カタログスペック
頭頂高 | 14.7m |
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本体重量 | 7.9t |
全備重量 | 19.2t |
ジェネレーター出力 | 5,190kw |
装甲材質 | チタン合金ネオセラミック複合材 |
スラスター総推力 | 30,980kg |
概要
型式番号ZMT-S12G(【T】は試作機、【G】は陸戦型を示す)。
ベスパの次期主力汎用型量産モビルスーツのプロトタイプとして開発された機体。
蜂の触角を思わせるアンテナと複眼状に光るマルチセンサー(カメラアイ)を持つ一方、どことなくガンダムっぽい顔立ちを持つ頭部が特徴。
宇宙世紀0153年上旬にロールアウトし、データ収集を目的として、宇宙空間での運用試験を予定通り完了。その後、左腕ビームシールドをビームローターに換装するなどの簡易的な仕様変更を施された上で、重力下運用試験のために、中央ヨーロッパ地区ラゲーン基地に駐屯するイエロージャケットへと配備された。
この時点での宇宙用主力機ゾロアットや、地上侵攻用として既に生産ラインが稼働していたトムリアットとは異なり、大気圏内外を問わない全領域における対MS戦を想定した、次世代の帝国の要となることを課されている。このため、従来の地上侵攻用MSに要求されていた対地爆撃、掃討能力ではなく、MS同士の白兵戦を重視した設計となっており、シンプルかつスマートなフォルムは広い可動域を有する。特に足首は関節のメカニックを外部に晒さない独特の二軸方式を採用し、装甲は堅牢ながら挙動は柔軟という、理想的なバランスが模索されている。
攻撃力はマニピュレーター装備の規格武装でまかなう思想を採ったため、固定武装は肩の低出力ビームガンのみとしており、これによって本体の軽量化のみならずジェネレーターの余剰出力を大きく確保する事に成功した。
重力下におけるテストパイロットには、ラゲーンにおいて短期間に数多くの運用テスト実績を上げたクロノクル・アシャー中尉が抜擢された(という名目で、女王の実弟である彼の経歴の箔付けとされた)。
同年4月5日、クロノクル中尉は本機のテスト中に抵抗勢力の小型戦闘機と遭遇。追撃任務に移行し、特別居住区ウーイッグ近郊地域に入った。
アクシデントにより一時は抵抗勢力の構成員と思わしき少年ウッソ・エヴィンに機体を奪取され、敵対戦力として組み込まれてしまうが、最終的にはクロノクル中尉自身の手により(中破状態で)回収され、評価結果と共にサイド2のザンスカール本国へと返送されている。
イエロージャケットの評価結果は芳しくなかった(小説版では、ファラ・グリフォン中佐に「性能が良くないようなので、メーカーへ返品としておく」とまで言われている)が、奪われている間に本来の『味方』であるゾロを数機撃破した、ポテンシャルの高さを奪われた側であるザンスカールに見せつけたのは言うまでもなく、本国側でのデータ検証において、抵抗勢力が運用していた4月5日~4月7日のわずか3日の間にいくつかの優れたモーションパターンが追加されており、設計思想である高度な運動性を活かした対MS戦能力を発揮していた事実が確認されたために、関係各署からは高い評価が下された。
加えて、シャッコーが少年パイロットによって運用されていたという報告についても、帝国上層部に、本機の操作性の『軽さ』が優秀であるという判断をさせる事になった。これは『宇宙戦国時代』において、サイド2の完全な併合の完了していない帝国にとっては、学徒兵や士気こそ高いが練度は乏しい志願兵さえも動員しなければならないという苦しい内情に合致しており、結果的に比較競合試作機であった多機能型重MSコンティオを蹴落として、早々に次期主力機として採用されるに至るのだった。
かくして、ウッソが最初に出会ったマシンは、後に敵として立ちふさがる事になる。
しかもそのマシンで助け出した、彼が恋慕する女性を乗せて。
武装
試作型ビームライフル
同世代では一般的な、ジェネレーター直結・Eパック併用型。センサー部は通常時は格納されており、照準時にポップアップする。
シャッコー専用開発というわけではなく、機体とあわせてテストしていたもの。
このため、ゴッゾーラやメッメドーザといった他の地上用試作機も同モデルを運用(テスト)していた。
後に量産ラインに乗せられ、主に地上用量産MSであるゾリディアが使用している。
二連ショルダービームガン
右肩アーマーに折り畳まれて収納されている、固定武装。
アーマーとはユニバーサル・ジョイントで結合され、フレキシブルに可動するため、手持ち武器の死角でも照準を合わせられる。
対近接戦闘を想定した補助武装であり、出力はわざと低く設計されている(宇宙世紀0120年代以降は、至近距離で敵機のジェネレーターを核爆発させてしまうと、自機の損傷が免れないため)。
半ば隠し武装の扱いだったせいか、ウッソがこの武装に気付き解析できたのは機体を取り返される寸前のタイミングだった。また精密に出来ているためか剛性はそこまで高くなく、木の幹に当たったショックであっさり破損している。
ビームサーベル
両脚部に格納されている。
同年代では特記するような機能のない標準モデルだが、ウッソは2本を揃えて発振することで長大なビーム刃を形成し、地上からの対空攻撃に使用した。
これは、本モデルの特殊機構ではなく、サーベルを形成しているIフィールドが同一性質であれば(同型のサーベルであれば)、Iフィールドが「反発」ではなく「融合」する性質を利用したものである。
なお、ウッソはVガンダム、V2ガンダム搭乗時も、同様の戦法を幾度か使用している。
理屈の上ではウッソ以外のパイロットにも使用可能だが、そもそもこのような(利用する状況の限られる)変則IMPCがMSのOSにインプットされているはずもなく(下手にインプットされていると、OSが「最適モーション」を選択するのを阻害する可能性がある)、戦闘中に即興で手動プログラミングする技術と才覚を要求される。
よって、実質的にウッソ独自の戦法と言い切って齟齬はない。
ビームローター
宇宙世紀0150年代における、最新の重力下空中航行システム。機体前面にかざせば、ビームシールドとなる。
詳細はビームローターを参照。
なお、上述の通り、ロールアウト直後は宇宙戦仕様として通常のビームシールドが装備されていた。
非正規オプション
ゾロ用ビームライフル
ガリー・タン機のゾロとの交戦時に試作型ビームライフルを破壊されたため、代わりに同ゾロから奪取したもの。
劇中では最も使われていたビームライフルだった。
ガトリングガン
リガ・ミリティア開発の非正規オプション。とても強力な破壊力を持つがシャッコーでは射角が固定されず命中率が低く、戦果はイエロージャケット下っ端のゾロのビームローターを破壊するのみに留まる。
立体物では「MG Vダッシュガンダム Ver.Ka」や「MG コア・ブースター Ver.Ka」」に付属しており、当のVガンダム系列は使用していない。
リガ・ミリティア製ビームライフル
スラスターの損傷と引き換えに森林トラップに仕込まれていたものを徴収した。
関連イラスト
関連動画
※なぜかウッソに奪われた事にはナレーションで一切触れられていない。
ガンプラ
放送当時に立体化はされなかったため、1/144スケールのキット(旧キットもHGも)は出ていない。
2020年1月にRE/100ブランドで1/100スケールでプレミアムバンダイ限定で初めてのキット化されることが発表された。
ビームローターエフェクトはグラデーション入りのPET素材を使用し、手首の規格は劇中同様LM製武装も持てるように「MG Vガンダム Ver.Ka」系列と合わせてある。
余談
奪取された原因
シャッコーの胸部左側にコックピットハッチを外から開けられるハンドルがあり、本体胸部にしがみついていたウッソの蹴りがそのハンドルに当たってしまったことでハッチが開放。
そしてコックピットに飛び込んできたウッソとクロノクルはカサレリア侵入を巡って殴る蹴るの取っ組み合いの喧嘩になり、どちらも譲らなかった中機体は湖に堕落、この時クロノクルが手を離してしまった結果ウッソに機体を奪われることとなった。
RE/100ではこのハンドルがある箇所のパネルラインもしっかりと再現されている。
また奪取された経緯の都合上、本体はコックピットブロックもろとも水浸しになっているが、強力な防水加工が施されていたらしく操縦系統に動作不良が生じることはなかった。
ただし、奪取された3日間ウッソはシャッコーの技術提供もメンテナンスもリガ・ミリティアには委託せず終始独占して機体を使用していたためコックピットブロックは恐ろしく不衛生になっていたことは間違いないだろう(一応最も汚いであろうインジェクションポッドは破壊されたが…)。
Vガンダムの繋ぎとなった非ガンダムの主役機
鹵獲した敵の非ガンダムが主役機になるという異端な存在ではあるが、物語序盤からVガンダムが出撃できなかったのは、当時カサレリアにいたリガ・ミリティアのカミオン隊のもとにコアファイター一機しかなかったため。
全てのきっかけは「LMのVガンダムのコアファイターの試験運転」と「ザンスカールのシャッコーの試験運転」がたまたま同じ日同じ時刻に同じカサレリアで行われてしまった事から発生してしまったのである。
これが1日でも違えば、一部のパイロットが本来肩を並べるはずの本機に殺される悲劇や後に帝国に大損害を与える少年がガンダムに乗ることも無かったのかもしれない。
ベスパによるウーイッグ空襲後、ボイスンの犠牲によるミスリードのおかげで居場所を特定されずに済んだ近郊のLM基地から複数のハンガーとブーツを徴収してようやくVガンダム合体に至った。しかしそれもクロノクルの「気まぐれ」とガリーの「復讐」によってすぐに特定され基地と多くのハンガーとブーツのスペアも破壊されてしまう。
また、カテジナ・ルースがザンスカール帝国にさらわれたのはVガンダム初陣直後の出来事であるため、シャッコーは「カテジナがリガ・ミリティアにいた頃」の主人公機と解釈することも出来る。
シャッコーのマニピュレーターに乗せられるカテジナは今後の展開からは想像もつかないほどヒロイン然としている。
小話
デザイン
『機動戦士Vガンダム』の主役機デザインは、大河原邦男氏、カトキハジメ氏、そして石垣純哉氏の三名による豪華なコンペが行われており、石垣氏は惜しもコンペ落ちとなり、本機を始めとしたザンスカール系のMSデザイン担当として参加した。
『ザンスカール系のMSをデザインする上で【小さな子供が見てくれた時に、興味を抱いてもらえるようなデザイン】を心がけました』とのこと。
シャッコーは、石垣氏が最初に手掛けたした機体であり富野監督と何度もキャッチボールをした上で描かれている。
その中でも主な指定とは、「複眼にしてほしい」、「大河原さんとはデザインラインを変えたものでやってみて欲しい」というものであった。
この後者の指定は、メカデザイナーにとっては極めて難しい課題であったが、石垣氏が悩みぬいた末に辿り着いたのが、本機の『足首の見えない足首』のライン、および腰のデザインであった。
本機は【ウッソが最初に乗り込むMS】ということもあり最も多くラフデザインが描かれていて、その当時の苦労と力が注がれている。このため、石垣氏は『シャッコーに、非常に深い愛着と強い思い入れがあります』と語っており、他作品でのインタビューにおいても本機の名を挙げる事がある。
また、1998年にメインメカニックデザイナーとして参加したスクウェア(現・スクウェア・エニックス)のゲームソフト『ゼノギアス』では、シャッコーの流れを汲むロボ(ギア)デザインが多く見られる。
「人狼機ウィンヴルガ」の作者である綱島志朗氏は、過去に自身のtwitterにて「シャッコーのプラモが欲しい」といった旨の呟きをしていた(イラスト付きで)。
主人公機
Vガンダムはガンプラの販売戦略のために「番組の後期までSD化しない」ということが決まっていたため、SDガンダム外伝ではこの機体をモチーフにしたゼロガンダムが主人公となっていた。
更に皮肉なことに番組の主人公機であるV2ガンダムは悪役としてゼロガンダムに倒されてしまった。
ちなみにシャッコー自体は量産機ではなく本当の意味で
「数多く生産された量産機が主人公機となった作品」
は新機動戦記ガンダムWまで待たなければならない。