「残酷だからと迷えば…私たちは飢えてしまう」
「弱いものは負けて食われる」
概要
プロフィール
漫画「ゴールデンカムイ」の登場人物。
アシㇼパの父。樺太アイヌの母とポーランド人の父のハーフ。南樺太で生まれ育った。顔に大きな十時の傷を負っている。
「アイヌを迫害する和人に対抗する為の軍資金として密かに集められた金塊を移送中、その強奪のためのっぺら坊によって殺害された7人のアイヌのうちの一人」とされており、彼の敵討ちこそがアシㇼパが杉元に協力するきっかけでもあった。
アシㇼパにアイヌや狩猟の知識を教えた人物で、彼女の青い目は彼から引き継いだものである。
アイヌが金塊を集めた由来、それを巡る争奪戦の鍵を握る重要人物であり、物語が進むにつれ少しずつその過去が解き明かされる。
※ここから先は原作のネタバレを含みます
作中での活躍
アシㇼパの思い出
アシㇼパは彼を「アチャ(アイヌ語で『お父さん』)」と呼んでいた。物心つく前に母を亡くしたアシㇼパにとって、ウイルクはかけがえのない存在であり、生き方のすべてはウイルクから教わった。
本来アイヌの女性が行うような家事ではなく、男が行う狩猟術、サバイバル術を教えられた事が今の強くたくましいアシㇼパを作ったといえる。
キロランケとインカラマッの話
ウイルクと共に南樺太からやってきたという彼の親友キロランケの口から、殺されたとされていたウイルクは実は死んでおらず、網走監獄に監禁されたのっぺら坊こそが他ならぬウイルク本人であると語られる。
その一方で、若い頃ウイルクと共に旅をしたというインカラマッは、それはキロランケがアシㇼパを騙す為の嘘であり、キロランケがウイルクを殺した張本人で、のっぺら坊はその仲間であると言う。
どちらの根拠も決定的とは言えず、真相を確かめるべく杉元・アシㇼパ達は網走監獄へと向かい、のっぺら坊に直接会う事を試みる。
のっぺら坊の正体
網走監獄でのっぺら坊を見つけた杉元は、その正体がやはりウイルクであったと知る。本人によると、アイヌの未来を導く存在になるべく愛娘アシㇼパを山に潜伏して戦い続けられるほどタフな戦士として育て上げ、金塊も彼女の手に託されるよう、囚人の刺青人皮を用いた壮大な暗号仕掛けを仕組んだ模様(これを聞いた杉元は、彼女に過酷な運命を強いたことに対して激昂している)。
だが一方、かつて金塊を移送中に仲間のアイヌ達を殺して強奪したのは、彼ではなく別の人物の仕業であるという。
杉元にすべての真実を語ろうとした矢先、頭を狙撃され死亡した。
キロランケが語る過去
アシㇼパに暗号を解く鍵を思い出させる為に、キロランケはウイルクの故郷である南樺太にアシㇼパを連れていく。その旅で彼はウイルクから聞いた過去を少しずつアシㇼパに語る。
ウイルクはキロランケとともにロシア皇帝アレクサンドル2世を爆殺したテロリストであった。
帝政に反目するパルチザンの一派だった。キロランケを狙うロシア勢力と衝突した事で、彼ら二人が革命派の英雄的存在で帝政ロシアから指名手配されていると知る。
ソフィアが知る過去
皇帝暗殺事件の首謀者にして彼の同志でもあったソフィアによると、アイヌを始めとする北方の諸民族や大陸側の少数民族達が大国から弾圧・併合されてゆく様を憂慮し、彼等と協力体制を築き上げ、最終的には樺太・北海道までを含めた極東連邦国家を樹立することを夢見ていたらしい。
彼は目的ために最短の道をたどれる非凡な合理性を持っており、その才能で卓越した指導力を発揮していた。しかしそれは同時に、およそ感情がある人間とは思えないほどの残酷な判断を一切躊躇なく下せる人間でもあった。
キロランケもかつてはそんな彼に全幅の信頼を寄せていたが、曰く「あいつ(ウィルク)は変わってしまった」らしく、それが後に二人を分かつ要因となった。
「ウイルク」とは、ポーランド語で「狼」を意味し、ウイルクが幼い頃に 狼の強さ その非情さも含めた生き方に感心を示した事を由来に名付けられた。その話を聞いたアシリパは心の底に押し込めていたアチャとの記憶を思い出す・・・。
アシㇼパが思い出した記憶
彼のアイヌ語名は「ホロケウオㇱコニ」。
「狼に追いつく」という意味の言葉で、かつて北海道アイヌである妻(アシㇼパの母親)に自身の名「ウイルク」の由来を明かした際に付けてもらったものらしい。
この名前を知っているのはアシㇼパのみであり、かつては家族を失ったショックから記憶の奥底に封印されていたものの、樺太でのソフィアとの会話をきっかけで思い出した。
そしてこの記憶こそ、金塊の在処を示した刺青の暗号を解く鍵であると彼女は確信している。
鶴見中尉の話
アイヌの金塊の在処を独自に調べていた鶴見中尉は、調査の中で金塊を集めたアイヌの中にウイルクがいる事を知る。ウイルクがパルチザンの一派と知らせずにアイヌに溶け込んでいた事に目をつけた鶴見は、その情報を流す事によってアイヌ一派の仲間割れを図った。
その目論見通り、疑心暗鬼に陥ったアイヌ達はウイルクの処遇を巡って仲間内で殺し合い全滅してしまう。その築かれた死体の中にはウイルクの切断された頭もあった。しかしそれは、アイヌの頭を落とし、顔の皮を剥いで頭部を入れ替え、自らも顔の皮を剥いで他者の頭部にかぶせる事でウイルクが自らの死を偽装した工作だった。
工作を見破った鶴見はウイルクを追跡し、逃走の果てにウイルクは近くで工作業を行っていた網走監獄囚人とその看守の元に逃げ込む。金塊の情報を知っていた犬童四郎助は彼を監獄へと収容した。
こうして『網走監獄ののっぺら坊』が生まれたのだった。
またウイルクは北海道に移住して家族を設けて以降、かつて夢見た「樺太、北海道を含めた連合国家」から「北海道のみを独立させた共和国」へと守備範囲を狭め、現実的ではあるが実質的にロシア国内の少数民族を見捨てる選択に至る。キロランケはそれに反発するが、ウイルクの障害となる自分をウイルクが殺さなかったことで、彼を「群れの中で弱くなった狼」と見限る。かつて彼が憧れた余分な優しさのない狼のやり方で彼の役割を終わらせたのだった……
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優れた頭脳と冷酷なまでの合理主義、致命的な弱さを持ち合わせる指導者繋がり。またダンブルドアの長いフルネームの中には気高い狼の意味もある。数カ月間交流した人物の元での混戦により大きな禍根となる殺人と出くわし、ダンブルドアがその後、後悔によって弱点が生まれ罪悪感の結果として致命傷を負うのに対し、ウイルクはその後、罪の意識はおろか自分のしたことすら知らずに家庭を持ったことで精彩を欠き、長谷川やキロランケによって自分の行いのツケを払う事となったため、似た者同士でも辿った道は対極的である。