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概要編集

フォーミュラ」とは「規格」の意味。

この場合は①タイヤがむき出し②運転手がむき出し③一人乗り(単座)という完全にレース専用の車両の「規格」のことを指す。


世界で最も認知度の高い自動車レースのF1(エフワン、フォーミュラ・ワン)がまさにフォーミュラカーであるため、一般人がレーシングカーと聞いて最初に思い浮かぶマシン形状がこれだろう。

絵文字対応のキーボードアプリで「レーシングカー」と打って出るマシンもフォーミュラカーである→🏎


一般の市販乗用車では見られないような独特のフォルムは徹底した軽量化のためであり、これにより「走る・曲がる・止まる」といった自動車の基本的な運動性能を著しく向上させている。

空力面でも各種エアロパーツやマシン全体で圧倒的な空力効果を生み出す設計の工夫が凝らされているため、F1ともなるとコーナーリングスピードはまさに異次元。

唯一むき出しのタイヤが気流を乱すため、本来なら最高速度の観点からは不利なのだが、異常に低いフォルムが空気抵抗を極限まで減らすこともあり、トップカテゴリのものでは400km/hに近い速度を叩き出すほどに速い。


その分運転技術も人間離れするレベルで高度なものが要求されるため、運転者はプロあるいはプロを目指す若手レーサーがメインとなる。

ちなみにクラッチ操作や回転数合わせがシビアであったりと素人では動かす事すら難しい、と言われていたが、スーパーフォーミュラ等で使われている一部の車両はクラッチはボタン式で、回転数もエンストしないように制御が入る事から動かすだけであれば難しいとはいえ可能となった。


弱点としてはオーバーテイク(追い抜き)が難しい点が挙げられる。むき出しのタイヤやフロントウィングは、バトル時に少しぶつかっただけで大きなダメージを被りやすい。いわゆる「箱車」のようにぶつけながらも強引に抜ける時も無いわけではないが、相応のリスクを覚悟する必要がある。また空力への依存度が高いフォーミュラカーの場合、前方にライバル車両がいるだけで発生する気流の乱れの影響を大きく受けてしまうため、接近すること自体が難しい場合がある。

コースによっては誰も全く仕掛けられず、レースというよりはパレードのようにみんなが順位を守って走っているだけになってしまい、運転者からも観戦者からも退屈だという不満の声がしばし聞かれる。

そこで追い抜き時にオーバーテイクシステム(OTS)等と呼ばれる一定時間速度を上げられるブーストボタンを装着したり、わざとライフの短いタイヤを導入することで大きな速度差を発生させる、空力設計そのものを大規模変更して抜きやすい気流をつくる、といった解決策が、近年は各カテゴリで積極的に導入されている。


またフォーミュラカーが「市販乗用車とはあまりにかけ離れた形状をしている」ことをブランド戦略上の不利と考えて参入を渋るメーカーがかつては多かった(人やタイヤがむき出しであること、ミッドシップエンジンであることなどを考慮すると、むしろオートバイやその派生物であるUTVの方が構造的に近い)。F1やフォーミュラEが大衆人気を獲得したため今ではそれほど言われなくなったものの、依然大衆車メーカーを中心に参入障壁として根強く残っている。


フォーミュラカーレース編集

ここでは2023年現在開催されているフォーミュラカーレースを列挙する。


【トップフォーミュラ】


【ミドルフォーミュラ・ジュニアフォーミュラ】

  • F2/F3/F4
  • インディ・ライツ
  • スーパーフォーミュラ・ライツ
  • フォーミュラ・リージョナル…各国独自の旧F3レース。
  • JAF-F4…日本独自のF4レース。

なお上記のうち、F1とJAF-F4以外の全カテゴリにおいて、イタリアのダラーラ社が車体の独占供給を行っている。


形状の変遷編集

プラモ作りに夢中だった頃 - Brabham BT7ホンダRA273

第二次世界大戦前後のフォーミュラカーは、上のイラストのような「葉巻型」と呼ばれる形状が一般的であった。この頃はエンジン冷却のためのラジエーターを前方に配置していたため、マシン先端に穴が空いているような筒型のフォルムになっていた。

当時は空力パーツはほとんどなく、とにかく空気抵抗を減らして軽量化するような方向であったためこのような形状となっていた。

またエンジン搭載位置は、1950年代までドライバーの前方(つまりFR)が主流だったが、1960年代以降に全車が後方(MR)へと切り替えるようになった。


1960年代後半になると、ハイパワーなコスワース・DFVエンジンが弱小プライベーターにまで普及するようになったが、あまりにハイパワー過ぎてタイヤが空転してしまうという問題が発生した。

これを解決するため、ただひたすら空気抵抗を減らすのみならず、空力でマシンを地面に押さえつけるダウンフォースが必要となり、マシンの前後にウィングを取り付けるなど、空力パーツの試行錯誤が行われるようになった。

加えてマシンがひっくり返っても運転者が無事な空間を生み出せる「ロールバー」を座席後部に設置するようになった。


formula carをもっと描いてみたMcLaren MP4-21 (2006)

1970年代にロータスF1チーム率いる天才デザイナーのコリン・チャップマンが、ラジエーターをフロントではなくサイドポッドに配置し、ウィングのみならず床面も利用してダウンフォースを得る「グランド・エフェクトカー構造」を採用。この画期的な発明により、フォーミュラカーの空力性能は飛躍的に向上した。

この形状は葉巻型に対して「くさび型」と呼ばれる。グランド・エフェクトカー構造自体は安全上の問題を理由に一時は禁止されてしまうが、以降もくさび型は現在に至るまでフォーミュラカーの基本形状となっている。


2020 Mercedes-AMG F1レイホール、レターマン、ラニガン、レーシング、ホンダ

運転者がむき出しという特徴は見るからに危険を伴っており、実際に少なからぬ死者を出していた。

特に2010年代にはそれに起因する死亡事故が相次いだため、「HALO」や「エアロスクリーン」のような頭部保護デバイスを装着するのが一般的になった。


2018 Spark SRT05e2020 Spark NIO FE-005

「タイヤがむき出しである」というのは長年のフォーミュラカーの伝統であったが、2020年からのフォーミュラEではフェンダーのついたマシンが用いられている。


別名・呼び方について編集

その特徴から「シングルシーター」や「オープンホイール」とも呼ばれる。

ただし前者は一人乗りのマシンの総称であり、後者はタイヤがむき出しのマシンの総称でもあるため、文脈によって使い分ける必要がある。

前項で述べた通り、時代によってフォーミュラカーの姿形は大きく変わるので、特に必要がなければ「フォーミュラカー」と呼ぶのが最も無難と言える。


フォーミュラカーに限らず、レーシングカー自体が必ずなんらかの「規格」に則って製作されるため、あらゆるレーシングカーが「フォーミュラカー」である、と主張することもできなくはない。


かつてラリーカーには「フォーミュラ2(F2)」、プロトタイプスポーツカーにも「フォーミュラ・ル・マン」といったカテゴリが存在したが、この場合の「フォーミュラ」は「規格」という意味しかなく、本記事のフォーミュラカーとは一切関係が無い。一方で1970年代のシルエットフォーミュラは、「見た目は市販車だけど中身はフォーミュラカー」という意味の俗称で、関係が全く無いわけではない(なんとややこしい…)。


1970年代には6輪のF1マシンが登場するなど、フォーミュラカーの方がむしろ「規格」から外れているかのように自由な時代もあった。


モータースポーツを知らない人には「F1マシン」と言った方が通じるが、レースファンに使うと逆に猛ツッコミを受けてしまうので、相手を選んで用いる必要がある。


その他編集

キャノピーについて編集

スーパーアスラーダ01HIGHSPEED Étoile

1990年代のアニメ『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』における「フォーミュラカー」は、前輪がむき出しかつ単座だが、コックピットを完全に覆うキャノピーが装着されている。2020年代に製作が発表された『HIGHSPEED Étoile』もキャノピーが装着されている上に前後輪ともにフェンダーがついている。

このように一般人向けにフォーミュラカーで近未来感を演出しようとすると、プロトタイプスポーツカーミニ四駆のようにキャノピーが装着される傾向にあるのが興味深い。


なお現実のフォーミュラカーでも「HALO」導入前後にキャノピーの採用について議論されたが、衝撃耐久性の確保の難しさや、クラッシュで破壊されていると脱出に困難が生じるという理由で見送られている。


フォーミュラカーベースのプロトタイプカー編集

マーチ76S・マツダ (1977)LEYTON March 89GC描いた

フォーミュラカーにカウルを被せて、オープン型の単座プロトタイプスポーツカーを作るという手法もあり、1970年代に盛んに用いられていた。


関連項目編集

レーシングカー

F1

FIA-F2

インディカー

スーパーフォーミュラ


mono:ブリッグス・オートモーティヴ・カンパニー(BAC)製の公道走行可能なフォーミュラカー風の単座自動車。

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