概要
株式会社スクウェアとはかつて存在したゲーム会社であり、現在のスクウェア・エニックスの前身。1983年に徳島県の電気工事会社・電友社のソフトウェア開発部門として設立された。
創業地は同業社の光栄(現:コーエーテクモゲームス)と同じ神奈川県横浜市港北区日吉であり、付近に存在する慶應義塾大学日吉キャンパスや神奈川大学などの学生がアルバイトを経て社員になるケースが多かった。スクウェアの初期作品を手掛けたスタッフに神奈川県出身が多いのはそのため。
創業当初は主にPCゲームを手掛けていたが、1985年にファミコン向けソフト『テグザー』で家庭用ゲーム機に参入。翌1986年に電友社から独立した。ディスクシステムではスクウェア含めた7社の団体で『DOG』というブランド名で販売した。
ファミコンに参入したばかりの頃は地味な存在であったが、『ファイナルファンタジー』や『聖剣伝説』等のヒットでRPGジャンルにおいてエニックスと共に一時代を築きあげるようになる。特に『魔界塔士Sa・Ga』は当時「ゲームボーイの小さな画面ではRPGは困難」とされていた中で見事実現させたパイオニアでもある。
そしてスーパーファミコンでは当時一二を争う程の美麗なドット絵グラフィックやサウンド等で名を馳せ、それは『聖剣伝説3』あたりで一つの頂点を迎える。
PlayStationに参入してから発売された『ファイナルファンタジー7』はプレイステーションの普及に貢献しただけでなく、ゲーム業界に大きく影響を与える作品となった。
同時期には麻雀ゲームや3D格闘ゲーム、野球など様々なジャンルのソフトを手掛けた。
1995年には本社をアルコタワーに移転。1996年には子会社としてデジキューブを設立。
1998年にはエレクトロニック・アーツと提携して「エレクトロニック・アーツ・スクウェア」を設立した。しかし、任天堂との関係悪化(スクウェアの任天堂出禁事件)、有力スタッフの相次ぐ独立、映画製作の失敗を経て2003年にエニックスと合併。スクウェア・エニックスとして再出発することとなる。
主なソフト
PCソフト
ファイナルファンタジーシリーズ
- ファイナルファンタジー
- ファイナルファンタジーⅡ
- ファイナルファンタジーⅢ
- ファイナルファンタジーⅣ
- ファイナルファンタジーⅤ
- ファイナルファンタジーUSA
- ファイナルファンタジーⅥ
- ファイナルファンタジーⅦ
- ファイナルファンタジーⅧ
- ファイナルファンタジーⅨ
- ファイナルファンタジーⅩ
- ファイナルファンタジータクティクス
サガシリーズ
ロマンシングサガ
聖剣伝説シリーズ
フロントミッションシリーズ
他ゲーム
- テグザー
- キングスナイト
- ハイウェイスター
- 半熟英雄シリーズ
- 水晶の龍
- アップルタウン物語
- とびだせ大作戦
- クレオパトラの魔宝
- カリーンの剣
- 亜空戦記ライジン
- アルカエスト
- ライブ・ア・ライブ
- クロノトリガー、クロノクロス
- スーパーマリオRPG(任天堂との共同開発)
- バハムートラグーン
- ルドラの秘宝
- トレジャーハンターG
- トバルNo.1
- ブシドーブレード、ブシドーブレード2
- アインハンダー
- ゼノギアス
- パラサイト・イヴ、パラサイト・イヴ2
- 双界儀
- ブレイヴフェンサー 武蔵伝
- レーシングラグーン
- ベイグラントストーリー
- キングダムハーツ
- デュープリズム
- iS internal section
2003年以降のゲームはスクウェア・エニックスの記事にて。
また、任天堂との確執による出禁についてはスクウェアの任天堂出禁事件にて。
経営の危機
かつてスクウェアを倒産の危機から救った『ファイナルファンタジー』が、今度はスクウェアを窮地に陥れた。それが2001年に公開された世界初のフル3DCGによるSF映画『ファイナルファンタジー』の興行収益の赤字である。
公開前は「あのファイナルファンタジーが映画化され、フル3DCGで展開するとはどれだけ凄い作品になるのだろう」と期待されていた。
ところが先行でアメリカで上映され、映像美の凄さは確かに評価されたが、肝心の内容がかなりの不評であった事が取り沙汰されてしまう。この評価が公開前の日本国内にもインターネットを介して伝わってしまい、上映前の段階でマイナスイメージがついた上に、いざ上映されると前評判通りの映画だった事から、挽回するどころか悪評に更に拍車がかかってしまった。当時日本語吹き替えがなく字幕のみで、凝った映像に観客が集中できなかった点も不評の一因であった。
さらに制作費管理の甘さが致命傷となる。映画の企画自体が動き出したのは1996年で制作のためにスタジオをハワイ・ホノルルに作ったのが1997年5月。しかし制作遅延などで完成したのは2001年秋。制作費は1億3700万ドルにも及んだ。だが、全世界興行収入は8513万ドルと、大きな赤字を算出する事となってしまった。
なお、この記事の過去版を含めて「興収20億」と書かれている所も多いが、これはデマである。
また、この赤字が「ギネスブックに載った」と言われる事もあるが、これはただの都市伝説。現在赤字記録でギネスに記載されているのは1995年公開の『カットスロート・アイランド』(およそ9000万ドルの赤字)である。「参考記録として書かれている」と言う説もあるが、これもソースがないのでデマの可能性が高い。
とはいえ大きな赤字を算出した事は間違いなく、スクウェアは140億近い特別損失を計上する事となる(この損失はFF映画単体の赤字だけではなく、映画事業から撤退した事によるものである)。
ただ、「映画のせいでスクウェアが潰れた」とも言われるが、実際の所は(もちろんこの赤字によるダメージも大きい物の)、むしろゲーム事業側の方の体質が大きかったとされる。
と言うのも当時のスクウェアは、映画制作の方でも見せた制作費管理の甘さが酷いことになっており、「次の作品の売上見込みを先んじて開発費につぎ込む」と言う自転車操業状態であった。
また、ファイナルファンタジーシリーズ一本化の方向転換で一部スタッフ(モノリスソフトやブラウニーブラウンのスタッフ等)が去って行った事で新規作品があまり育たない状態となっていた。さらには一つの頂点を極めた2Dドット絵のグラフィッカーの大量離脱や、FF以外の既存作品の停滞と深刻な状況が重なっていた。
恐ろしい事に和田が社長となった時は法務部門や財務部門といった会社経営の重要なポジションの人間達まで離職していたという。開発部門が力を持ち過ぎてしまい、内部は想像以上にガタガタになっていたのである。
関連会社のデジキューブでも経営悪化が目立ち、当時としては画期的なコンビニを中心とした物流システムだったが、後年は商売としてはあまり上手く行かなくなっていき、映画の失敗で連結子会社化を切られた末に、エニックスと合併してから半年後に倒産してしまった。
余談
フルCG映画の失敗で窮地に陥ったスクウェアだったが、まだ3DCG映像作品は諦めておらず、合併後に旧スクウェア組が中心となって3DCGのOVA『ファイナルファンタジーⅦ アドベントチルドレン』が制作された。
2001年の映画とは裏腹に今作は完成前から国際映画祭に招待される程の大好評を博し、商業上映していないにもかかわらず400万本を出荷する大ヒットを記録しており、雪辱を果たしたと言える。物語が『ファイナルファンタジーⅦ』の後日談だった事からも窺える。
その後、漫画作品四姉妹エンカウントにおいて任天堂キャラとFFキャラの組み合わせのネタに不適切な表現があるとスクエニが作者と出版社に抗議した。これは「FF13の主人公・ライトニング」をある任天堂キャラクターに捕食される(?)ネタにした事への抗議なのだが、むしろ同じくネタにした「その任天堂キャラクター」の漫画上の描写の方が酷かったりする。
あくまで推測にすぎないが、過去の任天堂との間に受けた確執の影響がどんなものだったか痛感している故に、組み合わせにおける不適切なネタをスクエニ側が許諾したと勘違いされないよう過敏になっていたのではないかとの見方もある。結果第9話は単行本未掲載となった。一方、この件で任天堂側が抗議したという話は特に出ていない。
2019年にはFF7・FF9・FF10・FF10-2・FF12もHDリマスター版としてNintendoSwitchでリリースされた。オンライン専用のFF11・FF14(オンラインではないFF13は理由不明)はともかく、FF8が何故含まれていないのかは不明と言われていたが、RPGamerはその理由について『最新機種(Nintendo SwitchとPlayStation 4)に移植しても許容できないほど3Dグラフィックが醜い。中途半端にリアルなグラフィックは解像度の上昇には耐えられない』とコメントしており、要するに予算や解像度の作業にコストがかかってしまうことから見送ったとの事。また、オリジナルのソースコードが失われているとの話もあったが、諸問題が解決したのかFF8リマスターも2019年にリリースされる事となった。
断絶期もしくは和解に至った頃の作品が任天堂のゲーム機に出るのは何とも感慨深いものである。
関連イラスト
関連タグ
スクウェアソフト:1992年から2003年3月までの製品に使われていたブランド名。
デジキューブ:スクウェアによって設立された子会社。コンビニでのゲーム販売を主に行っていたが、スクウェア・エニックスが誕生した後も存続していたが、同年12月に倒産。2006年には法人消滅。
主な関係人物
- 宮本雅史(創業者、初代社長)
- 鈴木尚(創業者、4代目社長)
- 水野哲夫(2代目社長)
- 武市智行(3代目社長)
- 和田洋一(5代目社長、スクウェア・エニックス設立後も引き続き担当)
- 坂口博信(2001まで副社長)
- 植松伸夫(FFシリーズなど多くの作品で作曲を担当)
- 下村陽子(ライブアライブ、パラサイト・イブなどの作品で作曲を担当)
- 菊田裕樹(聖剣伝説シリーズの作曲を担当)
- 天野喜孝(FFシリーズのキャラクターデザイン、美術担当)
- 北瀬佳範(クロノトリガー、FF7などのディレクター)
- 鳥山求(ババムートラグーンのプランナーなど)
- 野島一成(ババムートラグーンのディレクター、キングダムハーツのシナリオ担当など)
- 野村哲也(キャラクターデザイン、キングダムハーツのディレクターなど多数担当)
スクウェア社員が独立して立ち上げた会社
エレクトロニック・アーツ:同社の日本進出と、スクウェアの海外進出の為に一時期提携していた。
ファイナルファンタジー7:任天堂との確執を引き起こした直接の原因というイメージが強く残ってしまっていた作品。実際の確執の原因はスクウェアの任天堂出禁事件にて。
ヨヨ:よりにもよって当時のスクウェアはこのポジションに近かったといえる。細部は異なるがかなり似たところがあった。
興味ないね:まさに当時のスクウェアに対する任天堂の反応だったと言える。スマブラではクラウドの上アピールとして採用。
エスーシャ(新次元ゲイムネプテューヌVⅡ):劇場版FF製作のエピソードとモデルとしたクラウドを含めて作られたモチーフキャラ。流石に任天堂との関係悪化までは設定に採用されていない。モチーフキャラなのか一時期、スマブラの他社組に似ていると言われていた。
スクエア:社名の由来。
外部リンク
- 元スクウェア・エニックス社長の和田洋一のnote「そろそろ語ろうか(その壱):当時のスクウェアの内情とデジキューブの顛末、スクウェア・エニックス後について
- 元スクウェア・エニックス社長の和田洋一のnote「そろそろ語ろうか(その弐)」:任天堂との確執と和解の話