鶴見中尉
つるみちゅうい
私はお前の死神だ お前の寿命のロウソクは 私がいつでも吹き消せるぞ
日露戦争時には情報将校であったが最前線に駆り出され、203高地攻略作戦で淀川中佐の立てた無謀な作戦の陣頭指揮を執らされる。鶴見中尉はその作戦に対し否定的だったが、上申はもみ消されてしまい命令に逆らうことはできなかった。最終的には高地の攻略に成功し多大な功績を挙げるも、その過程において甚大な死傷者の山を築いてしまう形となった。
その後の奉天会戦にて額に砲弾の破片を受け、頭蓋骨の前頭部および大脳前頭葉の一部を失う重傷を負う。以来、欠損した頭蓋骨を補うために琺瑯製の大きな額当てをしており、感情が昂ると額の傷口から時々脳漿(本人曰く「変な汁」)が漏れ出す。
ちなみに怪我をする前の顔立ちはかなりの美男子。本人は顔に傷を受けた事には前向きなようで、男前が上がったと語ることもある。
元は実直な軍人であったらしいが、脳の負傷を機に情緒不安定となり、平然と狂気じみた蛮行を為すようになる。しかしその一方、元情報将校としての先見性の高さ・機転の速さは衰えを見せず、そのカリスマ性において部下の人心を掌握している。谷垣は戦友たちの無念や無謀な戦闘で家族を失った遺族、北海道の開拓民たちのために金塊を獲得し新たな国を作ろうとするその姿から、杉元に対し「お前たちが何のために金塊を見つけようとしているのか知らないが、鶴見中尉が背負っているものとは比べ物にならないだろう。」と述べた。
育ちが良いのかピアノを弾くことができ、また赤ん坊の世話も慣れているような場面があった。
常時狂気的な一面を持つ人物だが、殺害した犯罪者の夫婦の赤ん坊を優しく抱き上げ信頼出来る人物に預けるなど、本来は他者への思いやりを持ちながらも、生きてきた環境や境遇から現在の人格を形成したことが覘い知れる。
一方で「優しい嘘」を効果的に用いることで部下たちの信頼を獲得しコマとして利用しようとするその手法に、月島は複雑な感情を抱いており信奉していた鯉登も疑念を抱きつつある。
また第七師団が冷遇され現在の窮状に陥る原因となった旅順攻囲戦以前から金塊獲得を画策していた描写もある。
その真の目的は本当に大義のためか、あるいは私心によるものなのか、果たして...。
日露戦争の終結後、高地攻略作戦時に多大な犠牲を出したことが軍内部より批判され、第7師団長・花沢中将は自責の念から自決。第七師団はその功績に見合わぬ冷遇を受ける事となる。
鶴見中尉は部下や遺族に報いるため、自小隊を率いてクーデターを計画。アイヌの金塊の隠し場所を記した刺青人皮を集めているのは、その軍資金に充てるためである。
上記の理由と前頭葉の損傷によって「カッとなりやすい(本人談)」ところがあり、杉元の顔を串団子にする、造反者である部下の二階堂に『耳と鼻を削ぎ、その上で切腹させる』という極めて残虐な私刑(リンチ)を科そうとする、かつて日露戦争を共に戦った和田大尉の指を食いちぎる等、常軌を逸した行動は枚挙に暇が無い。
特殊なカリスマを持ち、刺青人皮の偽物を作る為に剥製職人である江渡貝弥作を訪ね、その狂気的美意識の共感を得る事で助力させるなど、一部の部下及び協力者からは狂信的な支持を得ている。
上官である第七師団第27聯隊長・淀川中佐の弱みを握って意のままに動かしており、軍の内部においては中尉という本来の自身の職位を遥かに上回る発言力・影響力を有している。
また兵器開発者である有坂成蔵中将の協力を得て最新式の武器を提供してもらったり、大湊司令官である鯉登海軍少将(鯉登少尉の父)に雷型駆逐艦による協力を要請するなど、人的コネクションも広い。
かつて名前と身分を偽り開戦前のロシア国内で諜報活動を行っていた時期があり、現地では妻子も設けていた。
しかしこの時、ある人物達と交流を持ったことをきっかけに悲劇が起こる。この一件は後に彼の心境に大きな影響を及ぼすこととなった。
帰国後は情報将校として本格的に活動を開始。
自らの協力者を増やすべく、目を付けた部下や関係者達の家族関係や過去の人間関係・隠れた欲求・トラウマまでをも巧みに調べ上げた上で、それを絶妙に突くための極めて周到かつ長期間に渡る芝居(※時には数年掛けてそのネタをあえてバラし、相手の心を折った上でその隙間に付け入る事も)を仕組み、自身がその者にとっての掛け替えの無い理解者であると認識されるように演ずるという壮大な手口を多用(月島軍曹曰く「鶴見劇場」)している。
こうした極めて手の込んだ『優しい嘘』を積み重ねることによって、鯉登少尉らを始めとする多くの熱狂的信奉者を獲得するに至っている。
無論、そこには極めて冷徹かつ打算的な趣旨(自分のために命をも投げ出す忠実な手駒の入手・邪魔者の始末・有力な親族の懐柔……etc.)が見え隠れしているのだが、上述の月島のようにそれを知った上でなお彼に忠誠を誓い続ける者も少なくないあたり、彼の恐るべきカリスマ性と人心掌握術の巧妙さが覘える。
(※ただし、そんな彼でも尾形上等兵だけは手駒として懐柔しつつも真意を測りかねていたらしく、事実、尾形は後に全く独自の行動を起こす当作品最大のトリックスターとして台頭してゆく事となる。)
アシㇼパとの関係(ネタバレ注意)
網走監獄の決戦やその後の樺太での紆余曲折を経て、アシㇼパは第211話にて鶴見中尉との邂逅を果たす。
しかし、彼女の青い瞳にその父親の面影を見た鶴見は、会うなり彼女の監禁を示唆。「金塊がアイヌのために使われないのなら協力しない」と毅然と答えるアシㇼパに対し、普段のように言葉巧みに言いくるめるでもなく、真正面から嘲罵する。
―――「そもそも和人を殺すための軍資金だろうが」
―――「お前が遺志を受け継ぐさ」
―――「あの父親に… 目がそっくりだものな」
―――「ふふふふふ ふふふふふ… ふふ… ふふふふ ふふふふふ ふふふ ふふふふふ」
そこにあったのは、耳障りの良い『優しい嘘』で人心を巧みに誑かすいつもの彼の姿ではなく、激情を押し殺しながら額の傷から脳汁を滝のように滴らせ不気味に笑い続ける姿。
その様に誰よりも戦慄を覚えたのは、他ならぬ彼を信奉する部下達であった……。
「アシㇼパ…私の愛する娘」「アシㇼパ 私の娘」
第270話ではさらに悪趣味な形でアシㇼパを追い詰めていくが、その姿を彼女には「哀しいひと」と評されている。
- 作者の野田サトル先生は「実写化するなら是非とも玉木宏さんでお願いします。」と実写化実現以前からお願いしていたらしく、見事に先生の要望通り玉木が鶴見中尉を演じることとなった。
- なお、あの特徴的な顔は特殊メイクで再現しており、毎日特殊メイクを施してもらう手間を省くため、スタッフに打診して許可を経た上で特殊メイクをしたまま自宅に帰ったことがあるらしい。本人曰く、「子供に会ったら一生トラウマものになるから子供が寝静まった夜遅くに帰った」とのこと。
最後の決戦の場となった蒸気機関車の先頭車両では、杉元とアシㇼパとの北海道の大地の権利書を奪い合う死闘の末、鶴見は杉元と共に蒸気機関車もろとも函館湾に没した。
杉元は(おそらくは海に飛び込んだであろう白石由竹に救助されて)生還したが、鶴見の姿は後に月島が懸命に捜索したものの発見は叶わなかったようである。
結果的に鶴見中尉は目的のために多くの嘘を弄し、数多の人間たちを利用してその運命を狂わせたが、当初から掲げていた、散って行った戦友、遺された遺族、そしてひいては日本国民を救わんとするその意思は本物だった。
また狂気を原動力としながらも、最後まで貫き通した宇佐美への優しい嘘や、部下を救うための後部車両の切り離し、手を伸ばしながらも大義の為につかめなかった妻と子の遺灰への眼差しなどから分かるように、温かい人間性を捨てきれてはいなかった。
それは正気を保ちながら狂気的な合理性のもと大義のために一切の犠牲を厭わず、あまつさえわが子をも地獄への道に突き進ませんとするウイルクとは似ていながらも対比的なものであり、その所業故にかつての仲間や娘に失望され孤独となったウイルクとは逆に、鶴見は利用されていると知りながらも命を賭して付き従おうとする部下に恵まれていた。
杉元達同様に彼もまた時代に翻弄された哀しき人間の一人だったのかもしれない…
さらに、最終巻のエピローグ、加筆部分にてなんとダグラス・マッカーサーが登場。
その後ろをよく見ると……。
マッカーサーたちが写った写真の背景に、黒い服装に帽子を被った老人が描かれている。
はっきりとは描かれていないが、白髪となりつつも特徴的な目の周りの傷と額当てがそのままであるため、老いた鶴見のようにも見える。仮に生きていたとすれば80代ぐらいか?
ここでは、マッカーサーが何者かから莫大な資産を選挙資金に提供することをちらつかされ、北海道侵攻を謀るソ連軍を牽制するために動き、結果北海道本土が守られたことが描かれている。
さらに、ウイルクたちが作った「まだらの金貨」がマッカーサーの遺品の中から発見されたことも記されている。複数枚作られた「まだらの金貨」の一部は鶴見が回収していたが……?
その人物がアイヌの金塊を持ち逃げした別の男の可能性もあるが、真相は明らかでない。「それはまた別のお話」。
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原作軸。鶴見中尉ファンの上等兵ズは特に気合が入っているなーというのが書きたかっただけの話で、特にオチもはっきりしたCP要素もありません。前半が宇佐美、後半が尾形で鶴見中尉との出会いの回想を妄想して書いています。3,060文字pixiv小説作品- 第7師団の間借り人 回顧録編
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