
時折悪い笑みを浮かべるが、実際にはかつての悪役としての名残だったようで、特に意味はなかった。
「ツチヤくん」を抱いているのは、かつては土屋博士と敵対していながらも、「本当は自分を理解してほしかった」という思いの裏返しだった可能性も否定出来ない。
認知症に陥った件に関しても、実は上述の原作の末路から繋げてみれば十分に筋が通っている結末だったりする。今作は原作版の後日談にあたり、如何せんアニメ版の改心ENDの方が知名度が圧倒的に高いため、原作とアニメを混同しているファンが多いのも無理はない話である。
まさに様々な人物を傷つけ、悪事を繰り返した事への因果応報と言える。
同編では中学生になった近藤ゲンが新型のブロッケンGを使用しているが、大神博士がまだ健在だった頃に関与したマシンなのかは不明。
『爆走兄弟レッツ&ゴー!!スペシャル -ミニ四駆レーサー、大集合-』
『驚異の最先端技術、大神研究所』というコーナーを持つ。
自身が保有する技術の紹介と、研究開発されたモーターやバッテリーなどの他、実験も耐久テストや風洞テスト、耐圧テストなど土屋研究所以上の設備を披露し、最高傑作であるレイスティンガーの製造場面や実験場面を公開する。
……のだが、師匠の所でZMCの残骸を回収したり、自身が発明したマシンの悲惨な風景が流れる放送事故が発生し、そのままEDが流れてフェードアウトするという、コミカルな立ち位置になっている。
小話
大神博士の老化について
MAX編でも『Return Racers!!』でもそうだが、土屋博士より老化が早い。一方土屋博士はMAX編でも中学生編でもほとんど容姿は変わらず、大人時代でも白髪になった程度で、元気にミニ四駆の研究を続けている。
バトルレースの方向性
上述の通りMAX編では最終的には改心するものの、一時期はミニ四駆の後継として生み出された同社の『ダンガンレーサー』シリーズや、バンダイでは『ゲキドライヴ』という劇中のバトルレースを彷彿とさせるコンテンツも展開した事もあり、やり方の度が過ぎたものの、大神博士の思想も一つの結論としては決して間違ってはいない事がうかがえる。
マシンの図面引き
土屋研究所から離れ、別の研究所を設立し活動していた当初は、製図台を用いて紙に図面を引いていた。 デジタル技術を導入してからは、ペイントソフトを不慣れなのかペンタブレットを使って図面を引いていた。 一見ほのぼのとした光景に思えるが、『思いついたマシンを製作することができる』【大神版Vプロジェクトマシン】ともいえる代物を考案・開発し導入していた事になる。
対立のモデル
土屋博士と大神博士の対立は、実在した人物であるクルト・タンク氏と、ウィリー・メッサーシュミット氏をモデルにしたのではないかと一部では言われている。
実際に、双方のフルカウルマシンの出発点であるスーパーアバンテが登場した話では、土屋博士の旧研究所に空力研究のモデルとして、「フォッケウルフ Fw190」と思わしき機体が登場しており、設計したタンク氏は自身の騎馬兵としての経験から「速いだけでひ弱なサラブレットではなく、屈強な軍馬が必要」と考え、「パイロットが操縦しやすく、メンテナンスも容易にするように考慮した設計」も行なっていた。
一方で国内の対抗機だったとされるメッサーシュミット氏の設計した「メッサーシュミット Bf109」は、加速・軽量・機動力といったハイスペックさは高く評価されていたが、操縦スペースが狭かったり緊急脱出がしにくいなど、パイロットの配慮に多少欠けた面があり、メッサーシュミット氏自身も「高性能な機体を作れば、パイロットの技量は関係ない」という設計思想を持っていたという。
原作者の造詣の深さを感じざるを得ない。…と言いたいところだが、アニメ版でここまでマッドサイエンティストとしての側面が強くなったのは、レツゴアニメ放送の前年にまさにメッサーシュミットの設計思想を持った開発者が開発したメカばかりが登場する作品のシリーズ構成を行っていた隅沢克之氏の影響もかなり大きいだろう。スーパーアバンテ回の脚本も隅沢克之氏であり、放送時期もそのシリーズ構成を手掛けていたアニメの終了直後である。
その他
ゲーム作品では『爆走兄弟レッツ&ゴー!! POWER WGP2』にも登場し、催眠術で、あるチームを裏から操っていた。しかし時系列的には原作ともアニメとも繋がらないパラレルワールドである。
演者について
大友龍三郎氏は、校長のほか、MAX編で源さんこと源之助も演じた。
大神製フルカウルマシン
※()内はマシンに仕込んでいる武器や技術など
アニメ版のみの設定
- アディーン(ブレード、ニードル)
- ファイヤースティンガー(火炎放射器)
- フェニックススティンガー(火炎放射器、フェニックスハープーン)
- ディオマース・ネロ(重力波発生装置)
関連人物
大神軍団
家族
関連項目
ウィリー・メッサーシュミット - ドイツに実在した技術者。詳細は前述。
ゼロゼロマシン - 多彩な妨害装備を積んだ妨害専門車だが、純粋にレースカーとして走らせると優勝候補級のスペックを有する点では大神製ミニ四駆マシンと共通する。
一文字正宗 - 土屋・大神に次ぐ第三の博士。アニメ版では「使い手の事は全く考慮しないマシン」を「使い手をそのマシンを使いこなせる優秀な人材にまで育て上げた上で自立させ、新たに夢を乗せるスペースを自分で作らせる」という大神・土屋両博士の思想をどちらも肯定したある意味ぶっ飛んだ考えを持っている。