概要
「モデルグラフィックス」誌にて連載された、宇宙世紀ガンダムシリーズの外伝作品。タイトルの正式な表記は中黒が入った『ガンダム・センチネル』である。
連載は1987年から1990年の3年間。その後、連載時の文章に加筆・修正を加えた完全版ストーリーである小説『ALICEの懺悔』が刊行された。
監督であるあさのまさひこを筆頭に、ストーリー担当として高橋昌也、メカニック・キャラクターデザインにカトキハジメ(当時は「かときはじめ」名義)が名を連ねている。また、模型作例群は複数のモデラーによるチーム制によって製作され、「センチネル・ワークス」の異名を取った。
モデルグラフィックスにて掲載されたフォト・ストーリーに於いては、あさのが監修を行ったスクラッチビルド作例と、特殊効果を加えたSFXフォトが用いられており、コンピューター・グラフィックを用いたデジラマが一般化していなかった当時としては斬新なものであった。
当初はかつての『MSV』などと同様、『機動戦士ガンダムΖΖ』終了後にガンプラの商品展開を続けるべく立ち上げられた模型企画だったが、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の製作に伴い、フルアーマーΖΖガンダムのキットを発売したのみで商品展開が中断。
その後、企画を存続させるべく場所をモデルグラフィックスへと移し、強行に近い形で雑誌企画としての再スタートを切った経緯がある。
本作は、1990年代後半から顕著になった「萌え」文化とは対照的に、女性キャラクターが一切登場しない硬派を極めた作風を持つ(だが、これは本編に限っての話であり、同時期には明貴美加の「MS少女」も掲載されていた)。
ストーリーは、『機動戦士Ζガンダム』を江戸幕府末期の動乱に見立てた上で描かれているのが特徴であり、維新志士をモチーフとしたα任務部隊と、それと敵対する新選組をモチーフとしたニューディサイズの追走劇が物語の軸として展開される。
その性質上、本作に登場する人物や組織、施設にはその役どころや名前を含めてモチーフが存在し、ファンからは「幕末ガンダム」の別名で呼ばれる。
モビルスーツ(MS)デザインに関しては、人間的なプロポーションを意図的に外し、そこに工業製品的な意匠を加える手法を採っており、軍用航空機的なカラーリングや先鋭的なロゴマーキングも積極的に取り入れられている。
この「ミリタリズムと未来的兵器としてのリアリティの両立」を果たした斬新なグラフィックワークは高い人気を博し、後のガンダム作品にも大きな影響を与えた。
ストーリー
宇宙世紀0088年、グリプス戦役末期。
シャア・アズナブルのダカール演説を境にエゥーゴ寄り(=親スペースノイド)に傾く地球連邦政府に恭順することを良しとしない、地球連邦軍教導団の青年将校が小惑星ペズンに立て篭もり『ニューディサイズ』を名乗って武装蜂起を行った。
これに対し連邦当局は、最新鋭MS『Sガンダム』を筆頭に新型機を満載した『α任務部隊(Task Force α)』を先遣隊とした討伐部隊を派遣する。
だが、外見は精鋭のα任務部隊の実態とは、新任将校と問題児だらけの新兵で組織され、実戦未経験艦と不採用の機体を寄せ集めた『張子の虎(ペーパー・タイガー)』であった……。
登場人物
α任務部隊
リョウ・ルーツ
シン・クリプト
テックス・ウェスト
シグマン・シェイド
チュン・ユン
ストール・マニングス
イートン・ヒースロウ
ALICE
地球連邦軍
ミズ・ルーツ
キャロル
ブライアン・エイノー
ニューディサイズ
ブレイブ・コッド
トッシュ・クレイ
ジョッシュ・オフショー
ファスト・サイド
ドレイク・パーシュレイ
マイク・サオトメ
ニューディサイズ協力者
カイザー・パインフィールド
トワニング
登場メカニック
α任務部隊
- MSA-0011 Sガンダム
- MSA-0011[Bst] Sガンダム ブースター・ユニット装着型
- MSA-0011[Ext] Ex-Sガンダム
- MSΖ-006C1 Zプラス
- FA-010A FAZZ
- MSA-007 ネロ
- MSA-007T ネロ・トレーナー
- RGM-86R ヌーベルジムⅢ
ニューディサイズ
エアーズ市民軍
ネオ・ジオン
その他
模型企画での登場機体
- MSA-0011[Bst]PLAN 303E ディープ・ストライカー
- FXA-08GB-Bst コア・ブースター“0088”
文字設定のみの機体
ガンダムセンチネル0079
別冊(ムック本)発売の後に、「センチネルの技法で一年戦争を描いてみる」企画が立ち上がって、連載最終回ではストール・マニングスとトッシュ・クレイを主役に据えたフォトストーリーで、ソロモン攻略戦の一部が描かれた。ここで発表されたRX-78ガンダム、ジム、ザク、ボール、ビグザム、パブリク、ガトル、サラミス、等のデザインは、直後に製作された「機動戦士ガンダム0083」等にも部分的に流用されている。
この最終回部分は雑誌連載のみで別冊化されていないので、古書店で高額取引されているらしい。
当作品の置かれている立ち位置について
現在のガンダムシリーズに大いに影響を与えた作品であるものの、この企画の成立に関しては「Ζ~ΖΖ期の本家ガンダムに対するアンチテーゼ」の意図があり、それがこの作品の現在に至るまでの微妙な立ち位置に至ってしまったという点も避けては通れない。端的には「本家のガンダムは自分達の好きなガンダムじゃなくなったから、自分達が正しいガンダムを作る!」とする、良く言えば自分たちの好きを突き詰めた結晶でもあり、悪く言えば暴論である。
もちろん参加スタッフ全員がそのような意図を持っていた訳ではないが、この企画を主導したあさのまさひこは、この意図の上で非常に挑発的なコラムを数多く掲載していた。
特に機動戦士ガンダムZZに対する憎しみは過剰であり、
- とにかくZZ本編と正反対に逆張りするような設定
- Zガンダムの正統後継機で、ZZガンダムよりも高性能なSガンダム
- ZZに匹敵する性能とされながら量産されてフルボッコにされる(しかもフルアーマーZZと名前がややこしい)FAZZ
こうした事情から、当時からこの企画はファンからの賛否が非常に分かれるものとなっており、特に当時の業界人からの風当たりは非常に強く、中には誹謗中傷の域になる評価をする媒体もあったほどだった。
また、本企画はサンライズやバンダイではなく、大日本絵画(モデルグラフィックスの出版元)主導のためか、版権が色々とこじれた事実がある。これは、契約が口約束であった点と、担当者が引き継ぎを行わず交代した等が原因とされる。
実際にセンチネルが展開していた当時のホビージャパンでセンチネル関連の商品を取り上げる際はよく言えば辛口、単刀直入に言えば否定的(ひどく言えば誹謗中傷ともいえる)に論じているケースが多々あり、それはそれぞれの雑誌掲載作例に於いてもホビージャパン発祥の塗装方法「Max塗り」がモデルグラフィックスでは御法度となり、一方のホビージャパンではモデルグラフィックス発祥の「センチ塗り」が御法度となるなど、業界のゴタゴタがガノタやモデラーの争いにまで波及する有様であった。
現在ではガンダムビルドファイターズアニメ本編にガンプラながらスペリオルガンダムが登場するなど一応解決した……とされていたが、2022年に発売された『機動戦士ガンダム新訳MS大全集 U.C.0081-0090編』(KADOKAWA刊)では未収録となり、「『ガンダム・センチネル』は権利者の希望により収録しておりません」と帯に明記された。
この本は『MS大全集』シリーズの最新版であり、今まで収録されていたセンチネルが未収録となって、ファンからは「むしろ以前より余計にこじれているのでは?」と憂慮させられる可能性が出て来た。
こうした様々な事情からか、ゲームでの出演もごく限られたものとなっている。
スパロボではSガンダムが第4次(S含む)に隠し要素として登場したのみであり、それ以降の作品には一度も参加していない。ただし第2次αには、没データとして多数の機体グラフィックが存在している事実が判明しており、開発当初は参戦予定で機体グラフィックを用意した段階で、何らかの問題で参戦が取り止めになった経緯が窺える。
GジェネではFを最後にストーリーの再現はされていない。
エクバシリーズではEx-Sガンダムのパイロットが「Unknown(不明)」扱いになっている。
関連項目
ガンダム カトキハジメ モデルグラフィックス
機動戦士Zガンダム 機動戦士ガンダムΖΖ プロジェクトZ
MSV MS-X
アドバンス・オブ・Z タイラント・ソード
VMsAWrs
????:ある意味、この極みに就く作品である。