「キエエエッ!!(猿叫)」
概要
プロフィール
フルネームは鯉登音之進(コイト オトノシン)。
1886年12月23日生まれ、推定21歳。(20歳、22歳説もある。)
大日本帝国陸軍北海道第七師団歩兵第27聯隊に所属する軍人で、階級は少尉。
鶴見中尉お気に入りの薩摩隼人で、彼を異様なほどに崇拝しており、常に彼のブロマイドを胸ポケットに忍ばせている。
自顕流の使い手。鶴見の前など、興奮すると自顕流独特の猿叫をしたり、早口の薩摩弁になってしまうため何を言っているのかわからなくなる。その都度、補佐役の月島軍曹が通訳をやらされる羽目になる(月島がいなかった時は二階堂に通訳を頼んでいた)。
人物
母親譲りのレ点のような太い眉頭が特徴。浅黒い肌に「華がある」と評される端正な顔立ちゆえ、作中では「薩摩の貴公子」と称されることも。
父親は海軍大湊要港部の司令官である鯉登平二少将。
士官学校を卒業したエリートであり、裕福な家庭出身のおぼっちゃん。それゆえ世間知らずで危険な動物にも警戒せず近づいてしまったり、騙されやすく危なっかしい一面があり、また見知らぬ土地で仕事中ながら観光を優先してしまうなど我が儘なふるまいをする場面もある。加えて若さによる経験不足も否めなく、失態を演じて鶴見中尉の叱責を受けることも。
それゆえ杉元とはソリが合わず、後に樺太先遣隊として彼と同行する中でも度々いがみ合っている。また月島軍曹には補佐を「子守」と言われたり、アシㇼパから初対面で舐められていたりする。
だが鶴見のお気に入りと評される部下だけはあって軍人としての能力は高く、誘導尋問で鈴川聖弘の変装を看破するなど、要所では頭の冴えを見せる。
加えて自顕流の腕前は達人の域にあり、劇中でも蝮のお銀の首を一撃で斬り落とす、投げつけられた手投げ弾を空中で両断するなどの高度な剣技を披露。
身体能力も極めて高く、特に脚力とバランス感覚に優れている。足場の悪い気球上の戦闘では杉元を圧倒し、健脚で名を馳せる稲妻強盗・坂本慶一郎を追い詰めるなどの活躍を見せた。曲馬団(サーカス)では天才的な軽業の才能を発揮し、素人にもかかわらず難易度の高い技を簡単に習得している。
また、他国や他民族の文化に忌避や嫌悪、差別の感情はなく、むしろ興味を抱いてる。
樺太アイヌの少女エノノカに対しても歳下だからと軽んじず、対等にビジネスパートナーとして接した。
闇の深いキャラが多い金カムにおいて最後まで光属性側だった人物の1人。登場当初は未熟な新米将校としての描写が多く、鶴見に心酔する奇行が目立つが、ファンブックにて「金塊争奪戦に参加し、一人の男として大きく成長を遂げていく」と記載のある通り、作中でも物語が進むに連れ成長著しいキャラクターとなっている。
作中での活躍
第七師団に捕らえられた白石由竹を奪還しに旭川の司令部に現れた犬童四郎助(に扮した鈴川聖弘)と部下に成りすました杉元の前に現れ、誘導尋問で二人を偽物と判断し銃撃。鈴川を射殺し杉元にも重傷を負わせる。
軍の気球を奪って逃亡を図る杉元一行を追跡し、気球上で交戦。杉元を追い詰めるも、白石に蹴り落とされたことで取り逃がすことになる。
その後は旭川での任務を外れ、鶴見中尉の元で囚人狩りに加わることになり、小樽に現れた坂本慶一郎・蝮のお銀夫婦の討取りに貢献。
網走監獄襲撃にも参加し、武装した看守、囚人たちと激戦を繰り広げるも生還する。
襲撃後は鶴見中尉と父親の命で杉元・谷垣・月島らと共に先遣隊として樺太へ渡ることになる。
樺太ではアシㇼパ奪還のためキロランケらを追う中で曲馬団のヤマダ一座の公演に参加。「曲馬団で杉元の名を宣伝し、アシㇼパへ伝える」計画の筈が、鯉登少尉の軽業の才能が開化してしまい、杉元が霞む程の妙技を連発(それに加えて、投げ接吻で曲馬団と観客の女性たちを魅了していた)。山田座長からもスカウトの声をかけられるが「鶴見に叱られる」という理由で断っている。
余談
原作漫画では早口な薩摩弁になると台詞が筆で書きなぐったようなものになり、何を言っているかわからなかったが、アニメでは字幕が付き内容が判明した。
気球上でのシーンにおける台詞の字幕によると、尾形からは影で「ボンボン」と馬鹿にされていたらしい(後に鯉登が尾形を評して「あの性格だ、嫌っている者も多い。私も大嫌いだ」と語るシーンがあるのだが、その理由の一端がこの字幕により明かされた形となった)。
端正な顔立ちや立ち振舞いは中々のものではあるが、如何せん(特に序盤では)奇行が目立った面もあるため、ある意味残念なイケメン扱いをされている。実際、公式グッズには「薩摩の奇公子」と書かれ、ファンブックでは「どんどん馬鹿になっていきました。」と作者によるコメントが掲載されたほどである。
2021年9月16日・『ゴールデンカムイ』最終章 第290話「観音像」にて杉元佐一・土方歳三一派と鶴見中尉率いる第七師団小隊が激突。聯隊旗手を目指す鯉登音之進は先陣を切る勢いで突撃した際、ソフィアの同志に迎撃されたためTwitter上で生死の境目の展開に盛り上がりトレンド入りした。
実写版の演者の中川氏は茨城県出身であるが、以前の出演作にて俳優の沢村一樹氏(鹿児島県出身)の少年期や戊辰戦争に志願した少年藩士を演じており、後者に至っては鯉登と同じ自顕流を劇中で披露した経験もある。
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過去と疑念(ネタバレ注意)
幼い頃は鹿児島で日本海軍要人の息子として裕福な家庭に育ち、海城学校(海軍の予備校)に進学後も鼻持ちならないドラ息子として悪名を馳せていた。
14歳の時に地元を訪れた鶴見中尉と遭遇。かつて年の離れた海軍少尉の兄が日清戦争の黄海海戦で惨死したトラウマから酷い船酔いをするようになり、以来負い目を感じてやさぐれていること、そして父親もそれ以来疎遠になり己を顧みなくなったことを彼に吐露する。
2年後、函館に移住するが、ある日ロシア軍関係者と思わしき誘拐犯に拉致され、自身と引き換えに父・鯉登少将(当時は大佐)の監督する函館要塞と駆逐艦の破壊を要求される。しかし陸軍特務機関から招聘された鶴見の活躍によって無事救助され、また鯉登少将も自ら息子を助けに乗り込んできたことで、疎遠になっていた父子のわだかまりは解消し、絆が深まることとなった。
以降は父子共々鶴見との縁を深め、自身を英雄的に救ってくれた鶴見を熱烈に信奉するようになり、彼に尽くすため海軍ではなく陸軍士官の道を志すこととなる。
だが樺太派遣の後、かつて誘拐犯が口にしていた「バルチョーナク」(ボンボン)というロシア語を、別の人物からも偶然耳にした事で、彼の中に疑念が生ずる。その疑念とは誘拐事件そのものが海軍の要職にある父を引き入れるための鶴見の自作自演であり、実行犯の中に尾形と月島軍曹も居たのではないかというものであった。
この疑惑を抱いた時は鶴見中尉とは別行動であったため、月島軍曹を問い詰めるのだが、はぐらかすばかりの彼を相手にしても埒が明かないと判断し、鶴見中尉と合流後、父の前で改めて問うと発言してその場を後にする。
なお、このエピソードはアニメ4期で映像化されたが、映像化にあたり声がついたせいで誘拐犯の正体が視聴者にはバレバレになってしまった。
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ネタバレ注意
そうしてその場を離れる瞬間、月島がこぼした「あなたたちは救われたじゃないですか」という自供じみた発言に足を止める。
鶴見中尉の自作自演によって彼の忠実な兵士に変えられたのは、鯉登だけでなく月島もそうだ、と説明された。鯉登はしばらく追い詰められたような表情を浮かべたのちに「鶴見中尉殿スゴ~~~~イ!!」といつもの調子で彼を賛美するが、かなり無理をしている表情を浮かべており、目に至っては虚空を見つめながら光を失っている始末。
この後に合流した鶴見中尉に対して、早口の薩摩弁になってしまう癖が無くなっており、彼の心が鶴見中尉から離れていることが覘える。
その無理は彼の太刀筋にも表れており、最終決戦の際には永倉新八に「うぬが太刀筋、未熟なり!」と断じられ、土方歳三に「死人になれていない」と看破される。
強敵・土方を目の前に、命をかけても勝てる相手ではないが、それでも守るべきものがあると自覚した鯉登は自顕流を持って土方へ斬りかかる。跳ね上がった銃剣に顔を斬られるが、意に介さず唐竹割りを叩き込む。しかし自顕流の一太刀はあまりに強く、業物の兼定とぶつかった鯉登の軍刀は折れてしまう。それでもまったく引かずに押し込み続け、遂にその刃を土方の頭蓋へめり込ませた。
最終回では、のちに中将に昇進し第七師団の最後の師団長となったことが語られている。その際、月島を右腕としてヘッドハンティングした。また、最終決戦時での土方との死闘により、左頬に刀傷が残っている。
余談だが、実際の日本帝国陸軍第七師団で最後の師団長となった人物の苗字も「鯉登」である(ただし名前が違ったり、1891年の春生まれで出身県も愛媛県である等、異なる部分も多い)。