「ガキの頃心を失ってからおれはずっと死に場所を探してた」
「おれのような男は始めからいない…!!」
「おれの名は黒炭カン十郎!!!」
「理由はこれでいいか?」
概要
光月おでんの家臣団「赤鞘九人男」の一人“夕立ち”カン十郎の本名。
ワノ国を滅ぼすべく光月家の地位を転覆させた敵側の大将「黒炭オロチ」と同じ黒炭姓であり、この名前を明かした事で彼が敵側から送り込まれたスパイである事が明らかとなった。
カン十郎の生まれた大衆演劇の一家はなんと黒炭の分家、つまりオロチと同様、彼もワノ国による黒炭家迫害の被害者の1人だった。迫害に伴って彼の両親は舞台上で殺害され、舞台でしか生きる事を知らなかった彼は、これを切っ掛けに完全に心を失ってしまったのである。
絶望のどん底にあったカン十郎に、黒炭の本家末裔であるオロチが接触。オロチから両親の仇を殺した事、これからワノ国への復讐を行う事を伝えられる。同時に彼はオロチから光月に入り込むスパイとして、光月の忠実な部下を演じる役割を与えられた。「光月として生き、光月として死ね」と言うオロチの命令も、死に場所を求め、尚且“大役”を演じられる機会を与えられたカン十郎は直様承諾し、オロチから渡されたフデフデの実を食し、希美にて浮浪者を偽って将軍家の嫡子・光月おでんに接触、ひと悶着を経て家来となり彼らの旅に同行した。以降は九里大名となったおでんの家臣を務める裏で、オロチに情報を提供する黒炭側のスパイとして暗躍するようになった。
つまり、光月おでんと出会った時点で、既にオロチと接触した後であり、最初から光月家を貶める為に行動していたのである。加えて、何者かを演じる事でしか生きられないという一種の職業病めいた性分から、他の家臣達同様に絶対的な忠義の下おでんに仕え、その上で命を落とす事も厭わぬ異常性を持ち、密かに彼らの情報や郷の予算を、オロチに流したり等はしていたが、おでんやその家族、同心を直接手にかける行動は一切取らなかった。この徹底された演技により、赤鞘たちは誰1人として彼がスパイであるのを見破る事が出来なかった。
当初はオロチの命令通り、20年前の処刑時にそのまま光月の家臣として死ぬ予定だったが、おでんの計らいにより奇しくもその場から生き長らえ、トキの能力で20年後の未来(現在)に飛ばされる。こうした予想だにしない状況の中でも、カン十郎の演技はブレる事なく、以降も変わらず忠臣を演じ続け、跡取りのモモの助を支えつつ、オロチとの内通を続けていた。
オロチが部下からの信頼を失いつつも、「赤鞘が20年後に自分に復讐に来る」とするトキの予言を具体的に信じていたのも、そもそもオロチからして見れば、20年間音沙汰のなかったスパイが、急にタイムスリップの事を知らせてきた事実があった為で、信じるのが当然だと言える。
ドレスローザでの初登場から正体が判明するまで、連載中のリアルタイムで6~7年以上経過しており、否が応でも時間の流れを感じさせるものとなっている。
プロフィール(真)
本名 | 黒炭カン十郎 |
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年齢 | 享年34歳(生まれは54年前) |
身長 | 347cm |
所属 | 黒炭家家臣 |
悪魔の実 | フデフデの実(超人系) |
覇気 | 武装色、見聞色 |
武器 | 愛刀「辻死梅」(位列なし) |
出身地 | 偉大なる航路 新世界 ワノ国 九里 |
誕生日 | 7月21日(夏の医者) |
星座 | かに座 |
血液型 | X型 |
好きな食べ物 | 刺身のレタス巻き、ロールキャベツ |
嫌いな食べ物 | 桃 |
趣味 | 水墨画 |
一人称 | それがし |
笑い方 | カッカッカ |
イメージ動物 | ホトトギス |
CV | 山崎たくみ |
人物
本性
冷血な人格破綻者。役を演じている間は、一人称が「それがし」で、錦えもんと同じような侍口調を用いていたが、本性を表してから一人称は「おれ」に変化し、これまでルフィやロー等の協力者達を「○○殿」と敬称を付けて呼んでいたが呼び捨て、もしくは侮蔑的な呼称を用いる等、乱雑な口調を用いるようになった。なお、主君であるオロチの前では一人称は「それがし」となり侍口調かつ敬語になる。
性格に関しても、これまでまんまと騙されていた光月の同盟者達を徹底的に煽り、罵り、逆に錦えもんの策(実際はただの偶然)に騙された際には、驚愕や憤怒の表情を顕にしたり等、以前よりも感情的な側面が目立つようになった。
ただしカン十郎は心が完全に破綻しているため、これらの性格も『本性』というよりは状況に合わせてただ演じているだけに近いのかもしれない。
実際、上述のように赤鞘九人男に対しては『嫌われ役』として振る舞っている節はある。
スパイとして
彼のスパイ行為において、非常に恐ろしい点は情報や金を流す事以外は、一切の利敵行為を行わなかった事である。光月おでんの家臣として彼に忠義厚く従い、仲間達とは時には笑い、時には互いを練磨し合ったりと苦楽を共にし、オロチやカイドウと戦う時は、命を落とす事も憚らず死力を尽くして戦う等、「おでんの忠実な家臣」という“役”を見事に演じ抜いたのである。
釜茹での刑で他の赤鞘と一緒に処刑されかけた事については、元々死に場所を求めていた彼としては、さして気にするような事でも無かったらしく、むしろ自身の正体を明かした時、その事を問われた際には「共に死ぬ事によって"完全なる役"が完成していた」として、自分の死すら歓迎・受容していたと明言している(飛行力の低い雀に乗った状態で、落ちること等への恐怖心を感じさせずに絵を描く、標高の高い象主を登っている最中に、よくよく考えれば自身も危険な目隠し行為を行うといった行動も、自身の死に対する危機感や恐怖心の乏しさによるものと思われる)。
こうした徹底された役作りから、錦えもん達もカン十郎自らが、正体を明かすまで全く気付かずにいた。
あるいは上述の性格を踏まえれば、彼にとっては「おでんの家臣」という表の顔は勿論、「オロチのスパイ」という裏の顔さえも演じていた一つの「役」でしかなかった可能性すらあり、故にこそ表裏が見えず傍からは気づきようが無かったのかもしれない。
真の主君であるオロチも、こうした彼の性質を利用しつつも異常なものと捉えているようで、カイドウとの対談で口汚く罵っている。しかしその分、スパイとしての有能かつ忠実な仕事ぶりから、オロチ自身も彼に全幅の信頼を寄せている。事実、カン十郎からの情報に部下含む他者から、度々疑義を持たれているが、その度に「確かな情報だ」として疑惑を否定している。
戦闘能力
悪魔の実
「お前らによく似てるだろう!?」
悪魔の実 | フデフデの実 |
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解説 | 描いた絵を実体化させたり、自身を絵に変化させる |
種類 | 超人系 |
上述の通り、彼が食したフデフデの実はオロチと初めて出会った際に渡されたものであり、20年以上活用されている能力は格段に研ぎ澄まされている(入手ルートはおそらくオロチと同様、彼の後見人である黒炭ひぐらしと思われる)。
自ら描いた絵を実体化させる能力に関しては、これまで通りだが、役を演じている時とは異なり非常に精巧な絵を描いており、そもそも絵が下手だった事自体が演技(嘘)であった事も明らかになった。実際、よく見ると過去の食事シーン等では普通に右手を使用しているのに対し、ドレスローザ等で絵を描く時は左手を使用しているように見え、敢えて利き手でない方の腕で絵を描いていた事が分かる。
因みに使用している筆(刀)の名は「辻死梅」(位列なし)。この筆は絵を描く以外にもしっかりと『斬る』力も持っているようで、オロチの元に辿り着いた際に、襖が斬り裂かれている描写がある。
正体を現した際に、赤鞘達の小舟に乗っていたカン十郎は、自身が能力で作り出した分身であり、錦えもん達もそれを斬り捨てるまで、偽物である事が見破れなかった。しかも、雨風が吹き荒ぶ悪天候の中でも、一切その絵の分身が崩れず、『水にかかると消える』と言う弱点までも、精巧な絵を描けば克服可能という嘘であった事が同時に判明した。
画力だけでなく絵を描くスピードも非常に早く、河松との勝負では彼の攻撃を受け交わして退いている僅かな時間に、見事な鶴の絵を描いて実体化させ、空中に逃げて追撃を回避している。
能力の練度そのものも、妙な悪戯などで誤魔化されているが、全長2万m以上もある象主の背中にある国(アフリカゾウの全長と肩高等を基準に、大まかな計算をした場合、標高は2千mは軽く超えていると思われる)を登攀できる疑似生物を用意する等、実際は底知れない。また、彼の絵を実物化する能力も本領を発揮すれば、もう1人の自分を生み出してアリバイ作りも容易、オロチの元へ擬態も出来て意思を持って情報を運ぶ鳥と言う伝達能力の高さ、食料難に及ぶ事はない生存能力の高さと、必要な要素を兼ね備えている。
その他、髪を筆代わりにして空中に絵を描く描写もあり、彼の能力は「空中でも絵を描ける」もしくは「墨自体を自在に操る能力」とも解釈が出来るが、詳細は今のところ不明。いずれにせよ、彼が光月家に潜伏していた現在までの十数年(タイムスリップを含めれば更に20年)もの間、これ程の能力の本質まで偽り続けていた事になる。
また、生み出した絵を自分の意思で遠隔操作することも可能。更に描いた絵を自分自身に纏わせることで、他人の姿に変装する能力も披露している。
ただし、絵を遠隔操作する場合は体力を大きく消耗するため多用できない。劇中でも絵で描いた兵隊を生み出しはしたが、わずか2体程度のみであった。
基礎戦闘力
赤鞘九人男の一人を演じられる程の基礎戦闘力を有している。特に生命力は随一であり、菊の丞から致命傷を受けても復活し、錦えもんによって再び斬り伏せられた後も虫の息ながら生存していた。また、持ち前の演技力は戦闘の際には騙し討ちの際に存分に発揮され、作中では再び対峙した菊をおでんの演技をすることで隙を作り、戦線離脱に追い込んだ。
技
作品
- 自分自身
カン十郎本人にそっくりな分身。雨に濡れても消えない為、上述の通り錦えもんが斬り捨てるまで偽物だと気付かれなかった。
- 蛇
しのぶを拘束する際に描いた蛇。無数に描く事でロープ代わりにした。
- 鶴
鬼ヶ島へ飛び立つ際に描いた鶴。ドレスローザで描いた抜け雀と違い、こちらは精巧な絵だった事から高い飛行能力を持つ。
- 首なしの騎馬武者
鬼ヶ島に上陸しようとする赤鞘達を迎え撃つ為に描いた、馬に乗った首のない鎧武者。2体存在し、それぞれ長槍と太刀を携えている。カン十郎やカイドウの部下達と共に赤鞘たちと対峙する。
アニメでは戦闘中に騎馬していない個体を追加で描いていた。
- 光月おでん
モモの助を始末する際、障害となる赤鞘を足止めするために遠隔操作されたおでんの絵。立ち振る舞いそのものがおでんの為、錦えもん達も最初偽物だと気づかなかったが、いち早く感づいたアシュラにより抑えられてしまう。その後、隠し持っていたダイナマイトを用いて自爆した。
遠隔操作のため、著しく体力を消耗するとのこと。
よく見ると、閻魔と天羽々斬をおでんが所持していない事を知っていたため、帯刀している刀も異なっている。
- 絵を纏う
描いた絵の人間を自身が纏い、変装する。作中ではおでんの絵を纏い、菊の丞の心に揺さぶりをかける事で致命傷を負わせた。
カン十郎の切り札にして黒炭家の根深き怒りと怨念の化身と言っても良い作品。
二つの光る眼を持つ炎の亡霊の様な姿をしており、何処となくスマイリーを彷彿とさせる。触れただけで相手を燃やす程の熱量を持ち、通った後は炎の海と化す。また、幽霊の如く壁や天井をすり抜けての移動が可能で、作中では引火爆発で敵味方諸共鬼ヶ島を吹き飛ばし始末する為鬼ヶ島地下の火薬庫へ向かっていた。これによる火災は戦況の解説をしていたCP‐0や、百獣海賊団と交戦していたロビンやブルック達も逃走を選んでいた。
モデルは平安時代頃に葬送地として知られた京都の鳥部山に現れるという妖怪。
墨の技
- 浮世夕立ち絵図(うきよゆうだちえず)
髪の毛を筆代わりにして空中に“墨雲”を描き、そこから墨の矢を雨のように降らせる。木箱くらいなら簡単に破壊する威力を持つ。墨雲を描く際の髪を振るう姿は歌舞伎演目『春興鏡獅子』がモデルと思われる。
作中での動向
過去
国中で起こっていた「黒炭家の迫害」の矛先がカン十郎の生家にも向けられ、大衆演劇の舞台上で両親を殺害されたことで心を喪失。国内をさまよっていた中で黒炭オロチ一行と邂逅し、光月おでんの家臣として生きる"大役"とフデフデの実を与えられた。
希美で光月おでん一行に合流したあとは仲間たちと共に九里まで同行し、郷の更生に尽力。正式に光月家の家臣となることに成功した。
以降はオロチに情報と金を流し続け、20年前にはおでん達のカイドウ討伐の動きを知らせたことでおでんを完全に失墜させる。しかし都で行われた釜茹での刑にて、カン十郎はおでんの手によって不本意にも生き長らえることになった。
その後駆けつけたおでん城にて、カン十郎は光月トキの能力でモモの助や錦えもんたちと共に20年先にタイムスリップすることになったが演技を辞めることはなく、同時にゾウに到達するためのビブルカードを敵方に渡すなど情報の提供を続けた。
第2部 最後の海 新世界編
ドレスローザ〜ゾウ編
錦えもんと再会してからも光月家の家臣という役を演じ、錦えもんと協力関係になっていた麦わらの一味を補佐するように活動を再会した。
詳しくはカン十郎を参照。
ワノ国編
第二幕
赤鞘九人男の一人として潜伏生活を送る演技を行う一方で黒炭オロチの家臣として暗躍する。
オロチ城で花魁小紫が居眠り狂死郎の一太刀で斬り捨てられた大事件の翌日に討ち入りの詳細と集合地を表した判事絵をオロチの元に届け、1000人の侍を拘束させた。
その後、霜月康イエの策によって集合地が変更されるものの、カン十郎は再びその情報をオロチに伝え、オロチが討ち入りを完全に阻止できる状況を作り上げた。
第三幕
決戦当日、オロチの指示もあって鬼ヶ島へ討ち入りに行く途中の小舟にて、同船した赤鞘の6名に正体を明かし「初めからおれのような男はいない」とし、カン十郎と言う人間が作られたものであった事を伝える。
これらの事実を明かしている間に、赤鞘達の小舟はオロチを介してカン十郎の密告を受けた、百獣海賊団の軍艦3隻に包囲されてしまう。
許し難い裏切りに怒った錦えもんは、嬉々として裏切りの全貌を語るカン十郎を瞬速の居合抜きで両断するも、同船していた彼は能力で描いた分身であり、本物は港に残してきたモモの助としのぶを急襲し捕らえていた。元々この任務においてオロチから「死なないこと」と「モモの助を生け捕りにすること」を命令されており、カイドウはモモの助から“世界の真実”について聞き出そうと考えていた。
勝利を確信し、侍の最期を見届けてやろうと高笑いしたが、直後に殲滅できたと思っていた侍集&海賊達の連合軍が港に現れ、状況は一変。実は錦えもんが暗号の解釈を間違えており、周囲も自分もそれに気付かず信じた結果、密告した場所・日時が侍達の読み取った内容とは違うものになってしまったのだった(破壊した船団も、フランキーが作った予備の空船であった)。
最早、正体を明かしてしまった自分だけではどうにもならない程に趨勢を切り返され、一杯食わされた(?)事に憤慨するカン十郎。仕方なくモモの助だけでも攫っていく事にし、モモの助を救うべく素早く泳いで引き返して来た河松の攻撃も防ぎ切り、モモの助を抱えたまま地面に描いた鶴で上空へと離脱。現在身を隠している日和も見つけ出して必ず殺すと宣言し、自身の能力で連合軍に攻撃を加えながら鬼ヶ島へ飛んで行った。
錦えもん達より一足早く鬼ヶ島に上陸したカン十郎であったが、島内の入り組んだ構造や、事情を知らないカイドウ一派から攻撃を受けたり、モモの助がその隙を突いて縄を解いて逃亡を図ったり等のトラブルもあり、結局カイドウやオロチに対面する頃には、錦えもん達は鬼ヶ島に潜入した後になってしまった。抵抗した為ボコボコに痛めつけたモモの助の身柄をオロチに引き渡すと共に、港で起こった一連の出来事を伝えると、オロチは余裕を演じつつも焦燥し、宴会の催しがてらにモモの助を処刑しようと準備を始める。
一方でカン十郎は長年共に行動した赤鞘達が軍艦3隻ごときでは倒れないとも踏んでおり、百獣海賊団の軍勢と、自ら生み出した首なしの騎馬武者2体を率いて、島の裏門の防衛線を張った。予想通り、その場にはハートの海賊団の潜水艇によって上陸した菊の丞、雷ぞう、イヌアラシ、河松、アシュラ童子、そしてマルコの手助けで空から着陸したネコマムシ、イゾウの姿があった。
カン十郎はここでも赤鞘達を罵倒し、モモの助が今正に処刑されようとしている等を語って煽り立てるが、彼らは飽くまでも冷静にカン十郎に向き合い、それぞれ武器を抜いてカン十郎に対峙。菊の丞は、外していた鬼の面と兜を改めて装着すると、冷徹にカン十郎の言葉を制し、仲間達と一斉に挑みかかった。
錦えもん、傳ジローが作戦通り裏門まで辿り着いた頃、カン十郎と赤鞘達の勝敗も決していた。刀を手に落涙する菊の丞と雷ぞうの傍らで、カン十郎は新雪を血で染めながら静かに横たわっていた。奇しくもこの時、おでんの家臣であった10人がその場に揃う事態となり、錦えもんも横たわるカン十郎の姿を見ながら、貧しくも楽しかった当時を思い起こしていた。その為か、忌むべき筈のカン十郎に対して何を言う訳でもなく、被っていた傘を彼の顔に乗せて先へと進んでいった。
しかし、辛うじて急所を逸れていたらしく、もはや先が長くない身と悟りながらも戦線に復帰。本物そっくりに描いた光月おでんを遠隔操作し、刺客として戦線復帰を目指す赤鞘達に差し向けた。描いたおでんはアシュラ童子に偽物と見抜かれてしまうが、持たせておいたダイナマイトを使用することでアシュラを再び戦線離脱に追い込んだ。
その後、モモの助としのぶの前におでんの姿で現れるも、菊の丞と錦えもんは先刻承知。
菊の丞が刀を握るも思い出につけ込んで彼の動きを封じ、腹を一突きにするも、錦えもんの一太刀によって今度こそ止めを刺された。
この時、“黒炭カン十郎”だったにもかかわらず「おれの舞台の幕を引くなら……!!お前がいい…!」と、錦えもんに“斬られて人生を終わりたい”という『黒炭の道具』らしからぬ感情とこだわりを見せていた。
最期には「舞台上じゃ親友だったもんな」と涙を流し錦えもんとの過去を思い出しており、心を壊したはずだったカン十郎は『憎まれ役の舞台役者』に徹せず、死ぬ間際に心を取り戻していた“人生の大根役者”だったようである。
そして百獣海賊団の飛び六胞が全滅すると言った戦局の動きが見られる中で、虫の息だったカン十郎は、同じく生存していたオロチから通信を介した命令を受ける。
オロチから黒炭家の恨みを吹き込まれたカン十郎は残った力で最後の舞「黒炭心中」として、業火を纏う「火前坊」を描きついに“肉体は”力尽きた。
カン十郎の遺志を宿した火前坊は鬼ヶ島の火薬庫に近づき島の大爆発を目論むも、ヤマトや四皇リンリンの戦いの余波に巻き込まれ失敗し、四散する。
爆破に失敗した火前坊は消えかけの姿ながらも瓦礫に押し潰されたオロチの前に現れ、オロチが日和を焼き殺せと命令するもなぜか反対にオロチに寄り縋り、瓦礫もろとも焼き尽くして消えていった。
それが只の能力の暴走だったのか、はたまた「人生の大根役者」が最後の最後に見せた「意地」だったのかは分からないが、結果的にカン十郎は与えられた大役に反して光月家の人間を黒炭家の人間から護ることになった。
その他
伏線について
上述通り、カン十郎の初登場から正体発覚までに(連載期間で)7年近くを費やしており、実際に伏線が多く敷かれていた。
出来事 | 理由 |
---|---|
上述の通り過去編や食事シーンと絵を描く時とで右手と左手を使い分けている | 絵が下手という嘘のため |
旱害のジャックがゾウに来ることができた上に、雷ぞうだけを名指し | 情報を流したスパイだから(この時点で雷ぞう、イヌアラシ、ネコマムシが内通者の線が無くなる) |
ドレスローザにて錦えもん達が異名を含め名前が筒抜けだった(本来であればオロチですら把握出来ていない情報をドフラミンゴが知っていた) | 同上(この時点でドレスローザに居た侍は錦えもん、カン十郎、モモの助のみ) |
当初錦えもんとモモの助は親子関係を装っていたのにもかかわらず、ドンキホーテファミリーはモモの助を狙っていた。 | 同上。 |
錦えもんとカン十郎が再会した後、ドフラミンゴ側がカン十郎を直接的に狙う描写や名前を出す描写が少なかった | 錦えもん達の味方ではないが、ドフラミンゴの忠君でもない為 (ドフラミンゴ側にとって、カン十郎は敵ではない。しかし、良くも悪くもオロチの命令に忠実で精神面が特殊な為、どこまで協力するか読めない)。 |
主君の仇敵である「竜」の絵を平気で描いて使役 | まともな心がなく、他の人間の気持ちが理解できなかった為。錦えもんに問い詰められた際には「目には目を」という理屈で誤魔化していた。 |
過去編にて「迫害された過去がある」と触れている | 黒炭の一族だから。おでんは当時のカン十郎の行い(死体から髪の毛を切り筆を作って生計を立てていた)だと勘違いしていた模様。 |
初登場時に頬張っていたのはレタス | レタスの花言葉は「冷たい人」「冷酷」 やや強引な感じもあるがカン十郎の本性に合致している。 |
名前・異名の夕立ちカン十郎の由来 | 夕立ち(『狐の嫁入り』と言われ、『誰かを欺く』、『何かを隠す』という意味がある)カン(=間者=スパイ)十郎(江戸時代に舞台上で殺された『初代市川團十郎』が由来だと思われる。 |
登場人物の中で唯一と言って良い、不自然なまでにおしろいを施した容姿 | おしろいは知っての通り化粧の一種、言い換えるなら他者に本来の姿を見せないためのものである。ちなみにおしろいにはかつて重金属が使われており、使用者の精神にしばしば深刻な悪影響を及ぼしていた。 |
ちなみに、カン十郎が本編に初登場した原作753話のサブタイトルは「お見知り置きを」。
「お見知り置きを」とは、一般的には初対面の人物に対して「自分の事をずっと覚えていてください」という意味で用いられる表現の一つである。そしてこの753話で初登場となったキャラクターはカン十郎だけ。そのような点からすると、そのサブタイトルは「後々まで『おれ』を覚えておけ」という、カン十郎から読者へ送られたメッセージだったのかもしれない。
好物について
コミックス96巻のSBSでは、おでんや家臣達(赤鞘、しのぶ、イゾウ)の身長と好物についてが明かされており、好物については全員が皆それぞれおでんのタネ(具)で統一されている。
カン十郎の好物は「ロールキャベツ」であり、おでんの中では唯一洋食の具材という点でも彼の異質感が強調されている……のかも知れない。また、ロールキャベツ系男子という言葉があるように、「一見無害な装いに得体のしれない本性を隠している」といったニュアンスも含まれていると思われる。
「ロール」と言う単語についても英語では“巻く”と言う意味の「roll」と、“役、役割、役目、役柄、任務”と言う意味の「role」の2種類の単語が存在し、後者は特にカン十郎の「役」に従うと言う生き方そのものを示唆している。
また、ファンブックで嫌いな食べ物が「桃」と明かされたが、これに関してはモモの助の存在が原因と思われる。
余談
- 担当声優
山崎氏は、過去にアラバスタ編アニメオリジナルキャラクターのカミュ役でシリーズ出演経験がある。
ちなみにカミュも偽りの役を演じる人物であったが、常人の理解を拒むかの如く完全に破綻していたカン十郎と異なり『楽な生活ができる』と言う出来心によるものであり、人物像は褒められたものではないものの「常人の理解の範疇である」という点ではマトモな部類であった。
- 嫌われ役
カン十郎は、黒炭カン十郎としては赤鞘九人男やモモの助に対して悪辣に振る舞ったが、心を壊しているため状況に応じて“演じて”いる。
それゆえ、上記の振る舞いから黒炭カン十郎が嫌いだという人は、カン十郎にとっては「演技に見入ってくれた最高の観客」…と解釈することも可能かもしれない。
- 「人生の大根役者」
カン十郎と錦えもんの決着が描かれた第1014話のサブタイトル「人生の大根役者」は、おそらく美輪明宏氏の楽曲名、及びその原曲であるシャンソン歌手シャルル・アズナヴール氏の楽曲の邦題「大根役者」から。
前者の歌詞には「飢えて死んでも魂(こころ)は売らぬ」、後者の訳詞には「私は別の血筋の持ち主だ」、「十の台詞とスポットライトをくれるなら才覚をお目にかけよう」など、ところどころに彼を思わせる歌詞が見られる。
また、大根はおでんの具のひとつでもある。
舞台上で黒炭家のスパイとして光月家を相手に大立ち回りを演じつつ、最後は舞台上で「親友」だった錦えもんの手で引導を渡される終幕を選んだのは、自分でも気づかぬうちに、幼少期に壊れたはずの心におでんの味がしみ込んでいたからなのかもしれない。
ちなみに錦えもんの好きなおでんの具は大根である。