機体概要
エゥーゴの同盟組織カラバによる、Ζガンダムの量産化計画に基づく可変量産型モビルスーツ(MS)。Ζガンダムの飛行形態であるウェイブライダーモードが持つ「MSを迅速に前線に投入可能」というメリットに着目し、変形構造が複雑で高価なことがネックなΖガンダムから機能を絞り込んで安価な量産機とすることを目指して開発されている。
機体構成はΖガンダムに準じているが、変形機構が若干簡略化され、ムーバブルフレームの性能がΖガンダムに比べて向上した結果、機体構造自体の信頼性も高まっている。
機体は空戦時のロービジビリティ(Low Visibirity:低被視認性)を重視したグレーとブルーに塗装され、兵器的でストイックな印象を持たせている。ちなみに、MS形態での機体形状は人型を若干外れており、ヒーロー性は少ないデザインとされている(腕部や脚部が細身かつ人間の関節よりかなり外側の位置から生えるため、どちらかといえば怪人然としたフォルムとなる)。
変形後のウェイブライダーモードの外観は、デザイン当時の西側現用機であったF-14やF-18初期型、可変翼部分は開発中止になったボーイング2707の初期案(プロペラントタンクはモチーフのエンジンの配置位置にイメージが似せられている)の影響が強い(ロシア機はまだ冷戦時代で資料そのものが非常に少なく、イメージソースにはなり得なかった)。可変翼機が衰退し実用ステルス機が配備中である現代の目で見ると、未来の機体なのにいささか古風なラインになるという逆転現象が起こっている。
Ζプラスシリーズ
ΖプラスA1型
型式番号MSΖ-006A1(MSK-006A1)。
地球上を活動領域とするカラバが、可変機(TMS)の傑作として名高いΖガンダムを大気圏内専用機として再設計した可変量産型MS。開発は当初カラバが独自で行っていたが、後にアナハイム社も関わっている。
詳細はΖプラスA1型を参照。
ΖプラスC1型
型式番号MSΖ-006C1。
A1型が可変機としては比較的安価であったこと、そして運用経験から変形機構の熟成とムーバブルフレームの性能向上が進んだことを受けて、地球連邦軍がアナハイム社に宇宙戦用としてもう一度再設計させた機体。
詳細はΖプラスC1型を参照。
Ζ>(Ζプロンプト)
型式番号MSΖ-006P。
漫画『機動戦士ガンダム ムーンクライシス』に登場。
第二次ネオ・ジオン抗争後に少数が部隊配備されたΖシリーズのMS。Ζプラスの可変機構が流用されており、「ΖプラスP型」とも呼ばれる。
大気圏内外双方での運用が可能だが、機体構造が脆弱なためMS形態での重力下戦には不向きとされる。また、外装の耐熱装甲は大気圏内でのビーム攻撃への防御手段としても機能する。
連邦宇宙軍地球低軌道艦隊の戦闘空母「ベクトラ」などに配備されており、宇宙世紀0099年にネオ・ジオンとヌーベルエゥーゴの共同軍が引き起こした動乱の際に数機が実戦投入された。
主人公タクナ・S・アンダースン准尉もうち1機(機体番号117)のパイロットを務めているが、同機は戦乱の中で一時ベクトラに保護されたネオ・ジオンの要人メイファ・ギルボードに強奪されている。
ΖプラスS2型
雑誌企画『ソロモンエクスプレス2 THE MYSTERY OF PSYCHOMMUN-SYSTEM』に登場。
Ζプラスの機動性を生かし、サイコミュを用いて他機から制御される「ビットMS」として改修された機体。無人運用が前提とされているが、パイロットが搭乗することも可能。
胴体部は重量軽減のため小型化され、四肢が大きいアンバランスな体格になっている。また、大出力のジェネレーターが搭載され、FAΖΖのハイパー・メガ・カノンを改造した大型メガ粒子砲を背負っている。
宇宙世紀0088年に行われたΖΖ-00の機動試験に護衛機として参加していたが、暴走したΖΖ-00によって30機全機が破壊された。
WAVE RIDER FLEET(Ζプラス戦爆連合)
雑誌企画『Spirit of VMsAWrs ΖPlus Possibility』に登場。
アナハイムのキャルフォルニア事業部によって宇宙世紀0090年に提案された機体群。Ζプラスの派生機のみで編成された部隊の構想を謳っていたが、いずれも連邦軍には採用されず、実機が製造されることもなかった。また、型式番号はアナハイム社内で用いられたもののみとなっている。
電子戦能力に優れたΖプラス・サベイランス(型式番号AECD-model756-S)、D型を原型としてWR形態での空戦能力を重視したΖプラス・ドミナンス(型式番号AECD-model755-D)、A2型を元に大火力による遠距離攻撃に主眼を置いたΖプラス・ハウザー(型式番号AECD-model757-H)、MS形態での格闘戦能力を高めたΖプラス・ペネトレーター(型式番号AECD-model744-P)の4つの案が存在した。
ゼータキュアノス
型式番号MSΖ-006-4。
小説『ガンダムビルドダイバーズ GIMM&BALL'S WORLD CHALLENGE』に登場。
GBN内で蕎麦屋「三木亭」を営むダイバー「ヨシ」がΖプラスを原型として製作したカスタムガンプラ。「GBNのあらゆる領域への蕎麦の出前を可能とする」というコンセプトで製作されているが、十分な戦闘力も併せ持っている。
必要に応じてフライングアーマーとウィングバインダーを空中換装することで、通常のWR形態に加えて大気圏内用のウェイブシューター形態へ変形できるほか、フライングアーマーとウィングバインダーを同時に装着し、大出力重攻撃強襲形態「ウェイブダイバー」を取ることも可能。また、オプションとして無人機としての独立運用も可能なプロトタイプ・バック・ウェポン・システム(PBWS)が用意されており、フライングアーマー・ウィングバインダー・PBWSを同時装備した最終形態も存在する。
三木亭で働くことになったジム(ティム・バレット)とボール(アズマ・カール・トンプソン)の主人公コンビと、成り行きで対決することになる。
主な武装
頭部バルカン砲
連邦系MSが標準装備する60mmの牽制・防禦用機関砲。
大腿部ビーム・カノン
ムーバブルフレーム直結型の射撃兵装。Ζガンダムのビームガンから発展した武装で、腰部サイドアーマーに当たるパーツが砲身となり、前方に90度可動して発射される。MS形態時にマニピュレータを使わず射撃できるのが最大の利点で、手持ちのオプション兵装を十分に活用できる。外部にはビーム・サーベルのラッチがある他、砲身自体がAMBAC作動肢として細かい姿勢制御に用いられる。また、ウェイブライダー形態時も主兵装として機能する。
なお、機体がA1型からC1型に再設計された際、ウェイブライダー時に空気抵抗となることが問題になったエネルギー供給ケーブル部が大幅に改良されるなど、ビーム・カノン自体も大きくバージョンアップしている。
ビーム・サーベル
ビーム・カノン横のラッチに収納されている。本機は可変機故に防御力が低下しているため、やや格闘戦は不向き(「チャンバラも出来なくもない、程度のMS」とされている)。
ビーム・ライフル
A1用装備として後付けで設定されたもの。型式番号は不明。威力はΖガンダムと同程度。Eパックは百式やリック・ディアス、ガンダムMK-Ⅲと共通のスネイルタイプのものを使用する。
なお、UC0096年代にはリゼル用の物を装備している。
ビーム・スマートガン
C1型の変形用サブユニットに装備された長距離射撃用大口径ビーム砲。反対側の腕で収納式グリップを保持して発射する。同軸式のディスク・レドームとの連動で高い命中率を誇り、アウトレンジからの狙撃に高い性能を発揮する他、ウェイブライダーモードでも問題なく使用できる。
スマートガン接続用コネクタ
フロントスカートの上端には、Ex-Sガンダムと同種のムーバブルフレームコネクタが装備されていて、外付け武装に対応出来る予定であった。
劇中での活躍
『ガンダム・センチネル』における主なパイロットはテックス・ウェスト、シグマン・シェイド、チュン・ユン。
α任務部隊旗艦であるアーガマ級強襲巡洋艦「ペガサスⅢ」にC1型が2機配備され、初期はウェストとシェイドが搭乗し、Sガンダムの随伴機として行動していた。とはいえ、さほど大きな戦果を挙げる描写はなく、月面上ではシェイド機がジョッシュ・オフショーのゼク・アインによって撃墜されている(機体自体は回収され、シェイドも無事であった)。
地球軌道上の最終決戦ではシェイドとチュン・ユンが搭乗、ニューディサイズ残党が奪取したシャトルとその護衛機であるゼク・ツヴァイの撃破に奮戦。チュン・ユン機は大型MAゾディ・アックの射撃から合体中で無防備なSガンダムを庇って爆散したが、シェイド機は無事に戦いを切り抜けて大気圏再突入を果たし、大気圏内でガルダ級輸送艦に収容された。
アニメ『機動戦士ガンダムUC』では、カフカスの森において警備にあたっていたA1型が登場したが、ロンド・ベルのジェスタに不意を突かれ取り押さえられてしまうという端役扱いであった。
なお、この機体は頭部センサーに改修が加えられているようで、発光色が本来の青から赤に変わっている。また、僚機であるグスタフ・カールのコックピットからは「MSΖ-006C1」と識別されている。ただの誤表記なのか既存のC1型をA1型に改修した機体なのかは不明。
漫画版機動戦士ガンダムNTでは、サイド6(旧サイド4)のメーティスの防衛隊所属のMSとしてA1型が登場(宇宙用のC1型ではなく地上用のA1型を何故使用しているのかは不明)。パイロットは、メーティス防衛隊の中で唯一実戦経験のあるパイロットで、ジェスタに無力化されたカフカスの森所属のA1型と違いシェザール隊のジェスタ2機と袖付きに偽装したジオン共和国グルトップ隊のギラ・ズール1機を無力化しており、白の三ツ星のドライセン3機に対しても彼女達の技に苦戦しながらもパターンを読み善戦したが、Ⅱネオ・ジオングがメーティスに入ってきた事で過去のトラウマでニュータイプの力が暴走したビアギッテのドライセンによって、A1型は大ダメージを喰らい至近距離からでハンドキャノンをコクピットに撃たれ撃墜された。
ガンプラ
旧キット1/144ではC1型が発売された。他の『センチネル』旧キットと同じくあさのまさひことカトキハジメがデザインに関わっており、頭部と腹部を外すだけで変形可能。
MGではA1型のテスト機カラーとC1型がラインナップ。後にA1テスト機カラーをベースに一部パーツなどを変更したUC版もプレミアムバンダイ限定で販売された。
変形方法は設定本来のものとは違っており、Ζガンダムのものに近い。
HGUCでは、『UC』に登場したタイミングに合わせてA1型のユニコーンVerが一般販売された。武装は『UC』で装備したものが付属し、変形は差し替え式。その色替えとなるテスト機イメージカラー(武装はUC版と同じであり、テスト機仕様そのものではないので注意)は当初ガンプラEXPO2014で限定販売され、その後マーキングシールを水転写デカールに変更したうえでプレミアムバンダイ限定で販売された。C1型もプレミアムバンダイ限定で発売されている。
余談
文章設定とバリエーション設定が異様に多いのは、モデルグラフィックス誌の模型コンテスト直前に紹介して読者投稿に期待していたからであった。しかしゼータプラスに関しては殆ど投稿が無かったので編集部では拍子抜けしたらしい。
この結果、設定画稿が全く存在しない機体も多い。
あくまで『センチネル』世界の設定なので、他誌で展開されていた『Ζ-MSV』のプロトタイプΖガンダムや量産型Ζガンダム等とは整合性を合わせていない。実際、モデルグラフィックス誌の制作陣はエアクラフトやミリタリーモデルの色を濃く出して機体設定を行っている。しかし、ガンダムタイプながらトリコロールを廃したこの機体の衝撃は当時非常に大きく、後にデルタプラスやシータプラスといった本機の後塵を拝した機体も生まれるなど、モビルスーツデザインのシーンに強い影響を与えた。