概要
ファミリーコンピュータ版・MSX版『ドラゴンクエストⅡ』において、終盤に登場するある場所で特定の操作をすると、ある装備の攻撃力・守備力+他の装備の追加効果を合成した状態にできるというバグで作り出される、絶大な攻撃力を誇るが呪われている「はかいのつるぎ」と、攻撃力は控えめだが2回攻撃になる「はやぶさのけん」の特性を付与した剣・またはその状態の俗称。
バグの発生理由上他の装備も合成が可能だが、この組み合わせを越えるバランスブレイカー級のものはなく、難易度が激高の『ドラゴンクエストⅡ』における低レベル攻略・タイムアタック等ではしばしばこの「はかぶさの剣」だけが実行される。
尤もこの裏技を使用できるタイミングがラストダンジョンに限られ、本作最難関との声も名高いロンダルキアへの洞窟は結局自力で突破する必要があるため、実際にそこまでバランスブレイカーと言えるのかは疑問視されることもある。
原因、および作り方
元々上記のバージョンの『ドラゴンクエストⅡ』には「そうび」コマンド以外の何らかの手段で装備を外すと、攻撃力や守備力などが再計算されずに変更前のまま残ってしまうというバグ技があった。
しかし、『ドラゴンクエストⅡ』ではそうびコマンドを使わずに装備を変更する手段は装備している状態でお店に行き、そのまま売却するか、呪いを解く以外の手段が無い(また、手元から無くなると防具に付与されている特殊効果は消える)ことやレベルが上がってしまうとステータスが再計算され、適切な数値に戻ってしまう為にどうしても即金を作る必要がある時に一時しのぎとして行う以外の実用性は特に無かった。
だが本作では後述のロケーションが存在するため、プレイヤーにとって有利なバグ技として利用できるのである。
ハーゴンの神殿にて
最終決戦の地であるハーゴンの神殿は、ローレシアの城下町そっくりな幻覚に包まれている。
この幻は本来「ルビスのまもり」を使用して打ち破るのが正規手順なのだが、「幻の中にあるお店や宿屋を利用する事ができるが、打ち破った後はすべての行動が無かったことになる」という仕掛けになっている。
この「無かったことになる」という部分がミソで、内部的には「装備品やパラメータなどを神殿突入前の状態へ戻す」事で実装されているため、前述の「そうびコマンド以外での装備変更」が発生する事になる。
そのため、幻に突入する際に装備Aを、幻の中で装備を変更し装備Bをつける事で幻を打ち破ると装備B→装備Aへ強制変更され、「装備Bのステータスを持った装備A」をしているような状態になるのがこの技である。
なので、はかぶさの剣を作る場合は「はやぶさのけん」を装備して突入し、幻の中で「はかいのつるぎ」に変更。呪われるが、無視して幻を打ち破ると「はかいのつるぎ」の攻撃力が維持されたままになり、実際には装備されている「はやぶさのけん」による2回攻撃の能力が発動する上に呪われていないという最強の武器が完成する。
当然、発生原理上他の種類の装備、他キャラクターの装備でも同じく高い数値の引き継ぎ+特殊能力付与(あるいは解呪)が可能である。
一例として、サマルトリアの王子に「みずのはごろも」を装備させた状態で幻に突入し、幻の中で「あくまのよろい」に着替えてから幻を突破すると、防具が貧弱貧弱と言われている彼にロトの鎧を越える守備力+呪文・炎耐性をもたせる事ができる。
「しにがみのたて」でも同じ事が一応できるが、『ドラゴンクエストⅡ』の盾には特殊効果が無い為にあくまで解呪だけにとどまる。
ムーンブルクの王女は装備の選択肢が少ないためにあまり強烈な性能をもたせる事はできないが、MSX版オリジナル装備である「あぶないみずぎ」を装備した状態で幻に突入し、「ミンクのコート」か「みずのはごろも」に着替えてから幻を打ち破る事でデメリットの守備力1を克服し、けっこうな確率で(シドー含む)敵を見とれさせて1回休みにする事ができたりもする。
この場合、どうしても「みずのはごろも」が持っている耐性は引き継げないのでちょっともったいない感もあるのだが。
先に述べたように、このバグ技には弱点もある。
- 以後の戦闘でレベルアップした場合には再計算され、元の性能に戻るためハーゴン戦までレベルアップしないように経験値管理が必要
- 「そうび」コマンドを使用すると元に戻るため、以後触れなくなる
- はかぶさ状態にした後、ハーゴン城を出入りすると再計算されて元に戻る
また、これらのバグった状態でロンダルキアの祠まで引き返してふっかつのじゅもんを聞いても反映されない。
そして当然ではあるが、SFC以降のリメイク・移植版では修正されている。
余談
『ドラゴンクエストⅡ』と比べると恩恵が小さい事などからマイナーではあるが、実は『ドラゴンクエストⅢ』でも「はかぶさ」状態を作る手段があったりする。
モシャスの呪文を使えるキャラクターが「はやぶさのけん」を装備し、「はかいのつるぎ」を装備しているキャラクターに変身すると、変身したキャラクターの通常攻撃は「はかいのつるぎ」の攻撃力を参照した2回攻撃となる(更に「バイキルト」の効果も2回両方に乗る)。
ただし同作の「はかいのつるぎ」は高攻撃力+会心の一撃率アップの効果を考慮に入れても通常攻撃を選択時、呪いで動けなくなる確率が1/4と高いために、「はかいのつるぎ」を持っているキャラクターの与えるダメージ期待値が下がってしまうというデメリットもあったりする。
攻撃力がやや下がるが普通に戦え、ダメージ期待値も上回る「まじんのオノ」「らいじんのけん」を装備させた戦士などに、賢者や呪文職から転職した商人がモシャスで化けて「まじぶさ」「らいぶさ」するといった回避手段のほか、「はかいのつるぎ」を持っている戦士は道具で戦うかひたすらぼうぎょに徹するという割り切った戦法にするという手もある。
こちらは厳密にはバグ技ではなく仕様であるためリメイク版でも有効で、「はかいのつるぎ」の代わりに武器として最大の攻撃力を持つ「はかいのてっきゅう」を用いることでしんりゅうの最速撃破を目指すというテクニックが存在する(奇しくもこちらも「はかぶさ」と略すことが可能な組み合わせである)。
公式ネタ(一部ネタバレあり)
『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』ではこの裏技に基づいた設定の専用技「滅・はやぶさ斬り」が存在する。
『戦え!ドラゴンクエスト スキャンバトラーズ』でもSPカード「エクステンションフルブレード」での攻撃が「『ドラゴンクエストⅡ』仕様のドラゴンキラーで攻撃→ムーンブルクの王女の投げたいなずまのけんに持ち替え攻撃→サマルトリアの王子の投げたはかいのつるぎとはやぶさのけんに持ち替え2連続攻撃」というものになっている。
『ドラゴンクエストウォーク』でははかいのつるぎに「破壊のはやぶさ斬り」という敵単体に2回攻撃を行うスキルが付いている。
『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』では「はかいのつるぎ」を装備した状態でアイテムドレッサーを使い「はやぶさのけん」の見た目にすると実際に手に入れることができる。
この作品で初めて明確に「はかぶさのけん」の名前で登場している他、ロトのつるぎを凌いでこれが本作の最強武器だったりする。
ただし、属性攻撃は持たないのでフレイムとブリザードには通用しない点だけは注意。
『ドラゴンクエストけしケシ!』でもはかぶさの剣が登場。手に入れ方はやはりはやぶさのけんとはかいのつるぎの錬金。今作では見た目が「刀身が黒いはやぶさの剣」になっている。
吉崎観音の漫画『ドラゴンクエストモンスターズ+』作中でサマルトリアの王子がこの「はかぶさ」と思われる剣(解説では「破壊の気を纏いしはやぶさの剣」と呼ばれている)を使用している。
ただし実際のゲーム中では「はかいのつるぎ」を装備できない為「はかぶさ」を使えず、リメイクでは「はかいのつるぎ」自体の装備は可能になったがバグ技は修正されているため結局扱うことはできない。
エニックスから発売された『ゲームブック ドラゴンクエストⅡ』では、この裏技を元にした「破壊のはやぶさの剣」が登場している。
ちなみにこの作品ではサマルトリアの王子が装備できる。
表記について
もちろんメーカー公式の正式名称ではなかった為、「はかぶさのけん」なのか「はかぶさのつるぎ」なのかは長い間不明だった。(「はやぶさのけん」と「はかいのつるぎ」の合成であるため)。雑誌等で紹介される時のひらがな表記もわかれている。
『ドラゴンクエストⅡ』(ファミリーコンピュータ版)では、アイテム名の文字数が7文字までのため、「はかぶさのけん」の方が妥当だと思われる。
結果、上記のように『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』以降の作品で「はかぶさのけん」の名称が採用されており、現在ではこれが正式名称になっている。