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注意)本記事では1996年が初開催のIRL(Indy Racing League)を母体とするオープンホイールカー選手権を中心に扱います。これ以前のCART, USAC等に゙関しては各自で検索等をお願いします。


「インディカー」は大きく分けて3つの意味を持つ。

  1. 『世界3大レース』の一つである、インディアナポリス500に参加する車両の通称。
  2. 1.を用いて争われる選手権の通称。2003年以降は「インディカー・シリーズ(IndyCar Series)」。※時代によっては「インディカー」の名は使われない。
  3. 2011年以降、2.を主催する団体の名称。大文字の「INDYCAR」表記が一般的。

早い話が、「INDYCAR」を名乗る組織が主催する「インディカー・シリーズ」に参加するマシンが「インディカー」である。


以下は1~3を特に区別せず解説する。


概要

F1モナコGP、ル・マン24時間に並ぶ『世界3大レース』のインディアナポリス500(略して"インディ500")を擁する、北米最高峰のフォーミュラカーシリーズである。

イコールコンディションを徹底させたレギュレーションにより、ドライバーの技量とチームのマネジメント能力が純粋に問われるスリリングな展開が見られる。


マシン形状が似ているF1と混同される場合があるが、大きな違いはシャシーのワンメイク制および、オーバルトラック(競馬場のような左周りの楕円形コース)も走る点である。

オーバルトラックは平常時はハードブレーキングの機会が存在しないため周回速度が極めて速い。例えばインディ500では決勝の平均速度は250~300km/h程度(コーションによるスロー走行も含んだ速さ)、予選平均速度は370km/h、瞬間的な最高速度は390km/hに達する。

※F1はコースが異なるうえブレーキをかけて曲がるため参考程度だが、予選平均速度の歴代最速記録は262km/hである。


参戦の門戸はF1と比較して開かれており、下位カテゴリから順当にステップアップした若手、F1のシートを失った者/F1参戦を目指すも叶わなかった者、箱車からの転身勢…など様々な境遇のドライバーが一堂に会して戦うのが特徴。


発足からCART(の後継)統合までの経緯

発端を一言で言えば「CARTからの分裂」である。

分裂

1990年代初頭、北米のオープンホイールカーの統括組織であった『CART(Championship Auto Racing Teams)』は選手権の国際化・脱オーバル化を進め、加えて競争の激化により参戦コストが高騰し中小チームの財政を圧迫していた。

この方針に反発したインディアナポリス・モータースピードウェイの運営陣はオーバルおよび米国中心の選手権への回帰を掲げ、新たなレース統括組織の『IRL』を設立する。1996年に同名の選手権が開始され、北米のトップフォーミュラカテゴリが2つ同時に存在する時代が始まる。

翌97年~2002年の間は「インディカー」の商標を巡る法廷闘争の影響でCART, IRLいずれも使用権を持たず、両者の選手権名から「インディカー」の名が消える。

再統合

  • IRL

当初は小規模であったがインディ500の開催権を持つ強みに加え、2000年代初頭にCART側で発生したエンジンの規定変更を巡る混乱も後押しする形で有力チームのIRLへの移籍が加速する。

2003年にはシリーズ名に正式に「インディカー」を冠し、後年はCART(チャンプカー)の一部チームや開催地を取り込むなど、名実ともに北米トップフォーミュラの地位を固めていく。

  • CART

IRLと対照的にインディ500と「インディカー」の名称を失い、実力者のIRLへの流出も相まって選手権の質および運営資金を確保できず、2003年末に破産する。

破産後は参戦チームの経営者が主体で新組織「OWRS」を立ち上げ、旧CARTの資産を引き継ぐ。シリーズ名を「チャンプカー」と改称し再起を図るも4年あまりで頓挫し、2008年半ばにIRLに吸収合併される形で消滅。CARTの系譜は30年弱で幕を下ろした。


開催地

年間17戦前後のほぼ全てがアメリカ国内で行われる。

コースの特性はオーバルトラック、ロードコース(クローズドサーキット)、ストリート(市街地)コースの3種類に大別される。

IRL発足当初は全戦がオーバルトラックだったが徐々にロード・ストリートの比率が増え、近年は3種類のうちオーバルが若干少なめで分裂直前のCARTと同等の割合である。


車両規則

シャシー

ダラーラ社のワンメイク供給。2008年までは複数のコンストラクターが参入していたが、メーカー間の競争力の差が拡大したため自然とダラーラの独占供給へと移り変わった。


外見面の大きな特徴は、コックピット周辺を覆う透明な『エアロスクリーン』を装着している点。他のフォーミュラカーで一般的な頭部保護デバイス『HALO』と比べて重量は重いが、外観が洗練されており、ドライバーの快適性も高いと好評である。


オーバルトラックでは「スタッガー」と呼ばれる、左旋回に特化したセッティングが行われる。例としてリアタイヤの外径やキャンバー角、サスペンションの硬さ等が左右非対称である。

特異なマシンバランスによる影響のわかりやすい例として、本セッティングを施されたマシンはステアリングを切らずに加速すると左に逸れていく


また現代の上位カテゴリとしては珍しくパワーステアリングが装着されていないため、ドライバーは重いハンドルと格闘しながらマシンを操るフィジカルも要求される。


車体の下面からダウンフォースを得られるグラウンド・エフェクト・カー構造が採用されている。過去の重大事故の影響から、現在は小規模な効果に留まるよう設計されている。


エンジン

2.2LのV6ツインターボエンジンシボレーホンダの2社が製造する。両社とも各チームへ同一仕様のエンジン供給が義務付けられ、仕様変更したエンジンを使う場合は他チームの許可が必要である。


出力はホンダの公称値で約550~700馬力。値が変動するのはコースにより過給圧が異なるため。シボレーの発表では最大735馬力。回転数の上限は共通で12000rpm。


内燃機関に厳しい昨今の情勢に合わせ、2024年半ばからハイブリッドシステムが導入される予定。

プッシュ・トゥ・パス

ストリート及びロードコースではバトルの促進を目的とした『プッシュ・トゥ・パス』と呼ばれる機能が使用可能。ボタンを押し続ける間は追加で燃料を消費し、約40~50馬力の出力向上を得られる。


1レース全体を通して使える秒数が決まっており(150~200秒程度)、その範囲内であればどの周回・どの場所で使うかは自由。燃料消費の計算も絡むため使うタイミングが重要で、展開によっては序盤に使いすぎて終盤のバトルで競り負ける、燃費を抑えて走り切る作戦を採ったためガス欠を恐れて使用できない、等のシーンが見られる。


燃料

60年代半ばから2005年まではメタノールが使用されていた。

60年代以前も予選では使用されており(ガソリンよりも圧縮比を高くできる一方、燃費は劣る)、決勝に導入されるきっかけは1964年のインディ500の事故とされる。クラッシュで漏れ出たガソリンが大規模な爆発を引き起こし2名の犠牲者を出した惨事の反省から、ガソリンと比べて高い引火点を持ち爆発の危険が低く、引火しても水で消せるメタノールが代替燃料として採用された。炎が透明で黒煙が発生しないため視界を妨げる事がない反面、出火に気付きにくいデメリットも持つ。


2006年以降は環境の観点からエタノールで代替する流れが進み、2012年以降はバイオマスエタノール(原材料はトウモロコシ)にガソリンを15%添加した混合燃料が使われる。従来のメタノール燃料の課題であった炎の可視化が実現し、火災時の迅速な対応が可能になった。


2023年より、バイオマス成分100%の燃料が使用されている。


タイヤ

ファイアストン(ブリヂストン傘下)のワンメイク。


日本との関わり

ドライバー

日本人で唯一の優勝経験者。

F1から転向し2010年に参戦を開始。10年以上にわたりフル参戦を続け通算6勝。2017年, 2020年にインディ500優勝を成し遂げている。複数回のインディ500優勝経験者は100年以上の歴史で20名のみ。


  • ヒロ松下(1990-98年:CART)

1990年に日本人として初めてCARTに参戦。同年のインディ500にも初挑戦し、日本人が参戦する足がかりを築き上げた。


  • 高木虎之介(2001-02年:CART、2003-04年:IndyCar)

日本人初の表彰台経験者(3位)。2003年のテキサスで獲得。


  • 武藤英紀(2007-11年:IndyCar)

佐藤以前の日本人最高位保持者(2位)。2008年のアイオワで獲得。


  • 服部茂章(1999年:CART、2000-04年:IRL/IndyCar)

IRL系列に限定した場合の日本人初の参戦者(2000年)。


その他、CARTとIRL(IndyCar)を合わせると上記を含め十数名の選手が参戦している。


チーム

現地チームとジョイントする形でスーパーアグリとチーム郷が参戦経験あり。


メーカー

ホンダが2003年からエンジン供給を開始し、2024年現在も継続中。

過去にはトヨタおよび日産(現地のインフィニティブランド)がエンジン供給の経験あり。


開催地

2000年代前後、ツインリンクもてぎのオーバルコースで本選手権が開催されていた。

1998~2002年はCART、2003~2011年はIndyCar(旧IRL)のシリーズに組み込まれていた。

最終開催(2011年)のみオーバルコースが破損した影響でロードコースを使用。


視聴方法

2024年現在、主に下記2つの方法(いずれも有料放送)が存在する。


  • GAORA SPORTS

シーズン全戦の決勝および一部の予選を生中継している。

俗に"居酒屋実況"と呼ばれる、緩い雰囲気と的確な解説を両立した実況・解説陣に定評がある。


INDYCAR公式が提供するプラットフォーム。実況は現地音声(英語)のみだが、フリー走行や予選に加え下位カテゴリのインディNXTを視聴可能。

日本国内では主にGAORAと被るセッション(決勝など)は視聴不可。

2024年から有料放送へ移行した。


どちらの環境でも開催地が地球の裏側のため、日本でリアルタイム観戦する際は夜明け前~早朝に行われる場合が多く、睡眠時間の確保がネックとなる。



安全性

オーバルトラックが抱えるリスク

インディカーの象徴といえるオーバルトラックは、以下の理由から他のカテゴリと比較して危険性が高い。

  • 300km/hを超える速度域での接近戦が日常的に起こるうえ、オープンホイールカー自体の特性として乱気流の影響を受けやすく挙動を乱しやすい。
  • コースの構造上、アウト側のエスケープゾーンが存在せず高速でウォールへクラッシュする可能性が高い。
  • オーバルトラック自体が北米を中心とした独特の文化のため、他のカテゴリの安全対策を参考にしづらい。

過去10年間のオーバルにおける死亡事故は1件で、クラッシュが直接の死因ではないとはいえ危険性は依然として高い。死亡事故に至らなかったものの事故の影響でフォーミュラカーへの復帰が叶わなかった例も存在する。


危険性を理由にオーバル参戦を回避する選手も存在する。(本人は意欲的だが家族などの要望で参戦を見送るケースもしばしば見られる。)


対策

前述のウィンドスクリーンや、クラッシュ時にウィングやタイヤが吹き飛ばないよう車体と繋ぐ「テザー」と呼ばれる縄状の部品を装着するなど、事故時のリスクを軽減させる試みは常に研究され実戦投入されている。(参考例1 参考例2 いずれもGAORA SPORTSより)

それでも2023年のインディ500では接触によりタイヤが吹き飛び、観客席の脇をかすめてコース外へ落下するあわや大惨事のアクシデントも発生している。上述のテザーの強度を前年から60%アップさせたシーズン早々に起こった一件であり、事故の発生と安全の追求は現在進行系で繰り返されている。

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