概要
『ドラゴンクエストⅡ』に登場するサマルトリア国の王子。のんびり屋で寄り道好き。ローレシアの王子に出会う為に旅立ち、何度かのすれ違いの末に、リリザの宿屋でようやく仲間になる。ちなみに、彼がいないと「ローラの門」を抜けられないので、攻略するためには仲間にする必要がある。
ファミリーコンピュータ版ではオレンジ色の髪でクリリンのような顔をしていたが、スーパーファミコン版以降は金髪になり容姿もイケメン化した。
ゲーム面での特徴
“HP”と“MP”がそこそこあり、ローレシアの王子ほどではないが、やや強い武具が装備でき、なおかつ回復呪文も覚える僧侶寄りのキャラ。ムーンブルクの王女ほどではないが、攻撃呪文も使える。
ファミリーコンピュータ版では戦闘不能の味方を復活させる呪文である「ザオリク」を覚えるのは彼だけである。
こうしたコンセプトは「剣と魔法、その両方が使えるバランス型のキャラ」として設定されたものと思われるが、初登場のファミリーコンピュータ版では発売を急ぐ事になった結果、バランス調整が不完全なまま発売されてしまい、更に容量不足から来る様々な仕様の被害をモロに受けて器用貧乏ではなくただの貧乏とまで言われる性能になってしまった。
ただし、目立つ部分が弱いことを理由にそう言われるのであって、全ての性能をきちんと観察すれば一概に役立たずとは言えない。
彼の特徴はシリーズでも相当珍しい部類。
大器晩成の成長曲線
サマルトリアの王子の成長曲線は典型的な大器晩成型であり、レベル33あたりからステータスがぐんぐんと伸びはじめて、最終的には『ドラゴンクエストⅠ』の勇者と同等のステータスにまで成長するようになっている。
しかし、その大器晩成という点が同作のクリア想定レベルの設定ミスに思いっきり引っかかっており、その急成長期を迎える前には終盤の難所となるロンダルキアの洞窟も突破していることが多く、この伸びしろを活かしきれる機会が限られる。
実はこれ以前からすばやさがコンスタントに上がっており、後発作品であれば先制回復・補助要員として活躍できそうなところだが、これも悪い事に同作の行動順決定は乱数による変動が異常に大きく、ほぼランダムというレベル。
前のターンでHPが減った味方に回復をかけようとしても、最悪の場合では前ターン最後に敵の行動→同じ敵が次ターンの最初の行動で味方死亡という事すら起こり得る。
特にプレイヤー視点で気になるのがちからとHPの初期値が低く、伸び始めるのも遅い点で何故かHPに至っては初期値が完全な魔法使い型のムーンブルクの王女よりも低い。
後述の装備の貧弱さと相まって、敵を攻撃してもろくなダメージを与えられず、敵に攻撃されると一瞬で倒れてしまうという印象を非常に与えやすくなっている。
ちなみにムーンブルクの王女も死にやすさでいえば大差ない。あくまでローレシアの王子が死ににくいというだけである。
武器面での問題
同作では容量の節約のため、装備は基本的にローレシアの王子>サマルトリアの王子>ムーンブルクの王女の順で自由度があるようになっているが、サマルトリアの王子の装備範囲に関しては調整がいまひとつであり、最も強い武器は序盤に買える「てつのやり(攻撃力+20)」。シリーズではおなじみの「はがねのつるぎ」すら装備できないため、前述のちからの低さと相まって殴ってもまともなダメージを与えられない敵も多い。
この点に関しても分かりづらい部分があり、サマルトリアの王子が殴ってダメージを与えられる敵に関しては、表示攻撃力が5しかない「はやぶさの剣」を使ったほうがてつのやりよりも与ダメの期待値が高い場合もある。
ただし、裏技のような金策を行わない限りは購入しにくい高額商品なうえ、攻撃力が低いようにしか見えないため、多くのプレイヤーにスルーされた。
防具をムーンブルクの王女と取り合う事になりがち
同作で非常に有用な耐性を持っている「みずのはごろも」だが、この「みずのはごろも」を入手するイベントの際に作ってくれるNPCがご丁寧にも「そちらのお嬢さんに着せるのが良かろう」という旨の発言をするために、ムーンブルクの王女専用装備だと思ってそのままそちらに回されてしまう事が多い。
サマルトリアの王子の最強装備は「まほうのよろい」とされる場合が多いが、このまほうのよろいは守備力は25+呪文ダメージを3/4に軽減と、なぜか守備力自体ははがねのよろいと同じで中盤相当しかない上に呪文耐性も超強力とは良い難い。ドラゴンクエストシリーズにおいて守備力はそれほどウェイトの高い数値ではないうえ、『ドラゴンクエストⅡ』の戦闘バランスではこの呪文軽減は実用的であり、呪文だけでなくほかに軽減手段の無いブレスを軽減できるのが大きい。
ただし、全ての敵に対して万能というわけではなく、戦う敵によっては守備力では遥かに劣って見える「みかわしのふく」を着せていたほうが被ダメージの期待値が小さくなる(約1/7で攻撃を回避するため)場面があるなど、最適解となる行動が非常に難解で分かりづらい。
また、「みずのはごろも」がサマルトリアの王子にとって有用である事を知っていたとしてもバグ技を使わなければ1着しか手に入らないため、サマルトリアの王子に着せるかムーンブルクの王女に着せるかという二択は強制的に発生してしまう。
頭装備である「ふしぎなぼうし」もファミリーコンピュータ版では仕様上の問題で2つ目を入手できず、これもどちらに装備させるかで悩む事になってしまう。
なお本作では後発作品でシステム化される、隊列による被弾率の変化が実装されておらず、3人は一律で敵に狙われる可能性があるほか、敵のAIパターンである「集中攻撃」も一度ターゲットを選んだらその戦闘中ずっと攻撃し続けるなど非常に苛烈。
きちんと防御を使いこなさないと狙われたサマルトリアの王子が一瞬で戦闘不能にされてしまうだけでなく、パーティ構成に一切の余裕がない事もあり「唯一ザオリクを使えるサマルトリアの王子が戦闘不能=冒険中断」となりやすい。シリーズおなじみの蘇生アイテム「せかいじゅのは」は本作では1つしか持てない。
このため、サマルトリアの王子がすぐ死んでしまうという事がプレイヤーの記憶に残ったのか、度々サマルトリア=ヘタレキャラであるというような扱いをされるようになった。
また、彼が死んだ状態でサマルトリアの国王と話すと「荷が重かったか」と血も涙もない一言を言われる始末である。
呪文
僧侶型の癖にHP回復用の呪文は「ベホイミ」までしか覚えない…と言われるが、本作ではそもそもHPの上限値が低いため、「ホイミ」・「ベホイミ」はコスパに優れる回復手段ではある。
問題は攻撃・補助呪文の設定に難点が多いという部分で、「ザオリク」は戦闘中に使用不可で生き返った際のHPも1だったり、「スクルト」の効果が8%ずつ(最大50%)しか受けられない、魔法使い系の敵に「マホトーン」が入れば楽勝かと思いきや、ものすごく強力な通常攻撃を連打してくるので使わない方がマシな事がある、最強の攻撃呪文「ベギラマ」の威力が異常に低く「バギ」と同程度しかない(攻略本等に違う数値が表記されており、設定ミス説もある)…など、いろんな意味で踏んだり蹴ったりな事になっている。
ちなみに、ムーンブルクの王女による「ルカナン」も同じようなものである。
「ザラキ」は一部の敵には効くが、習得が遅い為に実際に使える敵は数種類だったり、「メガンテ」は唯一「ザオリク」を使えるサマルトリアが死ぬ事になるのでほぼ使い所がない。
得てして戦闘中の攻撃呪文に関してはあまり強力とは言えない。ただし『ドラゴンクエストⅡ』のダメージ数値においては、彼の「ベギラマ」による多少の後押しがこれでも有効になることも。
戦闘中に使う道具の重要性がわかりづらい
同作は「戦闘中に使うと効果を発揮する」武器や防具が初めて登場した作品でもある。
後発のシリーズ作品ではこうした道具に有用なものが時折存在することへの知名度は上がったが、詳しくゲーム内で説明されていない為に、その強さに気づかなかったプレイヤーも当時多かったようである。
特に恩恵が大きいのが「いかずちのつえ」及び「ちからのたて」で、前者はムーンブルクの王女に装備させがちだが、どうせ直接攻撃はしない上に元々「バギ」を使える彼女ではなく、「ベギラマ」を覚えるまでの間はサマルトリアの王子にもたせておくという選択肢がある。
こうすると擬似的に1ターンに「バギ」を2回使用できる他、「ラリホー」と「バギ」を1ターンに同時に使うという行動が取れるために戦略の幅が広がる。
後者の有用性は言わずもがな、MPをただでさえ消費しやすいのに加え、敵も容赦なく「ふしぎなおどり」を連発してMPを削ってくる同作ではMP無消費での「ベホイミ」は非常に強力。
プレイヤーのフォローが必要
総合的には戦闘以外の場面こそ彼の本領であり、古典的なRPGに多い「冒険補助が得意」という部類。「ザオリク」は勿論だが、「ルーラ」と「リレミト」の組み合わせは彼しか扱えない。どこで窮地に陥ってもとりあえず帰還できるのは、見落とされがちだが彼がいてこそ。パーティの立て直しに欠かせない縁の下の力持ちであり、装備品は彼が死なないよう優先的に整えてやるとパーティの安定度は高くなる。
冷遇の先に得た光
以上のようにファミリーコンピュータ版では仕様という仕様が彼にとって逆風だったが、リメイク版ではこうした点は改められており、装備も見直されかなり扱いがよくなっている。
その例として挙げられるのが「ひかりのつるぎ」や「ロトのつるぎ」等の強力な武器が装備可能になった事や、前述の各種呪文の仕様が改善され、当初のコンセプト通り肉弾戦と魔法を使い分けられる万能なキャラになった点。
もともと装備できたものでも、一部の武器は攻撃力が跳ね上げられており、「まどうしのつえ」などははがねのつるぎに迫る破壊力を見せてくれるため序盤から中盤の要になる。
呪文についても、特に「ベギラマ」の攻撃力上昇っぷりは凄まじく、中盤では「ベギラマ」で敵をガンガン焼き払う呪文アタッカーとして立ち回れる。
また、使い所があまりなかった補助呪文に関しても中盤以降の敵の耐性がかなり弱体化された為にかなりやりたい放題出来るようになり、大幅に強化された。
そのうえ「ザオリク」の使い手にムーンブルクの王女が加わったため、「メガンテ」を使っても道中でリカバー可能。
ほとんどランダムと言ってよかったレベルの行動順についても改善されており、そこそこ素早いサマルトリアの王子は先制行動がしやすくなっている。
ただし、成長曲線と防御力の面での不安は残っており、多少マシになったとは言え無理は禁物である。
総合すると、物理攻撃+呪文攻撃+補助魔法+回復+素早さを併せ持つがその代償として防御面が脆い…というシリーズでも珍しいキャラ付けになっている。
また、ベラヌールの宿屋に泊まると彼がハーゴンの呪いとやらで一時的に離脱してしまうイベントが追加された。離脱したまま宿屋に放置し、ローレシアの王子とムーンブルクの王女の2人旅でクリアすることもできる。
元々後ろ盾としての価値が高い彼が離脱した時、初めて彼の有用性に気づいたプレイヤーもいるのでは?
手段を問わなければ…
こうした面で苦労を余儀なくされた彼だが、バグ技や仕様の穴を突いた裏技には恵まれていたりする。
ただし、正規手段ではないので実現できる機種は限られるのだが…。
装備技(ファミリーコンピュータ版)
ハーゴンの城でのハーゴンの幻術による仕様と、その仕様の抜け道を応用したバグ技。
詳細は「はかぶさの剣」を参照の事。
サマルトリアの最強装備はファミリーコンピュータ版では「てつのやり」の為、「はやぶさの剣」の2回攻撃を+20の攻撃力で行うと言う形になる為恩恵が薄く、どちらかと言えばこのネタに関してはローレシアの王子の方が有名である。
しかし後述する『ドラゴンクエストモンスターズ+』では、彼がそのネタを元にした活躍を見せていたりする。
サマルカンスト技(『ドラゴンクエストⅠ・Ⅱ』)
その名の通り全ステータスがカンストするとんでもない裏技。
前述のベラヌールの宿屋のイベントをまだ見ていない+ふっかつのたまを持っている+サマルトリアの王子のレベル35~42の時に発生する。
一定の手順を踏んで彼を復帰させると処理がおかしくなり、何故か3人めとしてパーティに復帰する。
この状態で1つレベルが上がると異常な能力上昇が起こり、更にもう1つレベルが上がると全ステータスが255になるというサイヤ人もびっくりの事態が起こる。
表示が乱れてローレシアの王子、サマルトリアの王子×2となってしまうが、宿屋にいる彼に「せかいじゅのは」を与えるという手順を踏むことできちんとイベントの終了処理が成され、正しい並び順に戻せる。
ただしメリットばかりではなく、すばやさがカンストしているサマルトリアの王子がほぼ間違いなく先行して行動してしまうため、後述の「マヌーサザラキ」が1ターンで出来なくなるという弱点もある。
また、『ドラゴンクエストⅡ』は扱える数値のスケールがまだ小さい作品。カンストといってもHPは255までなので、限界まで強くても絶対的な無双にいたるほど甘くない。
マヌーサザラキ(『ドラゴンクエストⅠ・Ⅱ』)
ムーンブルク王女の「マヌーサ」、またはひかりのつるぎの道具効果と「ザラキ」を用いた技。
プログラムミスによる仕様の穴により「マヌーサ状態の有無でザラキの命中判定を行う」為、マヌーサ状態の敵には確実にザラキが命中する様になっている。加えて当時のザラキは「敵に254のダメージを与える」ものとなっており、多くの雑魚敵はこれで一撃、そうでない相手にも壊滅的なダメージを与えられる仕様なので、手段を問わなければまさに凶悪なアタッカーと変貌する。
その他の作品での登場
このように散々な扱いを受けた彼だが、以降の作品への出演は割と多く、『ドラゴンクエストⅨ』ではリッカの宿屋のゲストとして登場。『ドラゴンクエストⅪ』(ニンテンドー3DS版)では冒険の書の世界で相変わらずローレシアの王子を探して彷徨っている。
また、外伝作品のドラゴンクエスト モンスターバトルロードシリーズや、『ドラゴンクエストライバルズエース』、外部作品のいただきストリートシリーズにも出演している(ただし『ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリートSpecial』のみで、『いただきストリートDS』及び『いただきストリートWii』にも登場したプリン(ムーンブルクの王女)より出番は少ない)。
『小説 ドラゴンクエストⅡ』及び『CDシアター ドラゴンクエストⅡ』では家出同然にサマルトリアを旅立った時に家宝の『ロトのたて』を持ち出していたが、彼自身は盾が装備できず、後に合流したローレシアの王子に盾を託した。
しかし『CDシアター ドラゴンクエストⅡ』でのサマルトリア王子は、ローレシアの王子と合流直後は(上記の『ロトのたて』が装備できなかった等の挫折感からか)、ネガティヴかつ無気力な言動ばかりが目立っており、時にローレシアの王子への嫉妬からパーティーの和を乱し兼ねない問題児でもあった。
名前はサトリ、素早さに秀でており「彼の速さから逃げられる者はいない」と称されるほど。
剣術にも優れており、ロランとルーナと共にバズズを倒すべく挑み逃げるバズズを壁を走って追撃し
【古流剣殺法 二文字~サマルトリア仕立て~】で翼を破壊し『俺の剣は、二度破壊の風が吹く・・・』と決める。
更に自己犠牲呪文に対しても『この世界で、まだこんな呪文を使わないといけないことがあるなんてな・・・』と否定的であった(過去に自分が使った経験を暗示している)。
名前
ローレシアの王子に合わせてデフォルトネームが決まっている。
各作品における彼の名前設定は以下の通り(△はデフォルトに存在しない名前)。
- 「もょもと」の呪文で始めた時:すけさん
- ゲームブック(エニックス):カイン
- 『小説 ドラゴンクエストⅡ』、『CDシアター ドラゴンクエストⅡ』:コナン
- △『ドラゴンクエストモンスターズ+』:サトリ
- ゲームブック(双葉社)、いただきストリートシリーズ、『ドラゴンクエストⅨ』、『ドラゴンクエストウォーク』:クッキー
- △『オールナイトニッポン』内のラジオドラマ:ナイト
『小説 ドラゴンクエストⅡ』ではセリア(ムーンブルクの王女)に想いを寄せていたが、彼女はアレン(ローレシアの王子)と恋仲だったため身を引く。その後、ルプガナで魔物に襲われていた少女と結ばれた。
担当声優
- 佐々木望:『CDシアター ドラゴンクエストⅡ』
- 堀秀行:『オールナイトニッポンスペシャル・徹底解説 ドラゴンクエストⅡ』内のラジオドラマ
- 同氏は『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の1991年版アニメにてヒュンケルの声優を担当している。
- 福山潤:『ドラゴンクエストライバルズエース』
余談
本項で述べたように、「不器用貧乏」とも揶揄された事から後のシリーズ作品や他作品、およびオンラインゲームのスキル振り等でも「バランスは良いがパッとしない」事を「サマル」と表現される事もある。
ドラゴンクエストシリーズでは『ドラゴンクエストⅥ』から登場する「魔法戦士」という職業がこれに近いと良く言われる。
また、死にやすいイメージが強いのか「棺桶」というあんまりなあだ名で呼ばれてしまうことも…。
没ネタであるが、サマルトリアの王子を犠牲にシドーを倒すことが可能であったが、最後に悲憤したサマルトリアの王子の妹にローレシアの王子が刺殺されるというバッドエンドが考慮されていたという。
関連イラスト
関連タグ
ポップ:三条陸作の漫画『ドラゴンクエスト ~ダイの大冒険~』の登場キャラ。イメージカラーと大器晩成ポジションが共通。