概要
「人誅編」に登場。(実写版には未登場。)
本名は不明。
緋村剣心の最初の妻である雪代巴とその弟の雪代縁の父親である。
幕末の武家「雪代家」の当主であったが、妻を早くに亡くしただけでなく、剣心を中心として起こった様々な不幸と明治維新による混乱により没落し、落人になる。
その後、世捨て人たちが集う「落人群」にたどり着き、人の良い性格から仲間たちに慕われ、コミュニティのまとめ役(長老)になった。
10年後、運命のいたずらか、息子の復讐によって心神喪失した剣心が落人群に流れ着く。そして、オイボレは因縁の相手である剣心を世話した。
剣心が立ち直った後は、娘の墓参りのため京都に身を寄せる。そこに、剣心と決着をついたが復讐に失敗し、姉の本意も知って落人群に流れ着いた息子と再会した。この時、互いに親子だということは何となく理解していた模様である。
人物像
壮絶な人生を歩んできたにもかかわらず、とこか飄々とした好好爺である。
巴の回想によれば、「文武はからっきしだが、とにかく優しくて誰にでも好かれる」とされており、荒んだ人間が少なくない落人群においてもまとめ役として慕われ、信頼されている。
また、剣心の本心や本人ですら気づかなかった葛藤などを見抜き、的確にアドバイスをしてスランプから立ち直らせるなど、非常に優れた観察眼を持つ。
以下のことから、剣心によってことごとく人生を奪われた人物でありながら、剣心だと見抜きつつも、恨むどころか再起させる後押しをした人物である。
- 抜刀斎によって、娘の婚約者であり後継ぎとなる男を殺される
- 結果、娘と息子が出奔して一家離散
- 娘は抜刀斎のために死亡、息子も行方不明
- 抜刀斎が加担した明治維新によって没落
- すべてを失い、路頭に迷って物乞いにまで落ちぶれる
- その剣心自身が新しく女を作っている (しかも、オイボレが知る余地はないが息子が日本に帰ってきたという最悪のタイミングで)
- 結果的に、剣心に敗れた息子も落人になる
- 息子が再起できたのかは不明だが、オイボレ本人はおそらく死ぬまで落人だった
このため、「贖罪」と「復讐」をテーマにした本作において、復讐を乗り越え怨敵を助けるという屈指の良識的な人物であるが、同時に復讐を捨ててはいるが、それは縁とは違って人生を諦めた上でのことという重いテーマを背負っている。これはつまり、どうあがいても贖罪しきれない部分もあるという剣心の過去を表している。ただし、オイボレの諦めは、時代の変化を受け入れており、後ろ向きだけの選択ではない。彼は落人群と言う居場所があり、世を拗ねたりせず過去の苦悩を抱えながらも余生の中の日々の営みと安寧を享受している。
雪代家に起こった不幸は、志々雄一派や鯨波兵庫ともども、主人公である剣心の「負の遺産」を象徴するトピックである。とくに鯨波とは、まるでお互いを対比させるために作られた様な類似点や対照性がある。
なお、剣心が立ち上がった時に、同じ落人仲間の隈に剣心を気に掛けていた理由に、娘を看取った夫だったと心中で語っている。
また、落人群での語らいから剣心は巴の父との面識はない(知っていたら、抜け殻の剣心でも巴の家族の前からは、消えようとするはず)ようだが、オイボレは一目で剣心が誰か察している。また、剣心に適切な言葉を投げ掛けたように、剣心が人斬りをしていた裏で苦しんでいた事実を把握していたのは、観察力だけではあり得ない。
その事から、オイボレは巴の日記を読み(家を出た後も巴は実家に連絡を取っていた可能性もあるが)、娘が仇に近付き、巴が見た剣心の人柄と苦悩を知り、愛して妻となり、新たな幸せを得ていた事を知っていた事は疑いようがない。
そのため、単に諦めて許した訳ではなく、娘を幸せにし、夫としての責任を果たした相手だった事を縁と違って最初から知っていたからこそ、剣心を許していたのだ。