概要
RTAとは、リアルタイムアタック(Real Time Attack)の略語で、ゲームスタートからクリアまでのプレイ時間はもちろん休憩や食事にかかった実時間(現実の所要時間)の短さを競うものである。
英語圏では「speed run」と呼称されるので、YouTubeなどグローバルな場で検索する際はそちらの方がヒットしやすい。
大まかなルール
TASはエミュレータでツールを使用するのに対し、このRTAは人間が実時間最速を目指すものである。RPG系のゲームは名前を入力し終わってからの計測が多い。
従来のタイムアタックはセーブやリセットを使いタイムを短縮させていたが、このRTAではセーブやリセットは基本行わないか、あるいは最小限である(後者の場合はセーブ&リセットをした方が早い場合に行われることが多い)。
近年のゲームは様々な機種に対応しているものが多く、それ故に機種間の性能差(ロード時間の差)などでタイム差が出ることがあるため使用した機種を載せることが必要になっている。明らかな差が出る場合、PC版最速・CS版最速 という様に機種ごとに分類される。基本的に実機によるプレイが普通であるが、エミュレータ上のRTA記録が認められている作品もある(当然、レギュレーションは実機とは分かれている場合がほとんど)。
コントローラーは入力を維持できるものなどは禁止されているが、連射機能の取り付けは許可されている。またコントローラーごとに操作性や入力方法が違うため一部ゲームにおいて、あるコントローラーではやりやすく、あるコントローラーではやりにくいプレイなどがある。しかしあくまでやりやすい・やりにくいであり、練習すればできるものなので気にされていない。
なお上記は日本国内における慣習であり、海外ではコントローラーも純正品を使用し、連射機能についてはハードウェアチートとして禁止されることが多い。
証拠アーカイブを収録する配信でコメント欄に助言するリスナーが出て来ることもあるが、配信中の助言はレギュレーション違反にはならない。
RTAのタイマーストップタイミングはAny%だと大抵がラスボス撃破の瞬間となる。これは、証拠アーカイブでのエンディングの配信がネタバレであるとしてあまり好ましくなく、特に新作では一定期間中エンディングの動画配信がメーカーから明確に禁止されることも多いため。
競技活動・配信活動として
互換機を使用するなど特殊な操作の場合、1プレイヤー分にコントローラーを複数個使う場合もある。そこに足で操作する乱数調整用のツールが加わると、もはや操作自体が特殊な訓練無しではままならない1つの立派な技術と化す。
タイムや証拠の配信アーカイブなどの記録はRTA専門の記録サイトに保存され、界隈に周知される。
種目によっては記録サイト側がタイマーストップ時の記録と実際のタイムに食い違いが無いか独自に検証し、記録を修正する場合がある。種目によってはそれこそ0.001秒単位を争う場合もあるためである。
RTAは手動での高速操作のためにアスリートさながらに体を鍛える層もおり、トップ層のレベルは最早スポーツといっても過言ではない領域に達している。また、RTAの動画・配信のみで生計を立てる者もおり、プレイヤーの実力・自己演出力次第では職業として成り立つ収益性が生まれることがある。
一部種目では完走まで24時間を優に超えるものもあり、完走まで不眠不休でプレイする走者もいる。そのような種目は完走しただけで世界ランカー、あるいは世界1位になるというドマイナー種目であったりするのが普通である。
RTA走者は学校を卒業した後は普通は兼業で行うことが場合が殆どで、2020年代になるとゲームプレイヤーの高齢化もあって妻子持ちの30代が主戦力となっている。一見すると妻子を養いながらRTAの世界記録に挑戦するのは大変そうだが、RTAの記録と実社会でのスキルはある程度相関するものであり、優秀な走者は大体ある程度以上仕事をこなせるものである。というより、そうでないとRTAの技術を覚えて使いこなすことができないので、ある意味では必然である。
性質・注意事項
ポケモンシリーズのような個体やアイテムを収集することの重要性が高いソフトの場合、RTAを完走ないしリタイアしたROMから個体やアイテムを収集するという副産物効果が期待できる。
オープンワールドのゲームではソフトによって開発者の想定する標準的な攻略順を外れると若干長いロードが入る場合があるため、RTAでは注意が必要である。
普通はどうしようもないクソゲーもRTAなら軽快に進むので、特にアクションゲームの場合は一見良ゲーと錯覚することもある。無論訓練を積んだ走者だからこそできる芸当なので、その印象を鵜呑みにしてはいけない。
転機
かつては「最速記録更新した場合に投稿」「記録の証拠物件としての投稿のため動画時間が非常に長い(経験値稼ぎなどの普通のプレイ動画ならカットされる部分も等速で使用される)」など、映像作品というよりは映像記録としての側面が強いため、事情を知らずに見る者はおらず、検証目的以外で視聴するにはハードルが高い面があった。広範な予備知識がなくては全く楽しめないものだったのである。
しかし、日本ではある男の登場により、2012年以降は、
- 世界記録にはまったく及ばないがプレイ画面が面白かったから、あるいは自己ベストのタイムを更新したから投稿する
- 見どころの乏しい区間は、タイムアタックの厳正さを無視して倍速再生の編集を行う(※1)
- 対象ゲームを全く知らない者にもプレー内容が分かるように解説音声や図説をプレー映像に併せ、プレー録画を止めず同時にプレゼンする
- 退屈な時間帯には余興として、流行りのネットミームや投稿者の趣味の動画や音声などを、ゲーム内容と全く関係無くても挿入する
- 先駆者のいない不人気ゲームを積極的に見つけて競技ルールを自分で自由に設定し、世界記録保持者を自称する(※2)
……といった彼のエンタメ志向な作風を模倣した動画が多数発表され、ニコニコ動画を中心とした動画投稿サイトでブームとなり、界隈の様子に大きな変化が起きた。
これにより製作者・視聴者ともに新規参入や鑑賞へのハードルが低くなり、プロ・アマ、ガチ勢・エンジョイ勢を問わない愛好者の増加に繋がった。
(しかしながら、RTAの商業化や一般視聴者層への浸透を目指す者たちからは、こうした経緯は非常に明かしづらいものと思われている様子。)
※1:別途、証拠用として等速の実時間で再生する無編集版の動画を投稿し、バランスをとる者もいる
※2:こうした「世界記録」は、ギネス世界記録で同様の事(自作競技を創作しては世界記録を名乗る)をして「ギネス記録保持数世界一」を名乗る人物が存在していたように、古くからあるジョークである。
余談
このRTAでも人気を誇るゲーム『スーパーマリオワールド』にはステージの途中で特殊な作業をすると突如エンディングに飛ぶ、というエンディングを呼び出すバグがある。しかしこれは非常に難易度が高くRTAでの使用は無理だと考えられていた。
しかしある日、海外のRTAプレイヤー・SethBlingさんが、なんと実機でそのバグを成功させた。これにより、約6分でクリアするという圧倒的な世界記録を出した。後日再チャレンジしたところまたしてもバグを成功させ世界記録を塗り替え、4分49秒という記録をマークした。
TASの領域に初めて足を踏み入れた人間としてRTAプレイヤーの間で大きな話題になっている。
ちなみに初回成功時SethBlingさんは「どうせできないし、なんか話そうぜ。」という様なテンションでプレイしていた。しかしバグが成功した際は視聴者も含め誰もが驚きを隠せなかった。
上記の様にスーパープレイもRTA動画の見どころだが、RTAは人間が行なっているものである。そのため時々ミスプレイが起こることもあり、そこもRTA動画の面白さの1つである。
派生
1.
ブラウザゲームやスマホのゲームアプリなどで、期間限定イベントの開始と同時に最速攻略を目指す熟練プレイヤーを指す場合がある。
(古くからは艦隊これくしょんや刀剣乱舞といったDMMGAMES作品時代から、存在すると言われているらしい)
こうしたプレイは単なる自己満足という面もあれば、リアル事情から休暇等との兼ね合いで速攻クリアを強いられている、新規追加キャラクターやアイテム等のドロップ率を鑑みてそちらを優先するため、などのパターンもあったりと様相も十人十色である。
ただこうしたRTA勢の残したデータが、後続の熟練プレイヤーによって収集・解析されることで、より確実なゲーム攻略法を生み出す土壌となってくれるため、一部では感謝と敬意を払われる。
一方で、公式イベントの一つとしてリアルにRTAを行ったのがグランブルーファンタジーである。その挑戦者とは……意外な人物だった。気になる方は各自検索を推奨。
2.
派生ネットスラングとして、RTAと関係ない場面でも「オリチャー」という言葉が使われることがある。
オリジナルチャートの略で、RTA動画で「ここでオリチャー発動!」といきなり予定を変更するなどの奇行が見られたことから転じて、
「アドリブ」「その場の思いつきや事故をリカバリーするなどの目的で、予定にないことをやらかす」などの意味で使われているようだ。
2.2.
派生して「計画通り進めれば文句のつけどころも主人公達の付け入る隙も無い完璧な計画だったのに土壇場で計画にない不要な寄り道や計画の変更をしたせいで付け入られ計画が破綻するボス」などは「オリチャー癖がある」と評され、逆に「全てが終わった後"計画通り"みたいな面しているが、よくよく見返すとあちこちでしっかり計画を立てていれば避けられた運任せの綱渡りをしていたり、ピンチになった理由が計画にない行動の結果だったり、上手くいった理由が側近や仲間がリカバリー要素を持っていてくれたおかげなキャラは「ガバチャー走者」の渾名を貰うこととなる。
反面「そうとわかっていて周到な計画を立ててでもいない限りやらない奇行に走った結果、仲間になるはずのないキャラが仲間になったり、敵が弱っているタイミングにかち合う、或いは心意気を買って自分から縛りプレイしてくれるなどで倒せないはずの敵が倒せたり、手に入らないはずのアイテムが手に入ったりといった意味不明な奇跡が起こるキャラ」は「(作品名)世界救済RTA走者」と呼ばれることとなる
3.
二次創作の形式の一種として、原作をゲームに見立てたり「公式から原作ベースのゲームが出た」という設定でオリ主等にストーリーを攻略させるプレイヤー視点のRTA実況配信風作品も登場している。
これはあくまで「RTA風」であって実際のRTAを題材にした作品ではないので、使うタグは区別する必要がある。