機体データ
型式番号 | FA-010A |
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所属 | 地球連邦軍・α任務部隊 |
開発 | アナハイム・エレクトロニクス |
生産形態 | 実験機 |
頭頂高 | 19.86m |
本体重量 | 45.4t |
全備重量 | 94.6t |
ジェネレーター総出力 | 8,070kW |
スラスター総推力 | 118,800kg |
装甲材質 | ガンダリウム・コンポジット |
固定武装 |
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携行武装 |
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機体解説
アナハイム・エレクトロニクス社がΖΖガンダムへのフルアーマー・システムと重火力支援システムの実装プランを検証するために試作し、地球連邦軍がアナハイム社の依頼を受けて実用評価試験を行っていた検証用の機体。
よく勘違いされるがΖΖガンダム&フルアーマーΖΖガンダムの簡易生産機でも量産試作機でもない。
ΖΖガンダムのフルアーマー・システムは機体本体の設計段階から並行して開発されており、本機はフルアーマー状態でのバランス検証が目的の機体である。そのため、内部にはΖΖガンダムのMS形態のみを再現した汎用フレームが使用されており、Gフォートレスへの変形はできない。その他、頭部をはじめ機体各所には開発段階で選定落ちとなったパーツが用いられており、コクピットはコア・ブロック・システムからイジェクション・ポッドに変更され、操縦桿には操作性の改善を目的として試験的にアーム・レイカーが採用されている。フルアーマー状態における性能試験を目的とした機体であるため、増加装備に当たる部分は全て固定式でパージはできず、装甲材もガンダリウム合金とはいえ実際のΖΖガンダムより品質が1ランク劣る(ただし、一般的な量産MSのそれとくらべれば高性能の部類である)。加えて頭部及び腹部のハイメガキャノンはダミーであり発砲できない。総推力はΖΖガンダムを超えるものの強化型ΖΖガンダムには劣り、かつ全備重量が重いため、機動力はフルアーマーΖΖガンダムより低くなっている。その反面ジェネレータ出力はフルアーマーΖΖガンダムを上回っている。(なお機体の建造目的を考慮するならば、出力・推力・機体重量等の基本的なスペックはFAZZとフルアーマーΖΖガンダムと全く同一でなければ意味がないはずだが、実際には多くの面で差異が生じている。この点に関しては、FAZZを建造した時点で想定していたフルアーマーΖΖガンダムの性能と実戦投入されたフルアーマーΖΖガンダムの性能が異なっていた可能性が考えられる。)
配備されたFAZZを見たストール・マニングスには「スペック上はともかく、実際にはハリボテに過ぎない」と酷評されているが、本機は前述の通り本来は検証用の機体であり、元々実戦で使う予定は無く、用が済めば廃棄される前提にある、いわば「使い捨て品」であった(被撃墜時に同型機や代替機の補充がされることがなかったのもそれが理由である)ため、「ガンダム」として一騎当千のオールラウンダーとなるよう期待されていた完成系のフルアーマーΖΖガンダムと本機は根本的にコンセプトが異なっている。「FAZZ(ファッツ)」という名称も「フルアーマーダブルゼータ」の略称に、ダミーパーツを含めた装備過多な機体への揶揄も込めた「デブ」を意味する「fats」という言葉を掛けたものといわれる。
とはいえ、如何に簡略化された試作機であってもベース機のΖΖガンダムから受け継いだ大出力は健在であり、特に射程と火力に関してはα任務部隊に配備された他のMSをも凌駕していたため、本機はその特性を活かした重火力砲撃機として運用される運びとなった。
ハイメガ・キャノンやコア・ブロック・システム、可変機構といった複雑なシステムを省略したため、原型機である筈のΖΖガンダムよりも半年ほど早くロールアウトしており、第一次ネオ・ジオン抗争末期の0089年1月にジュドー・アーシタがフルアーマー・システムを装備して搭乗する1年ほど前のグリプス戦役末期・ニューディサイズ動乱にて実戦に投入されている。また可変機であるΖΖガンダムの試作機という位置付けのため、非変形機ながら喧伝も兼ねて「VMsAWrs」のロゴマークが用いられている。
『ガンダムセンチネル』劇中ではα任務部隊旗艦・ペガサスⅢに3機配備され、全3機で1個小隊の「FAZZ隊」として編成、火力牽制や支援射撃などに活躍したが、月面上空においてガンダムMk-Ⅴと交戦した際に、その高機動とパイロットの技量によってミサイルの弾幕射撃を回避され、弱点であった近接戦に持ち込まれて全機が撃破される結果となった。
主なパイロットはシン・クリプト、ジョン・グリソム、ロバート・オルドリン。
尚、読者投稿の指摘により、α任務部隊のFAZZ隊には「04」「05」「06」のマーキングが追加された。(Sガンダム=「01」、Ζプラス=「02」「03」)
MG版のインストによれば内部機構を流用してΖΖガンダムに改造することが「不可能ではない」とされているが、詳細は不明。あくまで非公式ではあるが、センチネルのライター高橋昌也氏によればFAZZ仕様の試作機が16機製造されたと「マスターピースΖΖガンダム」で供述されている(ΖΖ系列機が複数存在することを最初に言及したのは80年代後半のゲームブック「エニグマ始動」が最初期のもので、13機の仕様違いの可動機が存在するとの記述があった。その後の「Vガンダム外伝」、近年の「ヴァルプルギス」「MOONガンダム」などの外伝作品に複数登場するΖΖ系列機、「Gundam Evolve 10 MSΖ-010 ΖΖ GUNDAM」の新造のΖΖガンダム用の下半身とバックパックの素性など、それらのジェネレーターやフレーム類の大本の出所を考えるに、あながち荒唐無稽なだけの供述とはいいきれない)。
武装
先述の通り、試験機として開発された機体であるため武装はほとんど実戦を想定しておらず、完全に射撃兵装に偏重している。
頭部バルカン砲
口径60mmの牽制・近接防禦用射撃兵器。ΖΖガンダムのダブルバルカン同様に砲口は4門あるが、上部2門はダミーパネルで覆われ発砲できない。
ミサイル・ポッド
機体各所に内蔵されている。弾種は中型のAMA-09S、小型のAMA-13Sなどがあるが、これらはΖΖガンダムに内蔵されているものと同型である。
8連ミサイル・ポッド
バック・パックに内蔵。弾種はAMA-13S。ハイパー・メガ・カノン装備時は、右側のポッドはマウント・ラッチに換装され左側のみの装備となる。
3連ミサイル・ポッド
腕部装甲に内蔵。弾種はAMA-09S。ダブル・ビーム・ライフルを装備しているため、右側のポッドはオミットされている。
胸部マイクロ・ミサイル
胸部装甲内にAMA-09Sを2発、AMA-13Sを8発、左右2セット分内蔵。射撃時は装甲材を排除して発射する。
スプレー・ミサイル・ランチャー
肩部前方に装着する、角柱状の弾幕形成用6連装小型ミサイル・ランチャー。この装備のみフルアーマーΖΖ同様のオプション装備で、取り外し可能。ハイパー・メガ・カノン装備時は左側のみ装備。
ダブル・ビーム・ライフル
別名2連装メガビームライフル。フルアーマーΖΖガンダム同様、右前腕部に固定装備され、主にハイパー・メガ・カノン排除後に使用される。なお、前述の通り変形・合体を想定していないため、コックピットはオミットされている。
背部ビーム・カノン
出力12MW。Sガンダムに装備されるものと同一のもの。ΖΖガンダムのダブル・キャノン兼ハイパー・ビーム・サーベルと同じ位置に装備されているが、ビーム・サーベルとしての機能は無い(一部ゲームではハイパー・ビーム・サーベルに換装されている)。
ハイパー・メガ・カノン
本機の主兵装たる巨大なビーム兵器。バック・パックの右側ミサイル・ポッド部分をマウント・ラッチに換装して設置され、右肩で担ぐようにして発射される。出力はΖΖガンダムのハイメガ・キャノンより約60%増しの79.8MWと、当時の手持ち火器の中では最大出力を誇り、敵パイロットであるジョッシュ・オフショーが艦砲射撃かと感じるほどの威力を持つ。加えてディスク・レドームとの連動により、数万kmオーダーの長距離で狙撃レベルの精密射撃を行える。数秒のインターバルで連続砲撃が可能だが、一定限度を超えるとジェネレーターに過度の負荷がかかるため、実戦では砲撃時に複数機でローテーションを行うことでカバーしている。
関連する機体
MSΖ-010 ΖΖガンダム
MSΖ-010S 強化型ΖΖガンダム
FA-010S フルアーマーΖΖガンダム
FA-010B
このFAZZ(ファッツ)がフルアーマーΖΖガンダムと酷似しているのは設定以前に当然のことで、プラモデルとしての商品名は「フルアーマーダブルゼータガンダム」なのである。
これは、主役機であるSガンダムのデザインが難航していたため、「ガンダム」のリリースの間隙を埋めるべく「ΖΖ」のモビルスーツのうちリリースされていなかったフルアーマーΖΖガンダムを新設定で「センチネル」第1弾キットとして使うことになったためである。よく誤解を受けるが、このキットでの型式番号はFA-010Bである。B型タイプであるのは、このキットが出た時期の強化型ΖΖガンダムの型式番号がMSΖ-010Bであるため。
フルアーマーながら“着膨れ”のイメージを避けてヒロイックな体型を維持しつつも、長物を肩に担がせて重厚さを出すという矛盾に挑戦したデザインは『センチネル』作中におけるFAZZの立ち位置を明確にしており、高い評価を得ている。
また、カラーリングもガンダム・トリコロールを廃し、白とグレーを基調としたロービジ・カラーにコバルトブルーのアクセントを入れた斬新さは、元のΖΖガンダムとの対比も手伝って大きな反響を呼んだ。
当時発売されたキットは、初代ΖΖガンダム1/144旧キットをベースにフルアーマーパーツとメガカノンを付属させた仕様のため、Ζプラス以降のキットと並べた場合フォルム及び仕様がそろわず違和感のある外観となってしまっている。キットのインスト写真では首を横に振った感じで撮影されているがこれは実際にはメガカノンが首と干渉し正面に向けないのであり、かなり無理のある仕様なのである。
最初にプラモデルが発売された直後、「逆襲のシャア」関連のプラモデルシリーズが先行リリースされる事になったので、Sガンダムを含む第2弾キット以降は中止となった。
ホビージャパンとモデルグラフィックスの仲の悪さも原因となって、業界で「アレは無かった事にしよう」という雰囲気が広がっていた為、この企画を認知させる為に雑誌主導の連載形式になったのが「ガンダムセンチネル」である。
この連載中にSガンダム、Ζプラスのプラモデル化が無事に実現したが、これは私生児を認知したような存在であり、連載終了後になってから版権問題が発生している。
2001年にはフルアーマーΖΖガンダムをベースに成形色と一部デザインを変更した初代MGが発売。
そして2020年に入って、Ver.Kaとしてリニューアルされている。ΖΖガンダム Ver.Kaにパーツ追加・変更を行ったものであり、装甲の干渉でほとんど無可動置物状態だった初代MG版と比べ若干可動は改善され、ほぼ、デザインの相違点を変更した強化型ΖΖガンダムにフルアーマーパーツを追加したものだが、腕パーツは細身の非変形タイプへと変更したうえでフルアーマーパーツを装備させる形となっている。
なお、初代・Ver.Ka共々金型変更を嫌ったのかコアファイターは残されている。
余談
SD戦国伝に登場するキャラクター「武者影駄舞留精太(むしゃかげダブルゼータ)」は、デザインの大部分はΖΖガンダムがモチーフ(正確にはΖΖベースのキットの流用)だがカラーリングはFAZZが元になっており、武者駄舞留精太頑駄無の影武者という設定と上手くマッチしている。