概要
自分または他者の生殺与奪の権を持った相手に対し、対象の命を奪わないように頼むことである。
ただし、現実ならともかく創作(特に敵側)ではあまり成功せず、うまくいっても“死んだ方がマシ”な目に会う事が多い。
中には命乞いに成功して見逃して貰えたにも拘らず、『見逃してくれた相手に対して不意打ち等で襲いかかった結果、返り討ちにされてせっかく失わずに済んだ命を自分から捨てる羽目になった』という愚かな末路を辿るケースや、主人公達からは逃げられたものの、その後自身が属する組織の首領や幹部等の上司である悪役に役立たずや(倒されるどころか我が身可愛さに『命乞い』という醜態を晒した)面汚しとして粛清されるパターンもある。
フィクションでは基本的に悪役・敵役側が行う手口だが、主人公側がやった場合、敵の油断を誘う搦め手のパターンが多い(後述のジョセフがその最もたる例である)。無法者や悪漢に襲われる一般人も行う事もあり、その場合は主人公等によって救われるパターンも多い(物語冒頭だと世界観説明の為に殺される事も多いが)。
また、悪役や加害者側が主人公側に命乞いを要求するパターンも多いが、大概は主人公側が折れずに失敗に終わる事が多い。多くの場合は後述にもあるが悪役や加害者側の自業自得・因果応報であることが多い。
なお、pixivにおいては命乞いの結果(=無慈悲に処刑されるシーン)や、命乞いの前後に凌辱されているシーンが含まれていることも多いため、タグの性質上ではR-18やR-18Gになりやすいので閲覧は要注意。
命乞いの一例
命乞いにも色々なパターンがあるのでそれをここに記載する。
※:他のパターンをご存知の方は加筆をお願いします。
ひたすら哀願する
モブ娘「ひっ……! やめて! 殺さないで! 助けて!」
主に何の特徴もないモブによく見られるパターンだがそれ故に実は一番よく目にし、下記のようなパターンでも土壇場でこちらに移行することも多い。
特に交渉カードを出すわけでもなく、ひたすら哀願して情に訴える。当然これで許されるはずもなく、次のコマあたりで何のタメも容赦もなくあっさりと殺害されることが圧倒的に多い。これで助かるのはそもそも相手が人質、奴隷、強姦、生贄、拷問など別の用途に供するつもりでいるため生け捕りにする必要があるなど、状況がさらに悪化するケースが大多数である。無論、その用が済んだら改めて殺されることも多い。
味方が行う場合は「なぜ殺すんだ?」「どうしてそんなひどいことをするの?」と人の心に訴えかけることも多いが、基本的には空振りに終わる。
一方、悪役や加害者が行った場合「お前はそれを素直に聞き入れたのか?」「お前はあの子(被害者)が『助けて』と言ったらすぐにやめてやったのか?」などと言い返されることも多い。自業自得である。
金や物や地位等を差し出す
悪徳な貴族「ゆ……許してくれ! 金ならいくらでも出す! だから命だけは……」
主に金や物に恵まれている貴族や金持ち、社長等が用いるパターン。
だが、この方法の命乞いをしている者は頼む相手から大切な何かをゲスな理由で奪っているため命乞いには失敗する場合が多く、もし殺されなかったとしても自分の悪事の報いとして惨い制裁を受けるのが定番である。
悪役同士の場合は自身が握っている情報を盾に「俺を殺せばあいつらの居場所が分からなくなるぞ」と命乞いをすることがあるが、聞き入れる雰囲気を見せつつ裏切りや任務に失敗したことへの粛清を優先して殺すというご無体な展開になるのがよく見られる。
終わった関係をネタにする
元・仲間「頼む…許してくれよ……俺達一緒にやってきた仲間だろ? な?」
小説家になろう、カクヨム等のWeb小説サイトで閲覧できる追放ものや復讐もので見られるパターン。主に「主人公に酷い仕打ちをしてパーティーや組織から追い出した仲間(主に勇者等のパーティーのリーダー格であるのがお約束)や、自分の浅はかすぎる思い込みで主人公を嘲笑や差別したクラスメイト」等が馴れ馴れしく用いる。
当然この時点で、主人公は命乞いをしてきた相手に対して友情や仲間意識は完全に消滅しており命乞いに応じるわけがなく、ましてや仲間やクラスメイトとしてヨリを戻すこともなく「もう○○じゃないだろう」と一蹴されるのが定石である。中には、主人公を裏切った異性の幼馴染・恋人・婚約者・結婚相手等が用いるパターンもある。その場合は「浮気相手に騙されていた」、「確かに浮気相手と関係はもったけど、心はあなたの物」等の責任逃れや言い訳をするが、この段階で主人公には新しい恋人・婚約者ができているため、これまた主人公が応じるはずがない。
相手を自分の仲間に引き入れようとする
元『組織』の男「お前らも早くこっちにこい! 『組織』はもうダメだ!」
上のパターンに似ているがニュアンスはかなり異なり、こちらは「追い出した方」というより「追い出された方」あるいは「逃げた方」が行うことが多い。相手は追手として放たれた元仲間、あるいはヒットマンである。
人間誰しも上の命令に疑問を覚えることはあるものだ。ましてそれが組織の倫理、あるいは組織そのものの崩壊を招くものであれば袂を分かつこともある。そして、悪の組織とはそういった足抜けを許さず、追手を放つのがお約束だ。
そんな追手に対して自らの正義や組織の実情を主張し、仲間に引き入れようとするのがこれである。交渉カードとしては「クスリにだけは手を出さないと思っていた」「ボスが企んでいることを知っているのか」「お前も用済みになれば殺されるぞ」といったような内容が多い。
このカードを切った場合の展開は相手によって大きく異なる。相手が一人でやってきた場合は「そんなことはすでに知った上で組織に忠誠を誓っている幹部」「理由はどうあれ依頼は確実にこなす仕事人」「そんなことがあるはずない、あるいは自分に限っては不利益を受けるわけがないと高をくくっている楽観主義者」等の理由でそのまま殺害されることが多い。
一方、複数人で襲撃してきた場合はそのうち一人以上が事実を知らない、あるいは同様に疑問を覚えている、場合によってはそもそも自分も裏切るつもりで、裏切り者と接触するためについてきたなど、交渉に乗って共闘したために結局助かるというケースもよく見られる。
交渉する
いじめっ子「お前が嫌がるようなことはもう二度としない! だから許してくれよぉ! なぁ!」
身勝手な理由で相手に暴行などの危害を加えていたいじめっ子や不良などの悪人・悪党が、被害者に追い詰められた際に用いるパターン。当然、発言者から酷い仕打ちや被害を受けた復讐者は「わかった、もうすんなよ」なんて応じるわけがなく、徹底的に痛めつける等をして復讐を果たすパターンが多い。
また、少し珍しいパターンとしては「もう俺がお前にかなうわけないってわかっただろう?」「俺を殺す必要なんてないはずだ」などと開き直って自分の弱さを盾に良心へ訴えかけるというパターンも見られる。
話し合いで乗り切る
元・仲間の冒険者「ま、待て! 話せばわかる!」
前述の『交渉する』と少し似ているが、こちらは自分が相手を殺すこと前提で襲い掛かるも失敗して逆に相手に追い詰められ、自分の生殺与奪の権利を相手に握られた際に用いる。
だが、自分から殺すこと前提で襲い掛かって失敗しても話し合いで相手を言いくるめて窮地を乗り切れるなんてムシのいい話があるわけないし、もし仮にそれが通じたら自分が襲い掛かった相手は「超」や「バカ」が付く程のお人好しである……が「俺を殺したら○○が悲しむぞ(犯罪者になるぞ)」のように自分のしでかした悪行や愚行を棚上げして、相手の良心や人情を突く形で命乞い……もとい不意打ちに成功するパターンも見受けられる。
自分の立場を利用した上から目線の命乞い
勇者「俺を殺したら魔王を倒せる奴がいなくなって世界は滅ぶんだぞ! そうなったらお前に責任取れるのかよ!?」
義父「捨て子だったお前を拾い上げて育てたのは誰だと思っている!? 恩を仇で返すつもりか!」
マッドサイエンティスト「私の優秀な頭脳が失われても良いのか?」
王族や勇者、あるいは育ての親などの自分の立場、肩書きを利用した上から目線の命乞い。
人にものを頼む態度ではないし、そもそも略奪や殺戮に破壊、寝取りに洗脳といった絶対にやってはいけない悪事、犯罪に手を染めていたりで立場や肩書きを名乗る資格を失ってるパターンが多い。
ちなみに「魔王の討伐」といった命乞いをする者の役目や使命は、主人公が引き継ぐのが定番である。「育ての親」のケースは主人公にとっても簡単に割り切れないことが多く、涙ながらに説得して改心させたり、悲しみを乗り越えてトドメを刺すというケースである。
命乞いに関連するキャラクター・人物一覧
※:他にもご存知の方は加筆をお願いします。
漫画作品
- フリーザ(ドラゴンボール)
- 恐らく全ての創作作品で考えて特に有名な悪役。主人公との激しい攻防の末に、自らの技で自滅してしまい、文字通り虫の息状態で命乞いをする。当時は90年代だった為前述のシチュエーションのどれも無く、主人公の故郷や種族を滅ぼした元凶が命乞いをする事は恐らく驚いた者が多かったであろう。最初こそは主人公が今までのフリーザの悪事の数々を糾弾しながら激しく拒絶するも、最後のチャンスとして自分のエネルギーを分け与えた。だが、その情けでチャンスをくれた恩を仇で返すように不意打ちを仕掛けるも、最終的に主人公にトドメを刺された。…しかし、これでも死亡はせず、この先も何度も復活を繰り返している。
- ラバーソール、鋼入りのダン(ジョジョの奇妙な冒険 第3部)
- ジョセフ・ジョースター(ジョジョの奇妙な冒険)
- 主人公が命乞いを行った珍しい例(それも累計3度)。ただしそのいずれも作戦の上であり、闘う意志を無くしていなかったので、第2部のヒーローの資格を失わなかった。
- 1度目はワムウに対してで、仲間を逃がすための行為だったと気に入られ死のウエディングリングを埋め込まれるものの約1ヶ月の猶予をもらえた。2度目はそのワムウとの再戦で追い詰められた際に小石を投げつけながら命乞いするという普通のバトル漫画の主人公なら絶対にしないものだったが、それは自分がボーガンで撃った鉄球をワムウに直撃させるための作戦であった。3度目は第3部でマライアに対してで、相手の能力を利用して仲間との挟み撃ちにするための時間稼ぎであった。
- 平山幸雄(アカギ〜闇に降り立った天才〜)
- 武田観柳(るろうに剣心)
- 美しい魔闘家鈴木(幽遊白書)
- 戸愚呂弟と戦った時に靴を舐めても助かりたいというほどの見苦しい命乞いをしたが、「殺す価値すらない」として見逃された。その後、最終的に戸愚呂弟よりも強くなるという異例のキャラであった。
- ゴキブリ(こちら葛飾区亀有公園前派出所)
- ザボエラ(ダイの大冒険)
- 切り札の超魔ゾンビに乗り込んでミナカトールを形成する魔方陣を守るダイの仲間達を圧倒するが、ロン・ベルクの捨て身の必殺技「星皇十字剣」の発動で撃破されてしまう。だがザボエラ本人はすんでのところで脱出して逃走を図っていたがそれを見越していたクロコダインに見つかるや否や「この場は見逃してくれいっ!!! 今後は魔王軍には決して協力せんと誓うっ!!!」と必死の命乞いで和解を求めるが、その裏で密かに自分の体内で洗脳効果のある毒を調合し、クロコダインがザボエラの命乞いに応じて手を差し伸べるや否や自分の爪からその毒を注入しようとするも、それも見抜いていたクロコダインによって躱された挙句グレイトアックスの柄を叩き落とされて両腕の骨を圧し折られて身動きを封じられ、トドメとばかりに獣王会心撃で引導を渡され自業自得の末路を迎えた。
アニメ
特撮
- ヨロイ元帥(仮面ライダーV3)
- ギエン(未来戦隊タイムレンジャー)
- ボクデン星人ビスケス(特捜戦隊デカレンジャー)
- 蛮野天十郎(仮面ライダードライブ)
- アントン博士(宇宙戦隊キュウレンジャー)
- キュウレンジャーに追い詰められた際、「待て! この天才的頭脳が失われるのだぞ! 宇宙の損失だとは思わんか?」と上記の蛮野と全く同じ傲慢な言い分で命乞いしたが、キュウレンジャーには「思うか!」と即答で一蹴され止めを刺された。
ゲーム作品
- ボクオーン(ロマンシングサガ2)
- 主人公である皇帝に追い詰められると命乞いを行う。それに許すか許さないかの二択の選択肢が出るが「許す方」を選んだ場合は不意打ちで襲い掛かって来て、それにより陣形を崩されるというデメリットを被ってしまう。なお、その後のボクオーンとの戦闘で皇帝が討ち死にした場合は、次代以降の皇帝が同じ状況に立たされても不意打ちを受けなくなる(「伝承法」により死んだ皇帝の記憶を受け継ぐため)。
- パッチ、ザ・グッドラック(ARMORED CORE for Answer)
- 特定の企業に属さない独立傭兵のひとりとなるリンクス(アーマード・コア ネクストの搭乗者のこと)。とあるミッションで、ある勢力に雇われ、主人公と敵対することになるが、自分を雇っていた勢力の機体がやられ、彼も劣勢に立たされると戦意喪失。続けて「俺は、指示された通りやっただけだ。あいつがいなけりゃ、戦う意味もない」「それに、あんた達はまだ生きてる、ノーカウントだ! ノーカウント!」「な、わかるだろ? 同じリンクスじゃないか」などと次々にまくし立てて許しを乞い、更には器用にもACでダンスを踊りだす。この有り様にはプレイヤーは勿論オペレーターや寮機も呆気にとられ、しまいには「あまり意味があるとは思えませんが」(要するにここで見逃しても近い内にどっかで死ぬ)とまで言われる始末。勿論トドメを刺すこともできるが、ほっとくと本当に離脱しミッション完了となる。
- 悪魔(真・女神転生シリーズ)
- 悪魔のヒットポイントがわずかになると命乞いをしてくることがある。ここで見逃せば逃亡するか運が良ければ仲魔になってくれるが、逆上して襲ってくることもある。逆に見逃さないとやけになって戦闘続行になるが、騙したことを謝って仲魔になってくれることもある。
小説・ラノベ作品
- ユージン(「攻略本」を駆使する最強の魔法使い)
- 自分が追放した主人公が操る自分が討伐して名声を得ようとしたが完膚なきまでに敗北した怪物に追い詰められた際には、前述の『終わった関係をネタにする』『交渉する』『自分が勇者であることを利用し上から目線の命乞いを行う』の三種類の命乞いを行ったが全て失敗に終わり、自らが働いた悪事の報いとして完膚なきまでに叩きのめされた悪徳勇者。
- セイン(経験値貯蓄でのんびり傷心旅行)
- こちらもユージンのように因縁の相手にして不倶戴天の存在である自分が冒険者パーティーから追放した主人公との一騎打ちで戦うも、右腕を切断されるや否や、掌を返して自分と自分が寝取った主人公の婚約者が、大勢の命をはじめとする何もかもを修復不可能にまで奪い、粉々にしておきながらそれらを棚に上げて『仲間や親友』という関係を引き合いに命乞いを行い、それが功を奏してその場で殺されずに済んだものの、悪事の報いとして殴り飛ばされた(書籍版では何発も顔面を殴られた挙句、太ももの骨をへし折られた)挙げく、自分が国王をはじめとする多くの人を殺した祖国に自分の身柄を引き渡され、一週間(書籍版では数か月に激増している)に渡って連日10時間以上の拷問を受け続けた挙句、処刑された。
- デスドレイン(ニンジャスレイヤー)
- フジキド・ケンジに全身を内側から焼かれる拷問を受けた際に命乞いをするが、その理由が悪いことはもうしないからではなく、もっと悪事を働きたいから見逃せという例のないものであった。もちろん許されるはずもないのだが、フジキドは追撃よりも仲間の援護を優先したために、悪党にしては珍しく生き延びることができた。
実在の人物
その他
- ニコライ・ボルコフ
- TRPG実況を中心に活躍するボイロ実況者。AmongUsを用いたコラボ企画であるふにんがすにおいて投票にて追放される寸前に、TRPGのロールプレイさながらの命乞い即興劇を敢行することで有名となる。その内容は『「吊らなかったら心から『ありがとう』と言う」として交渉』『故郷に帰って娘を一目見てから処刑して欲しいと交渉』『上層部への不満を煽り、革命を起こそうとする』『真意を伝えるために即興ラップを披露する』『事前に作成した動画にてプレゼンテーション』等と多彩であり、『ニコライする』として参加者・視聴者共に親しまれている。基本的には始まった瞬間に粛々と投票されるのが様式美であり、本人も吊られる前のお約束として敢行するのが常だが、中には息子をダシにしたニコライがなぜか息子がいない参加者の心の琴線に触れた結果追放を免れてしまい、衆人環視の中で堂々と殺人を敢行して『見ろよ!お前らが甘ちゃんなせいでコイツが死んだぞ!』とさらなるロールプレイに走ったことも。
関連イラスト
関連タグ
くっ、殺せ!:対となる言葉で、主に女騎士の要素を持つキャラにマッチする。
異世界もの(追放ものや復讐もの)に登場する悪徳勇者など:プロローグで主人公に酷い仕打ちをするが、主人公に追い詰められた際に用いるのがお約束になっている。
卑劣漢(悪女):登場する作品において前述のビスケスやジャンガのように『命乞いをして、相手が油断したり躊躇した所を奇襲する』といった卑劣そのものな手を使う事が多い。
土下座:命乞いを行う際に『誠意を見せる意思表示』として定番のアクション。中にはワイリーのようにジャンピング土下座という派生テクニックを駆使して命乞いを行うキャラクターもいる。