「金!これこそ正に力の証!」
担当声優・演者
実写映画版:香川照之
2018年新橋演舞場・大阪松竹座公演:上山竜治
原作
身長169cm、体重60kg、1848年(嘉永元年)9月生まれ。
読者からの通称は「人撃ちガトリング斎」。
表向きは東京で手広く商売をやっている青年実業家だが、裏では新型阿片『蜘蛛之巣』の密売を行い、莫大な利益を得ていた悪徳商人で、ゆくゆくは阿片の密売で得た金を元手に武器商人となり、更に儲けようと企んでいる。本性は狡猾で残忍、部下は金で買える物のように扱い、失敗した者・反発する者に対しては情け容赦がない。
とは言え、この手の金の亡者キャラにありがちな金で何でも出来るとかは思っておらず、金を集める事を目的とせず、金を集めて何をやるか、何かのために稼ぐというスタンスであり、相手の人情を省みない様な部分はなく、剣心の正体を知るや買収より恵を脅して表面上は動く理由を建てないよう暗躍したり、部下を殺めた仇に燃える蒼紫を恐れたりと心がわからぬ愚者ではない(流石に常識外の価値観まではわからないが、その中でわかる部分を取っ掛かりにしている)。
そんな観柳の本質はむしろ理屈屋で、問題にぶち当たると自分なりに解決策を巡らせるなど判断力は早く高い。
『蜘蛛之巣』の製造を一任していた高荷恵が逃走したことを知って、元御庭番衆・頭目である四乃森蒼紫を使役し癋見とひょっとこ、般若を差し向ける。
その後、恵が自らの意志で手中へ戻ると、彼女を取り返しに来た剣心組と対決、ガトリングガン(回転式機関砲)を持ち出して抹殺をはかるも、御庭番衆の命を懸けた活躍で弾切れ(旧アニメ版では癋見の螺旋鋲による弾詰まり)に追い込まれ、緋村剣心に叩きのめされて敢え無くお縄となった。(とはいえやたらめったらに乱射していたのではなく、「腹に撃ち込んだら誘爆する」相手にはキチンとヘッドショットを狙いしっかりと当てたり、腕さえ無力化すればどうにでも料理できる相手は肩だけさっさと撃ち抜いて次のターゲットに銃を向ける等しており、発射し続けながら真っ先に無力化すべき相手に即座に照準を合わせる等かなり早い状況判断能力と、当時の銃の命中精度としては異常なまでのエイム力を誇っている)
当初は常に笑顔で余裕のある敬語を使っていたが、剣心と敵対することが決定的となってからは終始怯えるか乱暴な口調になり顔芸を披露するようになった。
原作者曰く「単に頭が悪いだけの悪役」。勿論モデルは新撰組五番隊組長武田観柳斎で、『るろ剣』に登場する彼のデザインは観柳とも微妙に似ている。
ただし史実の武田観柳斉は実は近藤勇が道場主だった試衛館(試衛場とも)の関係者。
武田については同じ試衛館関係者で新選組の永倉新八、同じく新選組隊士で永倉の盟友だった島田魁が嫌っていたのは間違いないが、実際近藤や土方に嫌われていた形跡はなく、どのような性格だったのかはよくわかっていない。
新選組を裏切り脱走の挙げ句斉藤一に粛清されたと言う逸話も創作である。
史実は「池田屋事件」の時の活躍が考慮された「円満脱退」である。
新選組を脱退した理由も、自身の甲州流軍学が否定されたからではなく、対長州の強硬すぎる姿勢が、新選組の支持者の1人ながら長州への寛典論を唱えていた若年寄の永井尚志に疎まれ、近藤を困惑させてしまったからだと言う説もある。
本当は一体誰に暗殺されたのかもわかっていない。
池田屋事件で実は多くの被害者を出していた土佐系浪士に暗殺された可能性もある。
北海道編では
既に死刑が執行されたとばかり思われていたが、北海道編にてまさかの再登場を果たす。
小樽で雅桐倫俱(ガトー リング)という偽名を名乗り、大量生産の数打ちに特化した簡素な作りの刀・通称「雅桐刀」を売り捌いて私腹を肥やしていた。
逮捕後、本来なら死刑になってもおかしくなかったのだが、全財産を賄賂につぎ込んで死刑を回避し、北海道の樺戸集治監で労役に科せられていた。体力が無かったため便所掃除と肥料作りをやらされる中、糞の中(当時は和式便所でする時にしゃがむため、ポケットの中に突っ込んでいた小銭がうっかりこぼれ落ちる事があった)から小銭をかき集めて蓄える(その小銭は×××が付着したまま未洗浄で、おそらく所有物が少ない身で謎の物を洗ったらバレる危険を考慮していたと思われる)など、金への執着心は一向に衰えなかった。
収監から5年後、寒郷が率いる部隊の襲撃に乗じて集治監を脱獄。その途中で自分達に刀を与えようとした霜門寺に無償で受け取ることを拒否し、上述した小銭で刀を買い取ろうとしたことで、金への執着心を見込んだ霜門寺から万鉄刀(=雅桐刀)を市井に出回らせるよう依頼され、小樽で脱法商売を始めていたのである。
そこで、ただの万鉄刀に箔付けと、偽名のために雅桐の名を付けて売り捌く。
東京編で「命乞いなら貴様の好きなお金様に頼んでみろ!!」と観柳を成敗した剣心だったが、その観柳が本当に金の力で生き延びて再び自分の前に現れたのだから何とも皮肉な話である。
過去の経験から違法な商売には懲りたようだが、違法行為では警察の捜査が厳しくなって逮捕や悪質すぎて逆恨みを買いかねない等のリスク管理の一環でしかなく「これからは脱法だ!!」と語るなどあまり反省していない様子。
なお、剣心は「脱獄は違法でござろう」とツッコミを入れたが、緊急避難と主張され、加えて「お前に言われたくないわ! この常時廃刀令違反者!」と言い返され言葉に詰まった。
その一方で、金の力だけでは通じない現実とどん底の生活の中で金と経済の本質を掴んだらしく「私は商人 金銭を介さないやり取りには応じません」、「金に綺麗も汚いもありません」、「滅私奉公など商人にとって悪徳の極み」などと、良くも悪くも商人としてのプライドや商売に対する美学を見せている。
さらに「金で買えないものはある、家柄、血統、目の色、肌の色。金で買えないものは差別を生む。だからこそ金に価値がある。何一つ持たぬ身に生まれようと、人並みに金を稼げれば人並みに、それ以上に稼げばそれ以上になれる。金こそがこの世で一番公平で平等、それこそが金の価値なのです」という、ダークヒーロー的な発言もした。
更に後ろの安全な立ち位置でふんぞり返るか怯えていた東京の時とは違い、どん底に堕ちた事でやる時はやる行動力としぶとさは身につき、悪人には変わりはないが筋金が入った一面を見せるようになる。
ちなみに霜門寺・於野・本多の3人からは糞商人と陰口を叩かれている。
井上阿爛は自分と似たスタンスの為か気に入っており勝手に弟子扱いを始め、当初は鬱陶しがられていたものの、実際に観柳の言う「金で買えないもの」によって差別を受けてきた阿爛からは次第に共感を得るようになる。
剣心は超人的な力と功績から、金がなければ市井の中で困るという実感が薄く、そうした普通の価値観に寄り添えない価値観を阿爛は受け入れることができず、逆にひたすら商魂を燃やす観柳に対しては剣心達以上の信頼を寄せられるようになっていった。
観柳からの阿爛への思い入れも相当の物で、後に阿爛が自分の誘いを断った際もそれを穏やかに受け入れ、いずれ食うにも困るようになれば、仲間共々面倒を見る事を約束する程である。
実は何気に北海道編2話のカラー扉絵にも登場しており、この時点で再登場への布石はあった模様。
本人曰く生まれた頃から貧乏人で家柄も並みかそれ以下だったらしく、「泥だけの粥」や「雑草だけの鍋」で腹を満たしたこともあったという。
そのため恵まれた容姿や地位を持つ人間への妬みでのし上がっていったとか。
その一方、阿爛に自分と同じように泥粥や雑草鍋を食べたことはあるかと尋ね、「無いです……すみません」と答えられたときには「謝る必要はありません。無ければそれに越したことはないのですから」とも言っているため、決して他人の不幸が望みというわけではない。
また一時とは言え剣心や御庭番衆を一方的に圧倒した事で、それを実現したガトリング砲に偽名として使うほどの異常なまでの愛を捧げている(左之助に雅桐倫具の名がふざけてると言われたとき、怒りの形相を見せたほど)。
自身が「剣客兵器の協力者ではなく利用された被害者である」と認めさせるために補足した本多雨読との戦いでは、剣心の助けを拒絶し見放されるも、阿爛の機転で再び巡り合ったガトリング砲をどこぞの血族のように「ガトガトガトガトガトガトガト」と連呼しながら乱射。
以前のように弾切れになるも阿爛が即座に弾倉を交換するという連携の末、剣心の手を借りないまま勝利した。
そして久方ぶりのガトリング砲の破壊力に一時酔いしれるも、飽くまで「違法ではなく脱法」を貫くという信念に基づき、違法の兵器であるガトリング砲を手放し、敬愛と共に決別。
その後剣心と相対してもガトリング砲に縋る事なく、悪態を吐きながらも降参した事で剣心からも本当に違法行為からは脱却したと認められ、剣客兵器との戦いもやむを得ない緊急避難だったとして見逃され、去るように促される。
それに対して英雄様の上から目線の情けだと憤慨する観柳に、剣心は大勢人を殺した自分も観柳と比べて褒められたような人間ではないこと、そして「泥粥は無いが雑草だけの鍋の味なら拙者も知っている」と言って諭す。
憮然とする観柳だったが、剣心達が戦力として呼んだ蒼紫がじきに北海道に到着すると忠告され、恐慌しながら剣心一行の元から遁走した(剣心としては、さすがに蒼紫が観柳を見つけたら庇ってやれないということだろう)。
そして逃げる道すがらガトリング砲を合法的に所持するために政治を動かせるほどの大政商を目指すという斜め上の発想に至り、自らを叱咤しながら何処かへと走り去って行った。
原作の時点でかなり濃いキャラクターではあるが当初の作者評は上記の通りであり再筆版でもハブられた他、御庭番衆を惨殺したこともあってか読者にもそこまでの人気は無かった。
しかし映像化・舞台化作品では飛田展男、香川照之、彩凪翔に上山竜司といったいずれも強い個性を引き出すことが定評の役者が怪演しており、そのマッドぶりにより磨きがかかっている。
そして、これらに感銘を受けた原作者の和月伸宏氏により原作に逆輸入された結果が北海道編の観柳というわけである。
宝塚歌劇版
見目は麗しいが期待を裏切らない濃さである。
『これがガトリング砲』というテーマ曲までもらっており、ますますネタキャラ化が加速した。
作者和月伸宏はこの作品に強烈な影響を受けており、この作品のセリフ
「ガトガトガトガト!」
「こちとら生まれたときから貧乏人! 明治になっても貧乏人!」
を北海道編で逆輸入している。
実写版
主演の佐藤健が同じく人斬りの岡田以蔵を演じた大河ドラマ『龍馬伝』で、岩崎弥太郎を演じた俳優の香川照之氏が怪演。
やってることは非常に悪辣でありながら、どこかコミカルで人間くさい悪党として観柳を演じきっており、ある意味原作以上に観柳というキャラクターを魅力的なものに仕上げている。
原作とは異なり、緑色のベストを着ている。
東京の下町を潰して港を作り、阿片で儲けた金で武器を仕入れてクーデターを起こそうと目論んでいた。
また、明治維新の影響で行き場を無くした大勢の不平士族達を雇い、アジトの邸宅を守る大規模な私兵集団を築き上げており、部下には鵜堂刃衛や六人の同志(外印と戌亥番神)がいる。(その頃はまだ続編の構想がなかったようだから致し方ないが…)なんでやねん。
原作者はモデルとなった観柳斎が男色家であったという俗説があることから、観柳にもホモの設定を付けようとしたものの必要ない設定だったことから却下されていたが、映画では剣心と左之助に対しガトリングガンを向け
「オレに謝れ。オレにひれ伏せ。つか脱げ! おめーら全部脱げ!! 全部脱いでオレにひれ伏せ!!」
と発言している。
ちなみに演じた香川照之氏曰くこのシーンは全部アドリブ。(ちなみに剣心役の佐藤健氏が本当に脱ごうとしたのもアドリブらしい)
「この時代の武田観柳だったらたぶん、こいつらを脱がしたいだろうと思って。いろんな趣味をもっていますよ彼は」と発言。だいたいあってる。
他にも
・序盤の剣心に対する露骨すぎて笑えるほどにイヤミあふれる成金ムーブの数々
・剣心に観柳邸に乗り込まれても逃げ出すどころか傭兵に金をバラ撒いて徹底抗戦の意を伝える勢いの良さ
・ガトリングガンをぶっ放す際の狂ったようなハイテンションぶり。そしてその直後に家を滅茶苦茶にされたと逆ギレ
・隙を作るとはいえどうみても怪しい剣心と左之助の棒読みの降参をあっさり受け入れ、上記の台詞をぶちあげる
など、妙に愛嬌のあるキャラクターに仕上がっている。
この香川氏演じた観柳は後の武田観柳のキャラクター造型に凄まじい影響を与えており、ただの「頭の悪い悪役」に過ぎなかった観柳が「どこか人間くさい、味のある悪役」「ガトリングガン狂」として描かれるようになった転機になったと言える。
なお、小説版に於いては志々雄真実と繋がりがあった事を匂わせる描写が追加されている。
キネマ版
士族(武士)に異常な嫉妬心を有するという設定が付け加えられており、撃剣勝負のスポンサーを営む一方で、夜は高額の賞金を支払うと詐称し挑戦者をガトリングガンで殺傷するという殺人趣味を持つ極悪人…失礼、悪人ではなく悪徳商人である(本人・談)。
一般的なイメージと異なり、かなり大型のガトリング砲を自在に持ち回す身体能力がある。
剣心に邪魔され、ガトリングガン諸共吹っ飛ばされて警察に突き出されるが、賄賂を握らせて保釈。相楽左之助、斎藤一他を雇い剣心と神谷道場への復讐を目論んだ。
三条燕の実家が破産寸前に陥っていることを知ると、かつて雇用していた弥彦に神谷道場を売却すれば三条家の借金を返済してやる(勿論弥彦のものではないため、「盗め」と言っているようなもの)と無茶な要求をたきつけるも最終的に拒まれ、逆上して弥彦に暴行を加え権利書を略奪しようとした(この時、「これが金の力だ!」と叫びながら札束入りのカバンで滅多打ちにしていた。金の力はそういう意味じゃないけど…)が、剣士としての誇りを取り戻した弥彦に打ち据えられ、お縄となった。
原作者が後記の実写版で観柳を演じた香川照之の演技を非常に気に入った結果、原作以上に弾けたキャラになったらしい。
原作では初期の悪役の一人でしかなく、影が薄かったのだが、このキネマ版のはっちゃけぶりがウケて、遅咲きのネタキャラと化した。「ガトリング斎」というあだ名がついたのはここから。
新アニメ版
基本は原作とほぼ同じだが、北海道編同様に「ガトガトガトガト!」が逆輸入されている。
また、アニオリで初めてガトリングガンと出会って大興奮するシーンが描かれていたり、ガトガト開始の前に「レッツ・ガトリング!」と叫んだり、出頭しようとした恵に「地獄の果てまでトゥギャザーだ!」などとやたらとルー語を多用したり、連行される際に、ガトリングガンが押収される様を見て「ガトォォォーーーッ!!」と絶叫しながらフェードアウトしたりと、全体的に北海道編準拠のテンションになっている。
このためやってることは外道なのだが真殿光昭氏の怪演もあって台詞とテンションのせいでつい笑いを誘うようなキャラになっている。
なお、真殿氏は、原作者和月氏の別作品である武装錬金のアニメ版で同じく変態チックキャラである蝶人パピヨンを演じている。また真殿氏はパピヨン(本名は蝶野攻爵)の実弟の蝶野次郎も兼任で演じており、むしろ暴力的かつ狂気的な性格は次郎と似ている。
関連項目
駒形由美:アニメ新京都編ではガトリング砲を持ち出し、わずかだが斎藤一と戦った。
佐渡島方治、鯨波兵庫:こちらは実写映画版にてガトリング砲を持ち出し、わずかだが剣心と交戦した。
ルー語:新アニメ版では日本語に英語を交えて話すシーンが多く見られる。
巻町操:大政商を目指す観柳が蒼紫以上に今後絶対に出会ってはいけない人物。