概要
『ククルス・ドアンの島』とは、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』第15話のサブタイトル及び、その舞台となる島の通称。
テレビアニメ作中で唯一ガンダムとザクが共闘しザク同士の戦いが描かれた話で、ガンダムシリーズにおいて初の敵機および敵兵が味方になる話でもある。
リメイク劇場版
2021年9月15日に劇場版アニメとしてのリメイクが発表。翌年6月3日に公開された。
リメイク版はジ・オリジンをベースとした設定となる。
後述の2016年の漫画版とは繋がらないため、あくまでベースである。
あらすじ(TV版15話)
ガンダムの空中分離・合体訓練の最中、連邦空軍からの救難信号を受信したホワイトベースは、ちょうどコア・ファイターに搭乗していたアムロ・レイを救助に向かわせる。
信号発信地点の孤島に辿り着いたアムロは墜落したフライアローと、コクピットに縛りつけられた状態で生存していた連邦兵を発見。アムロは連邦兵の救護をしていたが、島で暮らす子供たちに投石され、ククルス・ドアンと呼ばれる男の駆るザクに武装解除を命令される。アムロは反抗してミサイル攻撃を試みるもザクの岩投げ攻撃により迎撃され、その爆風でコア・ファイターは墜落してしまう。
気絶したアムロはドアンの小屋で介抱されたものの、コア・ファイターを没収されてしまう。また、子供たちはドアンを慕っていたが、アムロには元ジオン兵、しかも脱走兵だという彼の事が信じられなかった。
一方、島にはドアンを追うルッグンとザクが迫っていた。いったい何故ドアンは脱走兵になったのか。そして島に迫るジオン軍を撃退する事は出来るのか……?
解説
『機動戦士ガンダム』は、製作された時代が時代なだけに作画崩壊やデザインの間違いが多かったことでも有名だが『ククルス・ドアンの島』は殊更それが際立っていたエピソードである。1クールの山場を乗り越えた結果、スタッフの手が回らなくなった結果と推測出来る。
特に本エピソードに出てくるククルス・ドアンが乗っていたザク(通称:ドアンザク)には顕著に現れており、本記事のイラストを見てもらえばわかるのだが、ザクとしてはなんか妙にスレンダーというか、ヌルッとしたスリムな体型をしているのが特徴である。
顔立ちも担当したアニメーターがマズル部分のデザインの解釈を盛大に間違えたのか、やたら面長になっており、これまたこちらの心をざわつかせてくる(なお、本エピソードのガンダムの方はというと、こちらもどエライ面長&寸胴で大雑把な作画に仕上げられている)。
これが一部の視聴者の心の琴線にヒットして本放送当時からネタにされ続け、さらにザクが人気MSでもあったことから、時代が下るとともに、ザクのガンプラを無理やり改造してククルス・ドアン仕様のザクを作り上げるマニアックな強者も現れるようになった。
ジオン側の主要キャラが全く登場しない回でもあり、劇場版3部作でも存在をスルーされているなど殆ど番外編のような扱いだが、一方で矛盾を孕みながらも子供と自分の為に戦い続けるドアン、その姿を見て何かを感じるアムロ、と単発エピソードとしての完成度は高く、上記のネタ要素抜きにこの回を高く評価するファンも多い。
また、ある意味貴重な地上でのコア・ファイターの分離シーンが描かれている。
安全性を考慮してかガンダムを四つん這いの状態にして上半身のみを外し、下半身を発射台代わりにしてコア・ファイターを射出するというもので、後には抜け殻のパーツのみが残される。
その場にいたリュウ・ホセイが「あまり見たくない」と愚痴るというギャグ色の強いシーンであった。
なお、このTV版のククルス・ドアンがいた島は長崎県の五島列島あたりではないかとの説がある。
(後年の劇場版では明確に否定された)
コミック版
2016年6月から、ガンダムエースで同タイトルの漫画が開始。アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のスピンオフという世界観で描かれた一年戦争時の物語となっている。作者はおおのじゅんじ。
コミック版あらすじ
かつてククルス・ドアンが率いていたジオン公国軍開発訓練Y-02小隊。ヴァシリー伍長、キッツ少尉をはじめとした部下達は、それぞれの転属先で隊長の事を回想しながら一年戦争を戦い続けていく……
コミック版登場人物
ヴァシリー・ボッシュ
元Y-02小隊のパイロットで、同隊の中では最年少。ドアンが脱走兵となる直前まで彼と行動を共にしており、脱走と共に隊長機を引き継ぐ。
小隊解散後は北米地上軍に配属され、ジャブロー攻略に赴く。
作中では伍長から最終的に准尉にまで昇進している。
サッシャ・キッツ少尉
元Y-02小隊のサブリーダーを務めていたパイロット。眼鏡をかけた大柄の男性で、過去にモビルワーカーの技能大会で三冠を得た実力を買われ、軍属でないにもかかわらず招聘されて同隊の一員となった古参メンバーである。
小隊解散後は北米の小基地に配属されたが、そこでヴァシリーと合流。共にジャブロー攻略に赴く。搭乗機はザクハーフキャノン。
余談だが、彼の名を絶叫するシーンが一部でネタにされている。
カルカ・ギッタ・マドファ軍曹
元Y-02小隊のテストパイロット。射撃と狙撃に長けた女性軍人。絵画を趣味にしているが、人間嫌い故に風景画や静物画しか描かない。
ヤル・マル伍長
元Y-02小隊のテストパイロット。長髪で仏頂面の青年。トラブルからテストパイロットへと組み込まれた。人懐っこく、場の空気を察さない軽薄な言動の主だが、テストパイロットとしては優秀。
ベリンダ曹長
Y-02小隊で整備や通信を担当していた、眼鏡っ子の女性兵士。ヴァシリーとは連絡を取り合っている。
マルク・カルデン少尉
元Y-02小隊のテストパイロット。故人。粗暴で横柄な上に勤務態度も最悪な人物。おまけにアナハイム社の産業スパイだったが、実際はジオンと連邦の国力差からジオンの敗戦を予測した上で開戦阻止をするためにMS開発を妨害していた。
ヤッ・デルマ
ジオン軍人。長髪で左眼に眼帯をしている隻眼の男性。ドアンの上司で実兄でもある。カルデンの一件など様々な暗躍をしている。作中では大尉から少佐を経て中佐へと昇進している。MSパイロットとしてグフに搭乗したこともある。
ヨッサラ・ゴンド伍長
ジオン軍人。ジャブローでボッシュと知り合い、やがて部下となった青年。口が悪く粗暴だったが、戦いを経て改心をしていったが…。
レイナルド軍曹、スキナード伍長
ジオン軍人。ある作戦でヤッ・デルマ指揮下となった人物たち。
外部出演
ガンダムビルドダイバーズ
ep8(第8話)において、クエスト内のクイズとしてこの島に関する問題が出された。
ビルドシリーズは様々なガンダムシリーズから小ネタ等を拾ってくる作品だが、まさかこの島に関しての話題が出るとは予想外だったに違いない。
『SDガンダムワールド ガチャポン戦士2 カプセル戦記』
ファミコンで発売されたシミュレーションゲーム。
「クルクルドアン ノ シマ」というマップが登場する。
マップの形状は名前の通り、海面に渦のような螺旋状の陸地が細かく配置されている。
このゲームでは珍しいことではないが、どの設定にしてもユニット初期配置にザクが混ざっているマップでもある。
『連邦VSジオンDX』
連ジDXの家庭用限定ステージ「太平洋」として登場。
深い海のど真ん中に山のような形でククルス・ドアンの島が存在している。水陸両用モビルスーツが有利なほか、高所かつ僅かな陸地である島の奪い合いなどが戦術的に重要なステージとなる。ミッションモードの連邦側ではククルス・ドアン討伐ミッションもあるが、射撃武器を装備しておらず(ヒートホークは持っている)、耐久力も平凡なうえ他の敵も出てこないので苦戦する事はまずない。
英語吹き替え版での扱い
2002年に行われた富野由悠季への英文インタビューによると、富野監督の判断で同15話の英語吹き替え版は制作されず、TV放送やDVDからエピソードは削除されているという。
現在でもこの状況は変わっていないようで、Amazon.comで販売されているBlu-ray版でもこのエピソードは削除されており、全42話で構成されている(参考:Mobile Suit Gundam (First Gundam) Part 1 Blu-ray CollectionPart 2)。やはり作画崩壊や本筋に関わらない番外編エピソードである事が主な原因と思われる。劇場版の監督を務める安彦氏ですら以前は「(良いエピソードではあるが)捨て回に過ぎない」とコメントしていた。
> Q: Episode 15, the Isle of Korlas Doom was missing the US release. What happened to that episode?
> YT: I asked that it would be skipped. There is a reason, but since the staff is still alive I can't answer it. It’s a long story.
(Yoshiyuki Tomino Panel – the daddy of Gundam!(アーカイブ)より引用)