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フェイズシフト装甲

ふぇいずしふとそうこう

フェイズシフト装甲とは、TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』シリーズに登場する架空の装甲技術。PS装甲、Phase Shift Aromorとも呼ばれる。
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概要編集

一定の電圧をかけて電流を流すことにより相転移する効果を持った特殊金属を用いた装甲。作中では「フェイズシフト装甲」「フェイズシフト」と呼ばれているが、作外での通称は「PS装甲」。


機能・特性編集

通電されていない状態(ディアクティブモード)ではメタリックグレー(モノクロ)だが、通電してアクティブ状態になるとカラフル(厳密には装甲部位単位で一つの単一色)に変化する。また、電圧や相転移率に応じて色彩が変化する。このため塗装が不要というメンテナンス上のメリットがある。

装甲はフレームを介した通電プラグによって電力供給され、表面に通電現象が起こっているわけではないため、通電状態のPS装甲に人体が触れても感電することはなく、海中でも問題なくアクティブ状態を維持できる。


通電用の機構も含めた装甲材の密度(単位体積あたりの質量)は通常装甲より大きく、採用した機体は通常装甲の機体と比較して重量が7~8t(12~15%)ほど増加する。


強度編集

アクティブになったPS装甲は表面の位相転移現象(現実で言うところの構造相転移)によって強度を変化させ、MSサイズの実体剣やレールガンミサイルといった物理攻撃を無効化することができる。加えて、通常装甲以上の耐圧性や大気圏突入時の高温に耐えられる程度の熱耐性も獲得する。

荷電粒子や光学的なビームによる攻撃にはほぼ貫通されるものの、同程度の厚さを持つ通常装甲よりも耐性は高く、プロヴィデンスドラグーンのビームは通常装甲であるストライクダガーの胴体を一撃で貫通したが、PS装甲を持つフリーダムバスターに対しては装甲のみの破壊に留まった。他にも、フォビドゥンゲシュマイディッヒパンツァーで逸らしきれなかったフリーダムのバラエーナが当たっても仰け反るだけで済んだり、テスタメントのシールドやイライジャザクウォーリアがPS装甲でビームを防いだりといった場面がある。総じて、低出力・低威力のビームであれば防御可能といった具合であり、それでも実弾と違い装甲へダメージが入っている。

また、レイダーミョルニルのような大質量兵装の被撃や落下等による装甲内側への衝撃伝達までは無効化しきれないため、必ずしもパイロットや内部フレームが無事とは限らない。それでも対艦ミサイルの直撃程度では内部構造自体はびくともしない。


堅牢な装甲は武装にも転用可能である。

機体側の装甲を共有していることが多い固定武装(ビーム砲やビームシールド発生器など)には施されていることが多く、携行武装についてもゴールドフレーム天の「マガノシラホコ」、ミラージュフレームの「天羽々斬」はそれぞれPS装甲、後述するヴァリアブルフェイズシフト(VPS)装甲を採用している。

シールドに採用することも可能だが、摩耗などの問題により対ビーム用措置の一種である振動鋼材や対ビームコーティングとの併用が難しいこと、通電用の機構を組み込む必要があること、何より機体そのものが実体攻撃を防ぐためシールドを対ビーム兵器用に特化させた方がメリットがあることから採用例は殆どない。なお、PS装甲に対ビームコーティングを併用した例としては、C.E.73年後半に開発されたアビスが存在する。


装甲色と装甲強度や消費電力の差は不明である。

供給可能な電力が増加したことにより防御力が増加して赤色主体になっているストライクルージュ、および近接格闘用に装甲強度が増加させた結果として赤色になっているテスタメントの存在から赤が高強度、砲撃戦、射撃戦主体の機体(カラミティやランチャーストライク、バスター系列、ブラストインパルスやカオス)が緑系統なのでこれらが低出力(武装への電力供給優先)ではないかと推測できるが、前者はあくまで両機とも白色主体なところを高電圧により赤色となったに過ぎず、後者も強度というより視認性を悪くするなどの戦略的理由が想定でき、白色以外が主体なことも多い他のPS装甲(とVPS装甲)全般に色と強度の関係が適用可能なのかは別の話となる。さらに言えば、作中最大強度のPS装甲を持つジェネシス白寄りの灰色である。(巨大さも理由になるが)


あくまで強度を上げることによる物理攻撃の事実上の無効化であるため、通常装甲と同様に装甲の厚さや相転移現象を支えている電圧(電力供給量)によって強度が大きく左右される。プロヴィデンスのドラグーンの砲口やアビスの脚部スラスターといった装甲の薄い部位はフリーダムのクスィフィアス(レール砲)によって破壊されており、フリーダムが至近距離で核爆発を受けた際も装甲の厚い本体部分は原形を保った一方で装甲の薄いウイングバインダーは数秒ともたずに消し飛んだ。反対に、核搭載機が装甲にエネルギーを回すことでビームライフル並の威力でも何度か耐えることが可能であったり、コロニーサイズの巨大設備として分厚い装甲と膨大な電力供給量を持つジェネシスはエターナルクサナギといった戦艦の主砲レベルのビームはおろか陽電子砲さえ防いでいる(この時、エターナルとクサナギは有効射程ギリギリから撃っていることに加え、「ジェネシス外装70、相転移変動率98%」というオペレーターの説明が背景で流れており、防ぎはしたがギリギリだったことがうかがえる)。

他にも、ブルーフレームサードがレアメタルの刀身で構成されたソードによってライゴウを撃破してたり、オオトリのレールガンもPS装甲を破砕できるとされていたり、PS装甲を破壊できる万力状の装備としてグフクラッシャーのインパクトバイスが存在したり、ネロブリッツの可変アームユニットも試験データ上は破壊可能だったりなど、極めて強力な物理攻撃によって破壊可能とされる事例はそれなりに存在する。


弱点編集

特筆すべき弱点として、アクティブ状態中は常に相転移の維持のために電力供給し続ける必要があることから、稼働時間に比例した電力を消費していき、バッテリー駆動の場合は最終的にエネルギー切れに陥るというものがある。C.E.のMSの殆どはバッテリー駆動であるため、大量の電力を消費するビーム兵器との併用も相まってこの弱点が顕著に表れる。さらに、外力に対して相転移後の構造を維持しようとするためか、被弾時はさらに電力消費が発生する。アンドリュー・バルトフェルドはこの性質によるエネルギー切れを狙って計76発の通常弾頭の同時攻撃ストライクに行おうとした。

バッテリーのエネルギー残量がレッドゾーンまで落ちる(≒エネルギー切れになる)と、機体(OS)側が自動的に撤退用のエネルギー確保を優先して武装類へのエネルギー供給を停止するため、意図せず装甲がディアクティブモードになる「フェイズシフトダウン」が発生する。加えて、装甲色がメタリックグレーに戻ってしまうため、敵にもエネルギー切れを知られてしまう。


衝撃の方は通常装甲と同程度しか軽減しないため、あまりに攻撃を喰らえばパイロットがその衝撃により負傷したり失神したりする可能性がある。そのため、「機体の損壊」という点においては物理攻撃の効果はないが、アーマーシュナイダーのようなナイフや機関銃でも執拗にコクピット周囲に当て続ければパイロットを失神させ行動不能に陥らせることも可能であるため全くの無意味ではない。

電圧をかける機構が存在するためか、装甲自体にも耐衝撃限界が存在し、C.E.75年の最新鋭コントロールシステムには専用の計器(装甲へのダメージをゲージ形式にて表示)が用意されている。『FREEDOM』ではストライクフリーダム弐式がこの耐衝撃限界を超えそうになったこと(および核動力がオーバーヒート気味になったこと)で核動力でありながらフェイズシフトダウンを引き起こしている。また、耐衝撃限界が近づくほど強度が低下するらしく、ライジングフリーダムシヴァの短針投射システムによって貫通された(貫通とほぼ同時にフェイズシフトダウンした)他、ストライクフリーダム弐式も通常時は平気だった対艦ミサイルの直撃やデブリとの衝突により背部ウィングを損傷している。なお、この耐衝撃限界は潤沢なエネルギーや冷却材の供給があればある程度緩和される(限界を迎えてフェイズシフトダウンしていたストライクフリーダム弐式がプラウドディフェンダーとの接続によってエネルギーや冷却材を補填した直後に再度アクティブにしている)。


さらに、防御可能なのはあくまで装甲で覆われている箇所であり、関節部、推進器、カメラ・センサー等の装甲で覆えない箇所には実体兵器でも問題なく攻撃が通るため、全く穴がないわけではない。『FREEDOM』でもイモータルジャスティスが足首の関節にミサイルの直撃を受けて足首から先を失っている。そのため、バズーカなどの榴弾は直撃すると衝撃でパイロットが負傷する上、熱や破片が装甲で覆えていない部分に細かくダメージを与える恐れがあることからビームの次に喰らってはならない攻撃と言え、パイロットたちも榴弾やミサイルといった破片が伴う実弾に対しては対ビームシールドを使ってでも防御していることが多い。

関節部については、ストライクフリーダムデスティニーインフィニットジャスティスのようにフレームもフェイズシフト装甲製とすることにより克服している例もあるが、こちらは防御以上にフレーム剛性の強化によるパイロットの操縦技術への適応を目的としており、あくまで副産物である。


諸勢力での実用化編集

以前から理論自体は存在した技術だったが、宇宙船の甲板を製造するアドヴァンス・スペース・ダイナミック社のもと大西洋連邦の技術仕官マリュー・ラミアスがMS用装甲としての実用化に漕ぎ付け、無重力下でしか製造できない特殊合金技術を拠り所とし、オーブの資源衛星コロニー「ヘリオポリス」にて開発された初期GAT-Xシリーズに採用された。


これらの初期GAT-Xシリーズを鹵獲したザフトでも解析され、火器運用試験型ゲイツ改ドレッドノートでの試験採用を経てZGMF-Xシリーズで正式採用された。

弱点については両陣営で改良が模索され、連合では通常装甲と併用しつつ使用箇所を限定的にした上で必要時のみに稼働させるトランスフェイズ装甲(後述)が後期GAT-Xシリーズに採用され、ザフトではニュートロンジャマーキャンセラーによって使用可能となった核エンジンを搭載することにより理論上エネルギー切れ自体を無くすという方法(ZGMF-Xシリーズ)で克服がなされた。

初期GAT-Xシリーズの開発に携わったオーブ連合首長国では、開発ライセンスの問題から同技術は秘匿されていたが、後に領土近辺で中破したストライクを回収する機会に恵まれ、それを自国軍にて運用するために修理するにあたり解析に成功した。その際の予備パーツを用いて建造されたストライクルージュでは、大容量バッテリーパック「パワーエクステンダー」を搭載してエネルギー変換効率の向上に伴って装甲への供給電力も増加したことに加え、試験的に搭載されたAIがパイロットの生存を優先してエクステンダーの制御系に介入したため、装甲色が白主体から赤主体に変化している。これらの技術はオーブ敗戦時の難民と共に各勢力へ流出し、ザフトにてヴァリアブルフェイズシフト装甲へ発展した。


度重なる技術流出によりC.E.73年の段階で殆どの勢力が製造技術を有している状態となったものの、無重力下でしか製造できないという生産性の悪さもあって量産機に採用されることは殆どなく、エース向けの高級機や試作機といった少数採用に留まり続けている。


フリーダムガンダム ディアクティブモード


発展系編集

トランスフェイズ装甲編集

フェイズシフト装甲の改良型。主に後期GAT-Xシリーズに使用されている。

通常装甲の内側にPS装甲を備えた二重構造とし、通常装甲内のセンサーが衝撃を感知した時にPS装甲に通電することで、被弾時のみアクティブ化するようになっている。これにより、欠点だったエネルギー消費を大幅に軽減することに成功し、余剰電力を兵装へ回せるようになった。

一方、二重装甲化に伴いさらなる重量増加を招いている。このためか「後期GAT-Xシリーズではバイタルパートに限定した採用に留まっている」とも言われている。

詳細は該当記事を参照。


ヴァリアブルフェイズシフト装甲編集

フェイズシフト装甲の改良型。主にインパルスをはじめとするザフト製ガンダム(セカンドステージシリーズサードステージシリーズ)やストライクE、その後継機であるライゴウ、そしてストライクフリーダムやインフィニットジャスティス等に使用されている。

ストライクルージュ開発の折に発生した通電率と装甲強度の変化率を参照し、装甲に流す電流の量を装備や状況に応じて調整、装甲へのエネルギー配分を最適化しエネルギー消費を更に抑える事が可能となった。

この装甲は技術的にパワーエクステンダーもしくは核エンジンの搭載が必要となるので、バッテリー機ではパワーエクステンダーを導入されてない機体へ施すことはできない点に留意(逆に言えば、この装甲を持つバッテリー機はパワーエクステンダーの搭載も確定する)。

実質的な上位互換であるため、これの登場後各勢力がPS装甲を採用する際は殆どの場合はVPS装甲(と同時にパワーエクステンダーも)が使用されており、DESTINY以降は特筆されない限りPS装甲と書かれている場合はこれを指す。

詳細は該当記事を参照。



余談編集

登場経緯編集

元々は『SEED』序盤に登場するガンダムを最強の存在にするよう作られた設定とのことで、初代ガンダムでいうルナチタニウム合金のようなもの。あちらも初期のマシンガンやバズーカ程度ではびくともしなかったが、あちらは『SEED』でいうNJC搭載機と同じ核動力であることやただ超頑丈な装甲であることで何発喰らおうが問題にならなかったのと異なり、『SEED』のMSはバッテリー駆動であるため常にエネルギー切れの危機が付きまとっていた。


『SEED』序盤には携行型ビームライフルを装備する機動兵器はガンダムくらいしかいなかった(戦艦用の収束火線砲やD装備のバルルス改もあるがサイズが大きいため取り回しに難がある)ので、Nジャマー下のドッグファイトでガンダムを倒せるのはガンダムだけという構図になるとのこと。

ちなみにそのカラーチェンジ要素は多分に制作局が同じ平成ウルトラマンシリーズ」の影響を受けたとのこと。


作画ミス編集

アスランカガリが遭難したTV版の回で、イージスのシールドもシフトダウンしたグレー色になる作画ミスがあった(シールドは通常装甲なので元から色がついている)。

『FREEDOM』でも、イモータルジャスティスとライジングフリーダムが携行しているシールドにPS装甲がアクティブになる際の特有のエフェクトが付いている。

その他、複数の装甲材が使用されている場合(ストライクフリーダム弐式のビームシールド発生装置など)や切断されて本体から分離した場合などに度々作画ミスが生じている。


ゲームでの扱い編集

ガンダムが登場するシミュレーションゲーム(Gジェネスパロボ等)では機体の特殊能力として扱われ、実弾ダメージをエネルギーと引き換えに軽減する効果で再現されることが多い。

スパロボでは初期はビーム属性でさえなければファンネルでもブレストファイヤーでもゲッタービームでもなんでも軽減する恐ろしい効果になっていたが、近年はビーム属性ではないが、実弾でもないものに隠しステータスで無効と設定されたり、実弾武器でもアイアンカッターなど無効化できない武器が設定されてきている。

Gジェネでは軽減効果が実弾のほか必殺技(爆熱ゴッドフィンガー石破天驚拳など)や火炎放射も防御可能な代わりに毎ターンENを消費する(NJC搭載機はNJCの効果が別に設定され、EN消費のあるアビリティでEN消費がなくなるという形で原作再現されている)。また、グフカスタムヒートロッドなどの電撃、特殊扱いの武器は無効化できない(もっとも、これは原作の設定には可能とされる)。


逆にアクションゲーム(ガンダムVSシリーズなど)では設定がゲームバランスの都合で再現できないため、敗北時や撃墜時に装甲色が変わるという演出のみにとどまっている。



陽電子砲を防いだことについて編集

ジェネシスがクサナギのローエングリン(陽電子砲)を防いでいるが、ローエングリンは陽電子をビームによって保持しているためあのビーム全体が陽電子というわけではなく、また陽電子砲は対消滅によって生じる膨大な光(熱)エネルギーを破壊の主としており物質消滅はおまけに過ぎないため、分厚い装甲を持つジェネシスが防ぎきれたことについては装甲表面が対消滅しただけで対消滅の熱量は自前の熱耐性で防ぎ切ったと考えれば特に不思議はない。


武装へのPS装甲編集

言及されていないが、フリーダムとジャスティスの持つビームサーベル、ストライクフリーダムのライフルとサーベル、インフィニットジャスティスのライフル・シールド・サーベルも色が変化しておりそれらもPS装甲が施された武器だと推測できる(リマスター版でも修正されず、対の存在であるデスティニーとレジェンドに搭載されたライフルやシールドの色は変化しておらず明らかな描き分けが行われている)。この場合、インフィニットジャスティスのシールドはアビスと同様に対ビームコーティングとVPS装甲を両立したものとなり、さらにはビームシールドまで展開可能なC.E.世界で最硬峰のシールドとなる。


実際のメカニズム編集

前述した通り被弾時にエネルギーを消費し、それが相転移変動率という形で表現されることから、通電することにより強度を上げるというよりも電力を動的に消費することにより装甲の(分子)構造を維持しようとする(ので強度が上がったように見える)の方が正確である可能性がある。


『FREEDOM』での扱い編集

『DESTINY』までは実弾に対して無敵な装甲として表現されていたが、『FREEDOM』では装甲の薄い部分や関節部分を的確に狙われたり、膨大な物量で装甲の限界を迎えさせられたりと、実弾による破損が目立った。


関連タグ編集

機動戦士ガンダムSEED 機動戦士ガンダムSEED DESTINY


ナノラミネートアーマー鉄血のオルフェンズに登場する装甲。こちらはビーム兵器を弾く装甲であり、フェイズシフト装甲とは対極に位置する。


フェムテク装甲機動戦士ガンダムSEEDFREEDOMに登場するMSブラックナイトスコードに採用されている装甲。上記のナノラミネートアーマーと同様にビーム兵器を弾く他、実弾に対しても通常装甲を超える耐性を有しており、「PS装甲の次世代型」とも評される。

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