水晶の龍
すいしょうのどらごん
少年ヒューがガールフレンドのシンシアと共に、伝説の「水晶の龍」を追うSF作品である。
発売当時(1986年)のファミコンソフトの中では数段レベルが高いアニメ調のグラフィックを使っており、しかも本当にアニメーションのように動くとして、それをウリにした作品であった。
もっとも、ディスクシステム初期に作られた作品なため、ファミコン史全体でみるとこれくらいのグラフィックとアニメーションをする作品は結構ある。
「ヒロインのシンシアと野球拳ができる」という裏技がゲーム雑誌ファミマガに掲載されたことで有名なゲームである。
ゲームをやったことは無いが、野球拳の裏技は知っているという人間は数多い。
実はこれは「ウソ技(うそてく)」と呼ばれるダミーの裏技情報であり、実際のゲームでは野球拳などできない。
このファミマガという雑誌では毎号いくつものゲームの裏技(というかバグ技)を掲載していたのだが、一つだけウソの裏技を態と混ぜていた。そして、どれがウソ技なのかを当てた人に抽選でプレゼントを贈る企画があったのである。
なお本来は盗作を避けるために作られた企画である(もし他の雑誌が同じウソ技を載せていたら盗作の証拠となる)。
この作品では冒頭のイベントで宇宙航行中のシャトルが破壊されて主人公とシンシアと離れ離れになる。このとき、メインイラストのようにシンシアが助けを求めて右手を突き出したグラフィックが表示される。
当時のファミコンではかなり美麗なグラフィックでこれは広告媒体でも何度も使われているのだが、これをファミマガの編集者が「ジャンケンでパーを出している」とひねくれた見方をしたことが全ての始まり。
もともとは「ジャンケンができる」というだけのウソ技のつもりだったが、記事の画像編集担当が悪ノリしてシンシアの半裸のコラ画像を作り出したことで野球拳のウソ技が誕生した。
普通に考えればすぐに冗談のウソだと分かりそうなものなのだが、そういわれてしまえば、これはジャンケンをしているにしかみえなくなってしまうようなアングルのグラフィックだったことが功を成して、当時は多くの子供たちが信じてしまった。
助けを求めた表情とポーズはまったく変わらずに服が一枚ずつ脱がされていくという過程を描いたけしからん加工画像はかなり衝撃的で、もしかすると特殊な嗜好に目覚めてしまった小学生男子たちもいたかも知れない。
これがウソ技だということは翌号の雑誌で明かされるのだが、逆に言えばファミマガを毎号買ってないとわからないことでもある。
さらにいえばゲーム自体は正直なところマイナーだったため、野球拳の裏技を実際に試してみた人はごく少数という実態がある。このソフトを遊んだことのあるユーザー数よりも、野球拳ができるゲームとしてタイトルを覚えた人の方が多いくらいである。
そんなわけで、当時に「友達から聞いた」というだけでファミマガも読んでないしソフトも所持してなかったような人は、インターネットでウソ技だったと知るまでずっと信じ続けていた人も多い。
というか、今この記事を見て初めて騙されていたことを知った人もいることだろう。
ちなみに本作のキャラクターデザインを担当した佐藤元もこのウソ技を信じてしまい、再現しようとしたが何度やってもうまくいかず、騙されたと知ってショックを受けたという逸話がある。
現代ではその鬱憤を晴らすべく、脱がされたシンシアのイラストがpixivに投稿されている。更にはFLASHや『メイドイン俺』で自作した猛者さえ居る。