「…覚えておけ、ネズミ、前回の課題をすべてクリアして、はじめて"改良"という…!」
解説
魔王軍妖魔士団団長を務める魔族の老人。
卑劣で狡猾な策士で、その計略をもって幾度かダイ一行を苦しめた。ダイたちに力添えをするクロコダインにとっては因縁深き人物。
戦闘シーンはあまりないものの、その魔力と呪文はハドラー以上とされている。
中盤からは実の息子であるザムザを助手に、超魔生物なるバイオ技術の研究に着手していた事も明かされ、その技術力は少なくない影響を及ぼしていく事になる。
武人としては詰めが甘い点が目立つものの、魔族かつ搦め手を得意とする妖魔師団の軍団長なだけあって、戦闘手段は非常に多芸。
プロフィール
人物像
見た目通りに語尾に「じゃ」をつけるなど老人風の喋り方で話し、「キィ~~ッヒッヒッヒッ!!」と悪役らしい笑い方をする。
ハドラーからは「魔王軍の中でも最も狡猾で最も残酷な頭脳の持ち主。油断もスキもない男」と知恵者として高く評価されていた。事実無名の子供でしかなかったダイの危険性をかなり早い段階で認識したり、好戦的なフレイザードがその実冷静な判断力を兼ね備えた人物だと認めているなど高い洞察力を持つ。
また、悪魔の目玉を各地に送り、監視や敵の弱点の分析などを行う情報収集を担当している。本作の悪魔の目玉は魔王軍全体の情報収集および通信連絡の役割を担う重要な存在だが、ザボエラは妖魔士団が悪魔の目玉を管理する立場を利用し敵味方問わず日常的に覗き見をしていた。
味方に対する覗きは弱みを握ってやろうという意図もあるようだが、バーンとハドラーの謁見という咎められれば申し開きようのない場すら覗き見している危なっかしいところもある。
こうした知謀に驕って、他人全てを見下し道具としか思っていないというのが、このザボエラという男の本質であり、その態度を周りに隠そうともしない。
現に息子であるザムザへ面と向かって「ワシの役に立たなければゴミ」と告げており、その息子からも「誰が死のうが一切悲しみを抱かない男」「自分を高く見せる事しか頭にない」と断じられていた。
それ故(元も含む)同じ魔王軍の構成員からも良い感情は持たれておらず、
- 「魔王六軍団長の恥さらし」(ヒュンケル)
- 「人から人へ自分の成り上がりだけを目あてにうろつくドブネズミ」(ミストバーン)
- 「いずれハドラー様に災いをもたらすダニ。一刻も早く処刑するべき」(アルビナス)
- 「この世には本当に煮ても焼いても食えないヤツがいる」(クロコダイン)
- 「知力さえ高ければ良いというものでもないのだな…全く…憧れない!」(ガンガディア)
- 上記のガンガディアの発言に対してバルトスは横で頷いていた。
- 上記のガンガディアの発言に対して「一字一句同感だぜえ」(ヒム)
- 上記のヒムの発言に同意して「ダニめ」(シグマ)
- 上記のヒムの発言に同意して「ブローム💢」(ブロック)
と散々な言われようであった。
「卑劣なり!妖魔司教の巻」というサブタイトルまで存在する。
そしてそんな他人を利用したり、都合が悪くなれば仲間を見捨てるコウモリ野郎な性格が災いし、次第に人望を無くして孤立するようになっていった。
戦闘力
身体能力は六軍団の中で最弱であるが、魔法使いとしては非常に優秀な能力を持っており、大魔王バーンに匹敵する力を得たハドラーの動きを不意打ちながら封じるなど、決して弱者ではない。
ハドラーが「魔王軍六大団長は最強のメンバーだった」と述べたのも、既にすっかり評価が凋落していたザボエラを含めての評価であり、その実力を軽く見積もってはいなかった。
劇中ではノヴァの剣から逃げ続ける俊敏性とスタミナも窺える(逃げ方はギャグそのものだが)。
しかし数々の作戦や言動からもわかるように、相手が弱るなどの一方的な状況か、ギリギリまで追い詰められでもしない限り、自分で現場に出たり戦ったりしようとしない。
得意分野の魔法でまともに頑張れば充分強いくせに「自ら戦うなどバカのすること」と、安全な場所で手柄をとることしか考えないのである。
それなりに高い実力を持ちながら、「自分は人を利用するのが上手い」「頭脳派の策士は戦わない」という理想像と嗜好に執着し、ろくに実績も上げられていない策謀にばかり目を奪われ続けて実力を活用する機会を自ら捨てていたのが実情であった。
その一方で、自分は非力だという自己評価の低さから「強大な力で相手をねじ伏せたい」という欲求は強く、それを叶えるための計画にはしっかりと力を注いでいたため、こちらはそれなりの成果を生み出している。
同じ魔王軍にあって、本気で鍛錬すれば最強になれるなどと嘯いたキルバーンが「相手を罠にハメて勝たないと気が済まない」「罠でもがき苦しむところを始末するのが大好き」と理想と嗜好を優先した戦法を選んでいたのとは似ているようで周囲からの評価にはかなり落差があり、他人を利用するのが前提で自己完結できないザボエラは敵味方問わず戦力としての強弱ではなく精神性の面で酷評されている。
武器・魔法
- 毒素
数百種類にも及ぶ毒素を体内に持ち、爪から相手に注入する。僅かにかすっただけでも効果がある。ポップを麻痺させた神経毒は複数の毒素を含んでいることからマトリフのキアリーでも簡単には治らなかった。レパートリーも豊富で、麻痺だけではなく「相手の意識を奪い意のままに操る」という代物まである。
特に後者の毒は満身創痍で逃げ出している途中に体内で精製したものであり、毒物の扱いにいかに長けているかがわかる。
相手を眠らせる香を放つアイテム。疲弊していたクロコダインやヒュンケル、レオナ姫には効果があったがポップには通用せず、彼の声を聴いたダイは自力で目を覚ました。
敵の息の根を止める即死呪文。本編中で死の呪文を使ったのはザボエラのみである。
死には至らせなかったが、ダイを助けようとしたバダックの足止めに成功した。
姿を変える変身呪文。ポップの不意を突くためマァムに変身したほか、部下のあくましんかんを自らの姿に変え、影武者として使っていた。マァムに化けた際は、事前にハドラーから聞いていたのかポップの恋心をくすぐる言動で油断を誘うなど中々の演者ぶりを見せている。
瞬間移動呪文。自身が行った事がある場所ならどこへでも行ける移動呪文。
飛翔呪文。魔法力を放出することで空中を自由自在に移動することができる。
爆裂呪文。名前は叫んでいないが魔法の球を岩山から露出させる際に使用している。何気に一度に八発のイオラを放つなどすごいことをしている。
閃熱呪文。極大閃熱呪文(ベギラゴン)を使うマトリフに対して発動した。
火炎呪文。体力を消耗したダイたちに使ったがあるモノに阻まれた。
- 集束呪文(マホプラウス)
切り札。他者の呪文を受け、それを自分の呪文に上乗せして放つ呪文。
作中ではサタンパピーから10発近いメラゾーマを受けて集束し、それを自身のメラゾーマに上乗せして放った。設定上ではザボエラ自身が使える呪文なら全てに適用できる。
使用者のザボエラが他人に自分を押し上げさせる形でしか使わないことから「他人の力を利用する卑怯な呪文」と紹介されているが、原理的には味方だけでなく敵の呪文も受け止めることができる筈なので、後出し可能ならマホカンタのような攻防一体の能力を持った呪文といえる。この集束に上限が有るのかは不明であるが、無いならばメラゾーマを高出力にしたバーンのカイザーフェニックスをも吸収無効化し、力に変えられる事になる。
よく「発想や原理はミナデインと同じようなものでは」とも言われるが、ミナデインは使用者だけが唱えて協力者は魔力を提供するだけで良く、マホプラウスは使用者が専用呪文を唱え、周囲の者は揃って同じ呪文を撃ってやる事が必要なことが大きく異なる。
収束と増幅という効果を得るためには事前に助力を取り付けておかねばならない点で、マホプラウスのほうが扱いにくいと言える。
- 拘束
右手から発するエネルギー波によって対象の動きを止める技。詳細は不明だがザボエラの能力から見て魔力を用いた技と思われる。バーンに匹敵する力を得たハドラーすらも自力では逃れられないなど強制力はかなり強い。
なおアニメ版では「ハドラーも動けないがワシも動けない」という説明がされている。
- 魔法の玉
ハドラー軍が使っていた「魔法の筒」の発展系。
サイズは筒より大きいが、玉一つに数十体ものモンスターを収納できる。
「デルパ」の掛け声で内部の魔物たちを開放するが、その際に爆発して壊れてしまうため使い捨てである。
- 毒牙の鎖
自身の猛毒を帯びさせた鎖付きの鏃。急所を外しても一かすりで死に至る毒性を持ち、対象に目掛けて投げれば光弾となって貫く。
ザボエラが最後に使用した最大の切り札。彼の理想である「自分の肉体は一切傷つかずに思い通り動かせてなおかつ一方的に敵をいたぶれる能力」。
詳細はリンク先を参照。
劇中の活躍
15年前
元は息子と人間界の辺境で暮らしていたらしく、ハドラーが魔王として活動していた当時は彼を顧客にしていた在野の研究者だった。
ハドラーからは『俺の部下になれば、世界の四分の一を与えてやる』という高評価で配下にならないかと勧誘を受けていたが、「自分は隠居がお似合い」と何度も断っており、魔力で威圧されてもより強い魔力で跳ねのける気骨も見せた。
しかし下劣な性格はこの時から健在で、何度も断ったのも「後々安く見られないよう自分の価値を釣り上げる」為の根回しだとザムザに嘯き、息子の研究成果も平然と自分の手柄にしていた。
この時ザムザの額にグラスを投げつけており、この頃からすでに毒親でだったようだ。
そうした経緯もあってか、正式に配下入りしたのは大魔王バーンの台頭後であった。
その後、呪法により凍結してしまったハドラーを一年かけて発見。若き獣王に有償依頼のもと回収させ、魔王城へと届けさせる。
勿論この活躍も100%恩を売るためのもので、協力者である獣王をわざわざこき下ろした上で「救出したのは、このワシだという事を報告するのだぞ?」とハドラーの家臣らに強調。
彼らを露骨に見下しながら「解呪の方法がわからなければいつでも頼ってこい」と述べて帰ったが、ザボエラ自身も解呪のアテは全くついておらず、その調査も息子に無茶振りした状態で「トロルや骸骨風情よりは先に見つけられるだろう」という皮算用だった。
この二人の家臣は律義者であった上、若き獣王もザボエラの依頼で動いたことはしっかり伝えていたので、そのままなら十分な感謝と恩義は得られたはずであった。それを自らの言動で台無しどころかマイナスにまで持っていくのは、如何にもザボエラらしいと言える。幹部の中でもプライドが高く執念深いキギロががその場にいたら、よりマズい確執を生んでいたかもしれない。
ハドラーがアバンに敗北した後は自身が栄達するという計算が崩れたことでハドラーに失望し散々罵倒するが、精神体となっていたハドラーが目の前に現れ、より強大なバーンの配下となった事を聞かされそのままバーン率いる新たな魔王軍の一員にされてしまう。
妖魔師団長ザボエラ
初登場時はハドラーすら凄まじい衝撃と共に打ち破ったデルムリン島の光の魔法結界を音も立てずに通り抜けるというなかなかのインパクトを見せた。
デルムリン島へ侵入後、ダイの親であるブラスを掻っ攫う。
その後、ダイとの戦闘で、片目を失ったクロコダインの前に現れ、ダイに撃退された彼に対して「このままでは魔王軍に居場所がなくなるぞ」と脅しつけ、誘拐したブラスをダイに襲わせるという汚い人質作戦に協力させる等、序盤から下劣な策を取った。
表舞台に立つのはクロコダインだが、策を授けたのは自分であるため地位の向上に繋がると部下と共に笑っていたが、彼は戦士としての誇りに迷いを生じた末に敗北。密かにその遺体を回収し、復活させるために蘇生液に浸からせたが、再び見に来た時にその姿はなくなっていた。
ハドラーと共に地底魔城を訪れた際は、ヒュンケルが「バーン様に気に入られている」という話を聞き、取り入ろうと目論む。手始めにマァムを弄べるようにすることをほのめかすが一蹴されて逃げ帰った。
バルジ島の戦いではミストバーンと共に自ら出撃し、初めてダイと対面。バダックにザラキを放って苦しめる。しかしダイに合流したクロコダインの加勢により形勢は逆転、クロコダインから卑劣者として殺意を向けられるが、部下の妖術師をモシャスで自分の姿そっくりに変身させ身代わりにして逃げ去った。
その後、カール王国へ侵攻中のバランと合流。バルジ島での顛末を報告しつつ、わずか5日でカールを滅ぼしたバランに恐れを抱く。その際にダイの話をしたことで、バランにダイの正体を気づかせる要因となった。ハドラーも一目置くバランには敬語を使うなど軽く見てはいなかったようだが、その厳格さも見抜いていたのか彼に取り入ろうとしたことはない。
この時は悪魔の目玉による通信ではなく、わざわざ軍団長であるザボエラ本人がバランの元に派遣されているため、ダイ大ファンの中には鬼岩城を動かしてカール王国を突っ切る事を予定していたため、蘇生中で動けないハドラーに代えて確認役に遣わされたのではと考える人もいる。
そのバランがダイたちに撃退された後、休息中のダイ一行をハドラーと共に襲撃。魔香によって彼らを眠らせ、効かなかったポップにはマァムに化けて接近し麻痺毒による不意打ちで戦闘不能にした。
ポップにトドメを刺そうとするが、駆けつけたマトリフによって片腕を切断されて阻止される(2020年版では切断はされず、炎系の呪文で焼かれる形に変更されている)。マトリフと戦うハドラーに加勢して優位に立つも、復活したダイによって呪文を跳ね返され撃退される。
自身だけはルーラで脱出し、ハドラーに対し「力添えを続けてきたのに役立たずが!」と吐き捨て次はミストバーン辺りに取り入ろうと画策するザボエラだったが、咄嗟に彼の足を掴んで共に脱出していたハドラーから「オレとお前は最早一蓮托生。他の者に取り入るなら命はない」「超魔生物の研究をオレのために使え」と脅しつけられる。
以降は「魔王軍の科学者」というポジションが強調されるようになる。
魔軍司令補佐ザボエラ
ハドラーの肉体を改造した後は妖魔師団ごともはや忘れ去られたように扱われ、ダイ達の眼中からも消えてしまった。功を焦ってハドラーと交戦した直後のダイを始末しに向かうが、その際クロコダインに自分の汚点を糾弾され逆上している。
勇者を仕留める好機と、とっておきの呪文マホプラウスを一行に向けて放ったが、ハドラー親衛騎団の兵士ヒムに遮られ、独断専行の廉で魔牢に幽閉される。本来ならそのまま処刑となるはずだったが、ハドラーは自分のパワーアップに貢献した事と、その為にザムザが死んだという負い目から見逃している。
その後、黒の核晶の大爆発で魔牢が壊れたのか脱出し、大魔王バーンとハドラーの戦闘に割り込む。ミストバーン達が足止めされ孤立したバーンに止めの一撃が放たれる瞬間、ハドラーの動きを封じ逆転勝利に寄与した。
この功で魔軍指令補佐の地位を与えられ、今度は自らの上司となったミストバーンに取り入ろうとする。もっとも、バーン直轄のミストとキルぐらいしか幹部が残らない状況での魔軍指令補佐なる地位は単なる格下であり、独自の戦力を指揮していた軍団長時代から待遇が良くなったかと言えば微妙なところ。
しかもミストバーンから「ハドラーを超魔生物に改造した時、黒の核晶に気づかなかったのか?」と問われ、気付いていたが放置していたと事も無げに明かし、さらに「いずれはバーン様のためにくたばる奴。巻き添えさえ喰らわなければいい」とハドラーを侮辱。
決別はしても内心ハドラーへの情は失っていなかったミストバーンはこれに激昂し、媚びを売るザボエラを一蹴。「カスがっ!貴様にハドラーを侮辱する資格は無い!」とかつて彼の弟子であったヒュンケルと同様に突き放されてしまった。更には『裏切る素振りを見せれば殺す』と事実上の死刑宣告までされている。
最終決戦の際、ヒュンケルとクロコダインの処刑場に現れ凄まじい数の魔界の魔物を呼び寄せ、更なる出世を狙って大破邪呪文ミナカトールの五亡星を阻止しようと、一かすりで死に至る「毒牙の鎖」でポップを狙う。
しかし寸前でメルルに阻まれ、それがポップを勇気の光に目覚めさせ結果として破邪呪文の完成に一役買ってしまう。皮肉にもかつて行った「汚ねえ人質作戦」でポップの勇気を奮い起こしたのと同じ結果になってしまった。
魔物達も全滅させられ、ミストバーンに後を押しつけて大魔宮へ戻ろうと苦しい詭弁で誘導を図るが、既に魂胆を見透かしていた彼からは軽蔑を通り越して滑稽にしか映らなかった。
そして「何の成果もないまま逃げ帰れば、待っているのは処刑だ」と突き放され、
「ミストバーン様っ……いやっ! ミストバーン!!」
「あんまりじゃあっ!! ワシらは、元は同じ六団長!! 共に戦ってきた仲間ではないかっ!!」
「それをっ…それを、見捨てるのか!!? ええっ!!?」
ザボエラは言うに事欠いて「仲間」という正義の味方の金看板を持ち出してまでミストバーンに縋るが、「仲間」故にバーン様最優先という自分の信念を知っているだろうと問い返され、もはや何も言い返せず膝を折った。
今まで人を利用するだけ利用し使い捨ててきた小男が、ついに「使い捨てられた」形である。それはまさにその場でミストバーンが言ったとおり「人生のツケというやつは最も自分にとって苦しいときに必ず回ってくる」状況でもあった。
同情したクロコダインから「この人数を相手に勝てると思うほどおまえもバカではあるまい」と降伏を勧められるが……
「笑わせよる!! 笑わせよるわあっ!!!」
「よりによってバカの代表みたいなおまえに、このワシがバカ呼ばわりされるとはなァッ…キィ~~ッヒヒヒッ!!!」
逆に彼をバカにしながら哄笑。ついに切り札を展開し、最後の戦いを演じる。
魔法陣を守るクロコダイン、ノヴァ、そしてミストバーンと互角に戦ったロン・ベルクさえ圧倒したが、ノヴァの決死の行動に心を動かされたロンの必殺剣の前に破れ、自慢の切り札はバラバラに分断され、自身も満身創痍となる。
密かに戦場から逃れるも魔力もアイテムも尽きており、岩陰に隠れて這いずるという有様だった。そのまま逃げようとするが、それを見越していた因縁深いクロコダインが目の前に。まだ策を残しているとはったりを仕掛けるが、性格を熟知していたクロコダインに通じるはずもなかった。
(なんとかするんじゃ!! まだ…まだ手はあるはずっ!!!)
(ワシがこんなデクの棒と知恵比べして負ける筈が無いんじゃ…!!!)
そこでザボエラは「六大団長の中ではワシだけが余りにも非力」「策を弄する以外生き抜く道がなかった」と語り、同情を引く芝居をしてから魔王軍と手を切ると頭を下げる。
「自らの切札、超魔ゾンビを破られ痛感した…やはり、ワシは人にすがらずには生きていけん奴だったようじゃ…」
「それがわかった今、恥を忍んでおまえに頼むっ!!」
「この場は見逃してくれいっ!!! 今後は、魔王軍には、決して協力せんと誓うっ!!!」
「もはや…ワシはおまえにしか縋れんっ!! 魔王軍から見捨てられ人間たちにも受け入れられない男なのじゃあっ…!!」
そう言いながら、「わずかに体内に入っただけでも相手を意のままに操れる毒」を体内で製造。和解の手を伸ばしたクロコダインを、まんまと策に引っかかったと内心で嘲笑う。
(やっ…やったァ~ッ!!! かっ…かかりおったぞこのバカめがっ!!!)
(う~~っくくくくくっ…!! クロコダイン!! やっぱり、おまえは底無しの愚か者よっ!!)
(ウドの大木!! いやっ…!! ワシの人生の踏み台をつくるための…材木じゃああっ!!!)
クロコダインの掌を狙って猛毒の爪を突き立てようとするが、それすらも見越されていたため失敗。
逆に斧の柄を叩き落とされ、ロン・ベルクの意趣返しとばかりに両腕をへし折られて身動きが取れなくなる。
ザボエラ「きッ…貴様ァッ…!! ワ、ワシにだまされたフリをっ…!!!」
クロコダイン「……ザボエラよ。頭の悪いオレだが、騙され続けたおかげで、一つ物を知った…」
クロコダイン「それは……! この世には、本当に煮ても焼いても喰えぬヤツがいる! ……という事だ!!」
ザボエラ「まっ…待ってくれェッ!!! クロコダイッ…」
策に溺れたことを悟って今度こそ本当の命乞いをするも、最後まで言う間も与えられず今度こそトドメを刺された。遺された遺体は生命活動の停止による体内毒素の暴走により、程なくジュウジュウと溶け果ててしまった。
クロコダインを終始「バカの代表」と見下していたザボエラだが、上記の言葉を本気で言っていれば、情に深いクロコダインなら命だけは見逃してもらえた可能性は十分にあった。義理堅い武人クロコダインにとってザボエラは、ロモスでダイたちに敗れた際に蘇生液で生還させてくれた「命の恩人」なのである。
しかし「バカを利用し安全に手柄を立てる賢い自分」という理想像に固執し、生き残る最後のチャンスを自分でフイにしてしまうという皮肉な顛末となった。
『単なるバカ』と『歴戦の獣王』の区別もつかなくなってしまったザボエラと、『無力な敗残兵』と『牙を隠した難敵』を間違えなかったクロコダイン。
常に他者を見下し相手を理解しようとしなかった前者と、他者の長所を見出し本質を理解するのが上手い後者。それが両者の明暗を分け、この最期につながってしまったのである。
策謀
- 鬼面導士ブラス
クロコダインに授けた策。ポップ曰く「汚ねえ人質作戦」。
ダイの育ての親であるブラスをマホカトールの保護下にあったデルムリン島から連れ去る事により魔王の邪気の影響で凶暴化させ、クロコダインと共にダイたちと戦わせた。
ポップの機転でブラスが救い出されるまで相当に苦戦させており、かなり効果的な策であった。
驚くべきはその時言ったザボエラの言葉。
「子供が絶対に逆らえんもの・・それは“親”じゃっ!!育ての親に手出しはできまい!?ダイに対してこれ以上の刺客は考えられんて・・!!キィ~ッヒッヒッヒッ!!!」
普通に聞いても最低な台詞なのだが、なんと後にザボエラ自身もザムザという子を持つ父だと判明。この発言に違わず、情を捨てきれぬザムザを利用し倒す毒親であったことが発覚する。
後に判明したストーリーで序盤のセリフの印象や意味合いが変わることは珍しくない展開だが、コイツの場合最低だった印象をさらに下げるという、とんでもない台詞である。
ちなみに「ザボエラが余計な策謀を授けなければ、クロコダインとの2戦目はクロコダインが勝っていた」というのはヒュンケルの皮肉のみならず原作者の公式見解である。
ダイが怒りで竜の紋章の力を爆発させることも無い為、闘志万全のクロコダインのタフネスを突破する手段を用意できないと考えれば確かにそうなるだろう。
万一ダイ達が勝ったとしても、負い目の無い戦いであれば作中程には恩義と感銘を抱くことも無いためクロコダインが魔王軍を裏切らず、その後の活躍まで踏まえてしまうと、ザボエラは作戦失敗以上の損害を引き起こしたとも言えてしまう。
クロコダインと組むのであれば保身のような後ろ向きな感情を煽るのではなく、彼の誇りを満足させる決戦の舞台でも用意してやればよかったのだが、誇りや美学といったものを解さず利己的な感情しか持たないザボエラは相手に合わせる発想に思い至らなかったのだろう。
当時のザボエラは、上手く利用して手柄の相乗りをしようという心算はあってもクロコダインを蹴落そうとまでは思っていなかったにも拘らずこの結果なのだから、二人は根っから相性が悪いとしか言いようがない。
- バラン決戦後の夜襲
ハドラーに授けた策。バランとの決戦を終えた夜、疲れ果てたダイたちに共に奇襲をかける。
ダイ達を魔香で眠らせ、効かなかったポップにはモシャスでマァムの姿になり毒を与えることで麻痺させたが、助けに駆けつけたマトリフと交戦する羽目になり失敗に終わる。
2020年版ではバーンから最後通告を受け「妖魔師団と親衛隊を動員してダイを討つ」と言い放ったハドラーに対し「これまでのような正攻法では勝てませぬ」「どんな手を使っても最後まで生き残っていれば勝者と呼ばれる」と甘言するシーンが追加されている。
- 勇者ダイ抹殺
ハドラーと交戦した直後の体力を消耗したダイの抹殺を狙い、部下を引き連れ捜索に乗り出した。
あと一歩の所まで行ったが、ヒムの妨害を受け魔牢に幽閉される。
もう少しでダイにトドメを刺せたのを「勇者は自分が倒す」という理由で止めたハドラーが非難されることもあるが、この方針は大魔王バーンに申し出て、魔王軍全体の方針として直々に認められていたものである。そもそも、ハドラーが打倒ダイに拘っていることはザボエラもよく知っているはずなので、上司の顔に泥を塗る真似をしていると言えなくもない。
上司のメンツをつぶす手柄の横取りなのを棚上げしてたとしても、出撃のために名乗り出た訳でもなく、大魔王バーンや総指揮代行を任されていたミストバーンから命令を受けての行動でもない独断専行であるため、バーンを含めた魔王軍上層部の会議で決まった方針に喧嘩を売るも同然。組織という観点から考えると咎められて然るべき行動なのは間違いない。
これが通るなら、「魔王軍のため」「戦果を上げれば許される」と理屈を付けて身内の競争相手を蹴落としたりする行為さえ引き起こされてしまう。過去には似たような独断専行をハドラーの追認ありといえどフレイザードがやっているため、魔軍司令時の愚行から決別したハドラーとしては、同じ轍を踏むわけにはいかないだろう。
また、ハドラーに代わり総指揮を任されていたミストバーンに処罰されていれば幽閉では済まなかったことは想像に難くない為、彼が動く前にヒムを向かわせたのはハドラーからの最大限の慈悲に近い。
しかしザボエラを連れ戻すためにヒムが出張った結果、「超金属の敵」という脅威をポップとクロコダインに知らしめ、新たな魔法と新たな技の習得に至らせる遠因となってしまった。
また、この行動の動機であった「バーン達の会話で妖魔士団の存在に触れられていなかった。このままでは魔王軍に自分の居場所がなくなる」も、そもそもハドラーのパワーアップに貢献した第一人者はザボエラである事を考えれば見当違いと言わざるを得ない。
ハドラーは自分のパワーアップに貢献したザボエラを評価していたどころか、その過程で息子ザムザを死なせてしまった事に負い目を感じ、上記の独断専行にもそれを理由に温情を見せている。
これらを鑑みればザボエラを切り捨てるつもりはなかったのは明らかであり、ここで下手な動きを見せずに自分の功績も主張していればおそらく普通に認められた。
ザボエラは自身が他者への恩義など感じぬ性格であるが故、自身のどの行動が相手に恩義と受け止められるか理解できていない節がある。この焦りもそうした情への無理解が招いたものと言えるかもしれない。
- 見苦しい言い訳による大魔宮への逃亡
ミストバーンにクロコダイン達の相手を任せて大魔宮へ逃げ込もうとしたが、逆に論破され到底勝ち目のない戦場にただ一人取り残されてしまった。
ただしミストバーンもただ見捨てたわけではなく、策を弄し保身に徹するザボエラが自ら前線に出た時点で何かしらの切り札は用意していると見抜いてた為、ケツを蹴っ飛ばす意味合いもあった。
そして前述の切札を持ち出した際には「叩かれてようやく手の内をみせおった」「これで地上は収まるかもしれん」とザボエラに勝ちの目があると見ている台詞を言い残している。
実際ロン・ベルクが予想以上に人間に入れ込み「自身の両腕をつぶしてでも戦う」という選択をしていなければ人間側に打つ手は無かったため、ミストバーンの見立ては間違ってはいなかった。
- 嘘の命乞い
超魔ゾンビが破壊され、満身創痍で逃げ帰ろうとした矢先、クロコダインによって阻まれたため騙し討ちを計画する。体内で「相手を意のままに操れる毒」を製造し、隙を突いてクロコダインに爪を突き立てようとするが失敗に終わり、その生涯を閉じることとなった。
そもそもクロコダインは『策謀を好まない』ことはあっても、状況判断や戦況分析に優れ、咄嗟の機転は良く利く歴戦の勇士。人を見る目もあり、断じて腕力だけが取り柄の『脳筋バカ』などではない、十分な人格と知恵を持ち合わせた男である。
ザボエラが毒を調合した際には爪から汁が垂れており、クロコダインはこれに気づいていることを示唆するような描写もあった。にもかかわらず嘘の命乞いに乗ってきたことに飛びつき、「無警戒すぎる」と用心することさえ出来なくなっていたのがザボエラの命取りとなった。
ザボエラは「非力だから他人にすがるしかなかった」と嘆いたが、その力に優れるクロコダインはザボエラの力量(魔法力)を初めから評価しており、弱者と侮ったことは一度もない。
軍団結成時には、ミストバーンやバランでさえも手にするのを戸惑った炎の中にある「暴魔のメダル」を取って忠誠心を示そうとしたことを認められていたし、彼を自ら目利きして雇い入れたハドラーも「ザボエラが軍師としてついているなら安心」と独断専行を咎めていない等、相応の信頼はされていた。ザボエラも当初は内心でも「ハドラーさま」と呼んでおり、より力の強そうなバランに乗り換えようと思ったことはあっても、怒りの感情抜きで罵倒したことはない。
この結末は、そんな周囲の信頼を踏みにじった彼自身の因果応報だったのだ。
とはいえ、単純な実力にも埋められない差があった。
クロコダインはザボエラが爪を突き立てようと飛び掛かったのを見てから反撃している。ザボエラの言葉を信じ込むことなく身構えていたのは明らかで、ただでさえ消耗していたザボエラに臨戦態勢のクロコダインを不意打ちできるようなすばやさなど望めるはずもない。
這いずったままクロコダインの間合いに捉えられた時点で、攻めてみようが指一本触れることもできず、逃げ出すこともできないのが決まり切っていたのである。
そもそもにして、「直接戦うのはバカ」と嘯き安全圏で策を練りまわしていた男に、常に最前線で戦い続けた戦士に正面切って一矢を報いるだけの実力が備わっている筈もない。
策謀家という言葉に溺れ実戦から遠ざかっていた「人生のツケ」が、ここに至って実力不足という形で回って来てしまったのだ。
だいいち、グレイトアックスの斧柄でへし折られるような細腕でクロコダインの鋼鉄の皮膚を貫けるかも疑問である。
あるいは、これらの用心や想像力が頭から抜け落ちる程に追い詰められていたからこそ策に溺れてしまったのか。
ちなみに2020年版アニメでは、両手の爪で挟むようにしてクロコダインの手を狙っているため、確実に皮膚を貫こうとしていたように見える描写になっている。
毒ガスや毒の滴を飛ばす技ではない以上、皮膚に塗っただけで効くほど都合の良い毒でもなかったのだろう。
総評
作中での評価は徹底的に低いザボエラだが、読者の側からは「敵味方という立場を排して見れば評価できる部分もある」という声も聞かれる。
魔法使いや科学者としてのザボエラの能力は、上述の通り決して低くはなく、超魔生物など数々の兵器を作り出したその技術力は序盤どころか終盤に至るまで脅威となっていた。
周りから散々こき下されていたのも主に手段といった「人格面」ばかりで、実は「弱者」や「無能」と罵られた事は一度もなく、彼を心底蔑んでいたミストバーンですら「能力や成果」に限っては最後まで評価し続けていた節がある。
実のところザボエラが関わった戦いでは常にダイ達をあと一歩のところまで追い詰めており、失敗した原因も味方に足を引っ張られたり、想定外の事態が起こったりと、ザボエラ自身に落ち度があったとは言い難いものが多い。
自分の汚点を棚に上げてはいるが、クロコダインらの離反を咎める正論を言う合理性も窺え、なんだかんだで最後まで魔王軍の一員として戦っており、自身の仲間は全て使い捨てたが、組織自体に対する背信行為は一度もしなかった。
それでもザボエラだけが徹底的に貶められ凋落していったのは、周囲を利用して自分だけ甘い汁を吸おうという精神性が周囲にダダ漏れであったことに他ならない。
如何に残酷な悪の組織であっても、如何に有能であっても、味方すら捨て駒だと平然と公言し、本当に手のひら返しを繰り返す様なヤツに重要なポジションを任せたいとは思わないだろう。
更に言うなら、ザボエラの策は「成功すれば多大な貢献」ではあるものの、組織内の信用を無くし、影武者にした祈祷師や超魔ゾンビの素材になった魔界のモンスター等を使い捨てにするため長い目で見ればトータルでマイナスになるというリスク管理が抜けていた。しかも自分の功績ばかりに目が行っており、それ故に失敗してももう一手を打って押し切るに至らぬ実戦勘の鈍さが目立つ。
大魔王バーンを裏切ること無く魔王軍に留まっていたのも忠節からでは無く、徹頭徹尾自己保身のため、最終的に勝つのは魔王軍と見ていたからであった。そのためにザボエラの意識は「自分の成功が魔王軍の勝利に近付く、もたらす」ではなく「勝ち確の中で功績をあげる」と言う無自覚の甘さを垣間見せている。
彼の性格を鑑みれば、バーンの旗色が悪くなったと感じればダイ達に寝返ろうとした可能性すらも現実味を帯びてくる。頭の中で他者を都合よく動かす彼ならば『魔族のロン・ベルクや同じ軍団長のヒュンケルとクロコダインが受け入れられたのならば自分も大丈夫』などと考えだしても不思議ではない。無論そんなことを考えそうな時点で誰からも信用はされないだろうが…。
そんなザボエラが粛清されずに済んでいたのは、彼のために命を落としたザムザへの義理立てというハドラーの個人的な酌量による部分が大きかった。
本人は自身を世渡り上手と思っていたが、相手を理解しようとする意識が決定的に無く、他者を使い捨てる悪意を隠さないせいで取り入ろうとする相手を悉く怒らせ、最後は完全に孤立した様を見れば、周りが相性の悪い武人肌な人物ばかりだった点を加味しても、「人を動かす」という策士としては甘かったとしか言いようがない。
この辺りは、バーンにすら気づかれず暗躍していたキルバーンの方が役者が遥かに上であり、最後の大慢心を除けば演技力などの立ち回りでも「知恵者の悪党」というお株を奪っていた。罠による悪辣な戦法や嗜虐趣味を剥き出しにしていながらも、誰かに取り入ったり踏み台にしたりせず独力で堂々と振舞う様子がそれなりに重く見られていたのも対照的な実例だと言える。
相手の本質を理解し美点を見出すのが上手く、魔王軍の誰もから評価されていたクロコダインもまた真逆の美点を持っていたと言え、「愚直で、誠実で、他者への理解が深く、献身的な戦士」であるクロコダインと「狡猾で、計算高く、他者を見下し、利己的な策謀家」であるザボエラは対比であるかのように作中通して相対し続けた。
最後の命乞いを見返せば、彼に比較して若く心身の充実した他の六大団長への劣等感が窺える。同情を引く意図があった以上どこまで本気だったかはわからないが、超魔ゾンビでクロコダインと戦った時には「巨人の気分はいい」「クロコダインにはわしが小さく見えていたのだろう」という旨の台詞を吐いており、全てが嘘というわけでもなさそうである。
こうした劣等感を拭えなかったことも、素直に連携や献策をせず悪意丸出しで周囲に接する態度に繋がっていたのかもしれない。
ザボエラ本人の言とは裏腹に、クロコダインは「かつて六大団長が揃ったときは絶大な魔力で一目置かれた存在だった」と評した。暴魔のメダルの件で腹を決めた姿も見せているし、評価も期待も寄せられていたが、出世欲に目がくらみ他人の力ばかりを利用している内にこんな小物に成り果ててしまったと、哀れみをもたれている。
誰からも見捨てられたザボエラに最後まで思いを馳せてくれていたのは、皮肉にも終始見下していたクロコダインのみであった。
「ダイの大冒険」とは、仲間との出会いや強敵との戦いで登場キャラクター達が成長してゆく物語であり、勇者一行は勿論、魔王軍の幹部でさえも己の殻を破って成長する逸材が多かった。
そんな中、むしろストーリーが進む毎に人格が悪化していったザボエラは「成長出来なかった人物」の典型例として描かれており、ある意味本作のテーマの一つである「成長」に対するアンチテーゼな「堕落」とも言えよう。
もしもザボエラがバダックのように「非力でも役に立とうとする気概」や「他者に対する度量」「他者と共に歩もうとする心」があれば、クロコダインの隣に立っていたのはザボエラだったのかもしれない。
クロコダインにとってザボエラは「自分もこうなっていたかもしれないという可能性の一つ」であるが、ザボエラにとってバダックもまた「自分もこうなっていたかもしれないという可能性の一つ」だったと言える。
ある意味では、彼自身もまた「力こそ正義」という魔王軍、或いは魔界の歪んだイデオロギーの犠牲者だったのかもしれない。
人物関係
魔王軍
魔王軍の魔軍司令を務める魔族。
本編より15年前の頃の時点で、『魔鉱石』や(ザムザが)禁呪法で創り出した『あくまのおおめだま』を融通する付き合いがあるなど一蓮托生とも言える間柄だったようで、後にハドラーに超魔生物になるための肉体改造を施している。
六大団長
ザボエラは参謀として六大団長と組むことが多く、時には策謀や配下を貸し与えるなどしている。
百獣魔団の軍団長を務める獣王。
ダイに敗れた後は魔王軍を裏切ってバルジ島でのレオナ救出戦にてダイ達に加勢に現れるが、それを差し引いても武人肌であるクロコダインとの相性は良くなかったようである。
不死騎士団の軍団長を務める魔剣戦士。
こちらもクロコダインと似た経歴である上に、騎士道精神の持ち主であるヒュンケルのザボエラとの相性は特に悪く、『マァムを洗脳してヒュンケルの恋の虜にしてみせようか』と提案した際には、ザボエラの首を掴んで後頭部を壁に叩きつけると前述の台詞に加えて「今度またふざけた言葉を口にしてみろ! 躯の仲間入りをさせてやるからな!!!」と怒りを露わにしている。
このためザボエラとは絡みこそあったが唯一支援を受けなかった。
魔影軍団の軍団長を務める魔影参謀。
絶大な魔力を持つほどに強いくせに、自分で戦おうとしないで楽に手柄を立てることしか考えないその性根を全魔王軍で最も嫌っていた。
後にミストバーンが新魔軍司令となりザボエラが補佐となった。
超竜軍団の軍団長を務める竜の騎士。
バランが『何故ハドラーが頑なに自分とダイを対面させることを拒むのか』についての答えについて気付いたのは、ザボエラが考え無しにロモス王国でクロコダインと戦った時のダイの額に浮かんだ紋章について話したからである。
ザボエラもハドラーが恐れるバランには一目置いており、終始敬語で腰の低い態度を取っていた。その戦果を間近で見た時は「化け物じゃこの男は……」と大変恐れ、取り入ることすら頭に浮かばない様子だった。
バランがザボエラをどう思っていたのかは不明だが、六大団長の中ではいがみ合わなかった貴重な例である。
氷炎魔団の軍団長を務める切り込み隊長。
フレイザードからはじじい呼ばわりされながらも、クロコダインやヒュンケルのように嫌悪感は持たれていない。こちらもいがみ合わなかった貴重な例である。
どちらも勝利と栄光に固執するタイプなので実は最も相性がよかったりする?
ハドラー軍
魔王だった頃のハドラーに仕えていた四天王。
封印の策で凍結状態のハドラーをクロコダインに救出させた。ハドラー軍の居城である地底魔城に送り届けるよう手配したのもザボエラである。
しかし、クロコダインが去って行った後に現れ、彼を見下しながら「ハドラーを助けたのはこのザボエラだということをくれぐれも伝え忘れないように」と恩着せがましくアピールしたため、二人の反感を買った。
特にガンガディアは「腕力しか取り柄が無いトロル系モンスター」というイメージへのコンプレックスをバネに知性と魔法を磨いて出世した男で、敵だろうと長所に対しては「尊敬する」「憧れる」と公言し、尊敬を表明した相手に評価されれば敵であろうとも喜ぶ度量の人物であるにもかかわらず、ザボエラは知力や魔力こそ高くても「全く憧れない…!」手合いだと吐き捨てており、忠義の徒であるバルトスすら、主人ハドラー救出の恩を指し引いてなお無言の同意を示していた。
ハドラー親衛騎団
いずれも本編中盤以降にハドラーがバーンから貰った五個のオリハルコン製のチェスの駒を使って禁呪法で創り出した新たな部下。
武人として一皮むけたハドラーが創り出しただけあってその性根を受け継いでおり、それもあって、アルビナスとヒムからはダニ呼ばわりされる程に嫌悪されている。シグマとブロックは本編での絡みがなかったものの、『勇者アバンと獄炎の魔王』9巻のおまけ漫画にて、ガンガディアのザボエラに対する嫌悪感を肯定する形で、それぞれダニ呼ばわりしたり、怒りの気持ちがこもった声を上げている)。
漫画版クロスブレイド
4巻に登場。お供にギガンテスの武人ギガンを従えている。キルバーンと同じく「子供から見て尊敬出来ない悪役」にされている。
初登場でいきなり食い逃げをかまし、見咎めた少女店員の抹殺をギガンに指示したり、ギガンから「少女を抹殺した(というウソ)」という報告を聞いた後でウスノロと吐き捨てるなど非常にタチの悪い性格になっている。
このため内心ではギガンにも軽蔑されていたが、武人だからこそザボエラを見限れないという状態。
逆に原作で見られた、鼻水を垂らして逃げ惑う小者のような面はまったくない。むしろダイたちやロムドラドに対して不遜な態度を崩しておらず、なかなか肝が据わっている(さすがにロムドラドに睨まれた時は一瞬怯えていたが)。
時空の武術大会にて主人公チームと激突。ポップと頭脳戦を繰り広げる。
ザボエラはギガンを捨て駒にすることでポップの注意を引き、自身は背後に回り込んでナイフを突き立てようとする。しかしポップには「卑怯者は背後から襲って来る」と読まれており、ギガンの攻撃に耐え抜かれたことで反撃される。形勢不利を悟ったザボエラはルーラで逃げ出した。
ギガンも本心ではザボエラを軽蔑しており、主人公たちに敗れたことから「卑怯者のザボエラに仕えていたギガンは死んだ」として離反された。
7巻(最終巻)にて再登場。バーンたちと共にこの世界から去ったと思われていたが、置き去りにされたのでロムドラドと接触し、その権勢に取り入ってやろうと主人公ユウキの抹殺に名乗りを上げる。
幻影効果のある霧を利用して配下共々ユウキの家族に化け“迎えに来た”という体で近づく。だがその先には無数のトゲが用意された崖があり、ついて行けばユウキは串刺しになってしまう。
ユウキの心はかなり揺れたが、「この世界を見捨てられない」と拒否される。強引にでも連れて行こうとしたことから心無い発言ばかりするようになり、とうとうユウキに偽物と見抜かれてしまった。
ユウキは「ありがとうザボエラ。偽者でも家族と合わせてくれてうれしかった。でも同じくらい許せない!!!」と激怒。怯懦を露わにしたザボエラは、駆け付けたダイたちも加えた全員のパンチによってどこかへ飛ばされてしまった。
捨て台詞に「貴様は二度と自分の世界に帰れず朽ち果てる」と言い放ち、ユウキの心に少なからず傷を残した。
バーン側の関係者では最後の刺客となった。
小話
- ザボエラの基地
ダイとマトリフに撃退された後、自身の基地でハドラーを超魔生物にしたことがオフィシャルファンブックにて語られている。ザボエラはここで超魔生物に関する研究をしていたのだろう。位置的には死の大地に近いらしく、訪れたミストバーンが「こんなすぐ近くにあったとは灯台下暗しだったな」と口にしているため、恐らくは死の大地近辺の小島などに密かに築かれていたと思われる。
- 下衆の金字塔
仮にも少年漫画で初期から終盤まで出番があったレギュラーキャラでありながら、終始一切の美点なく凋落していき、かつ頭抜けて強い・怖いといったカリスマと成り得るポイントすらない、ひたすらに小狡い下卑た人物という意外と珍しいキャラクター。
それ故か後の世代の作品では下卑た悪役の造形について「モデルはザボエラ」と語られる場合もあるなど、創作界隈に与えた影響は意外と大きい小物界の大物でもある。
- 悪意の家族
息子ザムザがいるということはこんな彼にも妻がいるのだろうか?
原作者によれば「美人だがザボエラと同等以上の悪辣な性格を持つ魔族」「愛情などは無く、互いに相手を利用するためだけに近付いた」「最終的には夫を謀殺しようとしたが、ザボエラに上手を取られて逆に謀殺された」といったイメージだという。
親子の情を諦めきっていたザムザだけが、人並みに父親を意識していたことが奇跡に思える。或いはそのことがザボエラとの関係に繋がったのかもしれないが。
- もしもロトの紋章に出ていた場合
武闘派ばかりの大魔王バーン軍よりも、策謀家の多いロトの紋章の魔王軍所属なら、勇者パーティーが若者ばかりなのも含め謀略や精神攻撃に大活躍できたのでは…という評もある一方、王道的な少年漫画のダイ大に対して、ハード路線なロト紋の悪党はザボエラ以上の策士や冷酷な輩も多く、さらにはバーン軍に輪をかけて幹部達の仲が悪い。このため対人能力最悪のサボエラはむしろさっさと見限られたり使い捨てられる側で終わりそうなどとも言われる。どちらにせよロクな末路は迎えなさそうであるが。
- 声優ネタ
1991年版でザボエラを演じた龍田直樹氏は、CDシアター版「ドラゴンクエストⅢ」でザムスという商人を、「ドラゴンクエストⅣ」ではアシペンサ(ピサロのてさき)を演じた。
2020年版でザボエラを演じた岩田光央氏は、DQ10Ver.6でカブを演じる事が決定した。
- 原作者とザボエラ
インタビューにて三条は、
「連載当時、この作品では珍しく完全な嫌われ役として書きました。自分の嫌いなものを集めたキャラクターだったんです。でも、ここまで生きてきて、周りを見ると、こういう人って多いんですよね(笑)。『俺がやった!』と自分の手柄にしようとしたり、嫌なことを言う人の気持ちが分かってきたんです」
と述べている。該当記事リンク
もしかしたらあなたの傍にも、そしてあなた自身の心の内にも、ザボエラは潜んでいるのかもしれない…。
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才能の無駄遣い 宝の持ち腐れ…彼の能力と性格を足して二で割った時の答えがまさにこれらに当たる。