「人を殺めた罪は死という罰によってのみ償われる!」
「だが死人に罰を下す術はない」
「だから愛する者が代わりに罰を執行する!!」
「咎人は、もがき苦しみ絶望と後悔の中で死んでいく!」
「それが答えだ!!」
プロフィール
概要
るろうに剣心の登場人物で、北海道編が始まるまでは本作品のラスボスであった。
人物
江戸のとある武家の生まれ。母は幼い頃に亡くし、本名不明の父は失踪した結果、剣心と関わるまでの間、姉の巴が唯一の肉親になっていた。
頭髪が老人の様に白髪となっているが、これは目の前で巴を失ったショックによるもので、元々はごく普通の黒髪であった。
れっきとした日本人であるが、中国の上海で長い間過ごした影響なのか、独特の訛りが出る言葉を出す事が多い。
元々は姉を慕う普通の少年だったが、現在は上海の武器組織のナンバー1という地位に就いている。
後述にもあるように現在の縁を形作っているのは、憎・恨・怒・忌・呪・滅・殺・怨……ありとあらゆる負の感情からにじみ出す『負の強さ』である。
性格
一言で言うなら「自分勝手」そのもの。
元々非社交的な上に、陰湿さや残虐さに加え思い込みが激しく嫉妬深いと、人間的に良い部分が皆無に等しい危険人物であり、目的の為に手段も一切選ぼうとしない。
目的に対する一途さとその行動力自体は凄まじく、一度決めたら他者はおろか自分自身すら省みない性分である為、幼くして姉を探す様は闇乃武の目に留まり、上海で剣の腕と武器組織での成り上がりを遂げると同時に、目的のために足りなければ満ち足りるまで待てる周到さも兼ねている。しかし、上記の性格と省みない性分故にベクトルはほぼ悪い方向に突き進んでしまうため、彼の場合は事態の悪化にしか至らず、美点となり得ない。
ただ、暴君の如き性格故に「やりたい事をやらせてくれる相手」にだけは(逆らわない限り)気前が良いのだが、それも結局イエスマンしか寄りつかせていない。
「死んだ姉との会話」を趣味としている等、一種の精神病レベルのシスコンである為に、姉以外の人間には全く関心が無く、自分の周りにいる誰かが傷ついたり死のうが無関心でいられる。「六人の同志」と称しているメンバー達の事すらも例外ではなく、彼等は利害が一致している事から自らの手駒として利用しているだけで、用済みになれば殺す事も厭わない冷酷非道ぶりを見せている。
この極めて問題的な性格は、唯一の肉親と言えた巴の存命していた幼少期より既に醸成されていたと言え、彼女と清里明良との結婚が決まった際も駄々をこねる形で猛反対しており、この事からも明良の事も内心では「姉を奪う目障りな男」として憎んでいた事がうかがわれる(ただし、幼少期から抜刀斎を「姉の幸せを奪った存在」と認識しており、清里が巴にとって大切な人であること自体は理解していた模様)。
また、最愛の存在である姉の巴の場合であっても、彼女の想いを一切理解する事は無く、剣心との触れ合いの中で生じた変心についても取り合わなかった。人誅編の終盤で彼女の遺したの日記を読むまで、慕っていた姉の心に寄り添う事が全く出来なかった程である。
この為、本人的には姉の巴だけは大切にしているつもりであっても、本質的には『自分の意思をただ押し付けていただけ』であったと言わざるをえない。
更に、上海へ渡った後は、行き倒れになっていた所を同郷の少年と言うことで保護し、暖かく迎えてくれるまでに救ってくれた日本人一家に対し、感謝しないばかりか「幸せそうなのがムカつく」「そう感じるのは非道な仇に大切な姉を奪われた可哀想な被害者だから」という身勝手極まりない理由で皆殺しにした挙句に当座の食い扶持を得るカモと見なして財産も強奪してしまうという、恩を仇で返す行動にまで平然と出ている(それを聞いた相楽左之助からは、「性根からして腐ってやがる」と評されている)。ちなみに、この時に日本人一家から奪い取った書物の中にあった倭刀術の書を身に着けている。
この様なエゴイスティックな性格をしているが故に、当然ながら人徳は無く、自らの傘下の組織も己自身の「力」のみによる恐怖で纏め上げる暴君のような統一性を見せている。
ただし6人の同志に対してはそれぞれが目的のため縁の計画に無駄に逆らう行為に及ばず、示威で締め付ける必要もなかった為、常に敬語で余裕のある態度を見せていた。当初はこのキャラで通していたため、後半からの二重人格ぶりが強調されている。
姉・巴を殺した剣心への復讐の身を生きる理由としている為に、劇中で自らが剣心を標的とする形で謳った「人誅」や「断罪」も、自らの目的を正当化する為の「お題目」でしかない。
実際の所、縁が望んでいるのは「緋村剣心を徹底的に苦しめる事」のみにあり、彼を苦しめる為に神谷薫を始めとする身内はおろか、過去に剣心が関わった人間…それも剣術や武術等も身に着けない人間までも標的にして攻撃しようとする等、やり方に関してプライドを感じさせる物が一切無く、まさに「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」を地で行く卑劣漢ぶりを見せている。
なお、実写映画版においては「敵はお前だけではない。お前の大切なもの全て、そしてお前が作り上げてきたこのクソみたいな国の全て!」と言い、剣心やその関係者だけでなく、自身を悲惨な境遇へと追い込む一因となる社会情勢を作り上げた明治新政府及び日本国家そのものに対してまで自身の憎しみの矛先を向けようとし、一大テロを引き起こそうとする。
更に自身が剣心に姉の巴を殺された「被害者」である事を強調しているのに反し、自身が散々やってきた非道な行いに関しては棚に上げ、後ろめたさを欠片も見せようとしない等、何処までも自分に甘い身勝手ぶりを見せている。
ただ、「姉と同じ年頃の女性に対しては殺す事が出来ない」という弱点があり、劇中でも巴を思い出させる薫を何度も殺そうとしたが、結局は出来ずじまいとなっている。
作者曰く「志々雄真実がアッパー系であるのに対し、縁はダウナー系」との事。
志々雄が作者の考える「"悪"のカッコ良さ」をつぎ込んだキャラであったのとは逆に、縁は作者の考える「"悪"のカッコ悪さ」を体現させたキャラらしく、人誅編を描いている間は常に自己嫌悪に悩まされていたという。
だがそうしたコンセプト自体は見事に実を結び、悪役としての魅力が徹底的に排除された縁は、人間誰しもが持つであろう「目を逸らしたい負の側面」を強調されたリアルな”悪人”という、好対照な存在として描写される事になった。
結果客観的に見ても、縁のどこまでも幼稚としか言いようの無い性格や振る舞いは(動機こそ理解できるものの)、読者の多くに反感や嫌悪感を抱かれ、判官贔屓される事は殆ど無い。
来歴
幕末の激動の中、剣心が関わったある任務によって、一家は散り散りとなる。最も慕う存在である姉・巴は、清里明良を殺された復讐のために剣心に近づいたのだが、彼女は剣心と共に暮らすうちに心境が変化していった。姉のために自分もその復讐に協力しようとしていた縁は姉の心変わりに激怒、剣心に憎悪の眼差しを向け、「オマエさえ最初からいなければ……」と捨て台詞を残し去っていった。
その後、目の前で巴が剣心に斬られるという悲劇の瞬間を見てしまう。真っ白な髪はその時のショックによるもの。
狂おしいまでに慕っていた姉を失った縁は日本を嫌い、単身で上海へと渡った。
当時、東西の欲望が渦巻く魔都・上海で少年1人で生き抜くことは熾烈を極め、地獄の修羅場で何度も死にかけたが、縁は独学で習得した「倭刀術」と剣心への憎悪から生み出される執念によって頭角を現す。
やがて若年にして上海闇社会の頂点にまで上り詰め、強大な武器の密造・密輸を一手に取り仕切るようになる。同志たちの武器であるアームストロング砲や暗器、手甲なども全て彼と腹心である呉黒星が入手した代物であり、志々雄真実の組織に甲鉄艦・煉獄を売った黒幕も縁である。
剣心への復讐「人誅」を実行すべく、利害を共有する者達と「六人の同志」を結成する。
神谷道場での剣心との闘いでは、独特の体さばきの倭刀術で剣心を翻弄する。剣心の九頭龍閃を受けるも、強烈な憎悪の念で常時から精神が肉体を凌駕しているため肉体的ダメージをものともせずに笑顔で立ち上がった。
激しいぶつかり合いの中、事前に一度見ていたこと、剣心が巴を殺した「罪」の意識を心のうちに抱えていたことで十分に力を発揮できなかったことで剣心の奥義・天翔龍閃の一撃目を凌ぎ、二撃目も絶技・虎伏絶刀勢の特性により破った(劇中ではこれを「龍の爪も牙も地に伏せる虎には届かない」と例えている)。
しかし剣心も粘りを見せ、「人誅」の真の目的(神谷薫の抹殺)を知った剣心の猛攻に倒されそうになる。だが鯨波兵庫の横槍によって剣心の動きが封じられ、その間に最大の復讐として「人誅」を完遂。剣心から薫を奪い廃人状態に追い込んだ。
剣心は神谷薫の死体を目の当たりにしたことで絶望するが、これは外印が用意していた屍人形であった。わざわざそんなことをしたのは、上記の通り縁が「姉と同年代の女性は殺せなかった」ため。
以後は武器組織の長として孤島のアジトに身を隠しつつ薫を監禁。約定通り呉黒星に組織のすべてを譲ると告げる(これが組織の力を個人的な都合で利用する条件になっていた)。
ところが黒星は「譲ってもらう」ことに不平不満を抱いており、縁は威圧することで黙らせる。この力関係が後に思わぬ結末に至ることとなる。
縁は人誅を完遂したことで一度は勝利を手にしたが、無意識的に人誅が答えではないことを感じており、心の中の巴は笑顔を失う。迷いが生まれた縁はそれを振り払うかのように、剣心を抹殺することこそが巴が微笑んでくれる「答え」だと自らに言い聞かせる。
一方、剣心は生き地獄の中で人斬りの罪を償う「答」を見出したことで復活し、かつてないほどの生きる意志と覚悟を決め、再び目に映る人々を救う道に戻っていた。
再び両者は相まみえ、その戦いは神谷道場での激突を超える死闘となる。
前回と違い、縁は憎・恨・怒・忌・呪・滅・殺・怨…ありとあらゆるにじみ出る負の感情により強くなっており、満身創痍、疲労困憊を微塵も感じさせなかった。
しかも気力だけなら前回の戦いを上回る剣心を圧倒。飛天御剣流の技を悉く破り、いつでも止めを刺せる状態にまで追い込んだ。
直ちに立ち上がることすらままならず蹲った剣心と、仁王立ちでそれを見下ろす縁。
「このままここで貴様を殺すのは、もはや、た易い」
「た易いが、しかし、それでは同じ――…俺の眼前で姉さんを斬殺した貴様と同じになる…」
「自害しろ」
「その逆刃刀とかいう偽善の刃を捨て、自らの意志でこの正義の刃を手にし、そして死ね」
「さあ!」
「死ね!」
「死ね!!」
「死ね!!!」
確信をもった縁は倭刀を手放し、人斬りの罪を償う「答」として剣心に自害することを迫る。
しかし、剣心の答えは違った。立ち上がった剣心によって告げられた「答」——それは「殺めた者への償いは、より多くの人々の幸せで補う、そのためには生きて「不殺」を貫き、戦い続けるしかない」だった。その「答」を受け入れない縁。なぜなら、縁の中にいる巴は微笑んでくれないから……。
笑顔を失った巴という現実を目の前に、縁はすべてを「圧倒的な力」によって有象無象に捻じ伏せるべく、ついには「狂経脈」を発動する。
狂経脈の構造は医師である恵と蒼紫によって異常発達した神経だということが判明するが、縁は蒼紫の云った「天賦の才」を否定。剣心への長年の憎悪によって与えられた力であるとを告げる。
剣心の先読みすら全く通じない視認不可能な速さと目に見えない物すら感じとる感知能力によって桁外れの戦闘能力を発揮し、剣心は為すすべがなかった。縁は剣心を文字通り手も足も出させずに圧倒し、海に投げ捨てる。
その光景を見た斎藤は、縁が高さだけでなく速さまでも剣心を遥かに上回り、飛天御剣流そのものが封殺されたと認識する。また長年剣心の闘いを傍らで観てきた蒼紫・左之助までもが、縁と剣心の実力差を悟り、私闘の約束を捨てることを決意させるにまで至る。
ようやく海から這い上がった剣心に、縁はここで絶望の淵での死に追い込もうと望む。飛天御剣流のすべてを否定するために正面からの刀の一振りで葬ろうと疾空刀勢を放つ。
だがしかし、激突の瞬間、縁は超音波によって聴覚神経を狂わせる龍鳴閃を耳元に叩き込まれたことで聴覚神経の更に奥にある三半規管までもが狂わされ、平衡感覚を失ってしまう。異常発達した神経は、この音による衝撃という悪影響をも人並み以上に受けてしまったのである
剣心に「貴様の剣の威力は拙者を上回っている」とまで云わしめるほどの縁の剣ではあるが、剣は威力(人を葬る能力)だけではないことを剣心から告げられる。「人を葬り去る能力」とは異なる未知の技は、縁に甚大なダメージを与えていたのだ。
だが、縁は麻痺した神経器官を自ら潰し、平衡感覚が乱れたまま攻撃力を大幅に落としながらも、なお剣心に憎悪をぶつけ続け、絶技である虎伏絶刀勢の構えをみせる。迷いのある縁と、新たな答えを見つけた剣心、この両者の状況が、必然的に奥義対決の結果に反映されることとなる。
かつてないほどの生きる意志と人生の覚悟を手に入れた剣心の天翔龍閃は、それまで幾度も天翔龍閃を見てきた一同をして驚愕するほどの威力を放つ。踏み込まれるその左足は「これまでとは違う、剣心の新たなる一歩」によるものであり、本来の威力を発揮し、その真空に引き寄せられ、体勢を崩し刀を手放さない事に精一杯だった。
(姉さん!!)
(助けて姉さん!)
(力を貸して姉さん!)
(姉さんさえ微笑ってくれれば俺は誰にも負けない! 俺はいくらでも強くなれる!)
(だから微笑って…微笑ってくれ姉さん!!)
最早二撃目を回避することは不可能となり、縁は心の中の巴に助けを求める。だが彼女は最後まで微笑まず、己の巴を観た縁は刹那ではあるが戦意を喪失し、倭刀を手放してしまう。
瞬間、剣心は敢えて剣閃を下げず倭刀を破壊するにとどめ、ここに奥義対決の勝敗が決する。
確かに天駆ける龍の牙も爪も地に伏せる虎には届かない。だが己の威をはき違えた虎の爪は、竜の顎によって容易く噛み砕かれてしまったのだ。
二度目の奥義対決では破れるが、それでも縁は止まらなかった。縁が掌を構えたその時、先ほど殴り倒した呉黒星が復活し、逆上しながら剣心を銃撃。今度は剣心を庇いに入った薫が撃たれそうになるが、そこに巴の幻影を見た縁は黒星を殴り倒す。そのまま激情のままに黒星を殺そうとするが剣心によって止められ、薫を護ってくれたことに感謝を告げられる。そして縁は自分が本当に護りたかった者のことを思い出し、子供のように涙を流すのだった。
実力では剣心を圧倒していた縁だが、この勝負は単純な弱肉強食の上での強さではなく、巴をめぐる2人の特質な因縁が「答えを見つけた者と見つけられなかった者」として結果に表れたものであった。-「剣客として贖罪の人生を全うする」という答を見出した剣心に縁は勝てず、私闘に決着はついた-剣心皆伝より引用。
死闘のあと、戦意喪失した縁は大人しく警察に連行されるが、その直前に薫から巴の日誌を手渡される。初めて姉の想いを知り、独り善がりな想いと決別するが、それは縁が築いた姉の死後の人生の歩み全てが間違っていた現実と向き合い、己の全てを壊すに等しいことだった。その後、警察の船から脱走し行方をくらませた。
それから時は流れ、何かを成す目的もなく気力さえも失った縁は京都の貧民街に流れ着き、偶然父親である「オイボレ」と再会するのだった(このときはお互い親子であることには気づいておらず、どこかで会った気がするという「気のせい」同士の知り合いであった)。
皮肉にも剣心にした仕打ちが自身に返って来ることになったが、「オイボレ」は縁の中に剣心と同じものを見出し、いずれここから巣立って行けるだろうと温かく見守ってくれていた。
戦闘能力
雪代縁の狂経脈は剣心華伝の解説で超々神速、そして飛び散る血の一滴一滴すら見極める感知能力、衝撃波だけで数メートル先の海を割るほどの腕力をもち、純粋な身体能力では間違いなく作中最強である。
また狂経脈を発動せずとも負の感情により力を増した縁は、答えを見つけたことで前回以上の力を見せる剣心を圧倒し、仕舞いには三度目に放たれた九頭龍閃へのカウンター(天翔龍閃と同じ原理、一度発動すれば防御も回避も不可能な九頭龍閃を打ち破るには、技の発動前に攻撃を加えるしかない)で九頭龍閃を破ってしまっている)、轟墜刀勢と計2度の完全なダウンを与えており、自他共に認める「いつでも容易く止めを刺せる」状態にまで剣心を追いやっている。
また常時から精神が肉体を凌駕しているため肉体的な痛みを全く意に介さないため打たれ強く、それどころか剣心への憎悪により強くなり、本気を出した2戦目では剣心の攻撃を一撃たりとも喰らっておらず、その強さは枚挙に暇がない。
また縁の率いる組織は、大陸経由の密造武器全てを取り仕切り、世界最新鋭の兵器を持ち、あらゆる重火器の武装に加えて(志々雄一派が全財産の6割叩いてやっと1隻という)煉獄級甲鉄艦の艦隊編成を可能とするほどの常識外れの兵力を持つ。その組織を縁は純粋な暴力で束ねているのである。
狂経脈なしでも通常の縁の戦闘力は「四神4人同時に相手をするのと互角」でありこれでも十分に最強クラスの実力といえる。極めつけは長年にわたり縁をよく知る呉黒星いわく「狂経脈を発動した雪代縁には、四神に加えて全兵隊まとめてぶつけても到底かなわない」という異次元の強さである。
上記の通り、雪代縁は「るろ剣」の世界観を度外視した桁外れな戦闘スペックをもつ。
だが薫の咄嗟の呼びかけに巴の幻影を見て剣心への攻撃を中断したことや、やはり人誅を完遂したことで巴の笑顔が戻らなくなり迷いが生まれた事情、また剣心を「いつでも止めを刺せる」状態に追い詰めながらも、積年の恨みを晴らすためにあくまで技と技の力比べで剣心の全てを正面から否定していくという戦い方を実行するなど、「巴」という存在が深く関わっていた剣心は縁にとって例外的存在であり、それまで誰にも止められない暴君であった縁を唯一止めることができる存在でもあった。(神谷道場での第一戦では、縁は戰嵐刀勢などを封印し、人誅のために剣心を生かすことが目的で手加減を施したとの台詞があり、一方の剣心にも巴を殺害したことへの罪の意識があった。)
作中での縁の戦闘能力に関する数々の異例ともいえる発言がある。剣心からは「貴様の剣の威力は拙者を上回っている」「攻めているときは無類の強さをもつ」と明言され、斎藤からは「わずか二度の手合わせで全ての詰めてが封殺された」「飛天御剣流そのものが通用しない」と前代未聞の戦闘力の高評価を得ている。
この2人のこのような発言が描かれることは非常に珍しく、剣心が明確に「相手の能力が自らより上」だと発言したのは、雪代縁の他には比古清十郎への「性格は悪いけど腕は最強」と瀬田宗次郎への「飛天御剣流より速い!」などがある。
実写映画版でも、駅のホームや車両内を颯爽と駆け回る程のスピードや車両の上に車両内から飛び移るなどのアクロバティックさを見せ、警官隊相手に徒手空拳とけん玉で圧倒(警官から奪ったナイフも使っていたが序盤のみ)し、相楽左之助や神谷道場の門下生らとの戦闘でも徒手空拳と木刀で圧倒するなど、倭刀無しでもその戦闘能力を遺憾無く発揮している。
技
倭刀術
大陸製の日本刀「倭刀」を用い、大陸の体術を複合した剣術。大陸特有の日本にはないしなやかで俊敏な動きで、斬撃に体術を交えて威力を倍加させる特徴がある。
その日本にはない切れのある動きは速さを持ち味とする飛天御剣流にとって天敵に近く、小柄で力と重さに乏しい剣心も一時は攻め手に欠いてしまった。
- 蹴撃刀勢(しゅうげきとうせい)
- 刀の峯を蹴り上げることで、蹴りの勢いを斬り上げに加える。
- 回刺刀勢(かいしとうせい)
- 柄で相手の攻撃を受けて、その勢いを乗せて刺突するカウンター技。
- 掌破刀勢(しょうはとうせい)
- 刀の峯に掌底を当てることで、斬り下ろしに掌撃の勢いを加える。蹴撃刀勢の上段技といえる。
- 朝天刀勢(ちょうてんとうせい)
- 地面に刺した刀を台にして飛び上がり、上空の相手を打ち上げる技。縁にしてみれば大した技ではないらしいが、それでも龍槌閃を破っている。
- 虎伏絶刀勢(こふくぜっとうせい)
- 刀を逆手に背後に構え、片足だけ開脚した前屈みの低い体勢を技名の通り地に伏せる虎に見立てており、深く体を沈めて回避。その後に立ち上がろうとする大地の反動と、背後に構えた剣を体勢を戻そうとする動作に合わせて半回転の軌跡を描いて勢いをつけ斬りつける縁最大の必殺技。
- 絶技とよばれるが、技の流れは相手の技を避けてから斬るカウンター技であり、相手の次の手に間が空く大技に合わせて打たないと旨みがない上、下段に照準を合わせた攻撃だと回避どころか自分からぶつかりに行く自爆技になりかねないため、初見殺しの性質が強い。
- PSPゲーム「再閃」では、技の発動前に「憎・恨・怒・忌・呪・滅・殺・怨」を唱えるという演出がされている。
- 戰嵐刀勢(せんらんとうせい)
- 本気を出したときに使用。屈伸の勢いを乗せて、体軸を交互に入れ替え移動しながら回転して斬る乱撃技。
- 疾空刀勢(しっくうとうせい)
- 空中で落下と跳躍の力が釣り合う点で、特殊な体捌きと倭刀を振ることで、さらに空中疾走する技。ゲーム的に言えば2段ジャンプ。
- 原作ではかなりの跳躍だったが、PSPゲーム「再閃」では常人くらいのジャンプ力になっており、一撃目がヒットした際にもう一度ジャンプして追撃する(原作のような高さまで飛び上がったらゲーム画面から飛び出てしまうのでこれは仕方がないと言える)。
- 轟墜刀勢(ごうついとうせい)
- 相手を串刺しにした後、上空に持ち上げて地面に叩き付ける力技。
狂経脈
雪代縁の特異体質であり、ゼロから熾烈極める上海武器マフィアの頂点に若年にして上り詰めることを可能とした真の要因。縁曰く「与えられた力」。
その正体は長年衰えることのなかった執念によって肥大化した神経である。
神経の反応速度が高まることで、人間の限界を遥かに超えた速さでの動作が可能。その速さは殺気を剥き出しにしながらも剣心の先読みが全く通じないほどの速さであり、超々神速の領域に達する(ちなみに超々神速がどれほど速いかというと、天翔龍閃や縮地は超神速であり、超神速の領域で既に剣心や志々雄クラスにとっても「目に映らない」視認不可の速さである。超々神速となると相手に殺気を読まれて動く先を予測されても、相手の身体の反応自体が間に合わない速度にまで到達する。)。
剣心は縁の殺気は察知していながらも移動や攻撃を認識すらできず、縁は余裕で2度も剣心の背後に回り込み、2度目の時は剣心は全く気がついておらず倭刀を剣心の背後から廻すような形で斬ることができるほどの圧倒的な速さであり、いつでも仕留めようと思えば如何様にも仕留めることができたことを見せつけている。
文字通り剣心を手も足も出させずに滅多打ちにしており、反撃はおろか避けることや防ぐ暇すら与えなかった。
また運動神経だけでなく感覚神経も異常発達しており、目は飛び散る血の一滴一滴を見極め、聴覚は骨の軋み一つ一つすら聞き分け、皮膚は舞い上がる砂一粒一粒まで感じとり、全身が相手の動きを捕捉するレーダーのようになっている。
しかし、その異常発達した神経は常軌を逸した戦闘能力をもたらす半面、痛覚など自分にとってマイナスとなる感覚まで増幅させてしまうため、耳元で発動された龍鳴閃の超音波で聴覚どころか三半規管までもが影響を受けて平衡感覚を失ってしまうなど、防御面では大きなリスクがある。
つまり、狂経脈は感覚を研ぎ澄ませば研ぎ澄ますほど攻撃力が上がる代わりに防御力が下がる諸刃の剣なのである。(-目に見えぬ物まで感知する神経・狂経脈縁。それが縁の最大の武器でもあり綻びでもあった-剣心皆伝より引用)
星霜編
「たとえ姉さんが奴を許してたとしても、俺は決して許しはしない!」
「この手による人誅の裁きこそが、その答えだ!」
OVA「星霜編」では尺の都合もあってか、その活躍やキャラクターに大幅な改変が加えられている。
結果的に巴を殺めてしまった剣心を恨み、「人誅」を加えようとする点は原作と同じであるが、「人誅」の定義が「剣心に生き地獄を与えること」ではなく、「自らの手で剣心の命を奪うこと」に変更されている。
加えて、剣心の周囲の者たちに手当たり次第に危害を加える描写や「六人の同志」の設定、上海にて無辜の家族を皆殺しにした過去などはカットされ、上海にてマフィアの頭目に上り詰めたという原作の経歴もOVAでは触れられることはなかった (闘い方や服装からしてこちらの縁も倒幕後に大陸に渡ったと思われるが、明言はされていない)。
このため、原作に比べると狂気が薄れ、比較的マイルドな人物になっている。
その一方で、台詞の端々からは「巴の幸せを奪った」ことへの怒りや姉を喪った哀しみなどが原作よりも前面に押し出されており、「抜刀斎の被害者」及び「復讐者」としての側面がより強調されたキャラクターになっている。
ただし、倭刀術や狂経脈といった戦闘スタイルは原作と同じである。
本編では剣心を誘き寄せるために薫を拉致した後、原作通り孤島にて一騎打ちを展開するも、贖罪の「答え」を見出した剣心には一歩及ばず、倭刀を破壊されて敗北。
しかし勝利したはずの剣心は縁に跪いて詫び、「お前に笑顔が戻るのなら」と縁の手に掛かることを受け入れる。一思いに逆刃刀で斬り殺そうとする縁だったが、そこに薫が剣心を庇う形で割って入る。その姿に巴を重ねたことで、剣心を庇った姉の本心を感じ取り、縁は「人誅」を断念。薫の腕の中で子どものように泣き崩れるのであった。
「姉さん…俺に仇を討つなっていうの?こんな…こんな奴を許さなくちゃいけないの…?」
「悔しいよ…あいつさえ…あいつさえいなければ…!ちくしょう…ちくしょう…!姉さん…」
その後、剣心のことを完全に許したわけではないものの「お前の闘いの人生とやらを見届ける」と言い残し、何処かに去っていった。
その後の動向は語られていないが、原作よりは救いのある結末だったといえる。
その他
縁は姉・巴を殺された衝撃から狂気に陥り、「人を殺した罪は死罰を持って償うしかない」を信条とするにいたるが、これは巴自身が緋村抜刀斎への復讐にしようとしたことと同じである。縁からすれば「姉さんと同じことをしている」という無意識な自己肯定があったとしてもおかしくはない(それが「縁の中の巴」として現れているとも言える)。
しかし巴の墓に訪れた薫が剣心に漏らしたように、彼自身も上海での事件(親切にしてくれた日本人一家を皆殺しにして金品を奪った)を始め明確に殺人に手を染めてきた上に、殺人の元凶となる人殺しの武器を製造・売買する罪人でもあった。作中では過去の行いを詳細に語る描写があった数少ない敵キャラである。
そもそもの始まりは人斬り抜刀斎が清里明良を斬り捨てたことに起因する。抜刀斎への復讐から姉まで斬り捨てられ、結果的に上海に渡った縁もまた人斬りとなってしまった。
剣心に過ちがあるとすれば、師匠の言葉に逆らって一方の勢力に肩入れしてしまったことだろう。結果的に志々雄と言う幕末の亡霊を生みだしたり、縁の人誅を引き起こしてしまったと言える。
なお、少年期に家族を失い、悪人たちと手を組み、道を踏み外したという点では明神弥彦と同じである。
また、巴の死がトラウマとなっていた縁は若い女性を殺せなくなっており、それ故に「外印さん」の協力が何としても必要であった。人誅を遂行するまでは側近の黒星が知る雪代縁ではなく、捉えどころのない飄々とした人物を演じていた。
因みに主人公に家族を殺された復讐者という一見美味しい立場に居ながら、目的の為なら受けた恩を平然と仇で返し無関係な周囲をも巻き込むことを厭わない悪役として描かれたのは、縁を読者の同情を誘う様なキャラにしてしまうと剣心にヘイトが集まってしまい商品展開等に悪影響を及ぼしかねないというメディア展開での都合上の他にも、作者が「少年漫画の王道はハッピーエンドである」という持論を持っている以上、やはり主人公である剣心が逆に倒されるべき悪役として惨めな最期を迎える様な重過ぎる展開を描く訳にはいかなかった為だと考えられる(詳しくは六人の同志を参照)。
作者がデザインした花札で最強系(剣心、比古、斎藤、志々雄、宗次郎)と並ぶ一人に選ばれた。(-最強系が二十点の札。剣心と比古師匠と斎藤、志々雄、宗次郎…縁は例外的にあえて零点札。零点だけど、ものすごい印象に残るという奴ですね。はげ山系だと虚無感みたいなのが一番強いし。同じはげ山系だと志々雄、刃衛。この三人はやっぱりヤバイってイメージがあるので。-剣心皆伝より引用。)
剣心皆伝のパラメーターでは戦闘力5・知識知恵3・精神力1・カリスマ4・個別能力復讐心無限大とされている。
万全体制の剣心・斎藤・蒼紫・左之助らを立て続けに圧倒してさらにまだまだ余力を残すターミネーター的なキャラクターであったら魅力的な縁が描けたのにと作者が単行本での登場人物回想で後悔を語っている。
本編とは関係ないが再筆版では普段は再筆鵜堂刃衛より弱いとされながらも、その底力は凄まじく、満身創痍な上にぼろぼろのなまくら刀を使いながら斎藤・蒼紫・左之助を相手に立て続けに連勝する設定であり、再筆盤でもその戦闘能力の上限値は圧倒的な扱いであった。
OVAで縁役を演じた佐々木望氏は劇場版アニメで高槻厳達役も演じていた。こちらは妹持ちの兄であり、奇しくも巴と同様に剣心が原因で命を落としていた。
二次での扱い
フタエノキワミ、アッー!
長いこと存在が明かされるだけで空気だったが、OVAの公開によってついにデビュー。現在、MAD内ではたまに見かける程度の知名度である。
原作よりも姉への愛が強く、シスコンの領域に達している。「バーカ!」と怒って罵倒したり「ざまぁwwけんちゃんwww」と殴りながら嘲笑ったりと喜怒哀楽が激しい。
また大久保卿暗殺と同日にペットのカラスが死亡した時には大久保卿暗殺を差し置いて新聞の号外でデカデカと報道されたりとそこそこ有名なようだ。
「みんなで人誅」なる技を持つようだが、そもそも技名なのかは不明。
最後は薫の膝元で「シスター☆超萌え…」と呟き、けんちゃんと薫の目の前から姿を消した。
ちなみに縁の方が銀さんそっくりなはずなのに何故かけんちゃんがキワミに「銀さん」と呼ばれることがある。
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永倉新八(るろうに剣心):阿部十郎を、永倉たちが不意討ちで殺した服部武雄が阿部たちを逃がす際にかけた服部の言葉を使って諭す場面があったが、「貴様が姉さんを語るな」と剣心に激昂した縁と、永倉の意見を聞き入れた阿部との対比の様な構図になっている。
聖/輝:るろ剣のRPG作品十勇士陰謀編の主人公。縁とは「大切な家族を失う」「行き倒れたところを親切な一家に拾われる」「家族を奪った仇敵を追う」等の共通点を持つ。しかし、元々善良な性格とされていることや記憶喪失になってしまったことが重なり、縁とは違い親切な一家を害するような行動を取る事はなく、家族を殺した当人を前にしても復讐を行うどころか逆に復讐を止める側に回って無力化するだけに留める(そもそもその瞬間も見ていない上に記憶もないので故郷を滅ぼした仇敵という知識はあっても家族を殺した当人という事は知らない)など精神面では真逆となっている。「十勇士」という単語表現も「6人の同士」とよく似ている。
今十勇士:十勇士陰謀編の敵役。彼等のバックボーンを掻い摘まむと、時代の変遷に奪われた被害者だが、復讐に固執し「被害者であることを声高に主張して、無関係の人も傷付け、自分達の出す被害を棚上げしている」点が縁と共通している。
高槻朱鷺:維新志士への鎮魂歌の登場人物。縁と同じ様に抜刀斎に家族を斬られているが、こちらは色々な意味で縁とは正反対な人物。なお、兄の声が縁と同じ。