「俺は同じ国から来た人間として責任を感じる」
「最後まで見届けたい」
概要
プロフィール
樺太出身のアイヌ。アシㇼパの父・ウイルクと一緒に樺太から北海道に移住してきた為、アシㇼパとは家族ぐるみの付き合いである。濃いヒゲと樺太アイヌ独特の髪型がトレードマーク(ちなみにこのヒゲは剃ってもすぐに生えてくる模様)。
アシㇼパからは「キロランケニㇱパ」、白石からは「キロちゃん」と呼ばれる。
日露戦争帰りの元工兵であり、火薬の扱いに長けている。第七師団に所属していたが、鶴見中尉の部隊ではない。好物は魚で、特に川魚を好む。
小さい頃から馬に乗っていた為、競馬に出場する事になった際にも1位をとる程の馬術を持つ。それほどの馬好き故に馬肉は絶対に口にしない(家永カノ特製の「なんこ鍋」が「馬モツの味噌煮」だと知らずに口にした際は、材料を聞かされた途端に吐き出した)。
網走監獄から脱走した刺青の囚人の事を知っており、本人の意思もあって杉元佐一一派に加わる事になるが、一方でその言動には不審な点も少なくなく、謎の多い人物でもある。
既婚者であり、本人の好みであるぽっちゃり系の妻と二人の子供がいる。
作中での活躍
川でイトウを獲っていた所を、同じく魚を獲る為に川へやって来た杉元達と出会う。しかしそれは偶然ではなく、アシㇼパに「のっぺら坊が外の仲間の元に刺青の脱獄囚達を向かわせるための仕掛けとして、本来ウイルクしか知らないはずの彼女の和名『小蝶辺明日子』を囚人達に伝えていた」こと、つまり「のっぺら坊=ウイルク」であることを彼女に明かすためであった。
杉元一派に加わって以降は、手製の手榴弾や持ち前のアイヌの知識などを駆使し、何かと杉元達を援護している。
だが一方で、当初から頼もしくもきな臭い部分が見受けられ、杉元からは「まだ何か秘密を隠しているのではないか」と内心睨まれている。
後に杉元達と合流したインカラマッは、鶴見中尉から得た情報により「金塊強奪時にウイルクはキロランケによって殺されており、のっぺら坊は彼の仲間に過ぎない」と名指しで彼を裏切り者扱いしているが、一方の彼もそれを「(杉元一派内での)仲間割れを狙った鶴見中尉の策略に過ぎない」と一蹴しており、彼等は互いに不信感を抱えたまま網走監獄での決戦に赴くこととなった。
名前について
アイヌ語で「キロ=ちから」、「ランケ=下す」という意味で、キロランケとは「下半身が力強い」という意味となる。これはアイヌ語を監修している中川裕氏の命名。
関連タグ
※ここから先は14巻以降のネタバレを含みます
「何とかしないと・・・俺たちは大国に飲み込まれてしまう・・・・・・」
14巻以降ネタバレ
網走監獄でののっぺら坊を巡る戦いの最中、杉元に金塊の情報が渡るのを阻止すべく、密かに手を組んでいた尾形に合図してのっぺら坊(ウイルク)を狙撃させ殺害(これにより結果的にインカラマッの疑いが現実のものとなってしまった)。さらに、偶然その様を目撃し問い詰めようとしてきたインカラマッを偶発的にマキリ(小刀)で刺して重傷を負わせる。
その後は尾形と共にアシㇼパと白石を伴って樺太へと渡り、アシㇼパの持つ金塊に繋がる記憶を呼び覚まし、また古い仲間と合流する為に行動を開始。
だが、アシㇼパを奪われた杉元、およびインカラマッを殺されかけた谷垣達の激しい怒りを買ったキロランケは、鶴見中尉と手を組んだ彼等の猛追を受けることとなるのだった。
※なお余談ではあるが、去る第81話にレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』をパロディしたコマ(杉元達が土方一派との共闘を決め、共に食卓を囲むシーン)があったのだが、その際にキロランケの座る位置が原作作品におけるユダの位置と同じであったため、その時点で彼が後に杉元達を裏切ることを予測していた勘のいい読者も少なくなかった模様。
キロランケの正体
160話で驚愕の経歴が明かされた。
それは、かつてウイルクと共にロシア皇帝・アレクサンドル2世を僅か十代半ばで爆殺したテロリスト。本名は『ユルバルス』であり樺太アイヌの血も引くタタール人であることが判明。
帝政に反目するパルチザンの一派であり、革命派の英雄的存在。
皇帝暗殺事件の首謀者だったソフィア・ゴールデンハンドとは現在も密かに連絡を取り合っており、樺太のアレクサンドロフスクサハリンスキー(亜港)監獄に収監中の彼女およびその仲間達の脱獄を手引きし、アシㇼパを彼女に引き合わせるべく行動している。
現状、彼の真の目的については判然としないものの、金塊を各地の同志達の解放や軍資金に当てることは容易に察しが付く。
アシㇼパへの対応も、ウイルクの「山で潜伏し戦えるよう育てた」との言と、ウイルクがロシアで反勢力活動にかかわっていたことが示唆されているため、広告塔としての利用が懸念されている。
ちなみに「ユルバルス」とは、タタール人の名前で「虎」を意味する(余談ではあるが、前述のように作品のアイヌ語監修をしている中川裕氏は「野田先生から「キロランケのタタール語名も命名してほしい」と依頼されたもののそちらに関しては全くの専門外だったため、まずは辞書を引いて良さそうな単語を探した結果「獅子」を意味する「アルスラーン」という単語が目についたが、こちらは『アルスラーン戦記』などで有名だし、『ナルニア国物語』などで使われている同語源の「アスラン」も使い古されている感じがしたのでどうかなと思った」「すると、野田先生から「ライオンよりも虎がいい」と言われたので調べたところ「ユルバルス」の単語が出てきたので名乗らせたら、そちらの方がずっと格好良かった。また、ウイルクが狼なので「虎と狼」というぴったりの相棒になった」と後に語っている)。
結末
※ここから先は19巻以降のネタバレを含みます
亜港監獄から助け出したソフィアと合流後、流氷を渡ってユーラシア大陸へ向かう途中、猛吹雪に見舞われたキロランケ一行は分断され、その隙を突いて尾形はアシㇼパを独断で連れ去ろうとする。
その混乱の最中、ついに杉元達一行が彼を捕捉、怒りに燃える谷垣や鯉登少尉との乱戦の末に倒れる(その際、彼に致命傷を負わせたのは、皮肉にもかつて自身がインカラマッを刺したマキリだった)。
死の直前、杉元と合流したアシㇼパと再会。彼女が金塊の謎を解くための失った記憶を無事取り戻せたことを知ると、樺太への旅が決して無駄ではなかったことを悟り、彼女にすべてを託して流氷原の上で息絶えた。
息絶えたキロランケは、白石によって遺体にアムール川の氷を積み上げられ氷葬される。
その際に白石は「キロちゃんは真面目過ぎた」と言った。
結局、キロランケがアシㇼパと共に果たそうとしていた目的が何なのか、彼の口から直接明確に語られることは最後まで無かった。
その真相を知っているのは、猛吹雪の中ではぐれてしまったソフィアだけだと思われる。
ソフィアは杉元一行が去った後で氷葬されたキロランケの顔だけ氷を取り除き、彼に別れを告げてから、墓標に彼が使っていたマキリを置き、去っていった。
第267話~第269話にて、キロランケの最終目標とウイルク殺害の理由が判明した。
当初の目標は極東ロシア・樺太島・北海道を1つの国として独立させ「極東連邦」を築き上げることだった。
しかし、ウイルクは北海道だけで独立して守りを固めた方が現実的だと計画を変更した。
本来救うべきだった自分たちの民族を裏切る判断に、キロランケは激昂した。
「お前は北海道に愛する家族ができて ここが故郷になってしまったんだ!」
「ソフィアは!!いまもロシアで俺たちを待っているのにッ」
どこまでも合理的だったはずのウイルクは、アシㇼパを授かったことで変わってしまった。
そう判断したキロランケは、ウイルクの名の由来となった「弱った自分を殺してもらうために仲間を呼び、群れに不要という理由で仲間に殺される合理的で気高い狼」に準えて、ウイルクを殺害した。
「ウイルクは群れの中の弱くなった狼だ」
「かつてウイルクが憧れていたはずの狼のやり方で 彼を殺してあげた」