テレビゲームに於ける用語の一つで、特殊な操作を行う事によって通常のプレイではありえない様々な現象・効果をゲーム内に及ぼす要素を指す。類義語として『バグ』、『チート』などがある。
元はプロレス用語で、勝つために何でもする(噛み付き、目つぶし等)様な卑怯な技を指していた。
今現在では、ゲーム用語以外でも「知る人ぞ知る隠れた方法」として「裏技」が使われる事がある。
(例えば、料理の手間を簡単にする裏技!等)
概要
この言葉が広まるようになったのは、1980年代前半にファミコンの大ヒットでゲーム専門誌が相次いで創刊され、目玉記事として裏技が扱われた事による。
始まりは、ロードランナーで出た無敵バグを販売後に気付いた高橋名人がコロコロ編集部に相談した所「裏技」と言う事にしましょう、とバグを一つのテクニックとして紹介したのが始まりとされる。
それから後は色々な「裏技」が意図するしないに関わらず紹介されてきた。
これはゲーム雑誌側でも掲載する事で販売促進に繋がり、当時の流行と相まってブームにもなった。
ファミコン~プレステ2位までは「裏技」と言う物を取り入れたソフトが多々出ていた為、短期間だが裏技と言う文化があったとも言える。
裏技は「ゲームの仕様内のもの」と「仕様外のもの」の2種類に大別できる。
「ゲームの仕様内のもの」としての裏技は、隠しコマンド等が代表的でメーカーによって意図的に入れられたものである。これはゲームの開発中にデバッグや難易度調整などのテストプレイ用に用意したコマンドをマスター(製品出荷版)でも削除せずに残しているのが殆どである。
8bit機など家庭用ゲーム機のハードの性能が低かった当時は、通常のプログラミングでは不可能な特殊な効果を狙い、メーカーが意図的にゲーム機の仕様を無視してプログラムを組む例もあった。
同じ機種でも初期のロットでプレイすると動作が不安定になるなどの弊害もあったが、ゲームソフト開発者の熱意が生んだ、別の意味での“裏技”が存在していた時代があった。
「隠しコマンド的な裏技」については、ゲームバランスを根底から崩す無敵やステージセレクトはともかく、コンティニュー等の救済措置的な裏技は「裏技にする位なら最初から入れてほしい」という批判も多かったが、メーカーとしてはソフトの発売からある程度の期間が経過してプレイヤーが飽き始める頃に雑誌で裏技を公開して、注目を集める事で延命を図る効果を狙っており、メーカーからのリークである事を隠す為に裏技を見つけた読者からの投稿を装う事が多かった。
インターネットが普及するようになった現代では「仕込まれた裏技」はよほど巧妙に仕込んでいない限り、あっという間に発見・拡散されるため、隠しコマンド的な操作で無敵やコンティニューを起こす裏技はほぼ壊滅した。無敵やステージセレクトやコンティニューを実装するなら最初からゲームの仕様に組み込むのが今のゲームでは当たり前である。インターネットがブロードバンド黎明期に差し掛かる頃の作品では、発売から数年後に解析で明らかになるものも存在した。だが、解析したとしても発生条件に関わるプログラムが何かわからない限り表に出てこなかった裏技もある。例えば、
既に発見された裏技にさらに条件を満たすとさらなる隠し要素があったという発見例もある。
さらには既知の裏技(パスワード)で存在は示唆されていたが、発動条件が不明だったものが多数の解析者によってあらゆる手段を駆使してまでも解析し、35年振りに発見されたものもある。
一方、「ゲームの仕様外の裏技」もあり、プログラムミスによるものは「バグ技」とされ、開発者のデバッグ不足が原因である為、作り手側からすれば恥ずべきものである。しかしリメイクの際にその効力の有用性から直されずに仕様として実装される事例もある。例えば「スペースインベーダー」のレインボーは本来はバグの一種だが、インベーダーブームの一つの現象として有名になった為に再現ができる事が多い。
この事例で最も過激なものとしては、デバッグをちゃんとやってるソフトに対して「仕様外の動作」を強引に発生させるというものがある。詳細→チートバグ
例えば、ファミコン本体を強引に操作してノイズを発生させたり、プレイステーションのゲームディスクをゲーム中に入れ替えるなど。もちろんこれはゲーム機やソフトを破損させるリスクがあり、それによって発生した故障は当然メーカーの保障外となる。
英語圏では『グリッチ(Glitch)』と呼ばれ、近年ではビデオゲーム界のグローバル化により日本のゲーメディアでもその呼び方の方が多くなっている。今の時代に「裏技」という表現を敢えて使う場合は、この言葉が生まれた時代のレトロゲームのそれを指すことが多いようだ。
今のゲームでは致命的なバグは発見され次第アップデート配信で修正するのが当たり前なので、後々まで語り草になるようなとんでもない裏技というものはそうそうお目にかかれなくなった。裏技というもの自体がゲーム機がインターネットに繋がっていない時代の文化だと言えよう。
また、中にはバグではなく仕様の裏を突いたタイプもある。仕様の裏に類する代表例が、スーパーマリオブラザーズにおける無限1UP。
そして、企業側でもデータを弄った物を「裏技」として配布した例もある。
例えば電撃プレイステーションでは隠し要素解放や特殊な状況でスタートと言ったような、俗にいう改造データを配布していた例があったり。
スクウェア(現スクウェア・エニックス)もチョコボの不思議なダンジョンには「不思議なデータディスク」として意図的に改造されたデータをソフトにつけていた。
これも、当時は「裏技」と見なされていた。
この為、非公式に改造データの売買をしている物も商品として「裏技データ集」の様な名目で売られたりしていたが、今現在では「チート」に分類される物である。
なお、90年代末期からは、本体に別売りの機器を取り付けたりツールソフトを使って能力値などのパラメータを改変する所謂チート行為が流行するようになった。これは主にクライアントにツールを組み込むのが比較的容易な事が理由。オンラインゲームではご法度なのだが、例え禁止行為であっても楽をしたいプレイヤーやRMT業者の存在が大きい。また、オフラインであっても公式大会などでデータを持ち寄るタイプでは問題視される。詳しくはチートの項目を参照。
嘘の裏技
インターネットがなかった時代には嘘の裏技(所謂「ウソテク」)が多く広まる事もあった。現在ならばこの手の情報の真偽は即座にネットで確認出来るが、当時はそうした情報伝達手段が未発達な事もあり、学校や会社の外部へ情報が伝わるのに週間、月間単位で時間がかかるという背景もあった。
また、当時のゲーム誌ではこれを逆手にとってわざと嘘の裏技を掲載してそれを読者に当てさせる企画があり、スクウェア(現:スクウェア・エニックス)の『水晶の龍』がこれで注目を浴びる事となる。
しかしながら、ネタが巧妙であるため信憑性の高いウソテクに関して、開発者がそのネタを拾って次回作などに実装してしまうケースも存在する。こうしたものはある意味で、ユーザーのアイディアの採用例とも言える。
関連動画
岡本吉起が語る裏技の思い出
関連項目
- 仮面ライダーエグゼイド:ゲームをモチーフにした特撮作品であるこちらにおいては、ネットムービーやHBD等でのスピンオフのタイトルに【裏技】を冠している。