解説
「桜肉」あるいは「蹴飛ばし」と称されることもある。
日本における馬肉は生産量、消費量ともに熊本県がトップであり、それを大きく離して福島県、青森県と続く。
食肉用途での生産コストでは豚肉や牛肉に勝てないが、役目を終えた競走馬や使役馬を食用に加工することもある。
現在の競走馬は予後不良となった場合、診断後に即安楽死措置が行われている。競走馬としての適性がまるでなく、繁殖用や乗馬としても売れなかった馬、それらの役目も終えた馬などが肥育施設に廻された後に食用や加工品用になったりする。
また馬は平均体温が40度と高く、反芻しない動物であるため菌や寄生虫が付きにくいこともあり、食中毒の心配は少ない為、後述のように生で食べる事が出来る。
※サルコシスティス・フェアリーという寄生虫もいることがあるが、症状が軽い上に-20度で48時間保存することで死滅する。
刺身(馬刺し/レバ刺し)で使われる部位は高価で取引されるが、大抵は安価なソーセージの繋ぎやコンビーフの嵩増し(その場合「ニューコンミート」と表記される)、更にはペットフードに加工されることもある。動物園でもトラやライオンなどの肉食獣に与える肉として利用される。
前述の通り競走馬が食肉にされることもあるが、競技用に飼育されているため肉が硬く質が悪いこともあって割合としてはごく一部で、馬刺しなどに利用される馬肉は海外から輸入した馬を最初から食用目的で肥育したものが大半である。
なお、肉が硬い競走馬でも、運動量を減らし餌を沢山与えて太らせる。という同じ様に肥育すれば食肉にする事は可能なようではあるが、後から食用に転じて肥育するにしてもコストが悪いようだ。
このため乗馬や競馬の愛好者は上記食品を忌避することが多い(だが、一方で日本だけでも年間数千頭は産まれる全ての馬を功労馬として生涯にわたって飼育するなど事実上、不可能であり、産業動物として馬を屠殺・加工すること無くしては、乗馬・競馬関連の産業もまた成り立たない、というのも確固とした事実である。馬の愛好者もそれは理解はしているし、馬肉の廃止を訴えているわけではない。只、感情的に忌避しないことが難しいのである)。
世界的には韓国(主に済州島)、フランスを始めイタリア、スペイン、ハンガリーなど馬肉食文化が根付いている国がある一方、アメリカ合衆国やイギリスや中国では馬肉食は一般に忌避される。
(カウボーイや騎士達にとっては相棒・戦友という認識が強い為、馬肉食という行為は人間でいう所のカニバリズムに等しい行為であたるそうだ。無論、アメリカやイギリス全土における全ての認識がこの限りではない)
また、ユダヤ教徒は「蹄が割れておらず反芻もしない」馬は戒律上の理由で食用にしない。
馬肉が「桜肉」と呼ばれる語源
古くから馬肉は桜肉と呼ばれているが、その語源には、
- 江戸時代など獣肉を公に食べることができなかった時代に「桜」と置き換えて呼ぶようになった説。猪を「牡丹」、鹿を「紅葉」とも呼ぶ類例もある。
- 馬が餌をたくさん食べて冬を越し、一番美味しいのが桜の咲く時期だった事から旬にちなんだ説
- 馬肉の切り身が桜の花びらを想像させたり、馬肉に含まれる鉄分が空気に触れて桜色になることから呼ばれたなど、色や見た目に由来する説
- 千葉県佐倉市に幕府直轄の牧場があり、江戸時代の人々が「馬といえば佐倉」と連想した説
- 文明開化の時代、肉価格が急騰した際「牛」の字に似た「午(うま)」を使って「午肉あります」の看板を掲げ、牛肉の代用に安価な馬肉を販売する者が出たことから「ごまかし肉」の意味で”サクラ”と呼ばれるようになった説
- 坂本竜馬が高杉晋作の宴で歌われた「咲いた桜になぜ駒つなぐ、駒が勇めな花が散る」という歌の中にある「駒=馬に桜」というフレーズがひとつの言葉になり「馬肉=桜肉」と呼ばれた説。
と諸説あり、馬肉文化の歴史や多くの人に親しまれていた事が感じられる。
馬肉の栄養価
馬肉は他の肉と比べると栄養が非常に豊富であり、滋養強壮や薬膳料理に用いられる。
店で食べると馬肉は高価なイメージがあるが、業務スーパーならば比較的安価な馬刺しを取り扱っている店舗もあるので、近くにあれば探してみるのいいだろう。
- 低カロリー
100グラムあたり約110kcal。
お肉の中で低カロリーで代表的な鶏肉のササミと同じくらいで、牛肉や豚肉の半分以下。
カロリー的にはかなり優秀で美容食に最適、「お肉を多く食べたいけれどカロリーが気になる」という方に馬肉は救世主のような存在。
馬肉は生食が可能で、料理の幅も広いことから、体重に気を遣うアスリートやボディビルダー、食事制限をするダイエット中の人にも嬉しい食材。
高価ではあるが、うまく食事に織り混ぜたい所。
100gあたり20.1g
肉類であるが故に豊富であり、牛肉が19.0g、豚肉が17.0gであることと比較すると、同じ赤身肉の牛肉よりも馬肉の方が上回っていることがわかる。
タンパク質は筋肉や骨を始めとする体の元となる栄養素であり、しかも低カロリーでありながら良質なタンパク質を豊富に含んでいるので、筋トレをする人にはぴったりの食材。
更には保温効果や血管を強くするペプチドが多く含まれる為
血管を拡張し血圧を下げる効果もあるで、高血圧の人の普段の食事にも取り入れたい所。
100gあたり11mg。
牛肉豚肉の2倍以上のカルシウムが含まれている。歯や骨を維持するために欠かせないカルシウムは精神のバランスを整える。
生理によるイライラや骨粗しょう症が心配な女性や、身体が次第に大きくなる成長期の中高生にも馬肉はオススメしたい食材と言える。
100gあたり4.3mg。
ほうれん草やひじきよりも多く、牛肉豚肉の2~3倍以上、鶏肉の10倍と肉類の中でも多く鉄分が含まれている。
魚介類にも豊富に含まれているが苦手ならば馬肉を食べよう。
鉄分は造血作用を促し、貧血を防ぐ働きがあると言われており、他にも疲労回復や免疫力向上を促進させる効果も期待できる。
鉄分は汗や尿とともに体の外へ排出されるので、毎日意識的に鉄分を摂取することが大事だか、現代の食生活では鉄不足になりやすい。
特に妊娠中の女性や成長期の子供・そして大量に汗をかくアスリートは必要な鉄分の量も多くなるため、出来れば毎日しっかりと馬肉を食べよう。
- 低脂質
100gあたり2.5g。
馬肉に含まれる脂質量は牛肉や豚肉の5分の1以下である。ちなみに一番脂質が低いのは鶏胸肉だが、他のお肉と比べても馬肉は低い水準である(なおかつ他の栄養素が豊富なため、やはり馬肉が優秀)。
また馬肉に含まれる脂質には、健康に欠かせない必須脂肪酸(リノール酸、α-リノレン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸)が多く含まれており、これは人の体内では造ることができない善玉コレステロールである。
体内にいる悪玉コレステロールの働きの抑制し血液循環を良くする効果もあり、過酸化脂質の発生の予防効果が高い。そのため馬肉の脂質を摂取しても体脂肪になりにくいといわれる。
発育不良や動脈硬化、心筋梗塞などの予防効果も期待できるので、ぜひバ肉でこの栄養をとってほしい。
ミネラルは牛肉や豚肉の3倍。
多種のビタミン類が豚肉の3倍、牛肉の20倍も含まれている。
馬肉に含まれるビタミンは、皮膚を美しく保ち、病気の回復を助ける「ビタミンA」、糖質の代謝を促進するゆえに、肥満防止やダイエットにつながる「ビタミンB1」、貧血、頭痛、めまいなどを防止する「ビタミンB12」など、その他にもビタミンやミネラルがバランスよく含まれる。
- グリコーゲン
100gあたり2,290mg。
牛肉と豚肉の5倍以上のグリコーゲンが含まれている。
グリコーゲンとはブドウ糖が繋がって構成された多糖類の一種で、運動時のエネルギー源となる。
疲労回復を促進するといわれるグリコーゲンが非常に多く含まれるのも馬肉の魅力。
グリコーゲンには疲労を回復する効果だけでなく、集中力を高める効果や血糖値を一定に保つ効果、更にはスタミナ増強や肝臓の解毒の働きを高める作用も期待できる。
疲れがたまっている方や疲れが取れないと嘆いている方、そしてエネルギーの消耗が激しいアスリートにもやはり馬肉はうってつけの食材だと言えるだろう。
馬肉料理
言わずと知れた熊本県の郷土料理、馬肉と言えば馬刺しな人も多いはず。
タテガミ部分の肉や脂、レバーなど馬肉ならではの部位も魅力の一つである。
前述したように、食中毒の危険性はほぼ無いため他の肉と違ってレバ刺しも安全に食べられる。
おろしニンニク(熊本流)やおろしショウガ(信州流)、刻みネギやオニオンスライスなどを薬味に甘口の醤油につけて食べるのが一般的であるが、レバ刺身に用いられるごま油+岩塩につけて食べる所もある。
福島県会津地方では辛味噌(会津流)をニンニクか出汁醤油で溶いて食べるようだ。
他には、馬刺を細かく刻んでコチュジャン、ごま油、醤油、砂糖で和え黄身を乗せた桜ユッケなどもある。
また、炙りや生の馬刺しを乗せた寿司としても親しまれているようだ。
そのまま刺身として食べても美味しいが、サラダに和えたりカルパッチョに仕上げたりと、洋風お料理のバリエーションなど多彩なお料理と楽しみ方で女性の方にも大人気の食材の一つになったとも言われている。
馬肉(桜肉)を味噌仕立てで煮込んてすき焼きのようにして食べる鍋料理。地域によってはしゃぶしゃぶのようにして食べる所も。
明治初期から続く東京の伝統料理であり、吉原といった色街の近くに多かった。
つまりは精力もつく料理。
また、北海道と東北地方では馬の腸等のもつを煮込んだなんこ鍋と言う郷土料理もある。味付けは桜鍋と同じ。
- 馬焼肉
言うまでもなく馬肉の焼肉。
馬肉は当然生でも食べられる食材なので、焼き加減はレアでも不安は少ない。
ジューシーかつ、低カロリー低脂肪なので、食べ過ぎても困らない夢のような焼肉である。
馬肉を扱う馬肉料理店や酒場によっては、ステーキだったり焼いた馬肉を串焼きにして出す所もある。
- 馬肉ハンバーグ
その名の通り馬肉のハンバーグ。
上記の焼肉と同じ様に、低脂肪でヘルシー仕立てに馬肉の美味しさとボリュームを兼ね揃えている。
主に馬肉専門店などで供されることも。
そして馬肉でお馴染みの熊本県では、馬肉ハンバーグをバンズで挟んだハンバーガーとしてもご当地グルメで親しまれている。
- 馬肉メンチカツ
ミンチにした馬肉にみじん切りにした玉葱等を練って成形し、パン粉をつけて油で揚げた物。
サクサクでジューシ、そして言うまでもなくヘルシー。
馬肉専門店の他、ネットの通販等で冷凍食品として販売されている。
また、同じような料理で馬肉と一緒にじゃがいもを混ぜたコロッケもある。基本コロッケはじゃがいもの割合が多いのだが、馬肉コロッケの場合は馬肉の方が比率が高い。
- 馬肉ラーメン
馬肉のチャーシューこと焼馬(チャーマ)が具材に入ったラーメン。
醤油ベースと煮干しを使ってる昔ながらの中華そばが多いが、やはり店によっては出汁が異なる。
とくに長井市は古くから農耕用の馬が多く、年老いて働けなくなった馬の肉を食する文化があったとされる。
そして、数少ないながらも、日本各地には豚骨ならぬ馬の骨を煮込んだスープを使った「馬骨ラーメン」なるものも存在する。
馬肉が用いられる事で有名な山梨県富士吉田市の「吉田のうどん」
最近は東京にも進出しているが、富士吉田市内でも60店舗あるようだ。
うどんは噛み応えを重視している為、とにかく固い麺であり、その暴力的とも言える固さは必然的に咀嚼数を増加させ、並盛りでもおなかいっぱいになることもしばしば。
多くの店は醤油と味噌で味付けした汁が好まれており。出汁は煮干しや椎茸が使われているものが多い。
吉田のうどんの付け合わせには、馬肉と一緒に茹でたキャベツを入れる店が多い。
キャベツは固い麺に顎が疲れた時の箸休めにも丁度良く、
馬肉は甘辛く煮た歯ごたえのあるもので、これも店により千差万別。
ちなみによほどの例外がない限り、吉田のうどんで肉といったらそれはまず間違いなく馬肉である。
- 馬肉オムライス
東京都港区六本木にある「鉄板さくら 田谷」では、鉄板で焼いたフワトロ半熟たまこの下に、馬肉のそぼろを混ぜた根菜のごはんが添えられた一風変わったオムライスが食べられる。
- 馬丼(馬肉丼)
お馴染み熊本県の名物料理、その種類は一定ではなく、牛丼と同じ様に馬肉を玉ネギ等と一緒に醤油味で煮込んだ物だったり、焼いた馬肉を焼き肉のタレ等で味付けしたスタミナ丼もあり、ライスの上に馬刺しを盛った物等々…桜ユッケ丼も同じように呼称される事も。
- 馬肉の天ぷら
勿論馬肉を天ぷらにした物だが、こちらはあまり馴染みがないであろう料理。
熊本の料理店『馬肉郷土料理けんぞう』ではメニューに「馬ホルモンの天ぷら」がある。
グニグニした食感でビールのつまみに合うだろう。
また、都内某所の会員制馬肉料理店『ローストホース』では馬肉天ぷらは定番の一つであり、時期によって出される肉の部位が変わり、シンプルに馬肉だけの天ぷらだったりホタテや生姜などの具材を馬肉に詰めて天ぷらにする物もあるようだ。
- 馬肉汁
お祭りやイベント等でも振る舞われ、学校給食の献立にも出るほど。
キャベツ、糸こんにゃく、ごぼう等の素朴な風味とニンニクが効いた味噌味に馬肉の出汁がマッチして、とっても体が温まる鍋(汁物)。「かやきせんべい」を入れても美味しい。
- 馬まん
青森県五所川原市金木町の名産品は勿論馬肉。その金木町で2008年11月29日、いい肉の日にちなんで誕生したご当地グルメが馬まんであり。中華まんの生地の中に、馬肉を贅沢に使った馬肉鍋の具を詰める。種類は、すき焼き風の「しょうゆ味」、伝統ある味噌仕立ての「味噌味」、初心者でもトライしやすい「カレー味」の3種。いずれもこの地方で馬肉鍋に使用される高菜が入り、味噌は地元の奴味噌を使用している。馬肉初心者でも気軽に味わえると海外の観光客にも評判を呼んでいる。
- 馬カレーライス
言うまでもなく馬肉の入ったカレーライス。
熊本県ではレトルトカレーになる程の当地グルメだが、全国の馬肉専門店でも割りと食べられる。(そしてレトルトカレーも山形県長井市では『うまっ馬肉カレー』なる商品名で売られている)
熊本県山鹿市では、この馬カレーの事を鉄分・コラーゲン豊富で健康によい馬肉と山鹿の健康祈願の象徴「薬師堂」をかけ、「薬師馬カレー」と名付けられている。
カレーに使う肉は主に馬スジ肉だが、人や地域によっては細切りにした馬肉を使ったり、家庭では余った馬刺しに長時間火を通してカレーの鍋にぶち込んだりする。
誰でもすぐ簡単にできる創作料理。ふわふわの中に、コリコリとしたホルモンは、あまり食べた事ある人はいないだろう。
馬ホルモンをニンニクで炒め、塩、こしょうで味付けし、市販のお好み焼きミックスにたまご、水、すりおろした山芋を入れる。
そして炒めたホルモン、キャベツ、長ネギ、刻み紅生姜など、お好みで入れ、よく混ぜる。
後は焼いて、中までしっかり火が通ったら出来上がり
余った馬刺しでも代用可能なので、生食が苦手な人は是非作ってみるのもいいだろう。
- 馬肉ピッツァ
ピザの具に馬肉が入った料理。
生ハム、サラミ、スジ肉等といった燻製にした馬肉が良く用いられる。
- 馬肉パスタ
馬肉のパスタ料理
馬肉専門店では、主にミンチにした馬肉を使ってミートソースやボロネーゼで提供している事が多い
- おたぐり
薬味に刻みネギや唐辛子を添えれば、日本酒に合う最高のおつまみだ。
ただし、処理が行き渡ってなかったら独特の臭みが残る。
- 馬肉おにぎり
馬肉専門店では、主に馬肉味噌を塗り込んだ焼きおにぎりとして提供している事が多い。
特に『馬肉専門店たてがみ 東岡崎店』では、焼きおにぎりの上に桜ユッケと黄身を乗せた物や、馬肉で巻いたおにぎりの上にイクラを散りばめたお洒落なおにぎりがメニューにある。
また、『道の駅 阿蘇』で販売している「馬玉おにぎり」は。馬肉の炊き込みご飯に味玉が1個まるごと入っており、味も大きさもインパクトが大きく阿蘇名物にもなっている。
- 馬肉のからあげ
馬肉を使った唐揚げだか、鶏肉とは違いが焼き加減がレアな物を提供する店か多い
中をレアにすることでジューシーな馬のうまみを味わえる。
- 馬肉シチュー
たっぷり入った野菜の旨味と長時間煮込んだソースが柔らかい馬肉との相性は抜群。 バケットやトーストに付けて食べても美味い。
ステーキの一種。
馬肉を細かくみじん切りにし、オリーブオイル、食塩、コショウで味付けし、タマネギ、ニンニク、ケッパー、ピクルスのみじん切りなどの薬味と卵黄を添えた料理。熱をかけて加工することなく、生肉のまま、全体が均一になるように混ぜて食べる。
見た目は洋風のユッケのような物だが、それよりも更に微塵切りにする。(そして焼けばハンバーグになる)
元はモンゴル系の騎馬民族タタール人が食べていた生肉料理が原型とされており、堅くて食べにくい乗用馬の肉を食べやすくする為に、刀で微塵切りにし、馬に踏ませる事で肉の繊維を柔らかくしてから、上記の様な味付けをして食べる食習慣があったとされる。
今では牛肉やマグロ等の赤身が使われてているタルタルステーキだか、起源はこのタタール人たちの馬肉料理からだと言われている。
- さいぼし
民間療法
馬肉・馬油(※下記で解説)には身体を冷やす解熱効果があるとされ、痛めた筋や、打撲・捻挫などの患部に馬肉を貼り付けるという民間療法が今も存在するという。
漫画『ゴルゴ13』の140巻に収録されたエピソード『静かなる草原』にて、主人公のデューク・東郷が敵(傭兵の一団)に追われ、とある牧場の息子が大事に飼っている馬を盗み逃げるという話があり、そこで銃弾?を受け馬が走れなくなると、馬に止めを刺して足の一部の肉を切り取った。
その時は東郷自身も予期せぬ負傷をしていたので、その剥ぎ取った馬肉を湿布薬として自分の怪我の部分に張って対処した…というエピソードがある(後に匿名で牧場の借金を肩代わりする&馬を贈呈する形で詫びを入れている)。
その他の作品に置ける馬肉で治療したエピソード↓。
- アニメ『巨人の星』第111話『命がけのキャッチ』の回では、星飛雄馬の千本投球を受け続けて、腫れ上がった左手を伴宙太がチームに隠しているのを、中尾二軍監督が見抜き、伴の左手の平を馬肉で湿布する場面がある。
- 漫画『ゴールデンカムイ』20話『喰い違い』では、杉元佐一が敵陣のアジトから逃走する時に奪った軍馬を証拠隠滅の為白石由竹が射殺し、その馬を解体している時にアシリパが、敵の拷問を受け酷く腫れ上がってた杉元の顔に馬肉を(投げ付けて)貼り付けた(残りの肉は桜鍋にして皆で美味しく頂いた)。
また、著名な力士やスポーツ選手も、馬肉による湿布を使ったとされる逸話が残っている。
- 1936年、日本プロ野球チーム・読売ジャイアンツの藤本定義監督は、登板が続いて肩を痛めたエース沢村栄治の肩に馬肉をあてさせた。
- 福岡ダイエーホークスの王貞治監督が足の打撲で途中交代した秋山幸二に湿布のために馬肉を贈ったところ、彼は「これを食べて英気を養ってくれ」というメッセージだと勘違いし、平らげてしまったという(秋山の出身地が熊本であるため滋養強壮食として馬肉が食されている)。
- アテネオリンピックの直前に足を痛めた柔道の田村亮子選手が、馬肉を患部に貼って足の痛みを治癒し、五輪に出場して見事に金メダルを獲得したという。
- 元大関・魁皇も痛む肩に馬肉を張りテーピングで固定し一晩中当てていたこともあるという。
- 昔は、なんと競走馬の治療にも使われており、かつてウチュウオーという馬の患部に馬肉を貼って屈腱炎を治したとか、後に競走馬ヒカルイマイにも同じ治療を試され、瞬く間に患部のハレは引いた。(しかし、治療の為とはいえ同族の生肉を身体に張り付けられるのは馬からすれば、どんな気持ちだったのだろうか……)
今でも、熱を持った患部に直接馬肉を貼り、熱を下げる人もいるという。
以上のような作用があるのは、馬肉に含まれるγリノレン酸に炎症を押さえる効果があるからだと言われていた。
馬肉療法は格闘技や球技、陸上競技などの怪我に効果的な治療法として現代のスポ-ツ医学界で広く認知されていたようだが………しかし……?
実際の医学的根拠は
馬肉湿布の効果については、元プロボクサーで産婦人科医の高橋怜奈医師の話では、「正直に言って、医学的に認められた効果はありません」と断言している。
通常の湿布には解熱鎮痛成分や抗炎症成分が含まれており、患部に貼ることでこれが浸透し炎症を抑える効果があるが。
一方、馬肉にはそういった成分は含まれておらず、仮に何らかの効果がある成分が含まれていたとしても経皮吸収されることはほぼ無いとの事。
患部を冷やすにも普通に氷などの方が効果が高く、皮膚に貼るよりは間違いなく食べたほうが効果的と言われている。
栄養価が高い馬肉を身体に貼るのは非常に勿体無いので、皆さんも食べて味わいましょう。
※馬油(ばーゆ)とは
読んで字の如く「馬の油」の事である。
成分としては「オレイン酸」(オリーブオイル等に多く含まれる)、「パルミトレイン酸」(アボカド等に多く含まれる)、必須脂肪酸である「リノール酸」や「α-リノレン酸」がバランスよく含まれている。
馬のたてがみや腹の脂肪などを火にかけ煮立たせ、不純物をろ過して作られる。
上記にあった馬肉湿布とは違い馬油は、古くから火傷やかぶれ、切り傷など様々な皮膚症状に万能油として現代まで長く使われる民間治療薬。
近年では、高い保湿力があることからシミ・ソバカスの除去・予防、肌荒れ治療、筋肉痙攣の緩和の効能や頭皮と髪のケアにも期待できる、馬油を原料とした保湿クリームやシャンプー等も作られている。
馬の脂肪酸組成は人間の組成と酷似しており、人の肌へ馴染みが良いのが特徴。その為、馬油は人間の皮脂に最も近い油脂とも言われており、肌に塗るとしっとり角質膜に染み込み、あっという間に浸透し潤いを与えるので、全身の保湿ケアとして赤子や肌の弱い人でも安心。
一説によると、江戸中期にお祭りなどに実演販売という形で売られていたガマの油とは「我馬油」と云われ、実はカエルではなく馬の油だったというのは有名な話。
関連タグ
生肉 馬刺し ユッケ レバ刺し 회タルタルステーキ コンビーフ(ニューコンミート)
熊本県:ご存知馬肉の生産量No.1の県。
ハマノパレード:競馬界に多大な影響を与えた競走馬。
未勝利戦:一度も勝利を収めずに引退した競走馬の末路の一つが…。
今川範満:馬刺しが大好物で、戦の途中で食事の時間になった時は自身が乗っていた馬の首にかぶり付きそのまま肉を喰っていた。
塩の長司:江戸時代の奇談集『絵本百物語』に記載される馬肉にまつわる怪異。
ガンフロンティア:旅の道中で馬車を引いていた馬が死ぬ度に、その馬肉を食料にしていた。