内容
具体的にはまず、エミュレータの「やりなおし」機能で、わずかでも操作を誤ればダメージを受けたり時間のロスになる場面を保存。
そしてゲームスピードを極端に下げて精密に操作しやすくするため、「スロー再生」や「コマ送り」を併用して無傷で切り抜け、1分1秒でもクリア時間を短縮したり多くの得点を得られるルートを構築している。
その労力は相当なもので、「追記」の形で数百、数千、時には6〜7桁にも及ぶ回数のやり直しがある他、さらにはプログラムの解析まで行い、ゲーム内で使用される乱数や当たり判定などを把握して、ゲームクリアのために“理論上”最適な操作を研究し、突き詰めて、動画の形で公開しているのである。
(なお、“解析”であって、ゲームのプログラム自体をイジっているわけではない)
そのため、画面上を動く操作キャラクターやカーソルが人力では到底不可能なほど高速かつ正確な動きをしており、ゲームの仕様によっては最早ギャグとしか言いようのない奇妙な挙動をすることも多く、それがプレイヤー間の一部で、まるで大道芸を見るような高いエンターテイメント性を確立している。
特に顕著なのはアクションやシューティングゲームで、例えば、
「数ドットの隙間しかないような敵の密集地を華麗にすり抜ける」
「タフな強敵をすさまじい弾の速射で出オチ同然に撃破」
「ランダムな敵の出現位置とタイミングを予測してあらかじめ超遠距離から弾を“置く”」
「普通に歩くキャラを攻撃のコマンドスキルを絶え間なく出し続け強引に高速移動させる」
「画面切り替え時に故意にバグを発生させて一気に最終ステージまでワープさせる」
などの異様な挙動を繰り返した結果、本来なら数時間〜十数時間はかかるクリアタイムがわずか数十分、一部のゲームではわずか数十秒程度にまで短縮されている。
そして、それらのゲームの操作(された)キャラクターは動画の閲覧者たちから「変態」という大変名誉な呼ばわれ方をしている。
なお、まるごとバックアップの機能があるバーチャルコンソール配信ソフトや巻き戻し機能があるNintendoSwitchOnlineのファミコンなど、直前の状況からやり直せる機能は上記の「状況の保存とやりなおし」と似たようなことを行える。
TASと違って「乱数や判定などの把握が不可能」、「フレーム単位の操作要求に対してスロー再生やコマ送りができない」といった難点があり、実際に超常現象を狙って起こそうとするには基本的に総当たりで探し出すしか方法はないが、この状況の保存とやりなおしを利用して確率1%未満のレアアイテムのドロップあたりを目的にしてみると、TASの苦労を軽く味わえるかもしれない。
歴史
その歴史は古く、さかのぼれば1999年になる(DOOMで成立)。TAS動画のほとんどは、「Speedrun」、つまり最速を目指す競争に使われており、例えば「キャラのジャンプなどの無駄を失くす」、「"乱数調整"によって低確率のものを確実に引き当てる」、「敵キャラなどの位置を任意の方向に動かして利用する」、「フレーム単位で入力する」など通常のプレイでは不可能なことまで可能になる。
また強制スクロールや特定フラグ成立まで時間のかかるものの場合、可能な範囲でお遊び要素が現れるものもあり、フレーム単位で行なわれる動きは"変態"と呼ばれることも多い。
さらにゲーム内で発生するバグや仕様も有効利用することもある(壁抜けやワープでステージ攻略の短縮からデバッグルームの呼び出しや任意コード実行を利用してエンディングに直行するなど様々)。つまり物理的なものを除いて実機で可能なことであればなんでもありということである。
そのほか、「Speedrun」以外のTASの中でもスピードを追求しない魅せプレイ勢の区別のために「TAP」という用語も作られたが、前述の通りTASは”Tool-Assisted Superplay”の略でもあるため、TASと表現すればTAPの意味を包含するため現在はほぼ死語となっている(「これTASじゃないじゃん」という荒れる原因になりかねないツッコミを避けるためにあえて区別する場合は、最近では「TASさんの休日」という言い回しをするときもある)。
だが2020年代になると原理の浸透によって視聴者も「どうせエミュの力だから」と反応が薄くなったことに加え、界隈の高齢化によって社会的に追記回数の膨大なTAS動画を作る暇がない動画作成者も増え、既に下火のジャンルとなっている。
そのため、エンターテインメントというよりは乱数調整ありやバグありといったレギュレーションのRTAの研究の一環として行われるケースが増えた。
色々なTAS
実は色んなTASさんの種類がある。ただ、上項にあるように魅せプレイのTASさんのことをTASではないと発言するのは地雷であるため、ニコニコやYoutubeではコメントに気をつけよう。
ちなみに名前の正式名称は無い。
いつものTASさん(タイムアタック)
一番知られてるTASさんで、純粋に最速クリアを目指すもの。ジャンルを問わず色々なゲームで行われており、アクションやシューティングはもちろんのこと、クリアまでに十数時間はかかるようなロールプレイングゲームでさえわずか3時間程度でクリアされてしまっている。発売から数十年経ったゲームでも記録が更新され続けており、新たなバグが見つかった場合はいきなり記録が数時間から数十分に短縮されることも。
乱数TASさん(乱数調整)
ゲームにランダム性を持たせる乱数を調整して望み通りの結果を出すTASさん。ギャンブルゲーム全勝などは当たり前で、テトリスなどの落ちゲーでは都合の良い形のブロックを出し続けて全消しを繰り返し、CPUが操る敵キャラクターの行動さえ「します、させます、させません」と操り返して完璧に対応。低確率のドロップアイテムもアッサリ入手する。
実はあまり見られない種類だが、その原因は乱数を1つ1つ数えているためゲームによっては恐ろしく時間がかかること。
人力TAS
人間によるプレイでTASと同等の記録を叩き出したもの。「リアルタイムアタック:RTA」の最速記録を目指していると、この境地に至る事が多々ある。中には乱数調整や凶悪なバグによる大幅なショートカットさえ再現する猛者中の猛者もおり、TASさんの攻略ルート構築が不十分だった頃にはそれ以上の記録が生まれることもあった。
TASさんの休日(魅せプレイ)
上記のような最高率ばかりを求め続けるのも味気ないため、TASさんも休日ぐらいは無邪気に遊んで羽を伸ばしている。
例えばバスケットボールでは延々と3Pシュートを決め続け、ボウリング玉を直角にカーブさせてピンを倒し、世界中のアスリートたちと一緒に100m走を3秒大で走っている。
また、算数でお絵描きして全問正解するなど勉強も怠ってはいない。
……とまあ、主に『Wii Sports』や『ハイパーオリンピック』など実際の人間の動きを再現するゲームを多くプレイするTASさんで、エミュレーターを用いた正確な操作や超速度のボタン連射を用いた結果、スポーツの世界記録を軽く更新し、物理法則を無視したツッコミ所しかない魅せプレイに変貌する。
2つ目に多いTAS動画で、TASのことを最速クリアとしか認識していない人からは「TASじゃなくね?」というコメントも出るが、スーパープレイもTASさんなので注意。
チートか否か
「外部ツールを用いる」という性質上、ズル、不正行為……いわゆる"チート"と思われがちだが、ゲームの特性自体を改造等の手法により変更するチートとは異なるため、その扱いに関しては注意が必要である。
(一部では改造されたゲームのTASやチートと兼用した動画-通称チータスも存在する)
これがもし、純粋な己の腕のみで挑む「RTA」であると偽って投稿されたものや、対等のルールの下で行われる対戦競技の「eスポーツ」、ネット上で不特定多数のプレイヤーたちと遊ぶマルチオンラインゲームであるならば、それは間違いなくチートとなる。
pixiv
なおpixivにおいてはこれらのツールの利用を実生活に当てはめた作品( やりなおし、コマ送りなど )やTAS動画の特徴的なネタ( ケツワープ、ムッムッホァイ、ドニ顔等 )のイラスト、「月刊TAS動画ランキング」のナビゲートをつとめるキャラ「代理ちゃん」のイラストなどが投稿されている。
近年ではうごイラ機能を用いた動画を投稿する強者も現れている。
関連イラスト
「TASさん」と呼ばれることもある。 コメントでは「
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